Claude Code Meetup Japan #3(2026年3月)で共有された内容と、その周辺を調べてまとめた記事。
「インタラクティブにコードを書いてもらう」という使い方は入門編で、現在のClaude Codeはもう一段上のフェーズに来ている。この記事はそこを掘り下げる。
Claude Codeの現在地
2026年に入って約2ヶ月半で、60バージョン・869の変更点がリリースされた。2025年の10ヶ月分を既に上回るペースで、リリース項目は2倍以上になっている。
使い方の進化も同じく速い。今の最先端は「エージェントを複数走らせて、自分はオーケストレーターとして指示だけ出す」フェーズに入りつつある。
1. /simplify と /batch ── PRを出す前に使わないと損をする
Claude Code v2.1.63 から入った組み込みコマンド。知らない人がまだ多い。
/simplify ── 3つのエージェントが並列でコードを審査する
/simplify を打つと、3つの専門エージェントが同時に起動してコードをレビューする。
- コード再利用エージェント:複数箇所に出てくる同じパターンを探し、共通化できる部分を特定する
- コード品質エージェント:変数名・関数の分解・制御フローをレビュアー目線で読む
- 効率エージェント:無駄なアロケーション・冗長なループ・バッチ処理できる操作を見つける
3つが終わると結果をまとめて、修正を自動で適用してくれる。
# 使い方
/simplify
# 特定のPRをレビューしたい場合
/simplify #123
Linterは構文エラーやスタイルを見る。/simplify はアーキテクチャの問題を見る。役割が違うので、両方使う。実際、PRごとに3〜5件の問題を見つけることが多いと報告されている。
PRを出す前に /simplify を打つことを習慣にするだけで、レビューで指摘される量が目に見えて減る。
/batch ── 大規模変更を並列エージェントで一気に終わらせる
「このリポジトリ全体のAPIエラーレスポンスを { error: string, code: number } に統一して」という作業、手でやったら何日もかかる。
/batch に投げると、こうなる。
# 使い方
/batch migrate src/ from Solid to React
/batch add input validation to all API endpoints
/batch standardize all API error responses to use { error: string, code: number } format
内部でこういう動きをする。
重要なのがWorktreeによる分離だ。各エージェントは独自のgit worktreeと独自のブランチを持つ。つまりエージェント同士がコンフリクトすることがない。1つ失敗しても他には影響しない。
全エージェントが /simplify を通してからPRを出すので、レビュアーが受け取るPRの品質が最初からある程度担保されている。
向いているタスク:「このパターンを全ファイルに適用する」という一様な変更。フレームワーク移行、命名規則の統一、型定義の追加。
**向いていないタスク:**ユニット間に依存関係がある変更、設計判断が必要な変更。
2. /loop ── 離席中も監視を続けてくれる
v2.1.71 から入ったコマンド。「デプロイが終わったか確認して」「CIが通ったか見て」というのを5分ごとに自分で確認していた人はこれで解放される。
# 5分ごとにデプロイ状況を確認
/loop 5m check the deploy status and report any changes
# 20分ごとにPR #1234 のレビューを確認
/loop 20m /review-pr 1234
# 1時間後に一回だけリマインダー
remind me in 1 hour to push this branch
/loop に投げた後は別のことをしていていい。間隔を指定しなかった場合のデフォルトは10分。
いくつか制約がある。
- セッションスコープ:ターミナルを閉じると全タスクが消える。永続化したければDesktop scheduled tasksかGitHub Actionsを使う
- 最大3日で自動消滅:忘れたループが永遠に動き続けることがない設計
- コストに注意:5分ごとに走るタスクが1回0.05ドルかかると1日1,400円になる
一回のコストを /cost で確認してから間隔を決めた方がいい。
3. Worktreeサポート ── 並列作業のコンフリクトを根絶する
--worktree フラグでClaude Codeを起動すると、独立したWorktreeの中でセッションが動く。
# 認証機能の開発を独立したWorktreeで開始
claude --worktree feature-auth
# バグ修正を別のWorktreeで同時並行
claude --worktree bugfix-prod-123
どちらのセッションも同じリポジトリの履歴を共有しながら、別々のブランチ・別々の作業ディレクトリで動く。片方が src/auth.ts を書き換えている間に、もう片方が同じファイルの別アプローチを試せる。
カスタムサブエージェントにも設定できる。
---
name: refactor-agent
description: 独立したリファクタリング専用エージェント
isolation: worktree
---
前述の /batch も内部的にこの仕組みを使っている。
4. CLAUDE.md の本格的な使い方
CLAUDE.mdは「プロジェクトの説明ファイル」ではなく、「Claudeへの憲法」と捉えた方がいい。
用途別に分けて管理する
1つにまとめると肥大化して読み込みが重くなる。用途ごとに別のCLAUDE.mdを持てる。
.claude/
├── CLAUDE.md # デフォルト(常時読み込み)
├── CLAUDE.review.md # コードレビュー時に渡す
├── CLAUDE.research.md # 調査モード用
└── CLAUDE.deploy.md # デプロイ作業用
# CLAUDE.review.md
## レビュー観点
- セキュリティ:SQLインジェクション、XSS、認証バイパス
- パフォーマンス:N+1クエリ、不要なループ
- 型安全性:any使用禁止、nullチェック必須
## 指摘スタイル
- 修正が必須のものは「[MUST]」をつける
- 提案は「[SUGGEST]」をつける
- 絶対にほめない(ほめる時間は無駄)
禁止事項を明記する
CLAUDE.mdで最も効果があるのは「やらせたくないこと」の明記だ。
## 禁止事項(絶対に守ること)
### コード
- `as any` の使用禁止。型を正確に定義する
- `console.log` でのデバッグ禁止。`logger.error` を使う
- カバレッジを上げるためだけのテスト禁止(意味のないassertを書かない)
### 操作
- /src/legacy/ 以下は絶対に変更しない
- DBマイグレーションは生成するが実行しない(必ず人がレビューしてから実行)
- .env ファイルにはアクセスしない
これを書いておくと、「またasanyを使いやがって」というストレスがなくなる。
CLAUDE.mdのサイズ管理
推奨は1ファイル200行以内。大きくなったらファイルを分割するか、重複を削る。プロジェクトが成長したら、Claudeに「このCLAUDE.mdを整理して」と頼むことも有効。
5. Agent Teams ── エージェントたちが直接会話して協調する
実験的機能(CLAUDE_CODE_EXPERIMENTAL_AGENT_TEAMS=1)。
従来のサブエージェントは「上司→部下」の一方向だった。Agent Teamsは「横並びのチーム」として動く。エージェント同士がメッセージを送り合い、共有タスクリストを通じて調整する。
# 環境変数を設定して起動
export CLAUDE_CODE_EXPERIMENTAL_AGENT_TEAMS=1
claude
# セッション内でチームを立ち上げる
決済モジュールをリファクタリングするチームを作って。
3人のメンバーを立ち上げてほしい:
- APIレイヤー担当
- DBマイグレーション担当
- テストカバレッジ担当
共有タスクリストを通じて調整しながら進めて。
実際の効果として、1年以上開発停止していたライブラリを数時間で書き換えた事例や、複数リポジトリ(管理画面・バックエンド・フロントエンド)を一つの命令で並列実装した事例が報告されている。単一エージェントと比べ2〜3倍の速度向上が出ることもある。
使い分けの整理:
| 状況 | 使うもの |
|---|---|
| 独立した大量変更を並列実行 | /batch |
| エージェントが結果だけ返せばいい | サブエージェント |
| エージェント同士が調整しながら進める | Agent Teams |
6. /loop × GitHub Actions × Hooksの組み合わせ
単体ではなく組み合わせることで強くなる。
パターン①:PRが出たら自動でレビューが走る
# .github/workflows/claude-review.yml
on:
pull_request:
types: [opened, synchronize]
jobs:
review:
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- uses: anthropics/claude-code-action@v1
with:
anthropic_api_key: ${{ secrets.ANTHROPIC_API_KEY }}
prompt: |
このPRをレビューして。
CLAUDE.mdのルールに従って指摘すること。
セキュリティとパフォーマンスを優先して。
パターン②:コードが書かれたらHooksでフォーマットが走る
// ~/.claude/settings.json
{
"hooks": {
"PostToolUse": [
{
"matcher": "Write|Edit",
"hooks": [
{
"type": "command",
"command": "prettier --write $CLAUDE_TOOL_INPUT_PATH 2>/dev/null || true"
}
]
}
]
}
}
パターン③:タスク完了を通知する
{
"hooks": {
"Stop": [
{
"matcher": "",
"hooks": [
{
"type": "command",
"command": "osascript -e 'display notification \"Claude finished\" with title \"Claude Code\"'"
}
]
}
]
}
}
この3つを組み合わせると、「Claudeに投げたらデスクを離れても大丈夫」という状態が作れる。通知が来たときだけ確認すればいい。
7. Chrome DevTools MCPとの連携
ChromeのDevToolsチームが公式開発したMCPサーバー。ClaudeからChromeを直接操作できる。
できることの例:
- UIを実装してもらい → DevToolsで確認 → コンソールエラーを自動取得 → 修正 → 再確認、のサイクルを自動化
- GitHubやNotionへのスクリーンショット自動アップロード
- ログイン状態を保持したままの操作
従来のスクリーンショットベースのアプローチと違って、DevToolsのデータを構造化された形でClaudeに渡せる。トークン効率がいい。
セットアップについてはChrome DevTools公式のMCPドキュメントを参照。
8. 「AIっぽくないUI」を作るための2つのアプローチ
AIに任せると「よく見るUI」になりがちな問題。これを防ぐ方法がある。
アプローチ①:入力を偏らせる
画像で渡す:
PinterestやDribbbleで「これが好き」というUIを集めて全画面スクショし、「このデザインを言語化してから実装して」と指示する。言語化のステップを挟むことで、AIが意図を正確につかみやすくなる。
ブランド名で渡す:
Appleっぽい、ミニマムなオンボーディング画面を作って。
Stripeのダッシュボードのような、データの見やすさを重視したレイアウトで。
ブランド名はAIとの共通言語になる。Apple・Stripe・Linear・Vercelあたりは特に通りやすい。
アプローチ②:出力を磨く
具体的なテクニック:
- メッシュグラデーション:直線的なグラデーションの代わりに使うだけで印象が変わる
- ガラ背景(ドット・グリッド):無地の背景にドット or グリッドを敷くだけで見栄えが上がる
- 絵文字・アイコンを使わない:シンプルになる
- フォントを1つ変える:デフォルトのsans-serifを外すだけで雰囲気が変わる
これをCLAUDE.mdのUIデザイン方針として書いておくと、毎回指示しなくて済む。
## UIデザイン方針
- グラデーションはメッシュグラデーションを使う(直線的なものは使わない)
- 背景にはドットパターンを敷く
- 絵文字は使わない
- フォントはGeistかMonaを使う
今すぐ試すならこの順番で
全部一気にやる必要はない。効果が大きい順で並べると:
- CLAUDE.mdに禁止事項を書く → すぐ効く、今日できる
-
PRを出す前に
/simplifyを打つ → レビューコストが下がる -
/install-github-appでPR自動レビューを設定 → 一回設定すれば以後自動 -
大きめの一様変更に
/batchを使う → 初めて使うと感動する -
/loopでビルド監視を自動化 → 待ち時間のストレスがなくなる
Claude Codeのアップデートは毎週のように来る。claude --version と claude update を定期的に打っておくと、新機能を取りこぼしにくい。
情報は2026年3月時点。Claude Code Meetup Japan #3、Chrome DevTools MCP & Claude活用事例の共有会(2026年3月)の内容をもとに作成。