IAM Identity Center を設定する中で、AWS Organizations を利用してマルチアカウント運用にしようと考えました。
ちょうどクレジット付きの AWS アカウントを持っていたため、
「このアカウントをそのまま Organizations に入れて使えないだろうか」と考えたのがきっかけです。
既存アカウントを AWS Organizations に統合すること自体は可能です。
しかし実際には、いくつか設計上の注意点があります。
今回はそのポイントを整理してみます。
1. AWS Organizations とアカウント追加方法
AWS Organizations とは
AWS Organizations は、複数の AWS アカウントを一元的に管理するためのサービスです。
- アカウントの作成・整理
- SCP (Service Control Policy) の適用
- 統合請求 (Consolidated Billing)
- 組織単位 (OU) での管理
マルチアカウント運用を行うのであれば、まず有効化することになるサービスです。
アカウントの追加方法
Organizations にアカウントを追加する方法は大きく 2 つあります。
新規作成
管理アカウントから新しい AWS アカウントを作成します。
- アカウント名
- メールアドレス
- IAM ロール名
を入力するだけで作成可能です。
この方法の特徴は、「まっさらな状態」でアカウントを用意できることです。
既存アカウント統合
既存の AWS アカウントを招待し、Organizations に参加させる方法です。
既存アカウント側で招待を承認すると、メンバーアカウントとして統合されます。
2. 既存アカウント統合の注意点
既存アカウントを統合する場合、「そのアカウントがどのような状態か」を考慮する必要があります。
アカウントはクリーンとは限らない
既存アカウントは、これまでの利用履歴をそのまま引き継ぎます。
例えば以下のような点です。
- IAM ユーザーやロールが残っている
- 課金リソースが稼働している
- ルートユーザーの設定状態
- サポートプランの契約状況
- 既存の RI や Savings Plans
統合後もそれらはそのまま存在します。
もし何らかの問題 (過剰な権限設定や意図しないリソースなど) があれば、
Organizations に入れることで管理範囲が広がり、影響範囲も広がる可能性があります。
このような理由から、特に管理アカウントや本番用途では、アカウントの新規作成が推奨されることが多いです。
クレジットと請求
今回の主題です。
既存アカウントを統合すると、統合請求 (Consolidated Billing) が有効になります。
- 支払いは管理アカウントに集約される
- メンバーアカウント側のクレジットカードは参照されなくなる
では、メンバーアカウントに付与されていたクレジットはどうなるのでしょうか。
クレジットはアカウント単位で付与されています。
そのため、統合しても管理アカウントへ移動することはありません。
メンバーアカウントの利用料金から、まずそのアカウントのクレジットが差し引かれ、残額のみが管理アカウントへ集約されます。
具体例
- アカウント A:$100 のクレジットあり
- アカウント B:クレジットなし
- 両アカウントとも $50 利用
この場合、
- A はクレジットで相殺 → $0
- B は $50 発生
結果として、管理アカウントへの請求は $50 となります。
つまり、クレジットはそのアカウント内でしか使えない ということです。
アカウント構造を変更しても、クレジットを横断的に使うことはできない点に注意が必要です。
3. 現実的な設計
安全にマルチアカウント運用をしたい。
しかし既存クレジットも活用したい。
その場合の現実的な選択肢としては、
- 管理アカウントは新規作成
- 本番アカウントも新規作成
- クレジット付き既存アカウントは検証・開発用途に統合
といった構成が考えられます。
また既存アカウントを統合する場合は、ルートユーザー設定の見直しや不要な IAM ユーザー削除など、一度クリーンアップを実施しておくとよいでしょう。
まとめ
既存アカウントの統合は可能です。
しかし、以下のポイントを理解した上で設計判断する必要があります。
- アカウントのクリーン度
- 既存リソース
- クレジットの扱い
- 請求の仕組み
マルチアカウントは強力ですが、小さな構造の選択が後から効いてきます。
運用・コスト・セキュリティのバランスを取りながら、最適な構成を考えていきたいものです。
今日も小さな学びを。
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