LoginSignup
2
2

More than 5 years have passed since last update.

量子情報のための線形代数1[ベクトル空間の導入]

Last updated at Posted at 2018-12-23

目次の記事、量子情報のための線形代数のシリーズ第1回目です。今回は量子情報を学ぶ上で必要なベクトル空間のまとめです。

以下、KをR(実数の集合)またはC(複素数の集合)とする。
ここでは、抽象的な体$K=R$または$C$上のベクトル空間(線型空間)の導入を行う。

集合$V$が$K$上のベクトル空間であるとは、$V$の元(ベクトル)である$u,v∈V$と$K$の元(スカラー)$a∈K$に対して次の公理を満たす、和$u+v$とスカラー倍である$au$が定義された集合のことをいう。

公理1.1
ベクトル空間$V$は次に条件を満たす集合である。任意の$u,v∈V$に対して和$u+v∈V$が定義されていて、次の条件を満たす。
(1) 結合則:$(u+v)+ w = u + (v + w)$ $(u,v,w ∈V)$
(2) 交換則:$u + v = v + u$ $(u,v ∈V)$
(3) $V$の特別な元0が存在して、$u + 0 = u$ $(u ∈ V)$を満たす。この0を零ベクトルという。
(4) 任意の$u ∈ V$に対して、$u ∈ V$が存在して、$u + v = 0$を満たす。この元$v$を$u$の逆ベクトルといい、$-u$と表す。

また、任意の$u ∈ V$や$a ∈ K$に対して、スカラー倍$au ∈ V$
が定義されていて、次を満たす。
分配則:
(5)$a(u + v) = au + av$ $(a∈K, u,v∈V)$
(6)$(a + b)u = au + bu$ $(a,b∈K, u∈V)$

(7) 結合則:$(ab)u = a(bu)$ $(a,b∈K, u∈V)$
(8) 単位元:$1u = u$ $(u∈V)$
ただし、1は$K$の積に関する単位元である。

ベクトル空間においては、その構造を考える上で、同じ構造を持つ集合がある場合を考えてみる。

定義1.2
$V$をベクトル空間として、 $V$における空でない$W$という部分集合が$V$の演算のもとでベクトル空間となるとき、$W$を$V$の部分空間という。

この場合、$V$は最大の部分空間ともいい、${0}$の場合は$V$の最小部分空間である。

実際では、次のような命題が知られている。

命題1.3
$V$をベクトル空間とする。$V$の部分集合$W$が次の条件(1)~(3)を満たすならば、$W$は$V$の部分空間である。
(1) $V$の零ベクトルは$W$の含まれる
(2) $W$の任意の元$u,v∈W$に対して、$U+v∈W$が成立する
(3) $W$の任意の元$u$と任意の$a∈K$に対して、$au∈W$が成立する

最後に、線形代数の教科書に見られる部分空間の表記について述べておく。
$V$の任意の部分集合S(必ずしも部分空間ではない)に対して、Sを含む最小の部分空間をsが張る部分空間といい、Span(S)と表す。
※この場合はベクトルが張る空間(Spanning Space)としている。

今回は以上です。次回は、Diracのブラケット記法や線型独立・従属について書く予定です。

2
2
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
2
2