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【徹底解説】MCPとは?「AIのUSBポート」

Last updated at Posted at 2025-03-16

1. はじめに

MCP(Model Context Protocol) は、近年注目を集める大規模言語モデル(LLM)がデータソースや外部ツールとやり取りするための、新しいオープン標準プロトコルです。

AIアシスタントが社内データや各種クラウドサービスに直接アクセスする際、従来は特定のAIやツールごとに個別のカスタム実装が必要で、開発コストや保守の負担が増大していました。

この課題を解消し、「どんなAIでも共通の方法でデータにアクセスできる」 環境を整備するのがMCPの狙いです。
USB-Cが機種を問わず共通ポートとして普及したように、AIモデルと外部データをつなぐ 「AI用のUSBポート」 として機能し、エコシステム全体の連携を促進します。

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※引用: https://zhuanlan.zhihu.com/p/29301066811

本記事では、MCPの 基本概念アーキテクチャ実装事例メリットと課題、そして 今後の展望 を網羅的に解説します。

これからAI活用を検討する方や、すでにAIを導入中の開発者・企業担当者の方々にとって、有用な情報となれば幸いです。

本記事では具体的な活用方法については、解説しておりません。
以下の別記事によりごかくにんくだ。


2. MCPの基本概念

MCP(Model Context Protocol) は、AIアプリケーションと外部のデータソース・ツール間の通信や操作を、標準化された手順で行うためのプロトコルです。
Anthropic社が2024年11月にオープンソースとして提唱し、USB-Cのような 「AI用の共通インターフェース」 として位置付けられています。

従来はAIモデル(GPT-4やClaudeなど)と各種データソース(データベース、ファイル、クラウドサービスなど)を連携する際、AIやデータソースごとに別々のAPIや認証方式を実装しなければならず、開発工数の増大やスケールのしにくさが課題でした。

MCPでは、AIアプリもデータソースも 「MCP」というひとつの標準 に対応するだけで、多対多の連携が可能になります。
これにより、「M×N問題」が「M+N問題」に変わるというメリットをもたらし、AIとツールがそれぞれMCP対応さえしていれば、自由に組み合わせて利用できるようになるのです。


3. アーキテクチャと動作原理

MCPはクライアント/サーバー型アーキテクチャを採用しており、クライアントがAIアプリ(ホスト)側、サーバーが特定のデータや機能を提供するプログラムを指します。
クライアントであるAIアプリは内部にMCPクライアント機能を搭載し、必要に応じてMCPサーバーにリクエストを送信。
サーバーはファイル検索やデータベースアクセスなど、特化した機能の処理を行い、結果を返します。

この通信ではJSON-RPC 2.0形式のメッセージ交換が行われ、リクエストとレスポンスをJSONでやりとりします。
MCPはプロセス間通信(標準入出力)による軽量な方式と、HTTP+Server-Sent Events (SSE) によるストリーミング通信の両方をサポートしており、ローカル環境からクラウドまで柔軟に対応できます。

MCPのアーキテクチャ概念図

以下は、MCPの基本的なアーキテクチャを示したものです。
AIアプリ(ホスト)が内部のMCPクライアントを通じて、複数のMCPサーバー(Slack連携、ファイルシステム連携など)に接続するイメージを表しています。

  • AIアプリ(ホスト): 実際にユーザーと対話するAIエージェントを内蔵するアプリ。
  • MCPクライアント: AIアプリ内で稼働し、外部MCPサーバーとの通信を司るモジュール。
  • MCPサーバー: 特定のデータソースやツール機能を公開し、AIからのリクエストを処理する。

4. 実装事例と応用シーン

MCPは登場から日が浅いものの、既にいくつかの具体的な実装例活用シーンが生まれています。

  1. Claude for Desktop
    Anthropic社が提供するClaudeのデスクトップアプリは、世界初のMCPクライアント実装として知られています。
    ユーザーが自社や自宅のPC上にMCPサーバーを立ち上げると、Claudeから直接そのサーバーにアクセスし、SlackやGoogle Driveなどのデータを検索・取得できます。

  2. MCPサーバーの公式実装
    すでにAnthropic社からは、Google Drive、Slack、GitHub、Gitリポジトリ、Postgresデータベース、Webブラウザ操作(Puppeteer)など、多彩なMCPサーバー実装が公開されています。
    開発者は自分のAPIキーや環境設定を行うだけで利用できるため、追加機能をプラグイン感覚で拡張できます。

  3. エンジニア向けIDE/エディタとの連携
    ZedエディタやReplit、Codeium、SourcegraphなどのサービスがMCP対応を検討・実装中です。
    プロジェクトのコードベースやドキュメントへAIが自動的にアクセスし、より高度なコード提案やデバッグサポートを実現できる可能性があります。

  4. 企業の業務自動化・エージェント化
    Block(旧Square)やApolloなどの企業は、自社の社内データをMCPサーバー化し、AIエージェントが横断的にデータ参照やツール実行を行うシステムを構築し始めています。
    エージェントが複数のアプリケーションを横断して動き、人間の業務をサポートする事例が増えると期待されています。

VeyraX というサービスがとてもいいので以下の記事も参考にしてみてください。


5. メリットと課題

メリット

  • 開発効率の向上
    MCPを一度導入すれば、 「一度つなげばどこでも使える」 コネクタの形でデータソースやツール連携を再利用できます。
    AIアプリ側でも、MCPに準拠したサーバーなら追加コードを書くことなく機能を取り込めます。
  • コンテキスト供給の拡大
    従来は事前学習データに依存していたAIも、MCPを通じて最新かつユーザー固有のデータを取り込めるようになります。
    これにより回答の正確性が高まり、ビジネス現場での実用性も向上します。
  • セキュリティとプライバシーの確保
    MCPサーバーをオンプレミスやプライベートクラウドに置けば、機密データを外部AIに直接アップロードせずに済みます。
    必要な範囲のみ情報をやり取りできるため、データガバナンス上のメリットも大きいです。

課題

  • セキュリティ上のリスク
    MCPサーバーは各種外部サービスへのアクセス権を一手に握る「ゲートウェイ」的存在です。
    もしサーバーが侵害された場合の被害範囲は大きく、秘密情報の管理や認証・認可の設計が重要となります。
    また、AIが誤って破壊的操作を行わないよう、権限を限定する工夫も必要です。
  • スケーラビリティ
    MCPはクライアントとサーバーが常時接続し、状態を保持する設計です。
    これはローカル接続に向いていますが、サーバーレスやイベント駆動が主流のクラウド環境にスケーラブルに対応するのは容易ではありません。負荷分散や接続管理が今後の大きな課題です。
  • コンテキストウィンドウの制約
    外部データやツールを増やしすぎると、AIモデルに供給するコンテキストが冗長化し、かえって回答の精度が落ちる可能性があります。
    必要な情報を選択・要約する仕組みや、プロンプト設計のノウハウが求められます。

6. 今後の展望とまとめ

MCPは「LLM時代のUSBポート」 とも呼ばれる大きな可能性を秘めた標準です。
現状ではAnthropic社のClaudeが主な対応クライアントとなっていますが、オープンソースとして仕様やSDKが公開されているため、今後は他のAIプラットフォームやオープンソースプロジェクトにも広がることが期待されます。

特に企業が自社データをAIで活用する需要は大きく、統一された安全な連携手段としてMCPが定着すれば、AIエージェントが複数のツールやデータにスムーズにアクセスし、人間の業務を強力に支援する未来が見えてきます。
もっとも、セキュリティやスケーラビリティといった技術的課題はまだ十分に成熟していません。
各企業・開発コミュニティが運用の実績や知見を共有し合いながら、プロトコルの改善と周辺ツールの整備を進めていく段階といえます。

まとめとして、Model Context Protocol(MCP)はAIと外部ツール・データを繋ぐ「共通言語」です。
これによってAIの活用範囲がさらに広がり、新しいユーザー体験やビジネス価値が生み出される可能性があります。
今後のエコシステムの発展に注目しつつ、実際に試せる環境があれば導入を検討してみてはいかがでしょうか。


参考文献

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