はじめに
2026年5月、AIエージェント界隈でかなり面白い機能が出てきました。
それが、Anthropic の Claude Managed Agents に追加された Dreaming です。
名前だけ聞くと「AIが夢を見るの?」という感じですが、実際にはもう少し実務的で、
エージェントが過去の作業ログやメモリを振り返って、次回以降に使いやすい記憶へ整理する機能です。
一方で、似た文脈で語られやすいものに AgentCore Optimization があります。
ただし、ここでまず重要な前提があります。
- Dreaming:Anthropic / Claude Managed Agents の機能
- AgentCore Optimization:AWS / Amazon Bedrock AgentCore の機能
つまり、どちらも「AIエージェントを改善する」ための仕組みではありますが、
提供元も、改善する対象も、運用の考え方も違います。
ざっくり言うと、以下のイメージです。
Dreaming は「エージェントの記憶を整理する仕組み」
AgentCore Optimization は「エージェントの設定改善を検証する仕組み」
本記事では、この2つの違いをできるだけ分かりやすく整理します。
先に結論
個人的には、このように捉えると一番分かりやすいと思います。
| 観点 | Dreaming | AgentCore Optimization |
|---|---|---|
| 提供元 | Anthropic | AWS |
| 対象 | Claude Managed Agents | Amazon Bedrock AgentCore |
| 改善するもの | メモリ、過去知見、作業パターン | system prompt、tool description、model ID、runtime設定など |
| 入力 | memory store、過去セッション | agent traces、evaluator、現在の設定 |
| 出力 | 新しい memory store | 改善案、configuration bundle、A/B test結果 |
| 得意なこと | 長期的な記憶の整理 | 設定変更の検証と本番反映 |
| 例えるなら | 振り返り・ナレッジ整理 | 実験・改善サイクル |
全体像
図にすると、かなり違いが分かりやすいです。
Dreaming は、過去の作業や記憶を見直して、エージェントの長期メモリを整理する方向です。
AgentCore Optimization は、ログや評価指標をもとに、プロンプトやツール説明などの設定を改善して検証する方向です。
Dreaming とは
Dreaming は、Claude Managed Agents におけるメモリ改善機能です。
エージェントが長期間動いていると、memory store にはいろいろな情報が溜まっていきます。
例えば、以下のようなものです。
- 以前のプロジェクトでしか使わない古いルール
- 同じ内容の重複メモ
- 一時的な例外対応なのに、恒久ルールのように残ってしまったメモ
- 複数セッションを横断して見ないと分からない作業パターン
- チームやユーザーごとの好み
Dreaming は、こうした memory store と過去セッションを読み取り、
重複・矛盾・古い情報を整理した新しい memory store を作る仕組みです。
重要なのは、入力元の memory store を直接上書きしない点です。
Dream の結果として別の memory store が作られるので、それを確認してから使うことができます。
Dreaming のイメージ
例えば、コードレビューエージェントを長期間使っていたとします。
最初は毎回このように指示していたとします。
- このチームでは
anyの使用を避ける - PRコメントは厳しすぎず、改善提案として書く
- Next.js App Router 前提でレビューする
- テストがない変更には必ず指摘する
これらを毎回プロンプトに入れるのは面倒です。
Dreaming は、過去のレビュー履歴や memory store を見て、
このチームでは、こういうレビュー方針が繰り返し使われている
という知見を整理し、次回以降のセッションで使いやすい memory store にまとめてくれます。
つまり、モデル自体を再学習するというより、
エージェントが使う長期記憶をメンテナンスする機能です。
AgentCore Optimization とは
AgentCore Optimization は、Amazon Bedrock AgentCore のエージェント改善機能です。
こちらは Dreaming と違って、主に以下を改善対象にします。
- system prompt
- tool description
- model ID
- runtime endpoint
- agent configuration
AgentCore Optimization では、実際のエージェント実行ログである agent traces を使います。
そして、指定した evaluator をもとに失敗パターンを分析し、改善案を作ります。
具体的には、以下のような流れです。
Dreaming が「記憶の整理」だとすると、
AgentCore Optimization は「改善案を作って、実験して、勝ったものを反映する」仕組みです。
AgentCore Optimization の3つの主要機能
AgentCore Optimization は、主に以下の3つで構成されています。
1. Recommendations
エージェントの trace を分析して、改善案を作る機能です。
例えば、ツール選択をよく間違えるエージェントがいた場合、
tool description をより明確にする改善案を出してくれます。
また、system prompt が曖昧で失敗している場合は、
より具体的な指示を含む prompt を提案してくれます。
2. Configuration Bundles
エージェントの設定をバージョン管理する仕組みです。
対象になるのは、例えば以下です。
- system prompt
- model ID
- tool description
- その他 runtime が読む設定値
これにより、コードを再デプロイせずに、エージェントの振る舞いだけを変更できます。
また、過去バージョンに戻す rollback にも使えます。
3. A/B Testing
改善案をいきなり本番100%に流すのではなく、
control と treatment に分けて、本番トラフィック上で検証できます。
つまり、
- 既存のエージェント
- 改善後のエージェント
を比較して、どちらが良いかを統計的に見られる仕組みです。
ここが Dreaming との大きな違いです。
AgentCore Optimization は、改善案を検証するための運用基盤まで含んでいます。
Dreaming と AgentCore Optimization の本質的な違い
一番大きな違いは、何を改善するかです。
Dreaming は、エージェントが過去から何を覚えておくべきかを改善します。
AgentCore Optimization は、エージェントをどう動かすべきかを改善します。
言い換えると、
- Dreaming:remember better
- AgentCore Optimization:perform better through config experiments
という感じです。
使い分け
実務では、以下のように使い分けると良さそうです。
| やりたいこと | 向いている機能 |
|---|---|
| 長期プロジェクトの知見をエージェントに蓄積したい | Dreaming |
| チームごとの好みや作業パターンを整理したい | Dreaming |
| memory store の重複や古い情報を整理したい | Dreaming |
| system prompt を改善したい | AgentCore Optimization |
| tool description を改善したい | AgentCore Optimization |
| 本番トラフィックで改善効果を検証したい | AgentCore Optimization |
| A/Bテストで勝ちパターンを決めたい | AgentCore Optimization |
注意点
Dreaming の注意点
Dreaming はかなり面白い機能ですが、万能ではありません。
特に注意したいのは以下です。
- research preview 段階
- モデルの重みを再学習するわけではない
- memory store を整理する機能
- 出力された memory store は確認してから使うのが安全
- 長いセッションを大量に入れるとコストも増える
「AIが勝手に賢くなる」というより、
エージェントの記憶を綺麗にして、次の仕事に活かしやすくする機能と理解した方がよいです。
AgentCore Optimization の注意点
AgentCore Optimization も、改善案をそのまま信じるのは危険です。
- public preview 段階
- recommendation はLLM生成なのでレビューが必要
- A/Bテスト前提で検証した方がよい
- AWS CloudTrail 対応など、preview特有の制約に注意
- AWS AgentCore の運用設計が必要
こちらも「完全自動で最高のエージェントになる」というより、
改善案の生成から検証までを回しやすくするための仕組みです。
まとめ
Dreaming と AgentCore Optimization は、どちらもAIエージェントを改善する機能です。
ただし、改善対象がかなり違います。
- Dreaming は、エージェントの memory store を整理し、過去の知見を次に活かすための機能
- AgentCore Optimization は、agent traces と evaluator を使って、prompt や tool description などの設定を改善・検証する機能
個人的には、以下のように覚えると分かりやすいと思います。
Dreaming は「記憶のメンテナンス」
AgentCore Optimization は「設定改善の実験基盤」
AIエージェントは、今後ますます「一回の回答」ではなく、
長期的に動き、振り返り、改善し続けるシステムになっていくと思います。
その中で Dreaming は、エージェントが過去を活かすための仕組み。
AgentCore Optimization は、運用しながら性能を上げるための仕組み。
同じ「自己改善っぽい」機能でも、実際には役割が違うので、
導入時にはこの違いを押さえておくと良いと思います。
参考
- Anthropic: New in Claude Managed Agents: dreaming, outcomes, and multiagent orchestration
- Claude API Docs: Dreams
- AWS Docs: Improve agent performance with Amazon Bedrock AgentCore Optimization
- AWS Docs: AgentCore Optimization - Recommendations / Configuration Bundles / A/B Testing