M-Prolog ver1.0
2026年8月29日、M-Prolog ver1.0をリリースしました。
まだまだ納得のいっていないところも多いのですが、まずは一区切りを付けたいと思い、ver1.0としてリリースすることにしました。
ここでは、ver1.0で得られた成果、反省点、積み残していること、そして今後の構想についてお話ししたいと思います。
成果
ver1.0では、SCBM(Success Continuation and Backtracking Model)の基本形を作ることができました。
9-QueensやQsortなどが動作するようになり、実行速度についても、まずまず納得できるところまで到達しました。
PrologコードをC言語へ直接変換するという目標に向けて、ようやく第一歩を踏み出すことができたと思っています。
積み残し
ver1.0をリリースする直前になって、設計上の不備が顕在化しました。
改良を試みたのですが、ver1.0のリリースまでに十分な検証を終えるには時間が足りませんでした。この部分については、ver1.1に向けてじっくり改良を重ねていく予定です。
現在認識している主な課題は次のとおりです。
バックトラックのタイミング
これまでは、P,Qという連言があった場合、Pにおいて後戻りするためのラベルを用意しておき、Pの失敗継続をQの直前で生成する方式を採用していました。
しかし、この方法ではコード生成をエレガントにまとめることができません。さまざまな例外処理が必要となり、仕組みそのものも複雑になってしまいました。
そこで、
P,Q
であれば、Pは自身のための失敗継続を生成してからPを実行し、Qも同様に自身の失敗継続を生成してから実行する、という方式の方が自然であると考えるようになりました。
この方式であれば生成コードが単純になり、多くの例外処理も不要になります。
問題の顕在化
ところが、この方式へ変更すると、これまで隠れていた謎のバグが顕在化しました。
深く複雑なバックトラックを行った直後、変数ポインタの値が崩れ、正しく計算できなくなるのです。
SCBMでは、成功継続に次の処理先を積んでおくとともに、変数ポインタについても成功継続を利用して、本体部ごとにユニークに保持する仕組みとしていました。
しかし、この仕組みが複雑なバックトラックにおいて崩れてしまうことがわかりました。
解決策
そこで、成功継続に頼らず、変数ポインタを独自に保持する仕組みを考えました。
Prologには通常の手続き型言語におけるreturnという概念がありません。そのため、再帰に入る際には変数ポインタを上書きしていってもかまいません。
必要なのはバックトラックへの備えです。
バックトラックに必要となる変数ポインタを失敗継続とともに保存しておき、失敗した場合にはそこから復元します。
一方、成功継続の場合には、変数から変数への束縛の連鎖を利用して計算を継続できます。
したがって、成功時にはそのまま前へ進み、失敗時にだけ必要な状態を復元するという、よりシンプルな方法が可能だと考えています。
4か月を振り返って
SCBMの構想を思いついてから、かれこれ4か月になります。
この間、かなりの時間を費やし、没頭して考えてきました。
時には、
「この方法は、そもそも無理があるのではないか」
と疑心暗鬼になったこともありました。
しかし、典型的なPrologプログラムであるQueens問題を実用的な速度で動かせることがわかり、大きな自信になりました。
ver1.0開発の終盤には、思いもよらなかった不具合にも見舞われました。その原因と解決方法についてAIを相手に何度も議論し、試行錯誤を重ねました。
そして、ようやくSCBMの最終的な姿が見えてきたように感じています。
ver1.0は完成ではありません。
むしろ、SCBMというアイデアが実際に動作することを確認できた、最初のマイルストーンです。
今後はM-PrologとSCBMの精度を少しずつ高めながら、継続的にバージョンアップしていく予定です。