Azure Functionsとは？
Azure Functionsは、Microsoft Azureが提供するサーバーレスコンピューティングの実装の一つです。イベント駆動型のアーキテクチャを採用しており、リクエストが発生した際にのみコードが実行されるため、コストを最適化しながらスケーラブルなアプリケーションを開発できます。
公式ドキュメント
Azure Functionsの基本概念
Azure Functionsは以下の基本的な概念で構成されています。
1. トリガー (Triggers)
関数を実行するためのイベントを定義します。以下のようなトリガーが利用可能です。
- HTTP Trigger: HTTPリクエストを受けて関数を実行
- Timer Trigger: 指定したスケジュールで関数を実行
- Blob Trigger: Azure Storage Blobにファイルが追加・変更されると関数を実行
- Queue Trigger: Azure Queue Storageにメッセージが追加されると関数を実行
- Event Hub Trigger: Event Hubにイベントが送信されると関数を実行
- Cosmos DB Trigger: Cosmos DBの変更を検知して関数を実行
2. バインディング (Bindings)
Azure Functionsは、外部リソースとの連携を簡単にするためにバインディングという仕組みを提供しています。
- 入力バインディング: 外部リソースからデータを取得する
- 出力バインディング: 外部リソースにデータを書き込む
例えば、Cosmos DBに保存されたデータを取得し、それをQueue Storageに書き込むといったことが容易に実装可能です。
3. 実行環境
Azure Functionsは、以下の2つの実行モデルを提供します。
-
In-Process モード (レガシー)
- Azure Functionsホストプロセスと同じプロセスで実行。
- 低レイテンシーな処理が可能。
- .NET 5以前のアプリケーション向け。
-
Isolated Worker モード (推奨)
- .NET 6以降の最新環境。
- Functionsのランタイムとは別のプロセスで実行。
- より高い柔軟性と安定性を提供。
Azure Functionsの活用事例
Azure Functionsは以下のようなシナリオで活用できます。
1. 電子レシートの処理 (ReceiptRollerでの利用)
レシートローラー では、電子レシートデータの受取処理にAzure Functionsを使用しています。サーバーレスの特性を活かし、大量のレシートデータをリアルタイムで処理可能です。
2. 問い合わせデータの分析 (ActionBridgeでの利用)
アクションブリッジでは、問い合わせデータの処理や分析基盤としてAzure Functionsを利用。データを自動的に分類し、分析のためのパイプラインを構築することができます。
3. IoTデバイスのデータ収集
IoTデバイスから送られてくるセンサーデータをEvent Hub経由で受信し、Azure Functionsで処理。
4. 定期タスクの実行
Azure FunctionsのTimer Triggerを活用し、バッチ処理やスケジュールタスクを自動化。
5. Eコマースの注文処理
注文データをQueue Triggerで処理し、決済・在庫管理・通知システムと統合。
6. 画像・動画の自動変換
Blob Storageにアップロードされた画像・動画をトリガーとして、Azure Functionsで自動変換処理を実施。
7. APIバックエンドの構築
軽量なAPIバックエンドとしてHTTP Triggerを利用し、サーバーレスでAPIエンドポイントを構築。
サンプルコード
1. HTTP Triggerの例
using System.Net;
using Microsoft.Azure.Functions.Worker;
using Microsoft.Azure.Functions.Worker.Http;
using Microsoft.Extensions.Logging;
public static class HttpFunction
{
[Function("HttpExample")]
public static async Task<HttpResponseData> Run(
[HttpTrigger(AuthorizationLevel.Function, "get", "post")] HttpRequestData req,
FunctionContext executionContext)
{
var logger = executionContext.GetLogger("HttpExample");
logger.LogInformation("HTTP trigger function processed a request.");
var response = req.CreateResponse(HttpStatusCode.OK);
await response.WriteStringAsync("Hello, Azure Functions!");
return response;
}
}
2. Timer Triggerの例 (毎日1回実行)
using Microsoft.Azure.Functions.Worker;
using Microsoft.Extensions.Logging;
public static class TimerFunction
{
[Function("TimerExample")]
public static void Run(
[TimerTrigger("0 0 0 * * *")] TimerInfo myTimer,
FunctionContext executionContext)
{
var logger = executionContext.GetLogger("TimerExample");
logger.LogInformation("Timer trigger function executed at: {0}", DateTime.UtcNow);
}
}
3. Queue Triggerの例 (メッセージを処理)
using Microsoft.Azure.Functions.Worker;
using Microsoft.Extensions.Logging;
public static class QueueFunction
{
[Function("QueueExample")]
public static void Run(
[QueueTrigger("myqueue-items", Connection = "AzureWebJobsStorage")] string myQueueItem,
FunctionContext executionContext)
{
var logger = executionContext.GetLogger("QueueExample");
logger.LogInformation("Queue trigger function processed: {0}", myQueueItem);
}
}
最後に
Azure Functionsは、イベントドリブンなアーキテクチャを採用し、サーバーレスでコスト効率良くスケーラブルなアプリケーションを構築するための優れたソリューションです。特に以下のようなシナリオで活用できます。
- 短時間のバッチ処理 （長時間の場合は Azure Durable Functions)
- APIのバックエンド
- IoTデータ処理
- 非同期ワークフロー (Durable Functionsとの組み合わせ)
- 画像・動画の自動変換
- 定期タスクの実行
ウェブサービス構築時にはほぼ毎度利用しています。