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LangChain、Pinecone、AutoGPT。2023年に触ってたLLMツールが今どうなってるか調べてみた

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はじめに

2023年、LLM黎明期。LangChainのチュートリアルを追いかけ、ベクトルDBを比較し、AutoGPTのデモ動画に興奮していたあの頃によく見たサービス達が、3年経った今どうなっているのかを一通り調べました。

先に全体の結果です。

  • 生き残り方は「勝ち組」「ピボット組」「消えた組」の3パターンにきれいに分かれた
  • 消えた組の死因が、軒並み「コーディングエージェントの台頭」だった
  • ベクトルDB戦争の勝者は、専用ベクトルDBではなく既存DBだった

自分は2023年当時、インターン先でRAGを触っていて、この記事に出てくるツールの多くを実際に使っていました。同じ時期に触っていた人に読んでもらえたら嬉しいです。

勝ち組:n8n と Perplexity

n8n:Zapier代替のOSSが評価額$2.5Bになっていた

n8nは2019年生まれで、当時は「ZapierのセルフホストOSS代替」でした。LLMとは何の関係もないツールだったのに、2024年にLangChainベースのAIノードを積んでからAIワークフロー基盤として急成長し、2025年10月にはSeries Cで評価額$2.5Bn8n公式)。1年前の評価額が約$350Mだったので、1年で7倍です。

黎明期に「LLMアプリのためのツール」として生まれた各社を、LLM以前からあった汎用ツールが追い抜いていった構図で、個人的にはこれが一番印象に残りました。

Perplexity:評価額$23Bになっていた

2022年12月公開。当時は「ChatGPTに検索を足しただけでは」という空気があったのを覚えています。それが2026年1月には評価額$23B、ARR $450M超Series E-6)。2023年4月時点の評価額$121Mから、およそ190倍になりました。

ただし無傷ではなく、News Corp・NYT・CNNなどから著作権侵害で相次いで提訴されています(TechCrunchVariety)。勝ったなりの代償も一番大きい組です。

ピボット組:LangChain・LlamaIndex・AutoGPT・Galileo AI

LangChain:LangGraphとLangSmithでユニコーンになっていた

2023年後半の「LangChainは要らない」論、覚えている人も多いと思います。「抽象化の上に抽象化を重ねすぎ」「OpenAI SDKなら10行で済む」という批判はHacker Newsの名物スレッドになるほどでした。

その後の動きが見事で、2024年1月に批判への回答としてループ・分岐・人間へのハンドオフを扱えるLangGraphを出し、可観測性プラットフォームのLangSmithを商用の柱に育てて、2025年10月に評価額$1.25Bでユニコーン化公式ブログ)。今は自分たちを「エージェントエンジニアリングプラットフォーム」と呼んでいて、もう「LLMアプリのフレームワーク」とは名乗っていません。

LlamaIndex:OCRの会社になっていた

RAG全盛期の主役の一角でしたが、現在のGitHubリポジトリの説明文は "the leading document agent and OCR platform" になっています。主力は商用のLlamaCloudと、Agentic OCRを謳うLlamaParse。「RAGの会社」から「ドキュメント処理の会社」への転身です(Series A発表)。

RAGという言葉が当たり前になりすぎて商売にならなくなり、いちばん泥臭くて価値の残る「文書の読み取り」に絞った、と読めます。

AutoGPT:ローコードのワークフローツールになっていた

2023年3月末公開、数週間でGitHub 10万スターという史上最速級のバズでした。自分もあのデモに興奮していた側です。

その後「完全自律」路線は放棄し、現在は「人間がワークフローを設計して、AIがその中で実行する」ローコードプラットフォームとして存続しています(開発元は$12M調達との情報あり)。

Galileo AI:Googleに買収されてStitchになっていた

テキストからUIを生成する先駆けだったGalileo AIは、2025年5月にGoogleに買収され、Google I/O 2025でStitchとしてローンチされました(創業者本人の発表)。自分は最近Stitchでアプリの画面を作っているのですが、調べるまで中身がGalileo AIだったとは知りませんでした。

消えた組:Flowise・ChatGPTプラグイン・BabyAGI

Flowise:Workday買収の1年後にサービス終了していた

個人的に今回の調査で一番驚いたのがこれです。LangChainをドラッグ&ドロップで組める「週末AIエージェント」の定番だったFlowiseは、2025年8月にWorkdayに買収されました。

ところがその1年後の2026年7月末、サービス終了が発表されました(EOLは2026年8月31日)。公式が挙げた理由がこうです。

開発者がコーディングエージェントに移行し、硬直的なローコードのビジュアルビルダーは複雑なタスクの限界に達した

ツールが負けたのではなく、「GUIでLLMをつなぐ」というカテゴリごと消えた、という話です。

ChatGPTプラグインとGPTs:あの収益分配は塩漬けのままだった

2023年3月にプラグインが発表されたとき、外部のサービスをChatGPTに繋げられるようになると盛り上がったのを覚えています。そのプラグインは2024年4月9日に完全廃止され、後継のGPTsに統合されました。

GPTsといえば、2024年1月のGPT Store公開時に予告された「使用量に応じたビルダーへの収益分配」です。みんなが一斉にGPTsを作ったあの約束は、その後拡大もされず、打ち切り宣言もされず、米国限定の招待制のまま塩漬けになっています(コミュニティフォーラムでは今も国外ビルダーが続報を待っています)。GPTs自体は累計300万個作られて、公開アクティブは約15.9万。プラットフォームの約束を当てにして作る側に回ることの怖さが詰まった事例だと思います。

BabyAGI:本家リポジトリはアーカイブされていた

約140行のPythonスクリプトで自律エージェントブームのもう一方の震源地になったBabyAGIは、本家リポジトリが2024年9月にアーカイブ化されました。作者のYohei Nakajima氏は個人の実験として後継を作り続けていますが、本家の開発はそこで止まっています。

ベクトルDB戦争:自分が使っていた6つはどうなったか

自分は2023年に、Faiss・Milvus・Qdrant・Chroma・Pinecone・Elasticsearchの6つを実際に触りました。当時の主要な選択肢はほぼ全部触っていたことになります。

DB 2023年の姿 2026年の現在地
Faiss Metaのライブラリ。事実上の基盤 変わらず現役。他DBの内部エンジンでもある
Elasticsearch ベクトル対応は後発 ハイブリッド検索が本番標準になり存在感維持
Milvus OSS専用DBの最大手 生存。ただし2022年以降の新規調達は確認できず
Qdrant シード$9.8M 2026年3月にSeries B $50M。専用DB組では堅調
Chroma チュートリアルの定番 2023年シード$18M以降、大型調達の続報が見当たらない
Pinecone Series B $100M・評価額$750Mの旗手 2025年にCEO交代(公式)、売却検討の報道

そして番外のオチがこれです。2023年当時は傍流扱いだったpgvectorを抱えるSupabaseが、2026年6月に評価額$10.5BCNBC)。専用ベクトルDB各社の評価額を全部足しても届きません。実務でも「5,000万ベクトル未満ならpgvectorで十分」という整理が広がりました。

6つ使って、無事だったのは戦争が始まる前からいた古参2つ(FaissとElasticsearch)。勝者は専用ベクトルDBではなく、既存DBでした。

さらに言うと、2026年にはコード検索の分野でベクトル検索をやめてgrepベースに回帰する動きまで出ています。「LLMアプリにはベクトルDBが必須」という2023年の常識自体が、もう崩れつつあります。

淡々と生きている組も一応

  • Dify: 日本で流行った2024年を経て、2026年3月に$30M調達(評価額$180M)。堅実に生存していますが、n8nと比べると規模の差は大きく開きました
  • Amazon Bedrock: 「とりあえずBedrock経由でClaude」だった2023年から、3大クラウドAI基盤の一角として定着。AmazonのAnthropicへの出資は累計最大$33Bまで積み上がっています(CNBC

生き残ったやつの共通点

全部並べて見えてきたのは、生死を分けたのが技術力でも先行者利益でもなく、コーディングエージェントの登場をどちら側で迎えたかだということです。

  • Flowiseの死因は、公式声明の通りコーディングエージェント
  • ベクトルDB凋落の裏で伸びたSupabaseの成長要因は、AIツール経由のDB作成(最大の貢献者はClaude Codeと報じられています)
  • LangChainは「人間がLLMを組む道具」から「エージェントを運用する基盤」に軸足を移して生き残った

2023年のツール達の多くは「人間がLLMを扱いやすくするための道具」でした。その仕事自体をAIがやるようになった結果、道具のレイヤーが丸ごと不要になった。消えたサービスは失敗したのではなく、AIの進化そのものに追い越されたのだと思います。

自分が当時、必死にチュートリアルを追いかけていたツール達の大半が3年でこうなったわけで、今追いかけているツール達も3年後にはどうなっているかわかりません。そのときまた「その後」を書きます。

まとめ

  • 勝ち組: n8n($2.5B)、Perplexity($23B・ただし訴訟まみれ)
  • ピボット組: LangChain(ユニコーン化)、LlamaIndex(OCR企業へ)、AutoGPT(ローコード化)、Galileo AI(Stitchに転生)
  • 消えた組: Flowise(2026年8月末EOL)、ChatGPTプラグイン(2024年4月廃止)、BabyAGI(本家アーカイブ)、GPTs収益分配(塩漬け)
  • ベクトルDB戦争の勝者は既存DB。Supabase/pgvectorが$10.5Bで専用DB勢を置き去りに
  • 消えた組の死因は共通して「コーディングエージェントの台頭」

参考

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