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「本当に脆弱なのはなんなのか」 ~私たちが踏みしめている『巨人の肩』への向き合い方~

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こんにちは、大学院でFPGAを用いた研究やセキュリティについて学んでいるsuisanです。 これは 脆弱エンジニア Advent Calendar 2025 の24日目の記事です。
今回は少し視点を変えて、私たちが向き合っている「技術の土台」について書いてみました。

私たちは「穴」ばかり探していないか?

日々報道される脆弱性、供給網攻撃(サプライチェーン攻撃)、レガシーシステムの不具合など、私たちの周りは「穴」だらけに見えるかもしれない。 ニュースを見るたび、私たちは思う。「また対応に追われるのか」「このスパゲッティコードを維持するのは誰だ」と。

しかし、批判的な目で見る前に、一度冷静に事実を見てみたい。 数百万行に及ぶコード、複雑に絡み合う依存関係、数十年前に書かれたプロトコル。それらが奇跡的なバランスで噛み合い、毎秒膨大なリクエストを処理している現実。 そこにあるのは、単なる「古い技術の寄せ集め」ではなく、 先人たちの知恵が積み重なった巨大なシステム だ。これを「技術的負債」と一言で切り捨てるのは容易だが、その背景にある運用コストや歴史的経緯への想像力を欠いてはいないだろうか。

なぜ私たちは「新しい技術」を習得できるのか?

私たちが今、当たり前のようにモダンな言語を学び、新しいアーキテクチャに挑戦できるのは、先人たちが築き上げた「既存技術」が、確固たる土台として私たちを支えてくれているからだ。

OSがハードウェアの違いを吸収し、TCP/IPスタックが通信の複雑さを隠蔽してくれるおかげで、私たちは低レイヤーの複雑さを「抽象化」という武器を使って管理できている。 この「やらなくていいこと」が増えた恩恵により、浮いたリソースを「新しい技術の習得」や「本質的な課題解決」に全振りできるのだ。 つまり、私たちが享受しているのは、先人たちが技術による抽象化で捻出してくれた「未来を創るための時間」そのものである。

本当に脆弱なのは「検証なき盲信」

しかし、「抽象化を採用すること」と「検証を放棄すること」は別問題だ。 「便利なブラックボックス」として中身を理解しないまま使い続けることは、システムに対する 「検証責任の放棄」 につながる。

ここで言う「本当に脆弱なのはなんなのか」という問いに対し、一つの仮説を提示したい。 それはCVE番号がつくような個別のバグそのものではない。それらのバグを生み出し、発見を遅らせ、被害を拡大させる組織的・心理的な土壌、すなわち 「動いているから中身は知らなくていい」という姿勢(文化) だ。

もちろん、リソースの制約ですべてを追えない事情はあるだろう。だが、依存関係の棚卸しをおろそかにし、エラーの根本原因を追わずに再起動で済ますといった 「説明責任や可観測性を後回しにする意思決定」 の積み重ねは、平時には開発速度というメリットに見えても、有事には「何が起きているかわからない」という致命的なリスクに変わる。 自分たちが何の上に立っているかを知らないことこそが、攻撃者にとっての格好の足場となり、被害を拡大させる決定的な要因になり得るのだ。

感謝を「ハック」の原動力に変える

だからこそ、私たちは既存技術に対してもっと貪欲であるべきだ。 「感謝する」とは、単に崇めることではない。その技術が「どう動いているか(How)」、「なぜその実装なのか(Why)」を理解し、ブラックボックスを 自らの手でホワイトボックス化していくプロセスそのもの だ(少なくとも、自分たちが責任を負う範囲から)。

ソースコードを読むことは、過去の技術者たちとの「対話」である。 そこにある制約や意図を理解することで初めて、私たちは適切なパッチを当て、安全な構成を組み、真に堅牢なシステムを構築できる。

この「理解」は一度きりの美徳ではない。変更と運用を重ねても安全性を維持し続けるための、技術者としての 「継続可能な能力」 だ。

脆弱性を嘆くだけでは何も変わらない。 その技術があったからこそ今の私たちがいることを認めよう。そして、受け取ったバトン(技術)の中身を深く理解した上で、自分なりの改良を加えて、次世代へより良い形で渡していこう。 それこそが、既存技術への最大の恩返しであり、私たちが技術者として果たすべき責任なのだから。

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。
「本当に脆弱なのは人間だよね」という話はよくありますが、今回はそこから一歩進んで、エンジニアとしてどう向き合うべきか自戒を込めて書いてみました。

FPGA、低レイヤー、セキュリティ周りの話が好きなので、X(Twitter)などでも気軽に絡んでいただけると嬉しいです。

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