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はじめに
ローカルで動くコーディングCLIには、ひとつ越えられない壁があります。ノートPCを閉じたら、作業も止まることです。
重いリファクタリングや大量のテスト書き換えを夜中に回したいとき、私はいつも悩んでいました。手元のマシンを起動したまま寝るのは気が引けるし、かといって途中で止めたくもない。Claude Code をはじめ、ローカルCLIはどれも「自分のマシンが動いている間だけ」働きます。
Devin for Terminal の /handoff は、ここにひとつの答えを出してきました。手元で着手したセッションを、クラウド側の Devin にそのまま引き継いで、PCを閉じても続けてもらう。前回・前々回はローカルでの使い方(機能比較・非対話モード)を書いてきましたが、今回は Devin for Terminal 最大の差別化点である「ローカル→クラウドの往復」を掘り下げます。
この記事のコマンドは
devin 2026.5.x系で確認しています。挙動はバージョンやタスク内容で変わることがあるため、手元ではdevin --helpや公式ドキュメントを合わせて確認してください。
/handoff は何をしているのか
公式ドキュメントによると、/handoff を実行すると Devin CLI は会話のコンテキストと現在のgitブランチをまとめ、続きを引き継ぐクラウドDevinセッションを作成します。さらに変更履歴では、/handoff はローカルのgit diff(未コミットの変更)も添付するよう改善されており、手元で書きかけのコードまでクラウド側が把握できます。
ポイントは、引き継がれるのが「指示文」だけではないことです。それまでの会話の流れ・ブランチ・未コミットの差分ごと渡るので、クラウド側は「ゼロから説明し直す」必要がありません。私が最初に試したとき、ローカルで5分ほど壁打ちした内容をそのまま引き継いでくれて、説明コストの低さに驚きました。
ローカルとクラウドの役割分担
なぜ往復させるのか。それぞれ得意分野が違うからです。
| 観点 | ローカル(devin) |
クラウド(/handoff 後) |
|---|---|---|
| 実行場所 | 自分のマシン | Devin側のVM(自前の環境) |
| PCを閉じたら | 止まる | 動き続ける |
| 向いた作業 | 探索・対話・初期実装 | 長時間の実装・テスト・PR化 |
| 手元の負荷 | CPU・ファンが回る | 手元は身軽 |
Cognition公式ブログの表現を借りると、「作業が手元のラップトップを超えたら、自分のコンピュータを持つクラウドエージェントにセッションを渡す。あなたが働いていない間も Devin は働き続け、完成したPRが戻ってくる」。この「手元は着手と判断、重い実行はクラウド」という分担が /handoff の本質です。
使い方:3つの起点
/handoff の使い方はシンプルですが、いくつか起点があります。
引数なしで /handoff を打つと、それまでの会話の続きとしてクラウドが引き継ぎます。タスク説明を添えれば、追加の指示つきで渡せます。また、! でbashモードに入るのと同じ感覚で、空のプロンプトで & を打つと handoff モードに入れるショートカットもあります(! がローカルのシェル、& がクラウドへの送り、と覚えると分かりやすいです)。
引き継いだあとの進捗は、ターミナルからそのまま追えるほか、Devin の Web アプリでも確認できます。私は /handoff した直後にPCを閉じて、翌朝 Web アプリで結果を見る、という使い方に落ち着きました。
クラウド側のリソースを扱う:devin cloud と関連コマンド
/handoff はセッション単位の引き継ぎですが、クラウド側のリソースをまとめて扱うサブコマンドもあります。実機の devin --help で確認できます。
| コマンド | 役割 |
|---|---|
devin cloud |
Devin Cloud のリソース管理(環境セットアップ、サンドボックスセッション、ビルド) |
/cloud-sessions |
クラウドで動いているセッションの管理(スラッシュコマンド) |
/cloud-attach |
クラウドセッションへのアタッチ(スラッシュコマンド) |
/cloud-sessions と /cloud-attach は変更履歴で「リモートのエージェント作業を管理するためのもの」と紹介されています。/handoff で渡したあと、別の端末からでもクラウドセッションの状況を見たり、つなぎ直したりできる、という位置づけです。
正直な注意:クラウドの結果は「タスク次第」
ここは誠実に書いておきます。/handoff してPCを閉じれば、タスクによっては朝までにPR作成まで進んでいることもあります。ただしこれは保証ではなく、内容次第です。前回の記事で触れたとおり、生成AIの出力は確率的なので、「夜に投げて朝そのまま信じる」のではなく、戻ってきたPRをレビューする前提で使うのが安全です。
クラウドに渡すからこそ、テストや型チェックといった機械的に検証できる関門をリポジトリ側に用意しておくと、朝のレビューがぐっと楽になります。「クラウドが提案し、決定論的なCIが採否を決める」——この組み合わせが、往復ワークフローを安心して回すコツです。
おわりに
/handoff は、ローカルCLIの「PCを閉じたら止まる」という制約を、クラウドへの逃し先で解いた機能です。手元で着手と判断をして、重い実行はクラウドに渡し、PCを閉じて寝る。朝にPRをレビューする。この往復は、他のローカルCLIにはない Devin for Terminal ならではの体験でした。
「ローカルCLIはどれも同じ」と思っている人は、一度 /handoff を打ってからMacを閉じてみてください。翌朝の景色が、少し変わるはずです。