この記事は「ノッカリアドカレ 夏 2026 6月」の15日目の記事です。
「指切りげんまん」というサービスで約束したから記事書こうぜ!というのに登録して書きました。
登録したからには書かないといけない!ということで早速書きました。
テーマは 「エンジニアにおすすめの本の紹介」 です。
個人的な話ですが
いきなり個人的な話で恐縮ですが、私は「仕事がプライベートを充実させ、プライベートが仕事を充実させる」——その循環が回っている状態を、ひとつの理想だと思っています。
どちらかが一方的にすり減るのではなく、お互いがお互いを押し上げていく。そんな働き方ができたら幸せやな、と。
別に鬱になってたとか、特別に調子が悪かったわけでわないんですが、ある日強烈に「仕事って、いいものだな」と思い出させてくれる一冊に出会いました。
それがこちら。
辻村深月さんの『ハケンアニメ!』 です。
『ハケンアニメ!』ってどんな本?
ご存じの方もいるかもしれませんが、簡単に紹介させてください。
- 小説です
- 作者は直木賞作家の辻村深月さん
- タイトルの「ハケン」は「派遣」ではなく 「覇権」
- アニメ業界で、その1クールで一番話題をさらった作品を指す言葉として使われています
- そして文庫の表紙イラストを描いているのは、なんとCLAMP
- なんか見たことあるなと思ったら、CLAMPだったとは・・・!
物語は、同じ日・同じ時間帯に“裏番組”としてぶつかり合う、2つのアニメ制作会社の葛藤を描いたお仕事小説です。
あらすじを細かく語るとそれだけで記事が終わってしまうので、ここではあえて深入りしません。ネタバレなしでお届けするので、気になった方はぜひ本編で。ちなみに2022年には実写映画化もされていて、こちらもおすすめです。
なぜこの本が、こんなに刺さったのか
読み終えて最初に感じたのは、「仕事の喜びを思い出した」 という素直な気持ちでした。
作品の中で、アニメーターたちは強烈な『矜持(きょうじ)』を持って仕事に向き合っています。その熱量のどこかに、読んでいる自分も心を動かされる、そんな感覚を覚えました。職種は違えど、「いいものを作りたい」「届けたい」という気持ちは、きっと多くの働く人に通じるものだと思います。
そしてもう一つ印象的だったのが、ライバル関係にある2つの制作会社の描かれ方です。両社はカラーも特性もまったく違う。けれど、根っこにある「作品にかける本気」は同じなんですよね。対立しているのに、根本では同じものを目指している。この構図がとても良かったです。
描かれるのは、アニメーターだけじゃない
この作品の素晴らしいところは、スポットライトがアニメーターだけに当たっていないことです。
- プロデューサー
- 声優
- 二次受け(下請け)のアニメスタジオ
- アニメショップの店員
- アニメを使って町おこしをしようとする役所の職員
——などなど。ひとつの作品(ビジネス)に、こんなにも多種多様な人が関わり、それぞれの持ち場で必死に努力している様が描かれます。
これを読んでいて、ふと思いました。これって、私たちシステムエンジニアの仕事も同じなんじゃないか、と。一つのサービス、一つのプロダクトの裏側には、開発・営業・サポート・バックオフィス・・・立場の違う大勢の人の努力が積み重なっています。職種が違っても、みんなが同じ“いいもの”を目指して動いている。おんなじ地続きの話だと感じたワケです。
印象に残ったセリフ
本編から、特に心に残ったセリフを2つだけ紹介します。
その1 ── アニメと共に生きてきた矜持
物語の中心となるアニメ監督(立場的にはライバルにあたるスタジオの監督)が語るセリフです。
俺は一生自分が童貞だったらどうしようって不安で夜も眠れない中、数々のアニメキャラで青春過ごしてきたんだよ。
だけど、ベルダンディーや草薙素子を知ってる俺の人生を不幸だなんて誰にも呼ばせない。——辻村深月『ハケンアニメ!』より
僕は誰かが努力して生み出した作品は、世界のどこかの誰かの人生を支えることが往々にしてあると思っています。アニメや漫画、小説なんかはその最たる例ですね。ゲームもあるかもしれません。そしてこのセリフはその事実を、これ以上ないくらいまっすぐに言い切ったセリフだなと思いました。
また、これは共感度も高かったです。自分自身も中学・高校の時に漫画を死ぬほど読んでいた時期がありました。あの時の興奮や、頭の中に広がっていく世界は当時の僕を確実に助けていたと思います。
その2 ── 地域おこしの矜持
アニメを使った町おこしをしようとしている市の職員さんがいっていたセリフです。
お祭りもスキー誘致も必死にしますけど、時期が終われば証は何も残らない。
でも、アニメは作品の中に「市」が残ってくれる。形になってくれることがとても嬉しいんです。——辻村深月『ハケンアニメ!』より(町おこしを担う役所職員の言葉)
自分たちの街が、作品の中に「残る」、「形になる」。仕事の成果が後世に残ることへの、静かで熱い誇りを感じます。自分が生きた証というか、些細なことでも良いので、何かが形になって残ることの執念みたいなのは、自分はとても共感できる気がします。
我々システムエンジニアは、三次産業の人間
この本を読んで、改めて考えたことがあります。
正直なところ、ソフトウェアの開発会社というのは、「明日からウチの会社がなくなったとしても、それで世の中を生きていけなくなる人はいないかもしれない」 という事実があると思っています。もちろん困る人は一定数いるでしょうが、命に直結するような仕事ではない。病院とか農家の方とかと比べると生活のインフラになっている感は低いですよね。私たちは、いわばそういう三次産業の人間です。
それでも——自分の仕事の結果が、誰かの生きる支えになっているのなら。 こんなに嬉しいことはない、と思えます。これは仕事もそうだし、個人開発しているOSSなどでも言えるかと思います。
『ハケンアニメ!』に出てくる登場人物たちは、みんなその「誰かの心に届ける」ことを目指している。立場も役割もバラバラなのに、全員が「自分の仕事で誰かの支えになりたい」と願って走っている。
その姿を見て、自分もそういう仕事がしたいと、心から思いました。
おわりに
「仕事のモチベーションが上がらないな」という時はもちろん、別にそうでない時でも、読むと背筋がピーンと伸びる一冊だと思います。本当におすすめなので、エンジニアの方はぜひ読んでみてください。
そして繰り返しになりますが、2022年の実写映画もすごくいいです。本を読んでから観るも良し、映画から入るも良し。どちらからでも、きっと「自分の仕事」のことを考えたくなるはずです。
このポスター↓のメッセージを読むだけでも、胸が熱くなります。
© 2022映画「ハケンアニメ!」製作委員会
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※本文中の引用は辻村深月『ハケンアニメ!』(マガジンハウス文庫)よりしております。
※映画の画像は映画『ハケンアニメ!』(映画ハケンアニメ製作委員会)から引用しています


