RPAの目的は組織全体としてROIを出すことである。つまり、現場作業、人的工数、IT投資を全体で見たときに組織全体で総合的に費用削減となり、余剰人材の再配置等につなげ、組織全体の働き方を次の段階に引き上げることである。
RPAの導入が日本で始まってから4年近く経つが、現場からアメーバ的に組織内導入が広がったケースでは、結果的にソフトウェア費用、管理工数、外注費用がコントロールできなくなりROIが出せてないケースが多いようである。
RPAを本格導入するには、**COE (Center of Excellence)**と呼ばれる、組織内のRPA導入を取り仕切る中心組織を作り、IT管理の専門家やプロジェクトマネージャーを配置して、業務をRPAの対象とするかしないか、どのレベルまでRPAで対応するか等のガイドラインの作成と展開を行う、といった統制が必要となる。
そうすると必要になってくるのがサーバによる統制/管理機能である。よってROIを出すためのRPAの本格導入にはサーバ型が必須となる。
デスクトップ側のロボットは、無料のツールから有償のものまで様々あるが、できることはWindowsが提供されるライブラリにほぼ依存するため、各ツールでロボット単体ができることはほぼ変わらないと言っていい。一方、サーバによる管理機能については、無料ツールはないものが多く、有償のベンダーも提供する機能にはかなりばらつきがある。
ここでは、ひとまず費用の面で、PoCを始めるにあたってどれくらいの費用で開始できるのかについて比べてみることにした。
主要RPAツールベンダーの最小導入費用
以下の表では、RPAツール5強の比較をしてみることにする。サーバ1台、デスクトップ2~3台程度のライセンスがあれば最小限のPoCはまわせるので、各社ともライセンス費用の最小構成でそれを満たすことができる。
WinActor | BizRobo! | UIPath | Automation Anywhere | BluePrism | |
---|---|---|---|---|---|
提供企業 | NTTアドバンステクノロジ社 | RPAテクノロジ社 | UIPath社 | Automation Anywhere社 | BluePrism社 |
RPA種別 | デスクトップ型 | デスクトップ型 | デスクトップ型 | サーバ型 | サーバ型 |
最小導入費用 (デスクトップ型) |
90.8万円~ | 90万円~ (BizRobo! mini) |
52.5万円~ (リセラーに依存) |
- | - |
最小導入費用 (サーバ型) |
318.8万円~ (WinDirector) |
720万円~ (BizRobo! Basic) |
386万円前後~ (UIPath Orchestrator) |
120万円前後~ | 120万円前後~ |
サーバ型最小構成時の 同時接続数 |
100台 | 10台 | 1,000台(unattended)、 10,000台(attended) |
~数千台(1,000台までを推奨) | 不明 |
(注) 金額はいずれも年額のサブスクリプション。実際の販売価格は取扱代理店によって異なる可能性があるので、それぞれの販売代理店に確認願う。
特筆すべきは、デスクトップ型ではお安めに使えるツールは、サーバが入った途端に金額が跳ね上がるケースが多いので、デスクトップ型で安価に始められるからと言って安易に手を出してしまうのは後々のことを考えると考えモノである。
このほかに、実際にPoCをまわすにはサーバ・デスクトップPCの費用や、専門コンサルタント・技術者の外注費用が必要になる。サーバPCは20万円、デスクトップPCは10万円とする。コンサルタントや技術者は、少なくとも最初の導入段階ではRPAプロジェクトを正しくまわすためには短期間でもつけておいたほうがいいだろう。コンサルタントや技術者は外注すると一人100万円/月はくだらないので、初月から200万円くらいはかかることになる。
導入規模が上がる・期間が長くなると一番響いてくるのは外注費用
サーバ型RPAプロジェクトのPoCで3カ月で一区切りの結果を出そうとした場合のプロジェクト費用は、どのツールを選択するかにもよるが、外注費用を300万円くらいと見積もると450万円~1,100万円くらいの費用がかかることになる。PoCの規模を上げていき、導入期間が長くなってくると、一番響いてくるのは人月費用、つまり外注費用となる。これは内製でどれだけの技術者をそろえられるか、また、選択したRPAツールがどういうレベルのユーザーを対象としているのか(Excelマクロがわかる程度のノンプログラマーなのか、Visual Studio等の開発ツールが理解できるプログラマーなのか等)にも依存してくる。
少なくとも、COEを構築して継続してRPAプロジェクトを進めていく場合に、外注費用を小さく抑えてもプロジェクトがまわるような体制をどれだけ早く作れるかどうかに、RPAプロジェクト全体の費用感は大きく影響するといえる。
これらのことを踏まえ、COEを構築する際の社内人材の確保、RPAの開発ツール・実行ツールを扱わせる従業員のレベルと範囲の定義と、サーバ機能による統制・管理・野良ボットを使わせない仕組みづくりが、RPAプロジェクト全体としてROIを出せるかどうかにかかっている。RPAツールもこれらを踏まえた選定が必要となってくるだろう。