はじめに
リードサイエンティストの役割や仕事の進め方について模索しており、自身の理解を深めるためいくつかの書籍を読んでいたら、読書感想文を書きたくなったので、読書感想文を書きます。さあ、読書感想文を書くぞ。ラブリーでポエミーな読書感想文を。
対象読者
以下に該当する方は参考になる部分があるかもしれません。
- 駆け出しのリードデータサイエンティスト
- 「リードとして、まず守破離の守、型がほしいぜ…」と悩める仔羊
- 「タスクが振られたら作業者としてある程度自律して作業できるようになってきたぞ、リードに挑戦してみようかな…」と思っているデータイエンティスト
具体的な経験や保有資格で言うと以下のような方かも。ただこれに満たないジュニアの方でも、視座を高める点では有用かも。
- 経験
- データサイエンスプロジェクトの作業者として、1~2年程度
- 保有資格
- 統計検定準1級
- Kaggle Expert
- IPA 応用情報技術者
背景
「データサイエンスプロジェクト進行の型」といった、リードが行うべきややプロマネチックな領域について体系的な知識が欲しかったので、書籍をメインに調査をしていました。
ただ世の中には「データサイエンス」に関する書籍や記事は多く存在しますが、どちらかというと統計や機械学習、可視化などの手法解説が中心のものが多いようです (データサイエンティストならデータで示せ!という声が聞こえてきそうですがタグを見てください、ポエムです)。
データサイエンスプロジェクトのリードノウハウを学べるオススメ書籍リストが、私が調べた範囲だと見当たらなかったので、今回読んだ書籍と感想を簡単にまとめておこうかな〜と思った次第です。同じような悩みを持つ方の参考になれば幸いです。
本記事の要約です。
-
リードデータサイエンティストはプロジェクトで扱う技術・領域のプロフェッショナルでなければならない
-
すべての状況に対応可能なデータサイエンティストの仕事の型、そんなものはない
-
とはいえ一般的なデータサイエンスプロジェクトの進め方は、以下書籍を読めばだいたい雰囲気が掴めるはず
そもそも、リードデータサイエンティストって?
まずは自身の期待役割を理解しましょう、という話からです。
データサイエンス vs. エンジニアリング
データサイエンスプロジェクトをリードするのがリードデータサイエンティストですが、そもそもデータサイエンスとはなんでしょうか。
人は比較でしか物事を理解できない生き物なので、こちらの書籍の「はじめに」から引用します。
ソフトウェアエンジニアリング vs. データサイエンス
この段階でデータサイエンスとソフトウェアエンジニアリングの「考え方の違い」をはっきりさせておくことが有用だろう。データサイエンティストは、探索、発見、仮説検証といった科学的プロセスを重視するバックグランドを持っている。プロジェクトの最終結果は、開始時にわかっているものではない。一方、一般的なソフトウェアエンジニアリングは、何を構築するか計画し、最も適切な構築方法をデザインし、その後計画したものを構築するためのコードを書くプロセスだ。プロジェクトに期待される結果は、プロジェクトの開始時点ですでにわかっているのが基本だ。
※ 上記は、データサイエンス vs. データエンジニアリングでも成り立つ表現であると思っています。
このあたりは人や書籍によって定義がばらつきそうですが、上記を参考にした場合は、"プロジェクト開始時に不確実性を伴う"ことがデータサイエンスプロジェクトの特徴と言えそうです。また科学的であることも重要となってきます。科学的であるとは?まで書き始めると終わらないので各自調べてください…
テックリード vs. プロジェクトマネージャー
では、前述のデータサイエンスプロジェクトをリードする役割である、リードサイエンティスト (テックリード) は何を期待されているのでしょうか。次はこちらの書籍から引用します。
では、テックリードの役割とは何でしょうか?テックリードは、技術とプロジェクトにおけるリーダーシップとマネジメントに注力する存在です。これは、人とチームのマネジメントに重点を置くマネージャーの役割とは対象的なものになっています。
あなたがテックリードを務めるチームは、技術的な選択、プロジェクト実行のトレードオフ、ビジネスに関する知識や文脈を把握する際にあなたを頼りにしています。また、チームが複雑で曖昧な状況もを切り抜け、使える工数で期限内に解決策を提供できるような支援も託されています。
第2~3章では、テックリードの能力と美徳に焦点を当てており、技術力、実行力、専門知識、倫理、厳格さ、姿勢の6次元を扱うTEE-ERA扇の一部を紹介します。
プロジェクトをリードする能力
- パターン発見のベストプラクティスと成功への期待値を調整する
- 曖昧な要件からプロジェクトを見出して優先順位を付け、計画する
- 複雑な技術的トレードオフのバランスを取る
- ビジネス文脈を明確にし、データの特性を考慮する
- 組織の構造的な課題を克服する
プロジェクトをリードする美徳
- データサイエンスの専門家としての行動基準に従って、顧客の最善の利益のために行動する
- ビジネスの優先順位を踏まえて、自信を持って知識を伝える
- 科学的厳密性の基本を実践する
- 異常を監視し、企業価値の想像に責任を持つ
- 粘り強さと前向きな姿勢、好奇心、協調性を持ち続ける
求められること多くね…?と日和りますが、技術およびプロジェクトをリードしてマネジメントすることが求められます。
また以下書籍からも引用してみます。
プロジェクトマネージャー(PM):ビジネス課題を適切に分析課題に翻訳し、チームの方向性と進捗の管理をマネージする人
分析官(データサイエンティスト):統計や機械学習など分析業務に明るい人
プロジェクトマネージャー(PM)はプロジェクトチームをリードする存在です。分析業務に置いては、ビジネス課題を適切に分析課題に翻訳する役割を担い、アプローチの決定に責任を持ちます。また、プロジェクトが開始された後は、その進捗を管理します。 … この役割は他に役割を持つメンバーが兼任している場合もあります。
このようにすでに定義がばらついていますが、本記事では「特定の技術に明るく、プロジェクトをリード・マネジメントする」役割と定義します。
※ やべえ、ナンニデモPMだ…
※ マネジメントとは「管理」と訳されることが多いですが、「なんとかすること」「やり遂げること」の意味とどこかで読みました。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトをなんとかするマンと理解しています。
このように各人で定義・求める役割について若干定義が異なるので、実プロジェクトでは定義・役割についてすり合わせができるとよいのでは、と思います。
読書リストと感想文
以上、リードデータサイエンティスト (テックリード) の定義・役割について整理をしました。ここからはそんなリードデータサイエンティストのお仕事論に関する書籍と感想文をメモしていきます。
失敗しない データ分析・AIのビジネス導入
こちらの書籍が個人的に学びが多かった、プロジェクト立ち上げ〜PoC〜ビジネス適用まで一連の流れが解説されている。暗記したい。プロマネ面の指針になる気がしている。技術面はまた別。
本書であげたすべての失敗ポイントに対策を施せば、データ分析プロジェクトは必ず成功するのかと言えば、残念ながらそうではありません。
…現実は厳しい。
データ×AI人材キャリア大全
データxAIプロジェクトの流れ、および代表的なプロジェクトパターンごとの各職種における役割分担や成果物が整理されている。未経験〜駆け出しだけでなくリードも参考になる部分が多い。キャリア形成にも言及されており参考になった。
データサイエンスリーダーのキャリアガイド
主にテックリードの役割と求められる能力について勉強になった、テックリード以降のキャリアパスでも参考になる内容が多いので、長く付き合っていきたい書籍となりそう、多分。
IoTプロジェクトで学ぶ 実践PoC
IoTに限らず、PoCを実施する際には非常に参考になる書籍と感じた。
AI・データ分析プロジェクトのすべて
全体を俯瞰できる点がよかった。
学生・ジュニア・ミドルと、レベルに応じて読めるのもこの書籍の良い点かと思う。
データサイエンティスト養成読本 ビジネス活用編
先輩データサイエンティストのおすすめ(1/3)。データサイエンティストはビジネス貢献・マネタイズしてなんぼ、というある種当たり前なことを再認識した。「3-1 機械学習プロジェクトのライフサイクル」「7-3 データ駆動でビジネスを改善するための科学的アプローチ」が参考になった。
仕事で始める機械学習
先輩データサイエンティストのおすすめ(2/3)。よかった。こちらもビジネスにどのように機械学習を応用していくか、主に機械学習エンジニア向けな印象ですが、「1章 機械学習プロジェクトのはじめ方」は読んでおいて損はない。
データ解析の実務プロセス入門
先輩データサイエンティストのおすすめ(3/3)。データ解析の入門者・未経験者向けであるが、「第2章 データ解析のプロセス」を参考になる。GIGO、良きデータについても言及がある。
先駆者に学ぶAIプロダクトマネジメント
PdMですが参考になる部分あり。
スッキリ!がってん! データサイエンスの本
データサイエンスについて平易に書かれており、理解しやすい。以下のやり取りが好き。
「データサイエンスと他のサイエンスって、結局何が違うんですか?」
「そもそも私に言わせれば、現代の科学は全てある意味データサイエンスの一部ですし、この先、データサイエンスの手法を用いないようなものは科学と呼ぶべきではありません。」
「強気ですね。」
データサイエンティストの秘密ノート
データ分析プロジェクトの詳細事例が「準備」「分析」「報告」の各フェーズごとに列挙されており勉強になった。経験が浅い人は実事例を追体験できるので良さそう。
データ分析失敗事例集
こちらも詳細事例が列挙されており勉強になった。経験が浅い人は実事例を追体験できるので良さそう。コラム「絶対に失敗しないデータ分析」も感銘を受けた。
データサイエンティストってどんな職業?: 企業のデータ活用事例で学ぶ仕事のリアル
PDCAの亜種のPPDACというフレームワークを初めて知った。就業前の方向けと思われるが、現職の方も勉強になる部分はあると思う、ほか業界のお仕事紹介的なところなど。
データサイエンス
第2章でCRISP-DMの紹介と各段階とタスクについて解説されており良かったが、内容が少し古いかも…第7章も勉強になった。
エンジニアのためのファシリテーションハンドブック
「IoTプロジェクトで学ぶ 実践PoC」と同じ著者の方。ファシリテーションも大事。
外資系コンサルの仕事の進め方
データサイエンスプロジェクトとは書いてないが、非常に勉強になる内容が多かった。
AI時代のプロジェクトマネジメント
PMI-CPMAI (PMI Certified Professional in Managing AI) について知る。
AI実装にあたって、反復的に実行するフェーズがありこれらを実行する(6つのフェーズ):
「ビジネスの理解」「データの理解」「データの準備」「モデルの開発」「モデルの評価」「モデルの運用」
CRISP-DMも反映されていそう。
データサイエンティストが実務を通して経験すべきこと
理論と実務の間に存在するギャップについてまとめられている。「実務の現場でどんな壁にぶつかるのか(理論への過信、綺麗なデータとの違いなど)」を体系的に把握できる。最先端のアルゴリズムにこだわるのではなく、現場の泥臭いEDAやビジネス要件とのすり合わせがいかに重要かを再認識。
Qiita記事
Qiitaでも以下で検索すると参考になる情報がいくつか出てきますので、読みましょう。
個人的にテッツォさんの記事が好きでした。
おわりに
データサイエンスプロジェクトの性質上、「こう進めれば完璧にうまくいくのである!」という方法は存在しません。ゆえに体系的な整理が難しく、書籍化もしにくいんだろうなぁ……と思いました。ただ、『失敗しない データ分析・AIのビジネス導入』のように、一般論化して整理している書籍も存在しますので一読をおすすめします。
「サイエンスプロジェクトをどうリードして、どう成功させるか」という悩みには、明確な正解がありません。生成AIの台頭によってデータサイエンティストに求められるものも変化していますし、きっとこの先もずーっと悩み続けていくんだろうなぁ……。日々勉強ですね。
また、一般論を「知っている」ことと、現場で「実践できる」ことの間には大きな乖離があるわけで。うまく実行できるようになるまでは、相変わらず悩み続ける気がしています。でも、まずは「知る」ことができた。それだけで、一歩先には進めたよね、ハ△太郎?
そして最後になりますが、今回は主にプロマネ面に焦点を当ててまとめてみました。とはいえ、リードである以上は技術力こそが最大の武器であり、すべての土台です。そこが疎かになるとそもそもお話にならないので、技術面の研鑽も変わらず泥臭く頑張っていきたいなと思っています。
他雑記
データサイエンス協会のスキルチェックリスト・タスクリスト
データサイエンティストのスキル的なサムシングに興味がある人向け。定期的にスキルの棚卸しをするのが良いと思います、最近更新されたらしいです。
https://www.datascientist.or.jp/news/n-news/post-4954/
https://speakerdeck.com/datascientistsociety/12thsymp_skill
以下のような解説もあります。
https://www.datascientist.or.jp/news/n-news/post-4108/
DS協会の推薦書籍もどうぞ。
https://www.datascientist.or.jp/useful_category/du-recommend/
データ分析エージェント
分析エージェントやコーディングエージェントが続々開発されていますよね。極論ですがただの作業者には価値がなくなって、上位の問題設定力や仮説構築力、プロマネ力等が一層求められる時代が来るのではないでしょうか、という自戒。まあこのあたりもエージェントが実施できるようになったら…