このシリーズは、AWS SAA の各サービスを
“綺域(きいき)”と呼ばれる世界観で物語として表現しながら、
技術的な理解も自然に深められる構成になっています。
第6話となる今回は、
Public と Private の境界を通す存在──外綺守官(NAT Gateway)
がついに登場します。
風の理を扱う外綺守官が登場します!
最高に、魅力的なキャラになったと感じてます。
でも、期待されすぎても、怖いので程々に……
それでは、第6話お楽しみください。
第6話 外綺守官(NAT GateWay)
風がざわりと揺れ、
外区画の光が一瞬だけ沈む。
ガルドが叫ぶ。
「兄貴ィ!! 来たか!!」
その声に応えるように、
風の流れがすっと変わった。
影の中から、
風を裂くように男が歩み出る。
土佐弁の低い声が、
風の音と重なって響く。
「まっこと……外の流れが荒れちゅうのう」
二丁の銃を軽く回し、
風の向きを読むように目を細める。
──外綺守官 エルド・ヴァン・フェイル
「外から来るもんは、風が全部教えてくれるき。
通してええもんは通す。
通しちゃいかんもんは──風で弾くがよ。」
刀の柄に指を添え、
静かに、しかし確かな覚悟で続ける。
「ほいたら……風でも弾けんもんは、
理ごと断つしかないがやき。」
風が一瞬だけ止まり、
次の瞬間、外界の気配がざわりと震えた。
エルドは、見知らぬ顔がいることに気づいたのか、
ニカに近づいてくる。
私が少し戸惑った瞬間──
ルミエラが、私を庇うように慌てて前に出る。
「あっ、あのっ……!
ニカさんは、わたしがご案内している方で……!」
エルドが「ほう?」と眉を上げる。
ルミエラは胸に手を当て、
少し緊張しながらも丁寧に続ける。
「……“光”が……“光”が反応した方です。
わたしが責任を持って、内側へお連れしています」
エルドの目が興味深げに細くなる。
「ほうか……光が……ざわついちょったわけや」
ガルドが笑う。
「兄貴、ニカちゃんに絡みすぎだって!」
ルミエラが小さく息をつき、
私の袖をそっと引く。
「……すみません、エルドさんはこういう方で……」
エルドが風の向こうを睨む。
「どうも外の風が騒がしいのう……」
その声が落ちた瞬間、
空気がぴたりと止まった。
次の刹那、
風のざわめきを断ち切るように怒声が響く。
「ほたえな!!」
外区画の空気がビリッと震えた。
ガルドが肩を跳ねさせる。
「兄貴!? なんだよ急に!」
エルドは答えず、
風の向こうを鋭く睨みつける。
「……来ちゅう。
風が、そう言いゆうき。」
その言葉と同時に、
ニカの足元をかすめるように冷たい風が走った。
ゾワッ──
肌が粟立つ。
何かが“こちら側”へ近づいてくる気配。
ルミエラがニカの手をそっと掴む。
「……ニカさん、下がってください」
声は震えていない。
けれど、いつもの柔らかさとは違う緊張があった。
エルドがちらりとニカを見る。
「嬢ちゃん、風がざわついちょる時は……
素直に下がっちょき。」
その言い方は軽いのに、
背後の風は荒れ狂っている。
ガルドは一歩前に出て、綺紋鍵を強く握り締める。
鍵の紋が淡く光り、外の“理”に反応する。
「兄貴、あれ……!」
外の闇が、
“形”を持ち始めた。
風が逆巻き、
影がねじれ、
何かがこちらへ滲み出してくる。
エルドが刀の柄に手を添え、
風の流れを読むように目を細める。
「……ほうか。
ほたえよったんは、おまんらか。」
影が滲み出し、空気がざらつく。
エルドは短く言い放つ。
「風よ、理を通しちゃれ。」
足元の風が逆巻き、
空気が一気に張り詰める。
エルドが二丁の銃を構え──
「嵐閃弾。」
閃光のような風が一直線に走り、
影は触れた瞬間に霧散した。
ルミエラが息を呑む。
「……“嵐閃弾”……
影が……一瞬で……」
エルドは銃をくるりと回し、
振り返って、肩をすくめる。
「まっ、風を通したら、こんなもんぜよ。」
影が霧散し、風が静まったその瞬間──
ニカの視界の端で、光粒がふるりと震えた。
いつもの柔らかい揺らぎじゃない。
どこか、ざわつくような……胸の奥がひやりとする。
(……え……?)
光粒が、まるで“何かを避けるように”散っていく。
私は不安を感じながら小さく息を呑み、
ルミエラの袖をそっとつまんだ。
「ル、ルミエラさん……あの……光粒が……」
言いかけたところで、
光粒が一斉に視界から逃げるように消えた。
ルミエラが振り返り、
私の表情を見て目を細める。
私は、今の状態を上手く伝える術を知らない。
だって、今までこんなことなかった……
そんな私を見て優しく微笑むルミエラさんの笑顔は、すごく安心でき
「……ニカさん。
ネリアお姉様に、少し見てもらいましょう。」
ネリアお姉様が静かに歩み寄り、
私の肩にそっと手を置く。
「大丈夫ですよ、ニカさん。こちらへ。」
私は不安げに頷き、
ネリアお姉様に寄り添う。
ルミエラは二人を見届けてから、
内綺門へ向かった。
内綺門(内側の門)にて……
重い扉の向こうから、
東北訛りの低い声が落ちてくる。
「……見だが。
光が、ざわついでだべ。」
姿は見えない。
ただ“門の理”だけがそこにある。
ルミエラは膝をつき、深く頭を下げた。
「……はい。
影が消えた瞬間、光粒が……
彼女を……“避けるように”散りました。」
短い沈黙。
「……しばらぐ様子見でええ。
あの子さは、まだ言わねでおげ。」
その声は、
優しさと、深い警戒が混じっていた。
「……かしこまりました。
今は様子見に徹します……」
「んだ……今はそれでええ……」
短い返答を受けて、ルミエラは静かに立ち上がり、その場で一礼して振り返って、門を後にする。
夜風が頬を撫でる。
「……ニカさん……
あなたの行先を知りたい……守りたい……」
風が、遠くでざわりと揺れた。