「API連携で○百万円」という見積もりを受け取ったとき、その金額が高いのか妥当なのか、判断できませんでした。
いま思えば、判断できなくて当然でした。連携の費用は3つの層に分かれていて、そのうち1つだけ公開価格が存在しないからです。
日本で使える連携ツール42件の公開価格を集めて、この構造を確かめました。
結論から書きます。
① API そのもの → 追加料金なしのことが多い(ただしプランの壁あり)
② つなぎ役(iPaaS・RPA)→ 公開価格が存在する。42件中36件で料金の記載を確認できた
③ 作る人 → ★公開価格が存在しない。個別見積もりのみ★
つまり①と②は自分で調べられます。 見積もりの何割が③なのかは、逆算できます。
総論の記事では、費用を3層(①APIそのもの ②つなぎ役 ③作る人)に分けるところまで書きました。この記事は、公開価格がある②を42ツールぶん集め、公開価格が存在しない③の見積もりを読む手順まで降ります。
1. 費用は3層に分かれています
| 層 | 何に対する費用か | 公開価格 | 誰に聞くか |
|---|---|---|---|
| ① API そのもの | APIを利用する権利 | 追加料金なしが多い | ベンダー |
| ② つなぎ役 | iPaaS・RPA 等の利用料 | 存在する | ツール提供元 |
| ③ 作る人 | 開発・テスト・保守の人件費 | 存在しない | 開発会社 |
見積書には、たいていこの3つが混ざった1つの金額が書かれています。だから読めません。
分けて聞けば読めるようになります。順に見ます。
2. ① API そのものの費用
「APIを使うための追加料金」を取っているケースは、編集部が調べた範囲ではほとんどありませんでした。
ただし条件があります。契約プランの壁です。
56件のAPI公開状況を調べたところ、「第三者に公開されている」27件のうち5件は特定の契約プランでないと使えませんでした。たとえばSalesforce Sales Cloudは利用できるエディションが決まっています。
つまり①の費用は、API利用料ではなく「プラン差額」の形で発生します。
もう1つ。契約条件が公開資料から読めなかったのが28件ありました。これは料金ページがAPIについて触れていないためです。見積もりの前に聞く必要がある部分です。
2-1. 実際の記述例
楽楽精算は分かりやすい例です。会計ソフトへのCSV出力は利用料に含まれる標準機能(追加費用なし)ですが、**API連携は別途「API連携オプション」**で、金額は非公開・要問合せとなっています。
同じ製品の中でも、CSVは無料でAPIは有料ということが起こります。
ジョブカン勤怠管理のSmartHR連携は、連携そのものの追加料金はありませんが、有料プランの契約が前提です(無料プランでは使えません)。
3. ② つなぎ役の費用 — ここには公開価格があります
| つなぎ役の種類 | 台帳の件数 |
|---|---|
| iPaaS | 20 |
| RPA | 12 |
| ベンダー純正 | 7 |
| 第三者提供 | 2 |
| 画面操作 | 1 |
| 合計 | 42 |
このうち36件は、料金について公式サイトに記載がありました。
ただし**「記載がある」と「金額が書いてある」は別です。** 「要問合せ」「申込書に記載」も記載のうちです。以下に並べるのは、金額まで公開されているものだけです。
3-1. iPaaS の公開価格
| ツール | 公開されている価格(月額の安い順) |
|---|---|
| Yoom | フリー ¥0/パーソナル 月¥3,000(年契約 ¥2,400)/ミニ 月¥20,000/チーム 月¥50,000/サクセス 年契約 ¥80,000 |
| ASTERIA Warp | 自社設置は月3万円〜、クラウド版は月16万円〜 |
| bindit | 無料 ¥0/ベーシック 月¥35,000 |
| ActRecipe | Standard 月5万円〜(年間契約) |
| JENKA | スタンダード 月5万円+初期10万円(税抜) |
| AUTORO | Lite 5万円/Standard 10万円 ほか |
| TROCCO | Starter 月7.5万円(税抜)〜 |
| Reckoner | 初期費用0円・月額8万円〜(ユーザー数制限なし) |
| Waha! Transformer | 自社環境は月13.5万円〜/買い切り360万円〜 |
| HULFT Square | Starter 月48万円〜(税抜) |
| Zapier | Free $0(月100タスク)/Professional $19.99/月〜/Team $69/月〜(25ユーザー) |
月3,000円から月48万円まで、160倍の幅があります。 これは同じものを比べていないからです。個人が数個の連携を回すのと、企業が大量データを毎日流すのでは、必要なものが違います。
価格だけで並べても意味がありません。 見るべきは自分の要件(連携の本数、1日のデータ量、必要な相手先)に対して、どのプランが必要かです。
図の薄い帯はドル建て(Zapier)です。比べられるように、2024〜2026年のドル円変動幅(おおむね1ドル=140〜163円)で円に換算した目安の区間として載せています。公式の日本円価格ではなく、実際の支払額は決済時のレートで変わります。
なお、iPaaS 20件のうち7件は価格が非公開(要問合せ・申込書に記載)でした。
3-2. ★料金表の段は「回数」で切られています★
iPaaS の料金表を読むときに、金額の前に見るところがあります。その段で月に何回動かせるかです。
Yoom の料金プランは、月に動かせる回数(タスク数)で段が分かれています。
| プラン | 月に動かせる回数 |
|---|---|
| フリー | 100 |
| パーソナル | 1,000 |
| ミニ | 5,000 |
| チーム | 15,000 |
| サクセス | 45,000 |
つまり**「月に何回動かすか」を先に見積もらないと、どの段が要るか決まりません。**
たとえば受注が1日20件あって、1件につき3回の処理(受注の取得・変換・登録)が走るなら、月に約1,800回です。フリーとパーソナルでは足りません。
さらに、繋げる相手の範囲も段で分かれます。 同じ料金ページに「一部のアプリとの連携」と「すべてのアプリとの連携」が段として書かれています。繋ぎたい相手が下位プランの対象外なら、安い段は選べません。
だから確認の順番はこうなります。
- 繋ぎたい相手が、どの段から使えるか
- 月に何回動かすことになるか
- その2つを満たす一番下の段はどれか
金額を見るのは3番目です。
3-3. ★同じ製品でも、上位版は価格を公開していないことがあります★
ASTERIA Warp の価格ページは、下位から順にこう並んでいます。
| 版 | 公開価格 |
|---|---|
| Core | 30,000円〜/月 |
| Core + | 60,000円〜/月 |
| Core ++ | 120,000円〜/月 |
| Standard | 200,000円〜/月(年契約) |
| Enterprise | 240,000円〜/月(年契約) |
| Cloud の Standard / Enterprise | お問い合わせください |
| 標準ライセンスの Standard / Enterprise | お問い合わせください |
下の段は公開されていて、上の段は問い合わせという形です。これは珍しくありません。
そして「〜から」という書き方にも注意が要ります。 30,000円〜/月 は、条件によっては30,000円では収まらないという意味です。何がその金額を動かすのか(接続数・データ量・ユーザー数のどれか)を聞いてください。
3-4. RPA の公開価格
| ツール | 公開されている価格 | 単位 |
|---|---|---|
| Power Automate(デスクトップ) | Premium ¥2,248/Process ¥22,488 | 月額 |
| Coopel | 月額 12,800〜100,000円(税抜) | 月額 |
| EzRobot | 月5万円(税抜)/2台目以降 4万円(税抜) | 月額 |
| マクロマン | 0/5万/10万円・月(税抜) | 月額 |
| MICHIRU RPA | 月5万円(税抜)/ライセンス | 月額 |
| アシロボ | 月5万円+初期20万円(税別) | 月額 |
| batton | 月148,000円(税込)〜 | 月額 |
| UiPath | ベーシック 月額 $25 から/上位は要問合せ | 月額(ドル建て) |
| BizRobo! | 年額 90万〜792万円(税別) | 年額 |
| WinActor | フル機能版 1,098,680円/実行版 300,080円 | 買い切り |
RPAには買い切りがあります。 WinActorのフル機能版が約110万円、実行版が約30万円という形です。BizRobo!は年額90万〜792万円 — 月額と比べられるように、図では**12で割った月額換算(月7.5万〜66万円)**で載せています。ドル建てのUiPathは、iPaaSの図と同じく為替幅で換算した薄い帯です。買い切りのWinActorだけは月額に直せないので、帯の外に書いています。
EzRobotの「2台目以降 4万円」という書き方に注目してください。 RPAは台数で数えます。理由は次の節です。
3-5. ★RPAの見積もりに入っていないもの★
RPAは画面を操作する仕組みなので、操作される画面がどこかに開いている必要があります。つまりパソコンが1台要ります。
- 夜間に動かすなら、そのパソコンの電源は切れません
- 人が同時に使うと、RPAの操作を邪魔します
- つまりRPA専用のパソコンを1台用意するのが普通です
「RPAツールの利用料は月5万円」という見積もりに、このパソコンの費用と置き場所は入っていないことがあります。 仮想パソコン(クラウド上のパソコン)を使う構成もありますが、その場合はその利用料が別にかかります。
見積もりを読むときは、**「動かす場所の費用は入っていますか」**と聞いてください。
3-6. ★人につく料金と、処理につく料金は別です★
RPA の料金表には、2つの単位が混ざっています。Power Automate の価格が分かりやすい例です。
| プラン | 単位 | 価格 |
|---|---|---|
| Premium | ユーザー/月 | ¥2,248(年払い相当) |
| Process | ボット/月 | ¥22,488(年払い相当) |
| Hosted Process | ボット/月 | ¥32,233(年払い相当) |
「ユーザー/月」は人につく料金です。 使う人が増えると増えます。
「ボット/月」は処理につく料金です。 動かす自動処理が増えると増えます。人が何人いても関係ありません。
この違いが、見積もりの伸び方を決めます。
- 20人が各自で自動化を作る → 人につく料金が20人分
- 夜間に3本の処理を無人で回す → 処理につく料金が3本分
「うちは何人ですか」と聞かれた見積もりと、「何本動かしますか」と聞かれた見積もりは、別のものを数えています。 どちらの単位なのかを確認してください。
そして単価の差にも注目してください。 人につく料金と処理につく料金では、10倍の開きがあります。無人で動かすほうが高いのは、人がログインしていなくても動く仕組みが要るからです。
3-7. ベンダー純正の連携は、たいてい無料です
これが一番の節約になります。
boardは、freee会計とのAPI連携、マネーフォワード クラウド会計とのAPI連携、弥生会計向けCSVデータ出力の3つとも、boardのプラン料金に含まれると明記しています(この連携のための追加費用なし)。boardのプラン別月額は Personal 1,200円/Basic 2,400円/Standard 4,900円/Premium 7,900円(税抜)、初期費用0円です。
マネーフォワード クラウド会計のboard連携も、同社の料金に含まれています。
つまり、純正連携で足りるなら②の費用はゼロです。 検討の順番を「純正連携から」にすべき理由は、ここにもあります。
4. ③ 作る人の費用 — ここだけ公開価格が存在しません
開発・テスト・保守にかかる人件費には、公開価格がありません。 一律の表が存在しないので、個別見積もりになります。何にかかるのかを書き出すと、こうなります。
| 作業 | 中身 |
|---|---|
| API仕様の調査 | 仕様書を読み、必要な項目があるかを確認する |
| 認証の実装 | OAuthやAPIキーの取得・保管・更新の仕組みを作る |
| データ変換の実装 | 項目名の対応、コードの対応表、書式の変換 |
| エラー処理 | 相手が落ちていたら、項目が足りなかったら、どうするか |
| 運用監視の設計 | 止まったことに、誰がどうやって気づくか |
| 仕様変更への追従 | 相手のAPIが変わったときに直す |
この6つを人件費として積算した結果が「○百万円」です。
4-1. なぜ相場を書かないのか
「相場は○○万円くらい」と書きたくなりますが、書きません。調べていないからです。
編集部が調べたのは①と②の公開価格であって、開発の相場ではありません。調べていないことを、それらしく書くのは避けます。
書けるのは構造だけです。「③には公開価格が存在しない」という事実が、見積もりが読めない理由そのものです。
4-2. ★③は毎年かかります★
もう1つ大事なことがあります。③は初期費用だけではありません。
相手のAPIが変われば、こちらも直す必要があります。 編集部が調べた範囲では、仕様変更の告知の仕方は3通りありました。
- 日付でバージョンを切り、旧版の提供終了日を明示する(HubSpot)
- 最低サポート期間を約束する(Salesforce Sales Cloud)
- 予告なく変更する場合があると書く
3番目に当たった場合、止まってから気づくことになります。 そして直すのは③の人です。
稟議に「保守費」の欄があるのは、このためです。
5. 見積もりの読み方
以上を、実際の作業に落とします。
- ②を自分で調べる — 使う予定のiPaaSやRPAの公式サイトで価格ページを開く。42件中36件は公開されています。必要なプランの月額を控える
- ①を聞く — ベンダーに「いまのプランのままAPIを使えますか。上位プランが必要ですか」。差額を控える
- 見積もり総額から①と②を引く — 残りが③です。
- ③の内訳を聞く — 「調査・認証・変換・エラー処理・監視・保守のどこにどれだけかかっていますか」。答えられない見積もりは、精度が低いということです。
- 毎年かかる分を分ける — 「初期費用と、毎年かかる保守費を分けてください」。稟議はこの2つで書き方が変わります
6. 補助金の枠があります
| いつの呼び方か | 名称 |
|---|---|
| 2026年〜 | デジタル化・AI導入補助金 |
| 〜2025年 | IT導入補助金(旧称) |
国は中小企業のIT導入に支援枠を用意しています。★2026年に名称が変わりました。★過去の記事に出てくる名前で検索すると、別のものや古い年度の情報に当たります。 申請するときは必ず当年の公式サイトを見てください。
申請枠は5つあります。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠
連携ツールがどの枠に当たるかで、要件も上限も変わります。
ただし要件は制度側で決まります。 対象になる経費、対象になるツール(あらかじめ登録されたもの)、申請の時期などが定められています。「補助金で○割戻る」と決めつけず、制度の公式サイトで要件を確認してください。
7. まとめ
- 連携の費用は3層。①API本体 ②つなぎ役 ③作る人
- ①はプラン差額の形で出ることがある。 27件中5件がプランの壁つき、28件は条件が読めない
- ②は公開価格がある。 42件中36件で料金の記載を確認。iPaaSは月3,000円〜48万円、RPAは月2,248円〜年792万円
- RPAはパソコン1台を占有する。 その費用が見積もりに入っているか確認する
- 純正連携なら②はゼロのことが多い(boardは3種類とも「プラン料金に含まれる」)
- ③だけ公開価格が存在しない。 だから見積もりが読めない
- ③は毎年かかる。 相手のAPIが変わればこちらも直す
見積もりが読めないのは、あなたの知識不足ではありません。
①と②を自分で調べれば、③の大きさは逆算できます。
この記事の調査範囲について
- 対象は、編集部が台帳に収録した42ツールと、一次調査を終えて公開している56システムです。日本で使える連携ツール全体ではありません。
- 確認時期は2026年7月28日〜8月19日です。価格は変わります。 発注前に必ず公式サイトで再確認してください。
- ドル建て価格の円換算は目安です。 2024〜2026年のドル円の変動幅(おおむね1ドル=140〜163円)を機械的に掛けた区間で、公式の日本円価格ではありません。年額は12で割った月額換算で図に載せています(表は原文のまま)。
- 開発費の相場・目安は書いていません。 調べていないためです。書けるのは「③には公開価格が存在しない」という構造までです。
- ツール個社の優劣は比較していません。 引いたのは公開価格の実例だけです。プランの中身(連携本数、データ量の上限、対応コネクタ)が違うので、金額だけを並べても比較になりません。
- 補助金の支給額や採択率は書いていません。 要件は制度側で決まります。
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※ 筆者は日立系ITベンダー・介護ソフトベンダー・大学病院IT部門を経て独立し、現在は中小企業のIT・DX支援をしながら、業務システムの「つながり」を一次資料で調べています。 文中の「編集部」は、筆者が所属する IT連携マップ編集部 のことです。誤りを見つけられましたら 訂正窓口(無料・アカウント不要)へお願いします。訂正履歴も公開しています。