「システムをつなぎたい」と相談すると、まずAPIの話になります。でも実際に業務が回るようになった事例を聞いてみると、CSVの受け渡しで終わっていたり、そもそもベンダーの標準機能で足りていたりします。
「結局、うちの場合はどれで繋ぐのが一番ラクで、いくらかかるのか」
これが、この記事で答えたい問いです。
つなぐ手段は5つあります。API、CSV、RPA、iPaaS、そしてベンダー純正の連携機能です。
この5つを、公開されている価格と仕様の範囲で比べてみました。ランキングを付けるためではありません。「うちの場合はどれか」を、自分で判定できるようにするためです。
先に結論を書きます。
調べる順番は、純正 → CSV → API → iPaaS → RPA です。
APIから調べ始めると、たいてい遠回りになります。
総論の記事では、5つの手段を ◎○△ の一覧にするところまで書きました。この記事は、その一マスずつに何が入っているのかを、実際のシステム名で開いていきます。
1. 「ラク」を6つの物差しに割る
「どれが一番ラクですか」という質問には答えられません。何がラクなのかが人によって違うからです。そこで6つに割ります。
| 物差し | 何を聞いているのか |
|---|---|
| 前提条件 | それを使うために、何が揃っている必要があるか |
| 自動化の程度 | 人が何回触るか |
| 壊れ方 | 止まるとき、何がきっかけで止まるか |
| 誰が直すか | 止まったとき、直すのは誰か |
| 費用 | 初期にいくら、毎月いくら |
| できる範囲 | どこまでできて、どこからできないか |
このうち、見積書に出てくるのは「費用」だけです。残りの5つは自分で確認する必要があります。
2. 5つの手段を並べる
| 前提条件 | 自動化 | 壊れ方 | 誰が直すか | 費用 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ベンダー純正 | 相手が用意していること | 設定するだけ | ベンダーが直す | ベンダー | 無料〜定額オプション |
| CSV(ファイル) | 出力と取込ができること | 人かバッチ | 列がずれる/文字が化ける | 自分(Excelで直せる) | ほぼ無料 |
| API | 双方にAPIがあり、契約条件を満たすこと | 完全自動 | 相手の仕様が変わる | 作った人 | 開発費(個別見積もり) |
| iPaaS | 双方に対応コネクタがあること | 完全自動 | コネクタが追随しない | 提供元+自分 | 月額(公開価格あり) |
| RPA(画面操作) | 画面を操作できること | 画面が開いていれば自動 | 画面が変わると止まる | 自分 | ツール料+シナリオ作成 |
この表は記事の入口です。ここから、一マスずつ中身を見ます。
用語を開いておきます。
- API:外部のシステムから、決められた手順でデータや機能を使うための受付窓口(総論の記事の言い方。以降は「窓口」)。
- iPaaS(アイパース):クラウド上に置く、システム同士のつなぎ役。ブラウザで設定します。
- EAI:iPaaSの前からある同種の仕組みで、自社の中に置くタイプ。
- RPA:人がパソコンを操作する手順を、そのまま自動で再生する仕組み。
- バッチ処理:決まった時刻にまとめて処理すること。
- 純正連携:ベンダー自身が用意している、特定の相手先とつなぐ機能。
3. 一マスずつ見る:「壊れ方」が一番違う
総論の記事では、この軸を**「安定性」**という一語で書きました。ただ、比較表で「安定性 △」と書かれても何も分かりません。
**安定性の中身が「壊れ方」**です。つまり、何がきっかけで止まるのか。ここが5つの手段で一番はっきり違います。
3-1. CSVは「列がずれる」「文字が化ける」で止まる
CSVは、決められた順番に項目が並んだテキストファイルです。だから順番が変わると壊れます。
どのくらい細かく決まっているのか、数字で見てみます。編集部が12システムについて数えたところ、様式(あらかじめ項目の並びが決まっている入力面)は187件、定義された項目は合計12,542項目ありました。
内訳はこうです。
| 種類 | 件数 | 項目数 |
|---|---|---|
| CSV の取込・出力 | 17 | 669 |
| 申請様式・API の構造定義(XML・PDF・xlsx など) | 170 | 11,873 |
この記事で扱うCSVは、上の17件・669項目のほうです。 残りはe-Gov電子申請の申請書XML構造定義やjGrantsの様式集から抜き出した項目定義で、CSVではありません。ただし**「システム間で受け渡すために、項目の並びがあらかじめ決められている」という点は同じ**です。
669項目が固定の順番で並んでいる、と考えてください。1つ挿入されれば、それ以降が全部ずれます。壊れたことにはすぐ気づきます(エラーになるか、明らかにおかしい値が入る)。そして直せます。Excelで開いて列を入れ替えれば済むからです。
文字化けも同じ種類の問題です。日本の業務システムのCSVは Shift_JIS 系のことがあり、UTF-8 を前提にすると一面が化けます。これも気づくし、直せます。
3-2. RPAは「画面が変わる」と止まる
RPAは人の操作を再生します。ボタンの位置や画面の構造が変わると、再生できなくなります。
厄介なのは、相手が業務システムのバージョンアップをしただけで起きることです。しかも予告されません。 「画面を改善しました」というお知らせは、RPAにとっては仕様変更です。
そして直すのは自分です。ベンダーは、あなたがRPAを使っていることを知りません。
3-3. APIは「相手の仕様が変わる」と止まる
APIは画面より安定しています。ただし変わらないわけではありません。
告知の仕方は系統ごとに違います。編集部が調べた範囲では、次の3通りがありました。
-
日付でバージョンを切り、旧版の提供終了日を明示する — HubSpot は2026年3月版から日付ベースのバージョニングに移り、エンドポイントは
/api-name/2026-03/resourceの形になっています - 最低サポート期間を約束する — Salesforce Sales Cloud
- 予告なく変更する場合があると書く
3番目に当たった場合、止まってから気づくことになります。
なお、仕様変更の告知について公開資料から読み取れたのは56件中38件でした。残りは書かれていないか、確認できていません。
3-4. 純正連携は「ベンダーが直す」
これが最大の利点です。相手の仕様が変わっても、ベンダーが自分で追随します。 あなたは何もしません。
そのかわり、できることはベンダーが決めた範囲だけです。
3-5. iPaaSは「コネクタが追随しない」ことがある
iPaaSは、AとBをつなぐ部品(コネクタ)を提供元が用意しています。相手の仕様が変われば、提供元がコネクタを直します。そこは純正連携に近いです。
ただし、コネクタがあるかどうかは組み合わせ次第です。そしてマイナーな業務システムのコネクタは、無いことのほうが多いです。
4. 一マスずつ見る:「前提条件」で半分が消える
5つの手段のうち、どれが使えるかは前提条件で決まります。そして、この前提を満たさないケースがかなりあります。
4-1. APIの前提:「APIがあります」だけでは足りない
編集部が56システムのAPI公開状況を2つの軸で分類したところ、こうなりました。
| 誰に開かれているか | 件数 |
|---|---|
| 第三者に公開されている | 27 |
| 申込・審査・NDA が必要 | 12 |
| シリーズ内・パートナー等に限定 | 7 |
| 明示的に不可 | 1 |
| 公開情報の範囲で確認できない | 8 |
| その他の理由で確認できず | 1 |
さらに、「公開APIあり」の27件のうち5件は、特定の契約プランでないと使えません。 例としてSalesforce Sales Cloudは上位プラン限定です。
つまりそのまま使えるのは22件。半分以下です。
もう1つ。契約条件が公開資料から読めなかったのが28件ありました。これは編集部の調査不足ではなく、公開情報の側の状態です。
4-2. 純正連携の前提:相手が用意していること
こちらは意外と有望です。56件中54件に、純正の連携機能についての記述がありました。
たとえばboardの公式まとめページには27件が掲載されています(編集部が数えた値)。内訳はboard提供が16件、他社提供が11件で、freee会計とはAPI、マネーフォワード クラウド会計とはAPI/CSV、弥生会計とはCSV、という具合に相手ごとに手段が違うことまで書かれています。
ツールを買う前に読むべきページが、公式サイトに存在するということです。
4-3. CSVの前提:出力と取込ができること
CSV出力はほとんどのシステムにあります。問題は取込側です。取り込める様式が決まっているので、出力側の並びと一致しないと、間に変換が要ります。
4-4. RPAの前提:画面を操作できること
これはほぼ常に満たされます。RPAが最後の手段として機能するのは、前提条件がほとんど無いからです。 そのかわり壊れやすい。
5. 一マスずつ見る:費用
費用については、公開価格がある層と無い層があります。
| 層 | 何に対する費用か | 公開価格 |
|---|---|---|
| ① API そのもの | APIを使う権利 | 追加料金なしのことが多い(上位プランへの変更が要る場合あり) |
| ② つなぎ役 | iPaaS・RPA 等の利用料 | 存在する |
| ③ 作る人 | 開発・テスト・保守の人件費 | 存在しない(個別見積もり) |
編集部の台帳には、つなぎ役のツールが42件(iPaaS 20件・RPA 12件・ベンダー純正 7件・第三者提供 2件・画面操作 1件)入っています。このうち公開価格を確認できたのは36件でした。
具体的な価格は別の回で扱いますが、ここで押さえておきたいのは構造です。
- ①と②は自分で調べられます
- ③だけが調べられません
つまり見積もりの何割が③なのかは、①と②を自分で調べれば逆算できます。
つなぎ役の価格について、いま言えることは3つです。
- RPAの価格は、月1万円台から買い切り100万円超まで幅があります。 同じ「RPA」という言葉の中に2桁の開きがあります
- 価格を公開していないベンダーがあります。 iPaaS 20件のうち7件は要問合せ・申込書に記載でした
- したがって**「RPAは安い」「iPaaSは高い」という一般化は成り立ちません**
比べるなら、自分の要件(連携の本数・1日のデータ量・繋ぎたい相手)を先に決めてからです。それが決まらないうちは、どのプランが必要かが決まらず、価格を並べても意味がありません。
RPAの費用については、もう1つ注意点があります。RPAは画面を操作するので、操作される画面がどこかに開いている必要があります。 つまりパソコンが1台要ります。夜間に動かすなら電源は切れません。「ツールの利用料は月○円」という見積もりに、そのパソコンの費用が入っているとは限りません。
6. 一マスずつ見る:誰が直すか
止まったあと、誰が電話を受けるのかという話です。ここは稟議に書ける形にできます。
| 手段 | 直す人 | 直るまでの間 |
|---|---|---|
| ベンダー純正 | ベンダー | 自分の手は要らない。ただし直る時期も相手次第 |
| CSV | 自分(Excelで開いて直せる) | その場で直せることが多い |
| API | 作った人(開発会社) | 保守契約の範囲内かどうかで変わる |
| iPaaS | 提供元+自分 | コネクタの追随は提供元待ち。設定の直しは自分 |
| RPA | 自分 | 画面を見ながら手順を録り直す |
一番差が出るのはAPIです。 作った開発会社との関係が切れていると、直せる人がいなくなります。
だから契約前に、この3つを決めておいてください。
- 保守は誰が持ちますか。 月額に含まれますか、その都度の見積もりですか
- 止まったとき、どこに連絡しますか。 ベンダーですか、開発会社ですか
- 直るまでの間、手作業に戻せますか。 戻せないなら、業務が止まります
3番目が抜けやすいです。自動化すると、元の手順を誰も覚えていない状態になります。手順書だけは残しておいてください。
7. 一マスずつ見る:できる範囲
最後の物差しです。ここまで読むと、RPAは費用も壊れやすさも一番不利に見えます。それでも最後の手段として残る理由が、この列にあります。
| 手段 | できる範囲 |
|---|---|
| ベンダー純正 | ベンダーが決めた項目・決めた相手だけ。条件分岐や加工は基本できない |
| CSV | 様式に定義された列だけ |
| API | 仕様書に載っている対象だけ。読み取り専用のことがある |
| iPaaS | コネクタが対応している操作だけ |
| RPA | 画面でできることは、原則すべて |
CSVの範囲は具体的な数字で見られます。freee会計は出力161項目・取込89項目、ジョブカン勤怠管理は出力184項目・取込59項目です。
注目してほしいのは、出力より取込のほうが少ないことです。 渡せるのは受け取る側の様式が上限になります。「184項目出せます」と言われても、相手が59項目しか受け取らないなら、渡るのは59項目です。
APIも同じです。編集部が数えた範囲で、公開済み28系統のAPIが扱う対象は747件でした。その一覧に自分が動かしたいものが載っていなければ、APIがあっても届きません。 ジョブカン会計の公開APIは8本すべてGET(取得)で、書き込みはできません。
そしてRPAだけが、この制約を受けません。 画面から入力できることは、全部できます。他社の古い業務システムでも、社内の独自システムでも、画面があれば操作できます。
これがRPAが消えない理由です。壊れやすく、パソコンを1台占有し、直すのは自分。それでも**「他に手段が無い」場面が実際にある**からです。
だから調べる順番は、RPAを最後に置くのが正しい。先に4つを潰して、それでも残ったものにRPAを当てる、という順番です。
8. どこで動くのか
もう1つ、比較表に載らない違いがあります。その処理はどこで動くのかです。
| 手段 | 処理が動く場所 | 手元に要るもの |
|---|---|---|
| 純正連携 | 相手のサーバー | ブラウザだけ |
| API連携 | 相手のサーバーと、呼び出す側のどこか | 呼び出す仕組みを置く場所 |
| iPaaS | 提供元のクラウド | ブラウザだけ |
| RPA | 自分のパソコン、または仮想パソコン | パソコン1台 |
| CSV | 人のパソコン | 表計算ソフト |
ここが、費用と安全の話に直結します。RPAは機械が要ります。iPaaSはデータが一度提供元のクラウドを通ります。
9. 調べる順番
以上を踏まえると、調べる順番は決まります。費用が安く、壊れにくく、自分で直さなくていいものから見ます。
1. ベンダー純正の連携機能を調べる
公式サイトの「連携できる外部サービス一覧」を開きます。56件中54件に記述がありました。 ここで終われば、費用も保守もほぼゼロです。
2. CSVを調べる
月1回や日1回で足りるなら、CSVで十分なことが多いです。両システムの出力様式と取込様式を並べて、項目が一致するかを見ます。
3. APIを調べる
ここで初めてAPIです。確認するのは、対象データ・読み書きの別・認証方式・回数制限・契約条件・仕様変更の告知の6点です。
4. iPaaSを調べる
APIはあるが自分で作りたくない、という場合の選択肢です。両方のコネクタがあるかを先に確認してください。
5. RPAを検討する
APIも純正連携もCSVもない場合の最後の手段です。壊れやすさと、パソコン1台を占有することを承知のうえで選びます。
9.5 実際に1件やってみる
手順だけだと分かりにくいので、よくある要件を1つ通してみます。
要件:請求管理システムで作った請求データを、会計ソフトに毎月流したい。件数は月80件。
手順1|ベンダー純正を調べる
請求管理側の公式サイトで「連携」を検索します。board を使っているなら、公式のまとめページに27件が載っていて、相手ごとに手段まで書かれています。
- 会計ソフトが freee会計 → API。設定するだけ
- 会計ソフトが マネーフォワード クラウド会計 → API / CSV。どちらでもいい
- 会計ソフトが弥生会計・勘定奉行 → CSV
★ここで多くの場合は終わります。★ 前の2つなら、この時点で費用ゼロ、保守もベンダー持ちです。
手順2|CSVを調べる(純正が無かった場合)
出す側と受ける側の両方で、CSVの様式を確認します。出力と取込では項目数が違うので、両方見ます。
月80件なら、人が月1回操作しても15分程度です。この規模で自動化の開発費を出す理由は、たいていありません。
自動化するとしても、CSVの出力と取込をパソコンに定期実行させるだけで足ります。
手順3|APIを調べる(件数が多い、または毎日流したい場合)
ここで初めてAPIです。確認するのは4つ。
- 双方に公開APIがあるか
- いまの契約プランで使えるか
- 「入れる」ができるか(取得だけではないか)
- 呼び出し回数の上限は足りるか
月80件なら、上限で困ることはまずありません。 上限が問題になるのは、1日数千件を流すような規模です。
手順4|iPaaSを調べる(自分で作りたくない場合)
両方のコネクタがあるかを確認します。片方でも無ければ、その1つのために別の手段が要ります。
月額は3,000円から48万円まで幅があるので、**月に何回動かすか(80件×処理数)**を先に決めてから料金表を見ます。
手順5|RPAを検討する(ここまで全部だめだった場合)
パソコンを1台用意することになります。月80件のために1台占有するのは、たいてい割に合いません。
この要件なら、手順1か2で終わります。 そしてそれが正しい結論です。
10. 「一番ラク」は無い
この記事では優劣を付けていません。理由は2つあります。
1つ目。要件によって答えが変わるからです。 月1回の連携にiPaaSを入れるのは過剰ですし、1日500件の連携をCSVでやるのは無理があります。
2つ目。壊れやすさの「頻度」を測っていないからです。 編集部が調べたのは壊れ方の種類であって、何ヶ月に一度壊れるかではありません。「RPAは壊れやすい」と書けるだけの実測データは持っていません。
代わりに言えるのはこうです。
要件を満たせる、最もシンプルな手段を選ぶ。
シンプルさの順番は、純正 → CSV → API → iPaaS → RPA。
この記事の調査範囲について
- 対象は、編集部が一次調査を終えて公開している56システムと、台帳に収録した42ツールです。日本の業務システム全体ではありません。
- 確認時期は2026年7月28日〜8月19日です。仕様も価格も変わります。
- 「公開情報を確認した範囲では見つからなかった」と「機能が無い」は区別しています。
- 壊れやすさの頻度、ツール個社の優劣、市場シェアは調べていません。
各システムの「純正連携」「API」「価格」の欄は、RenkeiMapで1件ずつ公開しています。主な参照先はboard、freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生、kintone、HubSpot、Salesforce Sales Cloud、e-Gov電子申請、jGrants、楽楽精算 です。つなぎ役のツールはこちら。
※ 筆者は日立系ITベンダー・介護ソフトベンダー・大学病院IT部門を経て独立し、現在は中小企業のIT・DX支援をしながら、業務システムの「つながり」を一次資料で調べています。