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Adobe Analytics で便利な機能|クロスデバイス分析編

Last updated at Posted at 2021-04-14

はじめに

サイトやアプリのアクセス解析のツールとしてご利用いただく Adobe Analytics。分析結果の定期レポートを作成したり、データから導き出した仮説を検証したりなど、普段の分析作業を進められている中だと、なかなか便利機能を見落としがちだったりするものと思います。Adobe Analytics では毎月機能の追加を進めており、「こんな機能あったんだ」「ちょっと試してみよう」の気づきとなるよう、追加された新機能の便利ポイントをご紹介します。

本記事でピックアップする機能は「クロスデバイス分析」です。

※ 本記事は投稿時点の情報に基づいて掲載しています。その後の機能アップデート等によっては内容が変更となっている場合がありますのでご了承ください。

デバイスを跨いだ分析、クロスデバイス分析

Adobe Analytics では、従来、訪問者を特定する ID をブラウザの Cookie やアプリのストレージ領域に格納して「同一のブラウザがどれだけサイトに訪れているのか」「同一のアプリがどれだけ利用されているのか」を計測していました。この ID は、一つ一つを訪問者と見なして分析に利用されていて、ID 同士が重複して精度が落ちないよう、アドビのサーバー側で ID を発行してユニーク性を保持する仕組みになっています。

ブラウザ・アプリのデータが意図せず交わらないようにユニーク性を保ってデータを計測・分析することが、膨大なデータを分析する上で大事なポイントではありましたが、スマホ・PC それぞれを活用することが当たり前となっている今では、デバイスを正確に分けて把握することは、ユーザー興味を分析する壁になっているとも言えるかと思います。現在もその挙動は変わっていませんが、ブラウザやアプリといったデバイスを特定するだけでなく、サイトやアプリに利用される「ユーザー識別子」を使って、デバイスを互いにリンクさせて、一人の人物として特定するのが「クロスデバイス分析」です。

クロスデバイス分析でできることは?

「クロスデバイス分析」と仰々しく書いてもピンと来ない点もあるのではと思いますが、動作イメージや実際のレポートを参考に解説していきたいと思います。

利用者を示す「人物」と「デバイス」

Adobe Analytics レポートの標準的な指標として「実訪問者」「訪問回数」「ページビュー数」が挙げられますが、クロスデバイス分析では、「実訪問者」に代わって 「人物」 が使えるようになります。
「人物」とは、複数のデバイスを合成したリンクデータの単位です。

以下の図では、利用者が 3 つのデバイスを使ってサイトに訪れた例を示しています。Adobe Analytics では、それぞれのデバイス (ブラウザ) を一人の訪問者として計測します。そのため、この例だと、訪問者 1 ~ 3 の 3 人の訪問者が存在し、1 人が購入 (コンバージョン) した形がレポートされます。
クロスデバイス分析_遷移例.png
クロスデバイス分析では、デバイスで利用されたユーザー識別子 (この例ではログイン ID) をキーとして、各デバイスデータを結合することで人物データを作成します。上記の例では、以下のようにレポートデータが変わり、広告投資効果の判定にも大きく影響してきます。

項目 従来の Adobe Analytics クロスデバイス分析
購入のファーストタッチ 広告 検索
購入のラストタッチ 広告 製品詳細
コンバージョン率 33% (購入回数/訪問者) 100% (購入回数/人物)

データを合成できる範囲

上記の遷移図において「クロスデバイス分析:購入のファーストタッチ=検索」という点に少し違和感を感じた方もいるかもしれませんが、この例の「訪問者 1」が「検索」から流入したタイミングでは、そのデバイスはサイトにログインしていませんでした。同じデバイス (訪問者 1) がサイトにログインしたのは、「製品詳細」を閲覧したタイミングとなっており、ログイン前のデータもレポートとして表示されています。

クロスデバイス分析によって合成されるデータは、ログイン中のみのデータに限られません。「ユーザー識別子を保持した訪問者 ID」 を対象としてデータの結合が行われます。そのため、ログイン前の遷移データについても Cookie が有効な範囲でリンク対象として結合されます。クロスデバイス分析では、最大 6 か月 または 最大 30 日間まで遡ってデータを合成することができます (6 か月と 30 日間の違いについては、後述のデータの結合方式によって異なります)。

データ結合の考え方

上記の遷移図では、ピンポイントな購入パターンに限って解説していますので極端なレポート例となっていますが、実際には、すべての訪問者が必ずサイトにログインするとは限りません。クロスデバイス分析を利用する上では、サイトへのログイン率 (識別率) を把握することも重要なポイントになってきます。以下は、クロスデバイス分析を利用した実際のレポート例です。ユーザーの識別率、デバイスの圧縮率を示す指標も自動的に追加されます。
クロスデバイス分析_ユーザーの識別状況.png

指標 概要
実デバイス数 リンク対象となるデバイス数。実訪問者と同等
人物 ユーザー識別された人物の数
Cross-device compression クロスデバイス圧縮率。ユーザー識別によって省略されたデバイス数の割合。(実デバイス数 - 人物) ÷ 実デバイス数
Identified people ユーザー識別子によって特定された人物数
Unidentified people ユーザー識別子を持たない (未特定の) 人物数
% identified people 特定された人物の割合 (Identified people ÷ 人物)

なお、計測されたデバイスデータは、6 か月あるいは 30 日間は関連付けができるよう ID 情報が格納されます。最新データの計測・関連付け以外に、過去データの関連付けも週 1 回の間隔で再計算される挙動となっており、過去に計測されて不特定の人物と識別されていたデータも、改めて最新データと結合されて、結果的に人物の合計数が減少する場合があります。

「人物」コンテナを使用したセグメント

「人物」の指定はもちろんレポートの指標だけではありません。セグメントを作成する場合も「人物」コンテナを指定することができます。これによって、例えば、「アプリを利用しているユーザーのアプリ・Web 行動」のように複数のデバイス利用を前提としたデータの絞り込みが利用できます。
クロスデバイス分析_セグメント作成.png
以下はディメンション [モバイルデバイスタイプ] を使ったセグメントの例です。それぞれ、モバイルデバイスタイプを選択した人物セグメントを用意して、ベン図で比較しています。このベン図からもわかるように携帯電話・タブレットを利用するユーザーの 6 割程度は、デスクトップも併せて利用していることが分かります。
クロスデバイス分析_セグメント例.png

どうやって実現できるの?

クロスデバイス分析の利用を開始するためには、ご契約面も含めていくつかの前提事項があります。以下の点についてまずはご確認ください。

  • クロスデバイス分析の利用は、Adobe Analytics Ultimate をご契約いただいているお客様にご利用いただけます。ご利用のご契約タイプの確認やご契約タイプの変更のご相談は、アドビ アカウントマネージャーにご相談ください。
  • クロスデバイス分析は、標準で有効化されておらず、レポートスイートの単位で有効化します。データの結合方式を「フィールドベース」「プライベートグラフ」のどちらかを選択して、クロスデバイス分析の有効化をアドビ アカウントマネージャーにご依頼ください。アドビにて有効化のためのセットアップ作業を進めます。

データの結合方式

データの結合方式は「フィールドベース」「プライベートグラフ」のどちらかを選択します。それぞれの機能面での違いは以下になります。利用する ID タイプに合わせて選択します。

観点 フィールドベース プライベートグラフ
Experience Cloud 訪問者 ID サービスの実装 不要 必須
ユーザー識別子の送信方法 いずれかの prop あるいは eVar に格納 (1 つのみ指定可) setCustomerID によって設定
利用できるユーザー識別子の種類 1 種類のみ 複数種類を選択可能
結合できるデバイス数 制限なし 最大 50 ECID (*)
デバイス情報の保持期間 30 日間 6 ヵ月間
  • (*) ECID は、Adobe Analytics のサーバー側で発行する訪問者 ID です。

仮想レポートスイートの作成

アドビにてクロスデバイス分析のセットアップが完了した後は、仮想レポートスイートの作成を行います。
クロスデバイス分析としての結合データは、作成する仮想レポートスイートに自動的に保持されるようになります。仮想レポートスイートの作成後は、データが計測でき次第、実際に分析ワークスペースでデータを閲覧できるようになります。

クロスデバイス分析用に、ワークスペーステンプレートも用意されていますので、データの見方やセグメントの利用例としてご活用ください。
クロスデバイス分析_テンプレート.png

おわりに

今回はクロスデバイス分析に関してご案内しましたが、いかがでしたでしょうか。
Cookieless というキーワードがよく聞かれるように、データの計測に関しては年々制約も増えつつあります。企業のブランドやサービスを支える顧客によりよいサービスを作っていくためにも、Cookie だけに頼らない、ユーザー識別子の利用に関して、みなさまの気づきの一助になりましたら幸いです。

なお、Adobe Analytics を含む Adobe Experience Cloud 製品の新機能に関しては、以下ページより定期的にリリースのご案内をしております。メールのご案内もありますので、ご興味ありましたら購読ください。
https://experienceleague.adobe.com/docs/release-notes/experience-cloud/current.html?lang=ja

<追記>
私たちのチームでは技術のエキスパートを随時募集しています。
カスタマーサクセス部門の紹介や職種のご紹介をしていますので、下記のページもぜひご覧ください。
https://blogs.adobe.com/japan/talent-interview-01/

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