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CML2でVXLAN/EVPNを検証してみる Part3(構築編)

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Last updated at Posted at 2026-10-17

はじめに

前回はVXLAN/EVPNを構成する技術要素について解説しました。

今回は、Cisco Modeling Labs(CML2)を使用して、実際にVXLAN/EVPN環境を構築するための設定方法を解説します。

目的

本記事の目的は以下のとおりです。

  • 物理構成図を参照しながら、VXLAN/EVPNの構築手順を理解する。
  • OSPFによるアンダーレイネットワークを構築する。
  • BGP EVPNによるオーバーレイネットワークを構築する。
  • VXLANを利用したL2延伸およびL3ルーティングを実現する。
  • 設定後の確認コマンドと疎通確認方法を理解する。

検証環境

本記事では、Cisco Nexus 9000vを使用します。

主な構成要素は以下のとおりです。

項目 内容
エミュレーター Cisco Modeling Labs(CML2)
ネットワークOS Cisco NX-OS 10.3(1)
Spineスイッチ 2台
Leafスイッチ 4台
アンダーレイルーティング OSPF
オーバーレイ制御プレーン BGP EVPN(iBGP)
BGP AS番号 65000
BUMトラフィック転送 IPマルチキャスト(PIM-SM)
デフォルトゲートウェイ Distributed Anycast Gateway

※本記事の設定例は、NX-OS 10.3(1)を使用した検証環境を基にしています。機種やNX-OSのバージョンによって、コマンドの対応状況や制約が異なる場合があります。

物理構成図

今回の環境では、2台のSpineスイッチと4台のLeafスイッチでSpine-Leaf構成を構築します。

SpineスイッチはBGPのRoute Reflector(RR)およびPIMのAnycast-RPとして動作します。

LeafスイッチはVTEPとして動作し、サーバ間のL2通信および異なるVLAN間のL3通信を実現します。

主なIPアドレス・VNI情報

項目 設定値
BGP AS番号 65000
SpineSW1 Loopback1 1.1.1.1/32
SpineSW2 Loopback1 2.2.2.2/32
LeafSW4 Loopback1 6.6.6.6/32
LeafSW4 VTEPアドレス 16.16.16.16/32
PIM Anycast-RP 11.11.11.11/32
VLAN 140 172.21.140.0/24
VLAN 141 172.21.141.0/24
VLAN 140のL2 VNI 50140
VLAN 141のL2 VNI 50141
L3 VNI 50999
VRF Tenant-1

全体構成

今回の検証環境は、Spineスイッチ2台、Leafスイッチ4台、Desktop3台で構成します。

SpineスイッチはRoute Reflector(RR)およびPIM Anycast-RPとして動作し、LeafスイッチはVTEPとして動作します。

各Leafスイッチは2台のSpineスイッチに接続することで、アンダーレイネットワークの経路冗長性を確保します。

装置一覧・IPアドレス

ホスト名 役割 Loopback1(Router ID) VTEP用Loopback 管理IP(mgmt0)
SpineSW1 RR / PIM Anycast-RP 1.1.1.1/32 ― 192.168.0.201/24
SpineSW2 RR / PIM Anycast-RP 2.2.2.2/32 ― 192.168.0.202/24
LeafSW1 VTEP 3.3.3.3/32 Lo13:13.13.13.13/32 192.168.0.203/24
LeafSW2 VTEP 4.4.4.4/32 Lo14:14.14.14.14/32 192.168.0.204/24
LeafSW3 VTEP 5.5.5.5/32 Lo15:15.15.15.15/32 192.168.0.205/24
LeafSW4 VTEP 6.6.6.6/32 Lo16:16.16.16.16/32 192.168.0.206/24
  • Loopback1は、OSPF Router IDおよびBGP Router IDとして使用します。
  • LeafスイッチのVTEP用Loopbackは、NVEインターフェースの送信元として使用します。
  • SpineSW1とSpineSW2のLoopback11には、共通のPIM Anycast-RPアドレス11.11.11.11/32を設定します。
  • 管理ネットワークは192.168.0.0/24で、デフォルトゲートウェイは192.168.0.1です。

Spine–Leaf間の物理接続

SpineスイッチとLeafスイッチ間は、すべてL3インターフェースとして構成し、OSPFおよびPIM-SMを有効化します。

接続元 接続元ポート 接続元IP 接続先 接続先ポート 接続先IP
SpineSW1 Eth1/1 10.1.1.1/30 LeafSW1 Eth1/1 10.1.1.2/30
SpineSW1 Eth1/2 10.1.1.5/30 LeafSW2 Eth1/1 10.1.1.6/30
SpineSW1 Eth1/3 10.1.1.9/30 LeafSW3 Eth1/1 10.1.1.10/30
SpineSW1 Eth1/4 10.1.1.13/30 LeafSW4 Eth1/1 10.1.1.14/30
SpineSW2 Eth1/1 10.1.2.1/30 LeafSW1 Eth1/2 10.1.2.2/30
SpineSW2 Eth1/2 10.1.2.5/30 LeafSW2 Eth1/2 10.1.2.6/30
SpineSW2 Eth1/3 10.1.2.9/30 LeafSW3 Eth1/2 10.1.2.10/30
SpineSW2 Eth1/4 10.1.2.13/30 LeafSW4 Eth1/2 10.1.2.14/30

※すべてのSpine–Leaf間リンクでMTUを9216バイトに設定します。

Desktopの接続先・IPアドレス

CML2上のDesktopは、Leafスイッチのアクセスポートに接続します。

Desktop 接続先スイッチ 接続先ポート VLAN IPアドレス デフォルトGW
Desktop1(左端) LeafSW1 Eth1/11 140 172.21.140.100/24 172.21.140.1
Desktop2(右側・VLAN140) LeafSW3 Eth1/11 140 172.21.140.200/24 172.21.140.1
Desktop3(右側・VLAN141) LeafSW3 Eth1/10 141 172.21.141.200/24 172.21.141.1

今回の構成では、Desktop1とDesktop2をVLAN 140に所属させ、VXLANによるL2延伸を検証します。

また、Desktop3をVLAN 141に所属させることで、Distributed Anycast Gatewayを利用したVLAN間ルーティングを検証します。

なお、LeafSW2およびLeafSW4には、今回のDesktopを接続していません。

VLAN・VNI・VRFの対応関係

VLAN VNI 種別 VRF IPセグメント
140 50140 L2 VNI Tenant-1 172.21.140.0/24
141 50141 L2 VNI Tenant-1 172.21.141.0/24
999 50999 L3 VNI Tenant-1 ―

VLAN 140とVLAN 141のSVIには、Distributed Anycast Gatewayとして共通のIPアドレスを設定します。

  • VLAN 140:172.21.140.1/24
  • VLAN 141:172.21.141.1/24
  • Anycast Gateway MAC:0000.2222.3333

VLAN 999はL3 VNIに対応する内部VLANであり、サーバ接続用のVLANではありません。

ルーティング・VXLAN関連設定

項目 設定内容
アンダーレイルーティング OSPF Area 0
オーバーレイ制御プレーン MP-BGP EVPN(iBGP)
BGP AS番号 65000
Route Reflector SpineSW1、SpineSW2
マルチキャストルーティング PIM Sparse Mode
PIM Anycast-RP 11.11.11.11
VTEP LeafSW1~LeafSW4
BUMトラフィック転送 IP Multicast
VNI 50140のマルチキャストグループ 239.0.0.140
VNI 50141のマルチキャストグループ 239.0.0.141
テナントVRF Tenant-1
ARP Suppression 有効
Distributed Anycast Gateway 有効

構成に関する補足

本構成では、SpineスイッチはVXLANトンネルの終端にはなりません。

SpineスイッチはアンダーレイのL3転送を担当するとともに、BGP EVPNのRoute ReflectorとしてLeafスイッチ間のEVPNルート交換を仲介します。

一方、LeafスイッチはVTEPとしてVXLANのカプセル化とデカプセル化を行います。

同一VLANに所属するDesktop間の通信はL2 VNIを利用し、異なるVLAN間の通信ではDistributed Anycast GatewayとL3 VNIを利用したルーティングを行います。

コンフィグの作成

以降では、基本的にSpineスイッチ1台とLeafスイッチ1台の設定例を使用して解説します。

Spine側はSpineSW2、Leaf側はLeafSW4を例とします。

他のスイッチについては、ルータID、Loopbackアドレス、インターフェースのIPアドレスなどを変更してください。

なお、各スイッチのコンフィグ全体はPart4に掲載しています。

1. アンダーレイネットワークの構築(OSPF)

最初に、SpineスイッチとLeafスイッチ間のIPネットワークを構築します。

設計方針

  • ルーティングプロトコルにはOSPFを使用する。
  • OSPFのRouter IDにはLoopback1のIPアドレスを使用する。
  • Spine-Leaf間のリンクはPoint-to-Pointとして設定し、DR/BDRの選出を不要とする。
  • VXLANのカプセル化によるオーバーヘッドを考慮し、アンダーレイのMTUを9216バイトに設定する。
  • BGPピアリング用のLoopbackアドレスとVTEPアドレスをOSPFで到達可能にする。

VXLANでは、元のEthernetフレームをUDP/IPでカプセル化します。

一般的なIPv4 VXLANでは、外側に約50バイトのヘッダーが追加されます。そのため、アンダーレイのMTUが不足すると、パケットのフラグメンテーションや破棄が発生する可能性があります。

本環境では、Spine-Leaf間のMTUを9216バイトとします。

※MTUは経路上の機器で整合性を確保する必要があります。サーバ側のMTUまで9216バイトに統一する必要はありません。

SpineSW2

feature ospf

router ospf UNDERLAY-NET
  router-id 2.2.2.2

interface loopback1
  ip address 2.2.2.2/32
  ip ospf network point-to-point
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

interface Ethernet1/1
  no shutdown
  mtu 9216
  ip address 10.1.2.1/30
  ip ospf network point-to-point
  no ip ospf passive-interface
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

interface Ethernet1/2
  no shutdown
  mtu 9216
  ip address 10.1.2.5/30
  ip ospf network point-to-point
  no ip ospf passive-interface
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

interface Ethernet1/3
  no shutdown
  mtu 9216
  ip address 10.1.2.9/30
  ip ospf network point-to-point
  no ip ospf passive-interface
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

interface Ethernet1/4
  no shutdown
  mtu 9216
  ip address 10.1.2.13/30
  ip ospf network point-to-point
  no ip ospf passive-interface
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

copy running-config startup-config

LeafSW4

feature ospf

router ospf UNDERLAY-NET
  router-id 6.6.6.6

interface loopback1
  ip address 6.6.6.6/32
  ip ospf network point-to-point
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

interface Ethernet1/1
  no shutdown
  mtu 9216
  ip address 10.1.1.14/30
  ip ospf network point-to-point
  no ip ospf passive-interface
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

interface Ethernet1/2
  no shutdown
  mtu 9216
  ip address 10.1.2.14/30
  ip ospf network point-to-point
  no ip ospf passive-interface
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

copy running-config startup-config

動作確認

show ip interface brief
show ip ospf neighbor
show ip route
show ip route ospf

show ip ospf neighborでは、Spine-Leaf間でOSPFのネイバーがFULL状態になっていることを確認します。

また、他のスイッチのLoopbackアドレスがOSPFによって学習されていることを確認します。

2. SpineSWとLeafSW間のiBGPネイバー構築

続いて、SpineスイッチとLeafスイッチ間でBGPネイバーを構築します。

設計方針

  • すべてのスイッチでAS番号65000を使用する。
  • iBGPを使用する。
  • SpineスイッチをRoute Reflector(RR)として動作させる。
  • BGPネイバーの送信元にはLoopback1を使用する。
  • BGPタイマーをデフォルトより短く設定する。

通常、iBGPでは、学習したiBGPルートを別のiBGPピアへ再広告しません。

この制約に対応する方法として、フルメッシュ構成やRoute Reflectorを使用する方法があります。

本環境では、SpineスイッチをRoute Reflectorとして使用することで、Leafスイッチ同士の直接的なBGPピアリングを不要とします。

SpineSW2

feature bgp

router bgp 65000
  router-id 2.2.2.2
  timers bgp 5 15

  address-family ipv4 unicast

  template peer LEAF-PEER
    remote-as 65000
    update-source loopback1

    address-family ipv4 unicast
      send-community
      send-community extended
      route-reflector-client

  neighbor 3.3.3.3
    inherit peer LEAF-PEER

  neighbor 4.4.4.4
    inherit peer LEAF-PEER

  neighbor 5.5.5.5
    inherit peer LEAF-PEER

  neighbor 6.6.6.6
    inherit peer LEAF-PEER

copy running-config startup-config

LeafSW4

feature bgp

router bgp 65000
  router-id 6.6.6.6
  timers bgp 5 15

  address-family ipv4 unicast

  neighbor 1.1.1.1
    remote-as 65000
    update-source loopback1

    address-family ipv4 unicast
      send-community
      send-community extended

  neighbor 2.2.2.2
    remote-as 65000
    update-source loopback1

    address-family ipv4 unicast
      send-community
      send-community extended

copy running-config startup-config

動作確認

show ip bgp summary

以下はSpineスイッチ側の確認例です。

Neighbor        V    AS     Up/Down   State/PfxRcd
3.3.3.3         4    65000  00:02:49  0
4.4.4.4         4    65000  00:02:32  0
5.5.5.5         4    65000  00:02:11  0
6.6.6.6         4    65000  00:02:06  0

State/PfxRcdに数値が表示されていれば、BGPセッションがEstablished状態であることを確認できます。

なお、この段階ではIPv4 Unicastのアドレスファミリについて確認しています。

EVPNのアドレスファミリについては、後述する手順で設定します。

※BGPタイマーの短縮は検証環境向けです。本番環境ではBFDの利用や障害検知設計を含めて検討してください。

3. BUMトラフィックの転送方式としてマルチキャストを使用

VXLANでは、以下のトラフィックをBUMトラフィックと呼びます。

  • Broadcast
  • Unknown Unicast
  • Multicast

本環境では、BUMトラフィックの配送にIPマルチキャストを使用します。

設計方針

  • PIM Sparse Mode(PIM-SM)を使用する。
  • SpineスイッチをPIM Anycast-RPとして使用する。
  • RPの共通アドレスを11.11.11.11とする。
  • 2台のSpineスイッチでRPの冗長化を行う。
  • LeafスイッチのVTEP用LoopbackアドレスをOSPFで広告する。

なお、PIM Anycast-RPとVXLANのDistributed Anycast Gatewayは異なる機能です。

PIM Anycast-RPはマルチキャストのRPを冗長化する仕組みであり、Distributed Anycast Gatewayは各Leafスイッチで共通のデフォルトゲートウェイを提供する仕組みです。

SpineSW2

feature pim

interface loopback11
  ip address 11.11.11.11/32
  ip pim sparse-mode
  ip ospf network point-to-point
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0

ip pim rp-address 11.11.11.11 group-list 224.0.0.0/4

ip pim anycast-rp 11.11.11.11 1.1.1.1
ip pim anycast-rp 11.11.11.11 2.2.2.2

interface Ethernet1/1
  ip pim sparse-mode

interface Ethernet1/2
  ip pim sparse-mode

interface Ethernet1/3
  ip pim sparse-mode

interface Ethernet1/4
  ip pim sparse-mode

interface loopback1
  ip pim sparse-mode

copy running-config startup-config

この設定では、11.11.11.11を共通のRPアドレスとして使用し、1.1.1.1と2.2.2.2をAnycast-RPの構成メンバーとして指定しています。

また、224.0.0.0/4はIPv4マルチキャストアドレス全体を表します。

ただし、本環境でVXLANのBUM転送に使用するマルチキャストグループは239.0.0.140と239.0.0.141です。

本番環境では、RPが担当するグループ範囲を必要なアドレスに限定することが望ましいでしょう。

※もう一方のSpineスイッチにも、Anycast-RPに関する設定が必要です。

LeafSW4

feature pim

interface loopback16
  ip address 16.16.16.16/32
  ip ospf network point-to-point
  ip router ospf UNDERLAY-NET area 0.0.0.0
  ip pim sparse-mode

ip pim rp-address 11.11.11.11 group-list 224.0.0.0/4

interface Ethernet1/1
  ip pim sparse-mode

interface Ethernet1/2
  ip pim sparse-mode

interface loopback1
  ip pim sparse-mode

copy running-config startup-config

動作確認

show ip pim neighbor
show ip pim rp
show ip mroute
show ip route 11.11.11.11

show ip pim neighborで、Spine-Leaf間のPIMネイバー関係を確認します。

また、show ip pim rpでRPアドレスが正しく認識されていることを確認します。

BUMトラフィックが発生した後は、show ip mrouteでマルチキャストルーティングエントリを確認できます。

4. VXLAN/EVPNの有効化とVLAN・VNIの紐づけ

続いて、LeafスイッチでVXLAN/EVPNを有効化します。

LeafSW4

feature nv overlay
feature vn-segment-vlan-based
nv overlay evpn

spanning-tree vlan 1,140,141,999 priority 4096

vlan 140
  name L2-VNI-140-Tenant1
  vn-segment 50140

vlan 141
  name L2-VNI-141-Tenant1
  vn-segment 50141

vlan 999
  vn-segment 50999

copy running-config startup-config

コマンドの解説

コマンド 説明
feature nv overlay VXLAN機能を有効化
feature vn-segment-vlan-based VLANベースのVNIマッピングを有効化
nv overlay evpn BGP EVPNによるVXLAN制御プレーンを有効化
vn-segment 50140 VLAN 140をL2 VNI 50140に紐づけ
vn-segment 50141 VLAN 141をL2 VNI 50141に紐づけ
vn-segment 50999 VLAN 999をL3 VNI 50999に紐づけ

今回の構成では、以下の対応関係になります。

VLAN VNI 用途
140 50140 L2 VNI
141 50141 L2 VNI
999 50999 L3 VNI

L2 VNIは、VXLANを利用して同一L2ネットワークを延伸するために使用します。

一方、L3 VNIはテナントVRFに関連付けられ、VXLANファブリック内でL3ルーティングを行うために使用します。

なお、VLAN 999はサーバ接続用のVLANではなく、L3 VNIに対応する内部VLANです。

※STP Priorityの設定は本検証構成に合わせたものであり、VXLAN/EVPNの有効化に必須の設定ではありません。

動作確認

show vlan brief
show running-config vlan
show vxlan

5. SVIの作成とDistributed Anycast Gatewayの設定

次に、VLAN間のルーティングを実現するためのSVIとVRFを設定します。

Distributed Anycast Gatewayを使用することで、複数のLeafスイッチが同じIPアドレスと仮想MACアドレスを持つデフォルトゲートウェイとして動作できます。

LeafSW4

まず、SVI機能を有効化します。

feature interface-vlan

続いて、テナント用のVRFを作成します。

vrf context Tenant-1
  vni 50999
  rd auto

  address-family ipv4 unicast
    route-target both auto
    route-target both auto evpn

VRF関連コマンドの解説

コマンド 説明
vrf context Tenant-1 テナント用VRFを作成
vni 50999 VRFにL3 VNIを割り当て
rd auto RDを自動設定
address-family ipv4 unicast IPv4ルート用のアドレスファミリを設定
route-target both auto VPNルートのImport/Export RTを自動設定
route-target both auto evpn EVPN用のImport/Export RTを自動設定

今回のようなiBGPベースのVXLAN/EVPNでは、RDおよびRTを自動設定できます。

ただし、eBGPなど構成が異なる場合には、RTの手動設定が必要になる場合があります。

Anycast Gatewayの設定

fabric forwarding anycast-gateway-mac 0000.2222.3333

このコマンドで、Distributed Anycast Gatewayに使用する仮想MACアドレスを指定します。

同じVXLANファブリック内でDistributed Anycast Gatewayを提供するLeafスイッチには、共通の仮想MACアドレスを設定します。

VLAN 140のSVI

interface Vlan140
  no shutdown
  vrf member Tenant-1
  no ip redirects
  ip address 172.21.140.1/24
  fabric forwarding mode anycast-gateway

VLAN 141のSVI

interface Vlan141
  no shutdown
  vrf member Tenant-1
  no ip redirects
  ip address 172.21.141.1/24
  fabric forwarding mode anycast-gateway

L3 VNI用のSVI

interface Vlan999
  no shutdown
  vrf member Tenant-1
  ip forward

VLAN 999のSVIにはIPアドレスを設定しません。

ip forwardを設定することで、IPアドレスを持たないSVIをL3 VNI用のルーティングインターフェースとして使用します。

各コマンドの補足

vrf member Tenant-1

SVIをテナント用VRFに所属させます。

fabric forwarding mode anycast-gateway

対象SVIをDistributed Anycast Gatewayとして動作させます。

ip forward

IPアドレスを持たないL3 VNI用SVIで、IP転送を有効化します。

BGPへのルート再配送について

テナントVRFのConnectedルートをBGPへ再配送し、EVPN Type-5ルートなどによるIPプレフィックスの広告を行う場合には、構成に応じて追加設定が必要です。

例えば、以下のようなルートマップを使用できます。

route-map overlay_subnets permit 10
  match tag 11111

SVI側で対象ルートにタグを付与します。

interface Vlan140
  ip address 172.21.140.1/24 tag 11111

interface Vlan141
  ip address 172.21.141.1/24 tag 11111

続いて、BGPのテナントVRF配下に再配送設定を追加します。

router bgp 65000
  vrf Tenant-1
    address-family ipv4 unicast
      redistribute direct route-map overlay_subnets

なお、上記は追加のルート広告を行う場合の設定例です。

すべてのLeafスイッチで対象VLANのSVIを持つ今回の検証構成では、必要なEVPNルートの種類や実際の転送動作を踏まえ、導入要否を判断してください。

動作確認

show vrf
show ip interface brief vrf Tenant-1
show ip route vrf Tenant-1

6. VTEPの設定

次に、LeafスイッチにNVE(Network Virtualization Edge)インターフェースを作成します。

NVEインターフェースは、VXLANトンネルの終端となる論理インターフェースです。

LeafSW4

interface nve1
  no shutdown
  host-reachability protocol bgp
  source-interface loopback16

  member vni 50140
    mcast-group 239.0.0.140

  member vni 50141
    mcast-group 239.0.0.141

  member vni 50999 associate-vrf

copy running-config startup-config

コマンドの解説

コマンド 説明
interface nve1 NVEインターフェースを作成
host-reachability protocol bgp BGP EVPNをホスト到達性情報の交換に使用
source-interface loopback16 VTEPの送信元インターフェースを指定
member vni 50140 L2 VNI 50140を追加
mcast-group 239.0.0.140 VNI 50140のBUM配送用マルチキャストグループを指定
member vni 50141 L2 VNI 50141を追加
mcast-group 239.0.0.141 VNI 50141のBUM配送用マルチキャストグループを指定
member vni 50999 associate-vrf L3 VNIをVRFに関連付け

VTEPの送信元アドレスについて

source-interface loopback16で指定したLoopback16のIPアドレスが、VXLANパケットのOuter IPヘッダーに使用されます。

今回のLeafSW4では以下のアドレスとなります。

16.16.16.16/32

このIPアドレスに対して、他のVTEPからIP到達性があることが必要です。

BUMトラフィックについて

今回の構成では、BUMトラフィックの配送にIPマルチキャストを使用しています。

そのため、L2 VNIごとにマルチキャストグループを設定しています。

なお、VXLAN/EVPNではBUMトラフィックの配送方法として、BGP EVPNを使用したIngress Replicationも利用できます。

Ingress Replicationを使用する場合には、アンダーレイでBUM配送用のPIMマルチキャストを構築する必要はありません。

動作確認

show interface nve1
show nve peers
show nve vni
show vxlan

7. L2 VNIでEVPNを有効化

続いて、BGP EVPNのアドレスファミリを有効化します。

BGP EVPNは、VTEP間でMACアドレスやIPアドレスなどの到達性情報を交換するために使用します。

設計方針

  • iBGPを使用する。
  • SpineスイッチをRoute Reflectorとして使用する。
  • Extended Communityを送信する。
  • L2 VNIのRDおよびRTを自動設定する。

SpineSW2

nv overlay evpn

router bgp 65000
  address-family l2vpn evpn
    retain route-target all

  template peer LEAF-PEER
    address-family l2vpn evpn
      send-community
      send-community extended
      route-reflector-client

copy running-config startup-config

retain route-target allは、ローカルに対応するVNIを持たないRoute Reflectorでも、受信したEVPNルートを保持して再広告できるようにする設定です。

また、route-reflector-clientを設定することで、LeafスイッチをRoute Reflectorのクライアントとして扱います。

LeafSW4

router bgp 65000
  address-family l2vpn evpn

  neighbor 1.1.1.1
    address-family l2vpn evpn
      send-community
      send-community extended

  neighbor 2.2.2.2
    address-family l2vpn evpn
      send-community
      send-community extended

copy running-config startup-config

続いて、EVPNで使用するL2 VNIを定義します。

evpn

  vni 50140 l2
    rd auto
    route-target import auto
    route-target export auto

  vni 50141 l2
    rd auto
    route-target import auto
    route-target export auto

copy running-config startup-config

RDとRTについて

RD(Route Distinguisher)

EVPNルートを一意に識別するために使用します。

RT(Route Target)

EVPNルートをどのVNIやVRFでImport/Exportするかを制御するために使用します。

今回のような同一AS内のiBGP構成では、autoを使用することで設定を簡略化できます。

ただし、RDおよびRTの自動生成方式は、対象となるVNIやVRF、機種、NX-OSバージョンによって異なる場合があります。

動作確認

show bgp l2vpn evpn summary
show bgp l2vpn evpn
show nve peers
show nve vni

show bgp l2vpn evpn summaryでは、EVPNアドレスファミリのBGPセッションを確認します。

show bgp l2vpn evpnでは、EVPNルートの学習状況を確認できます。

8. スイッチポートへのVLANの割り当て

続いて、サーバ接続用のスイッチポートにVLANを割り当てます。

LeafSW

VLAN 140用のアクセスポートを設定します。

interface Ethernet1/11
  no shutdown
  switchport
  switchport mode access
  switchport access vlan 140

VLAN 141用のアクセスポートを設定します。

interface Ethernet1/10
  no shutdown
  switchport
  switchport mode access
  switchport access vlan 141

設定を保存します。

copy running-config startup-config

動作確認

show vlan brief
show interface status
show interface Ethernet1/10 switchport
show interface Ethernet1/11 switchport

なお、サーバ接続ポートのMTUについては、接続するサーバのNIC設定や通信要件に応じて設定してください。

VXLANによるカプセル化はVTEP間で行われるため、サーバ接続ポートのMTUをアンダーレイと同じ9216バイトにすることは必須ではありません。

9. ARP Suppression(ARP抑制)の設定

VXLAN/EVPNでは、ARP Suppressionを使用することでARPブロードキャストの転送量を削減できます。

ARP Suppressionが有効な場合、LeafスイッチはEVPNで学習したMACアドレスとIPアドレスの対応情報などを利用し、ARP要求に対してローカルで応答できます。

TCAMの設定

プラットフォームによっては、ARP Suppressionを使用するためにTCAM領域の調整が必要です。

今回の検証環境では、以下の設定を使用しました。

hardware access-list tcam region vpc-convergence 0
hardware access-list tcam region arp-ether 512

copy running-config startup-config

TCAM設定を反映するため、必要に応じて再起動します。

reload

※TCAMの構成変更が必要かどうか、また使用するコマンドや割り当て可能なサイズは機種・NX-OSバージョンによって異なります。実機では事前確認が必要です。

ARP Suppressionの有効化

再起動後、NVEインターフェースでARP Suppressionを有効化します。

interface nve1

  member vni 50140
    suppress-arp

  member vni 50141
    suppress-arp

copy running-config startup-config

ARP Suppressionの動作

通常、ARP要求は同一L2ネットワーク内にブロードキャストされます。

一方、ARP Suppressionが有効な場合、LeafスイッチはEVPNで学習したホスト情報を使用してARP要求に応答できます。

これにより、不要なARPブロードキャストがVXLANファブリック全体に転送されることを抑制します。

ただし、必要なMAC/IP情報を保持していない場合には、ARP要求がフラッディングされる場合もあります。

なお、一般的なProxy ARPとの違いについては、ARP SuppressionがEVPNで配布されたホスト情報を利用して、L2ネットワーク内のARPフラッディングを最適化する機能である点を押さえておくとよいでしょう。

動作確認

show running-config interface nve1
show nve vni
show ip arp suppression-cache

※確認コマンドはNX-OSのバージョンやプラットフォームによって異なる場合があります。

10. DesktopへのIPアドレス設定

最後に、CML2上のDesktopにIPアドレスを設定します。

左端のDesktop(VLAN 140)

CML2のDesktopへログインします。

検証環境の初期認証情報は以下のとおりです。

Username: cisco
Password: cisco

IPアドレスを設定します。

sudo ip addr add 172.21.140.100/24 dev eth0
sudo ip route add default via 172.21.140.1

設定確認を行います。

ip addr show
ip route show
ping 172.21.140.1

右端のDesktop(VLAN 140)

sudo ip addr add 172.21.140.200/24 dev eth0
sudo ip route add default via 172.21.140.1

設定確認を行います。

ip addr show
ip route show
ping 172.21.140.1

右端のDesktop(VLAN 141)

sudo ip addr add 172.21.141.200/24 dev eth0
sudo ip route add default via 172.21.141.1

設定確認を行います。

ip addr show
ip route show
ping 172.21.141.1

疎通確認

すべてのDesktopにIPアドレスを設定したら、以下の疎通確認を実施します。

同一VLAN間の通信確認

VLAN 140のDesktopから実行します。

ping 172.21.140.200

同じVLAN 140に所属するDesktop間で通信できることを確認します。

この通信では、VXLANを利用したL2延伸が正しく動作していることを確認できます。

異なるVLAN間の通信確認

VLAN 141のDesktopから実行します。

ping 172.21.140.100
ping 172.21.140.200

異なるVLAN間で通信できることを確認します。

この通信では、Distributed Anycast GatewayによるL3ルーティングが正しく動作していることを確認できます。

疎通できない場合の確認項目

疎通できない場合は、以下の順序で確認すると、原因を切り分けやすくなります。

確認対象 確認コマンド
OSPFネイバー show ip ospf neighbor
アンダーレイの経路 show ip route
BGP EVPNネイバー show bgp l2vpn evpn summary
EVPNルート show bgp l2vpn evpn
VTEP間の接続 show nve peers
VNIの状態 show nve vni
PIMネイバー show ip pim neighbor
PIM RP show ip pim rp
マルチキャスト経路 show ip mroute
MACアドレス学習 show mac address-table
VRFのルーティング show ip route vrf Tenant-1

特に、以下の点を確認してください。

  1. 各VTEPのLoopbackアドレスに到達できること。
  2. BGP EVPNのネイバーがEstablished状態であること。
  3. 対象VNIが正しく設定されていること。
  4. PIMによるマルチキャスト転送経路が構築されていること。
  5. 各DesktopのIPアドレスとデフォルトゲートウェイが正しいこと。

まとめ

本記事では、Cisco Nexus 9000vを使用してVXLAN/EVPNを構築するための一連の設定方法を解説しました。

構築手順を整理すると、以下のようになります。

  1. OSPFによるアンダーレイネットワークの構築
  2. Spine-Leaf間のiBGPネイバー構築
  3. PIMによるBUMトラフィック転送経路の構築
  4. VXLAN/EVPNの有効化とVNIの設定
  5. SVIとDistributed Anycast Gatewayの設定
  6. VTEPの設定
  7. BGP EVPNのアドレスファミリとRD/RTの設定
  8. サーバ接続ポートへのVLANの割り当て
  9. ARP Suppressionの設定
  10. DesktopのIP設定と疎通確認

VXLAN/EVPNは複数の技術要素を組み合わせるため、設定項目が多くなります。

しかし、アンダーレイ、オーバーレイ、VTEP、EVPNルート交換、L2/L3転送という役割を分けて理解すると、全体の構成を把握しやすくなります。

参考資料


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