round 関数の挙動一覧

round は通常実数を最も近い整数に丸める操作である。
ところが,隣接する整数と等間隔にある n+0.5 に対する挙動が言語によって異なるので,ここにまとめる。
自分が知っている限りまとめた。

手法

round(n+0.5) を n にするか n+1 にするか決める方法として以下のものがある (勝手に名付けた)

• away
  n と n+1 のうち,0から離れている方を選ぶ
• closer
  n と n+1 のうち,0に近い方を選ぶ
• even
  n と n+1 のうち,偶数の方を選ぶ
• odd
  n と n+1 のうち,奇数の方を選ぶ
• up
  常に n+1 (大きい方) を選ぶ
• up
  常に n (小さい方) を選ぶ

つまり, 0 近辺の値であれば

手法	-2.5	-1.5	-0.5	+0.5	+1.5	+2.5
away	-3	-2	-1	+1	+2	+3
closer	-2	-1	0	0	+1	+2
even	-2	-2	0	0	+2	+2
odd	-3	-1	-1	+1	+1	+3
up	-2	-1	0	+1	+2	+3
down	-3	-2	-1	0	+1	+2

全体的な概況

• round 関数は概ね away であることが多い。まれにカスタマイズできる場合がある。
• フォーマットで丸める場合はCの sprintf を流用しているためか概ね even であることが多い。

各言語の実装

"%fmt" は "%.0f" や "%.0e" などのCに由来する記法を使うことを示しており, %f, %e, %g の何れにおいても同じ丸め方をする。
"{:fmt}" は "{:.0}" や "{:.0e}" などのPythonのような記法を示しており,どちらも同じ丸め方である。

Swift (Foundation)

傾向通り

関数	手法
round(x)	away
x.rounded()	away
String(format:"%fmt",x)	even

• x.rounded(method) は引数 method で手法を指定することができる

  method	手法
  .toNearestOrAwayFromZero	away
  .toNearestOrEven	even
  .towardZero	trunc 関数と同様
  .awayFromZero	trunc 関数の反対
  .down	floor 関数と同様
  .up	ceil 関数と同様

Ruby

傾向通り

関数	手法
x.round(digit)	away
sprintf("%fmt",x)	even

• x.round(digit=0,half: method) は引数 method で手法を指定することができる

  method	手法
  :up or nil	away
  :down	closer
  :even	even

PHP

傾向通り

関数	手法
round($x)	away
sprintf("%fmt",$x)	even

• round($x,$digit=0,$method) は引数 $method で手法を指定することができる

  $method	手法
  PHP_ROUND_HALF_UP	away
  PHP_ROUND_HALF_DOWN	closer
  PHP_ROUND_HALF_EVEN	even
  PHP_ROUND_HALF_ODD	odd

Python

フォーマットも even であることに注意

関数	手法
round(x,digit)	even
"{:fmt}".format(x)	even

JavaScript

全く傾向通りでない

関数	手法
Math.round(x)	up
x.toFixed(digit)	away
x.toPrecision(digit)	away
x.toExponential(digit)	away

Java

全く傾向通りでない

関数	手法
Math.round(x)	up
String.format("%fmt",x)	away

C/C++

傾向通り

関数	手法
round(x)	away
sprintf("%fmt",x)	even
setprecision(n) << x	even

Fortran

傾向通り

関数	手法
nint(x)	away

Go

傾向通り

関数	手法
math.Round(x)	away
math.RoundToEven(x)	even
sprintf("%fmt",x)	even

Rust

format! で引っ掛かりそうである

関数	手法
x.round()	away
format!("{:fmt}",x)	特殊

format! は概ね even なのであるが, ±0.5 は 0 にはならず, away のように ±1 になる。

C# / PowerShell (.NET Core)

傾向と真逆

言語	関数	手法
C#	Math.Round(x)	even
PowerShell	[Math]::Round($x)	even
PowerShell	Write-Output("{0:0.}" -f $x)	away

• Math.Round(x,digit=0,method) は引数 method で手法を指定することができる

• [Math]::Round($x,$digit=0,$method) は引数 $method で手法を指定することができる

  method	$method	手法
  MidpointRounding.ToEven	[MidpointRounding]::ToEven	even
  MidpointRounding.AwayFromZero	[MidpointRounding]::AwayFromZero	away
  MidpointRounding.ToZero	[MidpointRounding]::ToZero	closer
  MidpointRounding.ToNegativeInfinity	[MidpointRounding]::ToNegativeInfinity	down
  MidpointRounding.ToPositiveInfinity	[MidpointRounding]::ToPositiveInfinity	up

Julia

傾向と真逆

関数	手法
round(x)	even
@sprintf("%fmt",x)	away

• round(x,method) は引数 method で手法を指定することができる

  method	手法
  RoundNearest	even
  RoundNearestTiesAway	away
  RoundNearestTiesUp	up
  RoundToZero	trunc 関数と同様
  RoundDown	floor 関数と同様
  RoundUp	ceil 関数と同様

Lua

傾向通り

関数	手法
string.format("%fmt",x)	even

Shell

傾向通り

関数	手法
printf "%fmt" $x	even

表計算

傾向通りではない
両方で統一している模様

関数	手法
ROUND(x,digit)	away
セルのフォーマット	away

不正確さ

参考: Python チュートリアル
これらの丸める手法は必ずしも守られてはいない。
例えば, even の手法をとり,小数点以下の桁数が指定できるPythonの round 関数を利用する場合, round(2.675,2) は 2.68 ではなく 2.67 になる。
これは,実数が2進数で扱われている都合上, 2.675 が厳密にその値として保管されていないことにより,バグではない。
実際に計算すると,

(2.68-2.675)+(2.67-2.675) ≈ 4.4e-16 > 0

となっており, 2.675 は両方に等間隔ではなく, 2.67 に少し近い。