はじめに
IBM TurbonomicはCPU, Memoryといったシステム資源の最適化を実現するIBMが提供するARM(Application Resource Management)ツールとなります。これにより、リソース不足によるアプリケーション・パフォーマンス劣化のリスク、および過剰な資源割り当てによる無駄なコスト発生の回避を実現することができます。
Turbonomicの管理対象としてはオンプレミス、クラウド、コンテナ基盤等、多岐に渡りますが、今回はオンプレミスにて稼働しているIBM Powerのサーバ群を対象としてリソース割当の最適化を実現する環境を作成します。
なお、Turbonomicの導入については以下のオンラインマニュアルも合わせて参照してみてください。
https://www.ibm.com/docs/ja/tarm/8.13.4?topic=documentation-installation
1. Turbonomic の導入方式
Turbonomicの導入方式は以下の4通りがありますが、今回はVMware OVAをデプロイ可能な環境を準備して管理対象となるIBM Powerのサーバ群にネットワーク接続して管理を行う環境を作成する方式としました。
導入方法 | 入手方法 | 管理対象 |
---|---|---|
VMware OVA | IBM提供URLよりダウンロード | パブリッククラウド オンプレミス Kubernetes |
Hyper-V VHD | 同上 | 同上 |
Kubernetes/ OpenShift |
OpenShift Operator HubからOperatorスクリプトを実行 | 同上 |
SaaS | IBMにてお客様専用の環境を設定、インターネット経由でアクセス | パブリッククラウド オンプレミス(SaaS Client経由) |
2. Turbonomicの導入
2.1 Turbonomicインスタンスを実行するための最小要件
Turbonomicインスタンスを実行するための要件はデプロイメントする環境、および管理する対象の環境に依存して異なることになります。
管理する対象のエンティティーの数が多いほど、およびそれらの間の関係が広範囲になるほど、Turbonomicを実行するVMに必要なリソースは多くなる傾向があります。以下、VMwareにTurbonomicインスタンスをデプロイする場合の最小要件となります。
VMテクノロジー vCenter Version7.0、および8.0
ストレージ要件 1.75TB以上(シック、およびシンプロビジョニング)
メモリー 128GB(10,000台以下のVMの場合、64GB)
CPU 8VCPUs
なお、ここでは詳しい説明は割愛しますが、TurbonomicはKubernetesクラスターとしてVM上にインストール、稼働することになります。
2.2 Turbonomic OVAの準備、およびデプロイ
Turbonomic OVAのダウンロード・ページのURLはIBMから提供されますが、2024年9月時点で最新のものは以下リンクより入手することも可能です(v8.13.3)。
https://community.ibm.com/community/user/aiops/viewdocument/turbonomic-latest-releases-downlo?CommunityKey=8e1487dd-98f9-435f-adc6-7a37d8b9b217&tab=librarydocuments
OVA ファイルは、 Turbonomic コンポーネントがインストール済みのVM としてデプロイされます。なお、OVAファイルは16GB程度の大きさとなります。
Turbonomic OVAファイルのダウンロード、VMware環境へのデプロイ、システム管理者アカウント(turbo)のパスワード設定、ルートパスワードの設定、および静的IPアドレスの設定については、以下IBM提供のオンラインマニュアルの1~7を実行してください。なお、OVAファイルのインポートはvCenter Server クライアント、デプロイされたTurbonomic VMの初期設定はリモートコンソールを用いて実施します。
https://www.ibm.com/docs/ja/tarm/8.13.4?topic=image-ova-installing-vcenter-prem-environments
2.3 Turbonomic コンポーネントのデプロイ
Turbonomic OVAイメージのVMware環境におけるデプロイ完了後、Turbonomicアプリケーション・コンポーネントの導入を行います。まずはTurbonomicのインストール・スクリプトを実行します。
ここではturboユーザでTurbonomic VMインスタンスにSSHログインを行い、導入用のスクリプトを実行します。
$ /opt/local/bin/t8cInstall.sh
Have you run the ipsetup script to setup networking yet? [y/n] y
...
スクリプトがインストールを完了するまでしばらく待ちます。
インストールが完了すると以下のメッセージが表示されます。
#################################################
Deployment Completed, please login through the UI
https://xxx.xxx.xxx.xxx
#################################################
上記URLを利用してTurbonomicユーザ・インターフェースにログインし、管理者ユーザ・アカウントのパスワードを設定します。Turbonomicには、ADMINISTRATOR 役割を持つ administrator という名前のデフォルトのユーザー・アカウントが含まれています。 初めてログインするときには、そのアカウントに対して独自のパスワードを設定してください。
TurbonomicのUIにログインすると以下のような画面が表示されます。
3. Turbonomic の初期設定
3.1 ライセンスの導入
IBMよりE-mailにて送信されたフル・ライセンス・キー・ファイル、もしくは試用ライセンス・キー・ファイルがあることを確認してください。ライセンス・キー・ファイルをローカル・マシンに保存して、Turbonomic 環境にアップロードできるように準備しておきます。
Turbonomic UIを利用した初回ログインの画面より、「LET'S GO」ボタンをクリックします。次にライセンスをインポートするために以下の画面右上の「IMPORT LICENSE」ボタンをクリックします。
ライセンス・キー・ファイルをドラッグ・アンド・ドロップ、もしくはファイル参照してアップロード、「SAVE」することでライセンスが有効となります。なお、ライセンス・キー・ファイルは必ず.xml, .lic, .jwtの拡張子を持つファイルとなります。
3.2 Turbonomicの管理対象としてIBM Powerを追加する
ここではIBM PowerをTurbonomicの管理対象とします。IBM Powerを管理対象とするには、IBM Powerを管理しているHMC(Hardware Management Console)をTurbonomicのTargetとして追加します。
左の「SETTINGS」より「Target Configuration」を選択します。
次に「NEW TARGET」を選択します。
「PowerVM」を選択します。
ここで管理対象のIBM Powerを管理するHMCのネットワーク構成情報、ユーザ/パスワード等を入力することで該当HMCをTurbonomicの管理対象として設定できました。
Targetとして構成・定義されたHMCからのリソース情報を取得することで、以下の例のようにIBM Powerのリソース管理が可能となります。