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どうなるニッホン!〜話題のインボイス制度について税理士さんに凸してきたよの巻〜

Last updated at Posted at 2020-01-21

はじめに

だいぶ前から広報されていた話なのですが、2019年8月頃からインボイス制度に関する話題がフリーランス界隈で急に喧しくなってきたように感じます。
やれフリーランスの時代は終わりだ、年間収入1000万を超えないと仕事にありつきにくくなるやら、色々なサイトで主張がまちまちで、真偽がはっきりしないとお嘆きの貴兄もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、実際にインボイス制度がフリーランスに及ぼす影響について税理士さんに詳しく聞いてきたので、まとめてみました。

なお、フリーランスと一口に言っても色々な仕事形態があると思いますが、ここでは人材エージェントから業務委託契約で仕事を受注して働くフリーランスを中心に話を進めて行きたいと思います。その他の場合の方は契約形態が多岐に渡るので、ここで出てくるワードを参考にご自身の場合に当てはめてお読みいただけたらと思います。

また、すでに税制についてよくご存知の方も、最後に免税事業者として仕事を継続できる可能性や、今後の法制情勢についてまとめたのでよろしければご覧ください。

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インボイス制度とは

インボイス制度とは、仕入税額控除の要件を満たすための新たな制度のことです。
これまでの請求書等保存方式では、仕入先が発行した請求書や納品書を保存し、自らがそれを帳簿に記載しておくことで、消費税の仕入税額控除が認められていました。つまり、消費者や消費税を納める義務のない免税事業者からの請求書でも、仕入税額控除の対象とすることができたわけです。

ところが、インボイス制度が導入されると、消費税を納める義務のある課税事業者が発行するインボイス(適格請求書)に記載されている消費税額しか、仕入れや経費にかかる消費税を差し引くことが認められなくなります。

課税事業者とは

課税事業者とは、消費税を納付する義務がある法人、個人事業主を指します。
フリーランスエンジニアの方は毎月、報酬と消費税をエージェント会社に対して請求しその合計金額を受け取っていると思いますが、課税事業者になるとこの消費税を税務署に納める必要が出てきます。

例えば、Aさんは年収を消費税込みで880万円受け取っているとします。
免税事業者であれば、消費税として受け取っている80万円も自身の収入として受け取って問題ありませんでしたが、課税事業者になると、この消費税分80万から年間諸経費の消費税分を差し引いた金額を税務署に納める必要があります。

今までとどう違うの?

年間所得が1000万以下のフリーランスエンジニアの方は、これまでは免税事業者として消費税分の税金を支払わなくても問題なかったですが、課税事業者にならなければ仕事をまわしてもらえなくなるかもしれません。
一般的な会社、つまり法人は課税事業者ですので当然消費税を税務署に支払っていますが、インボイス制度が開始されると、年間にかかった諸経費の消費税分を差し引くにあたり、その諸経費分は課税事業者とのやりとりのものしか認められなくなります。そのため、税務署に支払う消費税を少なくするためにも、取引しているフリーランスエンジニアに課税事業者になるように要求しますし、課税事業者でないフリーランスとは取引したくない。ということになリます。

フリーランスエンジニア側としては、所属エージェントに対して課税事象者の登録番号を伝える必要が出てきます。さらに手間なのは、フリーランスエンジニアが確定申告する際には、その年間諸経費の消費税を差し引くに当たって、領収書、明細書も一緒に提出する必要が出てきてしまいます。

というわけで、次は以下の2点についてどうするか説明していきたいと思います。

  • 課税事業者になるには
  • 納める消費税を少しでも節約するには

課税事業者になるには

課税事業者になるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、どなたでも(※1)課税事業者になることができ、その上で「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出すれば、登録番号を交付してもらうことができます。
幾つかのサイトでは、「売上を増やして消費税の課税事業者になる」と説明しているところがありますが、実際にはその必要はありません。年間1000万以上の売り上げの個人事業者は必ず課税事業者になる必要があるためそのような説明になってしまったと思われます。また、前述の通り法人になれば課税事業者になるので、法人になることをお考えの方もいらしたかもしれませんが、必ずしもその必要はありません(※2)。

実は、2021年10月1日からインボイス施行開始の2023年10月1日までは、経過措置として「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出するだけでその届出日より課税事業者となることができますが、上記の手続きを踏んだ方が簡易課税方式で納税することができるため、多くの場合はお得になります。簡易課税方式については後ほど説明します。

納める消費税を少しでも節約するには

課税事業者になると、これまで報酬にかかる税金を納めなくても良かったのが、納める必要が出てくるのは避けられません。残念です。
ですが、実は税収方式は以下のいずれかを選択することができ、ほとんどの場合でお得になる方式があります。それぞれについて見ていきます。

原則課税方式

一般的な税収方式です。報酬額の税額から諸経費分の税額を差っ引いた金額を納税します。例えば先のAさんが年間にかかった諸経費の内訳が、税率8%および10%のものを税抜でそれぞれ100万円かかったとした場合、納める税額は以下となります。

原則課税方式で収める税額
800万円(報酬額) * 10% -  100万円(諸経費) * 8% - 100万円(諸経費) * 10% = 62万円

納税する際には、その諸経費の明細も併せて税務署に提出します。

簡易課税方式

一方、原則課税方式に対して、簡易課税方式という税収方式を選択することができます。
これは、年間報酬の(サービス業であれば※3)50%をみなし仕入れ率と設定できる方式で、Aさんの場合、年間報酬800万の半分を年間諸経費であると計算します。

簡易課税方式で収める税額
(800万円(報酬額) - 400万円(みなし仕入れ額)) * 10%(消費税) = 40万円

多くのフリーランスエンジニアは、売り上げの半分以上が諸経費ということはまずないと思いますので、簡易課税方式を選んだ方がお得ということになります。さらに、この方式でしたら諸経費ごとに税率を区別したり、領収書を提出したりといった面倒な手続きは不要になります。

簡易課税方式を選択するためには、課税事業者になった後に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

ここで簡易課税方式を選択するに当たっていくつか気を付けたい点があります。以下に注意しながら、税収方式を選択していただけたらと思います。

  • 大きな買い物をして諸経費が売り上げの半分を超えちゃったという場合
  • 消費税課税事業者選択届出書の提出は2022年12月31日までに必要という点
  • 課税方式を一度変更したら、その後2年間は変更できないという点
  • 基準期間における課税売上高が5,000万円以下であるという点

最後に

大抵のフリーランスエンジニアは、消費税課税事業者選択届出書および適格請求書発行事業者の登録申請書を提出して課税事業者になり、消費税簡易課税制度選択届出書を提出して簡易課税方式を選択すれば良いということがわかりました。
消費税を支払わなければならないのは残念ですが、とりあえず簡単かつ納税を節約する方法があるとわかりました。今まで通りハッピーエンジニアライフを過ごしていただきたいと思います。

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最後に、本当に課税事業者にならないといけないのか、インボイス制度は本当に施行されるのかなど、そのあたりのことをお答えしてもらったので参考までに載せておきます。

本当に課税事業者にならないといけないの?

Webサービスを扱っている会社で取引先に課税事業者の登録番号を確認している企業の割合を体感で答えてもらいましたが、現時点でこれまで1%だったのが10%に増えたという感じだそうです。
このペースでしたら、インボイス制度が施行された後でも、もしかしたら免税事業者の方でもこれまで通り継続して仕事を回してもらえる可能性があるかもしれません。
それと、もしご自身の全ての取引先が簡易課税方式を利用していたとしたら特に登録番号を伝える必要はないので、免税事業者のままで事業を継続することもできます。そのあたりは適宜状況を確認しながら判断していただけたらと思います。

インボイス制度施行は延期される?

さらに、消費税の引き上げ開始も平成29年4月1日から平成31年10月1日に延長されたように、インボイス制度の適用開始も延長されるのではないかと見る向きもあります。
ドラスティックな改革はお役所側でも対処が追いつかないし、まだまだ情勢は変わる可能性もあるということでしょう。

参考

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