はじめに
昨日、こういう記事を書きました。私が自分で作って使っているアドイン 秀.xlsm の「AIのマクロ一覧」からマクロを選んで、注文を選んで、ボタンを1つ押すと、ブラウザの AI チャットが直したコードを返してくる、という話です。
今日直していたのは、同じ秀.xlsm に入っている「Excelコンボ」のほうです。仕組みは同じでブラウザの AI チャットと繋がっていますが、相手にするのはマクロ1本ではなく、ブックまるごとです。
画面の手入れをするつもりで開いたのですが、途中で手が止まりました。Excelコンボの強みが、思っていたところとは別にあると気づいたからです。
Excelコンボは、Excel の中にいます。
先に書いておくと、この記事は完成報告ではありません。何ができる道具なのか、作った私にもまだ分かっていません。今日見えてきたところまでを、途中経過として置いておきます。
TL;DR
- Excelコンボのいちばんの強みは、AI が Excel の中にいることでした。ブックを閉じずに、見ながら相談できます
- 開いているブックと、いま見ているシートが、そのまま相手に伝わります。「どのファイル?」から始まりません
- 選んでいるセルも渡せます。答えは同じ画面に返り、直した結果は目の前で変わります
- 中にいるから、構造を渡せます。シートの構造、数式、エラーセル、図形とマクロの配線──17種類を AI のほうから要求でき、VBA が読んで返します
- しかも調べるだけで終わりません。セルへの書き込みも、マクロの置換・実行も、承認を取ったうえでブックに反映します
- 実際に「このブック全体の構成を調べて」と一言投げたら、AI は1回の要求で9件の材料をまとめて頼んできました。往復2回・23秒。何を見るかは、こちらが指定していません
- 設計の芯は「AI に道具を持たせない」です。渡す文章の1行目に「道具(ツール)は一切ありません」と書いてあります。持たせず、注文票に書かせる
- 記事をひととおり書き終えたあとに撃ってみたら、**「選択しているセルに適切な計算式を入力してください」の一行で、式がセルに入りました。**合計しろとすら言っていません。何の式かも、どの範囲かも、AI が決めています
- そこで気づきました。目標を受け取る・自分で調べる・自分で行動するの3つが揃っています。Excelコンボは、もうエージェントとして動いていました
- 同じ形を作っている人がいないか5回調べましたが、**見つかりませんでした。**部品はどれもあるのに、この組み合わせだけ空いています
- ただし、**Excelコンボで何ができるのかは、まだ分かっていません。**材料は揃っているのに、使い道を数え切れていない、というのが今日の結論です
Excelコンボは、Excel の中にいます
私は普段、Excel の道具を直すのに Claude Code と VBAマネージャーを使っています。外から Excel を掴んで、コードを読んで、書き戻す。速いし、確実です。
ただ、あれは外にいます。
ターミナルを開いて、まず「どのブックが開いているか」を確かめるところから始まります。私がいまどのシートを見ているのか、どのセルを選んでいるのかは、向こうからは分かりません。指示のたびにブック名を言葉で伝えることになります。答えは会話の画面に返ってくるので、結果を見るにはもう一度 Excel に戻ります。
Excelコンボは、そこが違います。
- **開いているブックが、そのまま対象です。**閉じる必要も、保存する必要もありません
- いま見ているシートが、最初から選ばれています
- 選んでいるセルも渡せます。「この範囲、どうなっている?」で通じます
- **答えは同じ画面に返ります。**手を動かす先が変わりません
- 直った結果は、目の前のシートで変わります
電話の向こうにいる相手と、隣に座っている相手の違いだと思っています。電話だと「どのファイルの何行目ですか」から始まります。隣に座っていれば、画面を指して「これ」で済みます。
Excelコンボの画面はこうです。Excel の上に浮いていて、後ろにシートが見えています。この位置関係がそのまま、Excelコンボの性格です。
これは思っていた以上に大きい差でした。人が Excel で作業していて疑問が出るのは、たいてい画面を見ている最中です。「この列、なんでこうなってるんだ」と思った瞬間に聞ければいい。そこでターミナルに手を移してブック名を打ち直すとなると、聞くほうをやめてしまいます。
隣にあるから聞ける、というのは道具として別の性質だと思います。
中にいるから、構造を渡せます
外から触る道具は、ブックをファイルとして扱います。中にいる道具は、ブックをいま開いている画面として扱えます。この違いが、渡せるものの差になって出ます。
Excelコンボが AI に渡す文章の中に、要求できる材料の一覧が書いてあります。
| シート一覧 | ブック一覧 |
| 範囲 シート名!A1:C40 | 数式 シート名!A1:C40 |
| シート構造 シート名 | 数式パターン シート名 |
| エラーセル シート名 | 名前付き範囲一覧 |
| テーブル一覧 | 図形ボタン一覧 シート名 |
| 選択範囲(いま画面で選んでいるセル) | 検索(セルの中から探す) |
| マクロ一覧 | マクロ本文 マクロ名 |
| コード検索(コードの中から探す) | ショートカット一覧 |
| マクロ実行 マクロ名(承認制) |
AI が ###要求### と書いて、この一覧から必要なものを並べると、Excelコンボの VBA が実際に読んで【材料】として返します。一度に読めるのは100行×30列まで、往復は最大7回です。
自分で決めた仕様ですが、こうして並べて数えたのは今日が初めてでした。値を渡す道具だと思っていたら、構造を渡す道具になっていました。
なかでも「選択範囲」は、中にいる道具にしか用意できないものです。外から見ている相手には、私がいまどこを選んでいるか分かりません。
実際に撃つと、こうなります
定型から「このブック全体の構成を調べて」を選んで、実行を押しました。返ってきたのがこれです。
シート構成を、シートごとの役割つきで説明してきました。往復2回・23秒です。
大事なのは、こちらが渡した材料を1つも指定していないことです。指示は「このブック全体の構成を調べて」の一言だけ。何を見るかは向こうが決めています。
その中身が、経過タブに残ります。
1回目の要求で、AI はこれだけまとめて頼んできました。
- シート構造(2枚ぶん)
- 範囲(
目次!A1:K15と秀_設定!A1:Z50) - マクロ一覧
- テーブル一覧
- 名前付き範囲一覧
- 図形ボタン一覧(2枚ぶん)
**9件です。**しかも1回にまとめてあります。渡す文章に「要る材料は1回にまとめて要求する」と書いてあるので、それに従っています。7秒で材料が揃い、2回目の送信から9秒で答えが返りました。
これをコピペでやるとしたら、シートを2枚ぶん眺めて、名前の管理を開いて、図形を右クリックして、VBE を開いて、それぞれ貼る、という作業になります。何を貼るかを決めるところから、人がやることになります。
書かせてみたら、入りました
ここまで書いて、記事はひととおり形になりました。そのあとで、もう一つ撃ってみました。
セルを1つ選んで、こう頼みました。
選択しているセルに適切な計算式を入力してください。
指定したのはこれだけです。**「合計しろ」とすら言っていません。**何の式にするのかも、どの範囲を対象にするのかも、どこに書くのかも、こちらは何も決めていません。
Excelコンボが動き出しました。経過タブを見ると、AI が何を調べたか分かります。
1回目の要求は5件でした。
- 選択範囲
- 範囲
目次!A1:K15 -
数式
目次!A1:K15 - シート構造
秀_設定 - 範囲
秀_設定!A1:J20
選んだセルだけでなく、周りの値と、そこに入っている数式まで見ています。他のシートの構造まで確かめている。
それでも足りなかったらしく、2回目に4件を追加で頼んできました。
- 図形ボタン一覧
目次 - マクロ一覧
-
コード検索
目次 - 範囲
目次!A5:K12
マクロのコードまで検索しています。「このセルは何のためのセルなのか」を、シートの見た目だけでなく、そこに関わっているマクロからも突き止めようとしたのだと思います。
そして書き込みを申請してきました。
AI がシートに書き込もうとしています。元に戻せません。
書込先: 目次!K10(1行×1列)
実行してよろしいですか?
[はい]を押した結果がこれです。
=SUM(K8:K9) が入りました。K8 と K9 に 1 が並んでいて、K10 がその下。その並びを見て「ここは上2つの合計だ」と決めたのは AI です。
往復5回・47秒でした。
「選択しているセル」で通じています。番地を1つも言っていません。ここが、この記事でずっと書いてきた「中にいる」ということの、いちばん短い証明だと思います。Claude Code に同じことを頼むなら、「秀.xlsm の目次シートの K10 に」と番地から伝えることになります。
承認は、こう出ます
書き込みを申請されると、画面にこれが出ます。
AI がシートに書き込もうとしています。元に戻せません。
書込先: 目次!A1(5行×3列)
実行してよろしいですか? [はい][いいえ]
マクロを書き換えるときは、もう少し情報が出ます。
AI がマクロ『○○』を書き換えます。
(モジュール shu003・旧45行 → 新52行)
置換前のコードは退避します(あとで[元に戻す]ボタンで復元できます)。実行してよろしいですか?
押さないかぎり、ブックは1文字も変わりません。[いいえ]を押すと経過タブに「書込: 却下」と残り、AI にも「人間に却下されました」と返るので、向こうはそれを踏まえて次を考えます。
セルのほうにだけ「元に戻せません」と書いてあるのは、マクロから書いた値は Excel の元に戻す(Ctrl+Z)が効かないからです。マクロの置換は退避があるので戻せます。
ほかにも、こういうことが頼めそうです
先に断っておきます。ここに並べるのは、Excelコンボの材料の一覧を見ながら思いついたものです。**全部を実際に撃って確かめたわけではありません。**確かめたのは、上の1件です。
表の作りを説明させる。「このシートの表がどうなっているか教えて」。見出しがどこで、何件あって、どの列が何を表しているか。人が初めて開いたブックで、最初にやることです。
おかしいところを探させる。「このシートのデータに変なところがないか調べて」。エラーセルの一覧、数式のパターン、書式がばらついている列。エラーセルは要求ひとつで場所が全部返るので、目で追う必要がありません。
検算させる。「この集計表の数字が、元のデータと合っているか確かめて」。集計側と元データの両方を読ませて突き合わせる。人が目でやっている作業です。
前に作られたブックを解読させる。「これは何をする道具か、誰がいつ何を入力して、どこが自動で計算されるか教えて」。シートも数式も図形の配線も、AI が順に取りに行きます。
**引き継ぎ書を書かせる。**同じ材料から「初めて使う人向けの手順書」を書かせる。
**隠れているものを洗わせる。**非表示の行・列・シート、結合されているセル、外部ファイルへのリンク、名前付き範囲、シート間の参照。どれも標準の画面では一つずつ確かめるしかないものです。
**選んだ範囲について聞く。**表の一部を選んで「ここ、どうなってる?」。範囲を言葉で説明する必要がありません。
思いつくままに並べただけで、たぶんこれで全部ではありません。Excelコンボの材料は17種類あって、それを7往復ぶん組み合わせられるので、組み合わせの数だけ使い道があるはずです。そこを数え切れていない、というのが今日の正直なところです。
調べるだけで、終わりません
Excelコンボでは、AI は材料を要求するだけでなく、ブックに手を入れることも要求できます。
-
###書込### シート名!A1と書けば、セルに値や数式を書き込む -
###マクロ置換### マクロ名と書けば、マクロを書き換える -
###マクロ実行### マクロ名と書けば、マクロを実行する
どれも承認制です。Excelコンボが実行前に画面を出すので、内容を見てから通すか却下するかを決めます。却下すれば何も起きません。何をしたかは経過タブに時刻つきで並びます。
置換のときは、置換前のコードを退避してから入れ替えます。気に入らなければ「元に戻す」で戻せます。
ここも「中にいる」ことが効いています。**調べた相手と、直す相手と、結果を確かめる相手が、全部同じ開いているブックです。**ファイルを保存して、閉じて、外の道具に渡して、また開いて確かめる、という往復がありません。
AI に道具を持たせない、という設計
もう一つ、並べ直して見えたことがあります。
Excelコンボが AI に最初に渡す文章は、こう始まっています。
あなたはExcelのフォームの中で動く作業相棒です。道具(ツール)は一切ありません。
代わりに、材料が要るときは、返答をまるごと次の形だけにしてください。
持たせない、と最初に言い切っています。
いま世の中で AI に仕事をさせる作りは、たいてい逆だと思います。AI にツールを持たせて、ファイルを読ませ、コマンドを打たせる。そのほうが速いのは確かで、私も別の場面ではそちらを使っています。
ただ、持たせると付いてくるものがあります。権限の設計、実行環境の用意、鍵の管理。そして何より、相手がツールを使える AI でなければ成立しません。
Excelコンボが相手にしているのは、ブラウザで開いた普通の AI チャットです。ファイルを読む手も、コマンドを打つ手も持っていません。持たせようがない。
だから、頼ませる形にしました。**AI にできるのは、注文票に書いて出すことだけです。**読むのも、書くのも、実行するのも、全部 VBA がやります。承認も VBA が取ります。
窓口で紙に書いて出すのと同じです。奥に入って自分で棚を探すことはできない。けれども、書けば出てきます。
この形にした結果、こうなりました。
- API キーが要らない(ブラウザにログインしてあればいい)
- 権限の設計が要らない(AI は何も持っていない)
- 相手を選ばない(ツールを持たない AI でも、エージェントとして働ける)
- 何をされたか全部見える(経過タブに、要求と結果が時刻つきで並ぶ)
持たせないほうが弱いはずなのに、この用途では持たせないほうが通りました。
気づいたら、エージェントでした
上の一件で、自分が何を作っていたのかが分かりました。
エージェントの条件は、たいてい3つと言われます。目標を受け取る/自分で情報を集める/自分で行動する。
- 目標 ── 「選択しているセルに適切な計算式を入力してください」
- 情報収集 ── 材料17種類から、自分で選んで要求する
- 行動 ── セルへの書き込み、マクロの置換、マクロの実行
3つとも揃っています。Excelコンボは、もうエージェントとして動いていました。
普通、エージェントを作るときは AI にツールを持たせます。ファイルを読ませ、コマンドを打たせ、そのために権限を設計し、実行環境を用意し、鍵を管理する。
Excelコンボは、その逆でした。**持たせずに成立しています。**注文票を書かせて、VBA が動く。だから相手がツールを持たない普通の AI チャットでよくて、API キーも要らず、何をされたかは全部経過タブに残る。
自分で書いておいて言うのも変ですが、この形になるとは思っていませんでした。
同じものを探してみました
エージェントとして動いていると分かったので、同じことをやっている人がいないか調べました。日本語で3回、英語で2回です。
部品ごとには、どれもありました。
| やっていること | 見つかったもの |
|---|---|
| VBA から UI Automation でブラウザを操る | あります。ただし相手は業務システムの画面で、AI チャットではありません |
| Excel から生成 AI を呼ぶ | あります。ただしどれも API キーを使っています |
| Excel の AI エージェント | あります。Microsoft の Agent Mode、LlamaIndex の Spreadsheet Agent、SheetMind という論文も出ています |
| ブラウザの AI チャットを自動操作する | あります。ただし Python と Selenium です |
VBA から UI Automation でブラウザを操る話は、@Mrs_P さんが RPA ソフトとして記事にされています。
Excel から Gemini を呼ぶ話は @yakuse さんの記事があります。こちらは Google AI Studio でキーを発行するところから始まります。
Excel のエージェントは、大きいところが本気で作っています。
論文もありました。SheetMind は、複数のエージェントで表計算を自動化する枠組みです。
**ただし、これらは全部「AI にツールを持たせる」作りです。**SheetMind の論文にも、ツールの層が LLM にセルの読み書きをさせる、と書かれています。
つまり、AI に道具を持たせず、注文票で材料を要求させ、VBA が読んで返し、承認を挟んで書き込む——この組み合わせは、5回の検索では見つかりませんでした。
見つからなかった、というだけです。**世界初かどうかは分かりません。**英語圏の個人ブログや、社内で作られたものまでは届いていません。
ひとつ見立てを書いておくと、この形はExcel の側から考えた人しか思いつかないのではないかと思っています。AI の側から作ろうとすると、まず「何を持たせるか」の話になります。VBA でずっとブックを触ってきて、「材料はこっちが渡せばいい」という感覚が先にあると、持たせない形が自然に出てきます。空いているのは、思いつかなかったからではなく、その位置に立っている人が少ないからだと思います。
外の道具と、どう住み分けるか
正直に書いておきます。マクロを腰を据えて作り直すなら、Claude Code と VBAマネージャーを使うほうが速いです。
今日の Excelコンボの改造そのものが、まさにそのやり方でした。外から Excel を掴んで、コードを読んで、直して、書き戻して、コンパイルまで通す。Excelコンボが7往復かけることを、あちらは何十回でもやります。中身の勝負では比べものになりません。
住み分けは、こうなりました。
| 向いていること | |
|---|---|
| Claude Code + VBAマネージャー | 腰を据えた改造。何度も往復する作業。外にいるので、対象を言葉で指定する |
| Excelコンボ | 開いているブックについて、その場で聞くこと。見ながらの相談。手を止めない |
セルに式を書かせるという話でいえば、Microsoft の Copilot や Anthropic の Claude for Excel も同じことをします。あちらは Excel に統合された公式の道具なので、なめらかさでは勝てません。往復に十数秒かかるようなこともないはずです。
違うのは、成立の条件と、中身が見えるかどうかです。
| 公式のアドイン | Excelコンボ | |
|---|---|---|
| 費用 | 月額の契約 | 無料の AI チャットで足りる |
| 導入 | ライセンスを入れる | .xlsm を1つ渡すだけ |
| 中身 | 見えない | VBA なので全部読める・直せる |
| 渡す材料 | 向こうが決めている | 自分で足せる |
| なめらかさ | 速い | 往復に十数秒 |
速さと使い心地で並ぼうとは思っていません。ただ、**「AI が状況を読んで、式を作って、セルに書き込む」という一点では、同じところまで来ました。**しかも中が開いている箱で。
材料の一覧を増やしたければ、VBA に1行足せば AI が見られるものが増えます。公式の道具は、向こうが見せると決めたものしか見せてくれません。
そしてもう一つ、決定的な差があります。Claude Code は入れられない環境があります。 Excelコンボが要るのはブラウザだけです。ログインしてあれば動きます。
まだ、まとまっていないところ
今日いちばん手を入れたのは、Excelコンボの定型の指示の欄でした。あらかじめ用意しておいて、選ぶだけで撃てる文です。
6個しかなかったものを、45個まで増やしました。ただし、これは数を並べただけです。
最初に増やしたときはマクロを調べる指示ばかりになっていたので、シートとデータを見るものを足しました。並びも、前半にブックとシートの話、後半にマクロの話、と分けてもらいました。それでも、まだ練れていません。
- 似た意味の指示が並んでいる
- 一言で足りるものと、条件を書き足さないと動かないものが混ざっている
- 「この作業をするマクロを書いて」のように、選んだあと自分で書き足す前提のものがある
- そもそも、どういう頼み方をすると良い答えが返るのかを、まだ掴んでいません
Excelコンボの材料は17種類あって、AI が組み合わせて取りに行けます。その前提で「どう頼むか」を設計し直す必要があります。数を増やして満足するところではありませんでした。ここは、これから何度も作り直す部分だと思っています。
測ってみた ── 画面を隠すと速くなるのか
実験の記録を一つ。
Excelコンボを動かすと、ブラウザが前に出てきます。画面をそちらに取られるので、隠したほうが速いのではないかと考えて、AI に測らせました。
「窓を掴む→本文を掴む→入力欄を探す→値を入れる→送信ボタンを探す」までを、ブラウザを前に出した場合と、Excel を前にしたまま裏で動かした場合で、3回ずつです。
| 平均 | 最短 | 最長 | 書き込み | |
|---|---|---|---|---|
| ブラウザを前に出す | 0.02秒 | 0.01 | 0.03 | 3回とも成功 |
| Excel を前にしたまま | 0.01秒 | 0.01 | 0.02 | 3回とも成功 |
**差はありませんでした。**0.01秒の違いは測定の揺れです。裏に回したままでも入力欄を掴めて、書き込みも通りました。
考えてみれば当たり前で、この仕組みは画面を見て操作しているのではなく、Windows が持っているアクセシビリティの情報を直接読んでいるからです。見えているかどうかは関係ありません。
全体の時間を決めているのは別の3つでした。AI の応答待ち(十数秒)、ページ読み込みの固定待ち(3秒)、モデル切替の固定待ち(4.3秒)。画面を隠しても速くなりません。
なので、隠すかどうかは速度ではなく体験で決めました。Excelコンボには経過タブがあって、いま何をしているかが文字で出ます。だから隠しました。**Excel の画面から目を離さずに済みます。**経過が見えない「AIのマクロ一覧」のほうは、今までどおりブラウザを前に出します。動いているのが見えないと、止まっているのと区別が付かないからです。
事実と見立ての仕分け
**事実。**材料の種類は17。往復は最大7回、一度に読めるのは100行×30列。「このブック全体の構成を調べて」の実測は往復2回・23秒で、1回目の要求は9件でした。「選択しているセルに適切な計算式を入力してください」は往復5回・47秒、要求は1回目5件・2回目4件、結果は =SUM(K8:K9) です(どちらも経過タブの画面のとおり)。速度の実測は上の表のとおりで、Windows 11・64bit Excel の私の一台、相手は日本語表示のブラウザで開いた AI チャット1種類です。書き込み・マクロ置換・マクロ実行が承認制であること、置換前のコードを退避することは、コードを確認しました。
**検索について。**同じ形を探したのは2026年8月17日、日本語3回・英語2回です。見つからなかったというだけで、無いことの証明にはなりません。
見立て。「中にいることがいちばんの強み」は私の見立てです。外から触る道具と並べて使い勝手を測ったわけではありません。ただ、同じ日に両方を使っていて、聞くまでの手数がはっきり違いました。
**まだ分かっていないこと。**Excelコンボで何ができるのかは、正直まだ掴めていません。上に並べた使い道は、材料の一覧を見て思いついたものです。実際に撃って確かめたのは、そのうちの一つだけです。材料が17種類あって7往復できる、という条件から出てくる組み合わせを、私はまだ数え切れていません。何かができそうな道具である、というところまでしか言えません。
正直な線引き
- Excelコンボの動作を確かめているのは、Windows 11・64bit Excel の私の環境一台です
- 部品は画面の表記を手がかりに探しています。日本語表示の画面が前提です
- **サービス側が画面の文言を変えると止まります。**実際、8月11日に別の機能でこれを食らっています
- 秀.xlsm はマクロのコードを読み書きするので、使う側の Excel で「VBA プロジェクト オブジェクト モデルへのアクセスを信頼する」を有効にしておく必要があります
- 書き込み・置換・実行はすべて承認制です。却下すれば何も起きません。ただし承認を押すのは人なので、中身を読まずに押せば、読まずに通ります
- Excelコンボの材料の上限(100行×30列・7往復)を超える調べものは、そもそも渡しきれません。大きな表を丸ごと理解させる道具ではありません
- **Excelコンボの定型の指示は、まだ整っていません。**数だけ並んでいる状態で、頼み方の設計はこれからです
- 土台の UI Automation まわりは、コメント欄で教わったライブラリを使わせてもらっています。経緯は前の記事に書きました
おわりに
この記事は、途中まで「調べる道具の話」でした。材料が17種類あって、構造を渡せて、コピペより多くのことが分かる。そこまで書いて、ひととおり形になったと思っていました。
書き終えたあとに撃った一行で、話が変わりました。
「選択しているセルに適切な計算式を入力してください」。それだけです。向こうが選択範囲を見に来て、周りの数式を確かめて、マクロのコードまで検索して、5往復かけて「ここは上2つの合計だ」と決めて、書き込みを申請してきた。承認を1回押したら、=SUM(K8:K9) が入りました。
調べる道具ではありませんでした。**目標を渡せば、自分で調べて、自分で書くところまで行く道具でした。**しかも相手は、ブラウザで開いた無料の AI チャットです。
作ったのは自分ですが、何を作っていたのかは、撃ってみるまで分かりませんでした。
コードを読んで数えるより、一回撃つほうが早かった──今日いちばんの収穫は、たぶんそこです。






