0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

VBAマネージャーがすごすぎて、AIの感覚が追いついていないんじゃないか事件の話

0
Last updated at Posted at 2026-08-11

はじめに

自分で作った道具のことを、作った本人が正しく見積もれていない——という話をします。

正確には、私ではありません。私と一緒にその道具を使っている AI のほうです。

会話するだけでマクロが直る、フォームも作れる、という道具を作って公開しています。実際に動いています。ところが、その道具を毎日使っている当の AI が、いまだに「人が手で作ったら何分かかるか」で物事を見積もっていました。

二日のあいだに、同じ型の間違いを二度見ました。記録として残します。

TL;DR

  • AI が「半日から一日かかります」と言った作業が、実際には九分で終わりました
  • 二日後、今度はフォームを作るという発想がそもそも出てきませんでした。会話で作れば一分もかからないのに、「見るだけの表示」で済ませようとしていた
  • どちらも根は同じでした。人が手で作る場合の相場で、天秤にかけていた
  • AI は自分の速さを知りません。道具が相場を変えても、判断の基準は自動では更新されない
  • 私が二度とも止められたのは、自分で作った道具が実際に何秒で動くかを知っていたからです。知らない人なら、たぶん乗ります
  • 直し方は精神論ではなく数字でした。「フォームは安い」ではなく「実測1分未満」と書いて渡す
  • 副産物として、Excel が持っていない機能がひとつできました。ショートカットキーの一覧管理です

一つ目 ── 「半日から一日」と言われた作業が、九分だった

八月の頭に、記事のコメントで教わった手順を実装する作業をしていました。詳しくは前の記事に書いています。

このとき、AI に修正を頼んだところ、こう返ってきました。

「半日から一日はかかると思います」

私はその場で「言い過ぎだ」と言いました。だいたいの見当がついていたからです。自分で作った道具で、コードを取るのも書き戻すのも一秒かかりません。作業の中身は、開発キットのヘッダから番号を数えて、それを定数として書くことです。

実際にやらせたら、九分でした。 しかもそのうち七分は、AI が頼んでいない専用モジュールを勝手に作って、それを探して入れ直した手戻りです。まっすぐ行けば三分ほどの作業でした。

半日と九分では、四十倍以上ちがいます。

あとで理由を聞いたら、こういうことでした。

  • 難易度が読めない部分を、そのまま時間に換算していた
  • 時間を決めていたのは「番号が分かるかどうか」というゼロか一かの問題で、分かった瞬間に終わる。時間で測る対象ですらなかった
  • そして、人が手で打つ前提の世間相場を引いてきていた

三つ目が今回の本題です。

二つ目 ── フォームを作る、という発想が出てこなかった

昨日、別の作業をしていました。

私のアドインには、マクロにショートカットキーを割り当てる仕組みがあります。ただ、その管理がずっと面倒でした。どのキーが何に割り当たっているのか、どのキーが空いているのか、一覧で見る方法がありません。

そこで AI に相談したら、こう提案してきました。

「一覧を表示するマクロに、照合を足しましょう」

いま設定されているキーと、手元の対応表を突き合わせて、食い違いがあればメッセージで知らせる、という案です。悪くはありません。悪くはないのですが、見るだけです。追加も削除もできません。

私はこう言いました。フォームを作ればいいのではないか、と。マルチページを使って、マクロの一覧と、キーが付いているものの一覧を、タブで分ければ管理しやすくなる。

そのとおりになりました。数分で動くものができました。
VBAマネージャーを使えば、AIが会話するだけで、フォームを作ってくれます。
Excelにはショートカットを管理できるような機能がなくて、そこは結構ブラックボックス化しています。
これを解決するのが長年の課題でした。

できたものが、これです。

ショートカット管理フォームのふたつのタブ

  • 左のタブ「マクロ一覧」── 全マクロが並びます。絞り込み欄があり、キーの付いているものは頭に文字が出ます
  • 右のタブ「ショートカット」── キーが付いている十七件だけが並びます。選んで解除できます
  • 下に「割り当て」「解除」「閉じる」

作ってから、もう一つ言いました。割り当てるキーの候補は、絞れるはずだと。二十六文字ぜんぶ並べる必要はありません。十七件が使用中なら、選べるのは残りの九個(B D E M Q R V X Z)だけです。

これも数分で入りました。使用中のキーは、そもそも選択肢に出てきません。二重取りが構造的に起きない形になりました。

何が起きていたのか ── 値札が、昔のまま貼ってあった

この二つは、別の作業に見えて同じ間違いです。

AI に聞いたら、こう答えました。フォームを作るコストを**「人が VBE でコントロールを一つずつ置いて作る場合」で見積もっていた**、と。その相場だと十五分から一時間です。いっぽうメッセージ表示なら五行で済む。天秤にかければ、軽いほうへ倒れます。

ところが実際の所要は、こうでした。

工程 時間
レイアウトの構築(宣言を書いて実行) 数秒
コードの注入 数秒
マクロの追加 四本 各一〜二秒
合計 一分未満

中身は入れ替わっているのに、棚に貼ってある値札が昔のままでした。

道具を作ったのは私です。作ったあと、その道具を一番よく使っているのは AI です。使っている当人が、その道具で何がどれだけ安くなったかを、自分の判断に反映していませんでした。

一つ目の「半日から一日」も同じでした。数百行を数秒で書けるのに、人が手で打つ前提の相場を持ってきている。自分の速さを、自分で勘定に入れていません。

私が止められた理由と、止められない人の話

二度とも、私はその場で止めました。「言い過ぎだ」「フォームにしろ」と。

ただ、これは自慢する話ではないと思っています。止められたのは、私が実際に何分で終わるかを知っていたからです。

道具を自分で作っているので、コードの取り出しが何秒か、フォームの構築が何秒かを、体で知っています。だから「半日」と言われた瞬間に違和感が出ます。

知らなければ、どうでしょうか。

「半日から一日かかります」と AI に言われたら、たいていの人はそこで着手をやめると思います。やる前に萎えるからです。実際には九分で終わる作業なのに、その日はもう手を付けない。翌日には忘れている。

「フォームより表示のほうが簡単です」と言われたら、そのまま表示で作ると思います。動くものはできます。ただ、押せない道具ができあがる。

間違った見積もりは、間違った答えより気づきにくい。 答えなら動かせば分かりますが、見積もりは動かす前に選択を狭めてしまいます。

直したこと ── 精神論ではなく数字を置く

AI には記憶の仕組みがあります。次に開いたときにも読まれる場所です。そこにこう書いておくよう頼みました。

書いたのは「フォームを積極的に使いましょう」ではありません。それだと、たぶんまた表示に流れます。数字を置きました。

  • レイアウト構築 数秒 / コード注入 数秒 / マクロ追加 各一〜二秒 / 合計一分未満
  • 人が手で作れば十五分から。その古い相場で天秤にかけるな
  • 見るだけでなく操作が要る場面は、表示と天秤にかけない。フォームにする

見積もりのほうにも、前に同じことを書いてあります。所要が読めないときは時間を言わない、次の一手と判断する地点を言う、と。それでも今回また出ました。一度書けば直るものではないようです。

副産物 ── Excel が持っていなかった機能

本題からは外れますが、できたものの話も書いておきます。

Excel の標準では、マクロにショートカットキーを割り当てるのは、マクロの一覧画面から一つずつ「オプション」を開いて設定する方式です。一覧して見る画面はありません。どのキーが空いているかを調べる方法もありません。

十七件も割り当てていると、これは地味に効きます。新しく足したいとき、空いているキーを思い出せません。うっかり二重に振ると、片方が黙って効かなくなります。

今回できたフォームでは、その両方が消えました。一覧で見えて、空きだけが候補に出ます。

もうひとつ、キーの割り当て情報をマクロ本体のコメントに書くようにしました。

Sub 翌日()
    '★ショートカット Ctrl+Shift+G

VBA のショートカット定義は、コードを開いても画面に出てきません。裏に隠れています。だから、マクロを移動したり書き換えたりしたときに剥がれても気づけない。印を本文に置けば、触る前に見えます。

事実と見立ての仕分け

例によって仕分けます。

事実。八月九日の作業で、AI が「半日から一日」と見積もり、実際は九分(うち手戻り七分)で終わったこと。八月十一日に、ショートカット管理をフォームにする案が AI から出ず、表示への追加を提案されたこと。フォームの構築が、レイアウトからコード注入まで合わせて一分未満だったこと。できたフォームがマルチページ二ページ・コントロール十個で、割り当て済みのキーが十七件、空きが九個だったこと。確かめたのは Windows 11・64bit の Excel の一台のみです。

見立て。「人が手で作る相場で見積もっていた」は、AI 本人がそう説明したというだけで、内部で何が起きているかを確かめたわけではありません。「知らない人なら乗ってしまう」も私の推測です。実際に他の人が同じ場面でどう判断するかは見ていません。「数字で書けば直る」も、まだ効果を確かめていません。書いたばかりです。

正直な線引き

  • **AI の見積もりが常に外れるという話ではありません。**二日で二回見た、というだけです。当たっている場面のほうが多いはずですが、数えていません
  • 教わった手順そのものは正確でした。外したのは所要時間の見積もりだけで、実装の中身ではありません
  • ショートカット管理のフォームは、私のアドインの中にあります。公開の予定は今のところありません
  • キーの割り当ては、コメントを正本にして、フォームを閉じた後に一括で掛け直す作りです。掛け直しの最中に他の作業はできません
  • 記憶に数字を書いたことで次から直るかどうかは、まだ分かりません。同じ種類の注意書きは前にも書いていて、それでも今回また出ています

おわりに

道具を作ると、できることが増えます。それは分かりやすい。

今回分かったのは、その先でした。**できることが増えても、判断の基準は自動では動きません。**古い値札が貼られたまま、中身だけ入れ替わっている。しかも値札を読んでいるのは、中身を入れ替えた当人でした。

私が二度とも止められたのは、たまたま自分で作った道具だったからです。買ってきた道具だったら、たぶん言われたとおりに「半日」を信じていました。

その道具が実際にどれだけの時間で動くかを、使う人が知っていること。当たり前のようですが、そこだけが最後の砦でした。

札は変わらん

値札は、貼り替えておきます。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?