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探すのは機械、読むのはAI ── Excelの上に検索とAIの三段構えを組んだら、国の設計図と同じ形だった話

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はじめに

私は事務員です。プログラマーではありません。

前回の記事で、数式の説明とデータの検品を Excel の中で AI にやらせる話を書きました。

次は「AI要約説明」の話を書くと予告したのですが、その前に一本挟みます。

「NO‼︎VBA」の人が、VBAにやって来た

本題の前に、象徴的な出来事を一つ書かせてください。

Excelの解説動画をよく見ます。中でも「ExcelドカタCH」。登録者約20万人、Excel系チャンネルとしては日本最大級で、Power Query など「モダンExcel」と呼ばれる機能の解説では第一人者だと私は思っています。運営しているのは経理の実務家の方で、オンライン講座の看板にはっきりこう掲げています。

「NO‼︎マクロ、NO‼︎VBAでExcelを効率化」

マクロを覚えなくても Power Query ならマウス操作で済む。習得が簡単で効果が高い。筋の通った、まっとうな主張です。

その方が2026年6月、「VBAコードのコピペ不要 | Claude CodeでExcelマクロをブックに全自動登録」という動画を出しました。AIがVBAを書き、ブックに組み込み、検証用ブックで動作確認まで回す。人間は作業計画に赤を入れて承認するだけ。本人は動画の中で「席を外して戻ってきたら作り終わっていた」と言っています。

転向ではないと思います。「NO‼︎VBA」はもともと「一番安い道具でやれ」という経済計算で、VBAを人間が書いて保守するには高すぎた時代には Power Query が正解でした。AIがVBAを書き、直し、検証までする時代になって、高かった理由が消えた。**前提が変わったから、結論を更新した。**それをためらいなくやるのが本物の実務家だと思います。

「NO‼︎VBA」の第一人者がVBAにやって来る。時代が変わった合図だと受け取りました。

合図は、もう一つありました

同じ頃、YouTube で官僚二人の対談動画を見ました。経産省『デジタル経済レポート』を主筆した若手官僚・津田通隆さんと、『DXの思考法』の著者で元商務情報政策局長・西山圭太さんの対談です(前編後編)。国のデジタル政策の設計図を書いてきた人たちが、こう語っていました。

データを一箇所に集めてきた20年のやり方は限界で、これからはデータを現場に置いたまま、AI のほうがデータのある場所へ出向く。そして、意味の地図は決定論的、AI は非決定論的——毎回違うことを言う。この二つを組み合わせるから、信頼できるものになる——。

国の設計図の言葉なのに、私の机の上で毎日動いているものの説明に聞こえました。

そしてもう一つ、時代の変わり目をはっきり感じたことがあります。経産省は2018年の DXレポート(いわゆる「2025年の崖」)で、既存システムのブラックボックス化を負債と断じていました。属人化した Excel ブックも、ずっとその文脈で語られてきた側です。ところが今回の対談は、現場固有の文脈こそ宝だと語っています。現場のブックは一行も変わっていません。変わったのは、AI という読み手が現れたことです。読めないから負債だったものは、読めた瞬間に業務知識の現物に変わります。

ブラックボックス化も属人化も、読み手がいなかった時代の言葉です。もう過去のものです。 Excel の中身が見える時代が、始まっています。

実務の第一人者の判断と、国の設計図。別々の場所からの合図が、同じ方向を指しています。前回書いた「Excel × AI のコンビネーション」の時代は、本当に始まっているのだと思います。

今回は、その時代の実例をうちから一つ。長年の悩みだった「ファイル探し」が今週、一つの形になった話です。先に種を明かすと、この道具はちょうど「決定論の地図の上に、非決定論の AI を薄く一枚」という、あの設計図どおりの形をしています。

TL;DR

  • 10年以上育てている自作の「ファイル一覧.xlsm」(PC内のファイル索引)に、本文検索を足しました
  • スペース区切りで AND、縦棒で OR。Word・Excel・PowerPoint の中身も読みます
  • 検索結果は「表示」ではなくシートの行データとして返ってきます。だから次の作業にそのまま流せます
  • その上に AI を一枚だけ載せて、①ファイル名 → ②本文 → ③AIが読んで答えるの三段構えにしました
  • 全部 AI にやらせる検索と違って、途中の結果が全部見えるのがこの構成の値打ちです

土台の話 ── 10年育てた索引

私のPCには「ファイル一覧.xlsm」というブックがあります。フォルダを指定するとファイル名・更新日・サイズ・パスをシートに一覧化する、それだけの道具ですが、10年以上使い続けているので、私のPCの主要なフォルダはほぼこれで索引化されています。

ファイル名で探す分には、これで足りていました。困るのは「ファイル名は覚えていないが、中に書いた言葉なら覚えている」ときです。Windows の検索は索引の気分次第で漏れますし、結果は「表示」されるだけで、そこから先の作業につながりません。

本文検索を足した

そこで、一覧に載っているファイルの中身を検索するマクロを足しました。名前は「本文検索」です。

01.png

一覧の上に小さなフォームが出るので、探したい言葉を入れて「実行」を押すだけです。

仕様は次のとおりです。

  • 検索語はフォームで聞く。スペース区切り=AND、縦棒(|)区切り=OR
    • 例:イセドー|サヤカ 大館 →「イセドーかサヤカを含み、かつ大館も含む」
  • 対象は、一覧シートで画面に出ているものだけ。フィルタで隠した行は対象外です
    • つまり「まずフィルタで絞ってから撃つ」といういつもの Excel の操作が、そのまま検索範囲の指定になります
  • 対象の拡張子はテキスト系23種(.md .txt .py .csv .srt など)+ Office 新形式6種
  • ファイル名そのものも検索対象です。名前だけに言葉があるファイルも拾えます
  • ヒットしたファイルだけが結果シートに並び、末尾の列に一致した行の抜粋が出ます

読み取り専用で、対象ファイルには何も書き込みません。

02.png

最初に実戦で撃ったとき、あるキーワードで30件ヒットしました。前日に AI(Claude Code)に同じ条件で PC 内を検索させたときの実測が30ファイル。別の道具で答え合わせして完全一致です。機械の層は決定論なので、こういう裏取りができます。

「郵便」で撃ったら、知らないファイルが出てきた

先日、試しに「郵便」という言葉で撃ってみました。出てきた一覧を見て、正直びっくりしました。名前を見るかぎり郵便とは縁もゆかりもなさそうなブックばかりが並んでいるのです。最初は不具合を疑いました。

ところが末尾の抜粋の列を見ると、どれもちゃんと「郵便」を含んでいます。住所録の「郵便番号」の見出しだったり、何年も前に作った表の片隅だったり。自分で作ったファイルなのに、そこに郵便番号を書いたことを自分が忘れていただけでした。

これがファイル名検索との差です。**名前は記憶の産物ですが、中身は事実です。**忘れていても、中に書いた言葉は消えません。ファイル名で探しているかぎり、この一群は一生出てこなかったはずです。

そして「本当に入っているのか」を疑ったとき、その場で抜粋の列を見れば確かめられます。中身を見せずに「これが答えです」と出してくる道具だったら、私はたぶん信用しなかったと思います。

Word・Excel・PowerPoint の中身も読む

.docx や .xlsx は実体が ZIP で、中に本文の XML が入っています。Word なら document.xml、Excel なら sharedStrings.xml、PowerPoint なら slides の下です。これを展開してタグを剥がせば、Office 文書も「ただのテキスト」として検索できます。

最初は VBA の定番である Shell.Application の CopyHere で展開していたのですが、これが遅い。1ファイルあたり1秒近くかかります。AI に「もっと速くできないか」と聞いたら、「Windows 標準の tar.exe で展開すれば数倍速くなります」と返ってきました。

' Windows 10 以降に標準で入っている tar.exe は zip を展開できる
' .docx をコピーせず直接読めて、同期実行なので完了待ちのループも要らない
CreateObject("WScript.Shell").Run _
    "tar.exe -xf """ & fFull & """ -C """ & xtDir & """ " & tarArgs, 0, True

差し替えてどうなったか、記事に書く前に実測し直しました。手元の Office ファイル100件(合計8MB)で、展開と読み込みの合計が 2.8秒。1ファイルあたり平均28ミリ秒、2回目以降は平均13ミリ秒まで下がります。旧方式は1ファイルあたり約1秒でしたから、30倍以上。100ファイルで1分40秒コースだったものが、3秒足らずになりました。

(正直に書くと、「速い方法を知っているなら最初からそれで組め」という話です。作った本人=AI が一番よく分かっていたはずで、私に聞かれてから出してきました。しっかり叱っておきました。)

三段構え ──「AIファイル一覧」

本文検索ができたことで、構成が三段そろいました。名前は「AIファイル一覧」としています。

  1. ファイル名検索(既存の索引)── 一瞬。まず名前と場所で絞る
  2. 本文検索(今回の新設)── 秒。絞った中から、中身に言葉があるものを特定する
  3. AIが読んで答える ── ②で特定したファイルを AI に読ませて、「いつ何をしたか」を日付の根拠つきで答えさせる

各段の出力が、次の段の入力になっています。そして各段の中間結果は、全部シートの行データとして目の前に残ります。

なぜ全部 AI にやらせないのか

「AIで検索できます」という道具は増えました。ただ、ああいう道具は途中が見えません。外したときに、どこで外したのか分からないのです。AI が見つけられなかったのか、そもそも索引に入っていなかったのか、キーワードが悪かったのか、切り分けようがありません。

三段構えなら、①で絞った結果も②のヒット一覧も見えているので、外したら「どの層で外したか」がその場で特定できます。①と②は決定論の機械で、何度やっても同じ結果を返します。揺れる AI は一番上に薄く一枚だけ。

これは実のところ、RAG(検索してから AI に読ませる仕組み)と同じ形です。それを Excel の上に手組みしただけです。型は簡単で、強いのは型ではなく索引の質のほうです。Google はウェブの索引で戦っていますが、私のPCについてなら、10年育てた私の索引のほうが強い。

冒頭の対談を思い出してください。意味の地図は決定論的、AI は非決定論的、組み合わせるから信頼できる——国の設計図が信頼の条件と呼んでいる形の、これは机の上の最小版です。①と②が決定論の地図、③が非決定論の AI。データ(ファイル)は現場(元のフォルダ)に置いたまま、AI のほうが出向いて読む。集めない、動かさない、途中が見える。

前回の記事で「Excel × AI のコンビネーションが本命」と書きました。今回のは、その検索版です。探すのは機械、読むのは AI。決定論の土台の上に、確率の機械を薄く一枚。

1.png

おわりに

ファイル名は覚えていないが中身なら覚えている――その状態から目的のファイルに着地するまでが、フィルタで絞って、フォームに言葉を入れて、数秒です。ファイル管理の悩みの大半は、実は「探す」の悩みでした。そこが消えると、フォルダ整理を頑張る理由もだいぶ減ります。

「NO‼︎VBA」の人がVBAにやって来る時代です。事務員が Excel の上に検索とAIの三段構えを手組みしても、もう驚くことではないのだと思います。

なお、今回の「AIファイル一覧」は、まだ公開しません。手元でまだあちこち直している最中なので、形が落ち着いてからにします。

次回は、予告していた AI 要約説明の話に戻る予定です。

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