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「エグゼクティブデザインで」の一言で色が変わる理由 ── Claudeがお休みに入り、Geminiと自律ループで表を美化し、ついでに解説動画を3本作った話

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はじめに

Claudeが、またしばらく使用量制限(クォータ制限)にかかってお休みに入りました。

前回の記事では、Claudeがマクロを作り、Geminiが出題と採点を行い、私が横から口を出すという「三人体制」でピボットとグラフを一言化する話を書きました。あのあと勢いよく開発を続けていたのですが、Claudeの週間利用枠が上限に達してしまい、作業はいったんストップとなりました。

しかし、立ち止まっている暇はありません。

「じゃあ、またGeminiと一緒に頑張っていこうか」

ということで、今夜は再びGemini(Antigravity)と机を並べ、二人体制で開発を再開しました。

今夜のテーマは、Excelコンボの「デザイン美化」です。普段作っている味気ない表を、役員会や報告書でそのまま使えるプロ仕様の見た目に整える機能です。

画面に向かって「エグゼクティブデザインで」とか「ワインにして」と一言つぶやくだけで、表がパッと濃紺やワインレッドの上品なデザインに切り替わります。処理時間は、わずか0.3秒から0.4秒。

「手品のように一瞬で変わるな」

触っていて、自分でもそう感じました。なぜ、AIを挟んでいるのにこんなに速いのか。そして、この一瞬の裏側にはどんな泥臭い調整があったのか。

さらに今夜はもう一つ、裏で動かしていた「AIによる解説動画の自動制作」でも面白い進展がありました。AIを使うと動画が驚くほど簡単に作れるようになり、気がつけば一晩で解説動画を3本も作り上げていたのです。

言葉で動くExcelの裏側と、AIで動画を量産した夜の話を、記録として残しておきます。


TL;DR

  • Claudeが利用枠制限でお休みに: 再びGeminiとタッグを組み、自律ループによる集中開発を再開しました。
  • 「ワインにして」で0.4秒: マクロの頭に埋め込んだ「言葉のアンテナ(依頼の語・組)」と、セル走査を排除した「メモリ配列一括代入」により、対話AI経由でも0.4秒で表全体がプロ仕様に美化されます。
  • AutoFitの罠と列幅の暴走: Range.Columns.AutoFit が表外の長大な注記やタイトル行まで拾って列幅を28ptに広げてしまう問題を、表内の文字表示桁数をメモリ上で走査して黄金比列幅を直接算出する自律エンジンで根絶しました。
  • 不要な罫線の排除(マルチアイランド): 途中の空列や表外の数式セルを完全スルーし、独立した表ブロックだけをピンポイントで装飾する判定を組み込みました。
  • AI解説動画を3本制作: Excelの機能拡張と並行して、スライドと台本から音声を当てて動画を組み上げるパイプラインを回し、一晩で3本の解説動画を完成させました。
  • 40年越しのエキスパートシステム: 動画制作でAIの歴史を振り返ったことで、秀コンボの「言葉で棚を引く」仕組みが、1980年代に挫折したエキスパートシステムの夢を現代のLLMで完全体にしたものだと気づいた痛快さ。

1. 「エグゼクティブデザインで」── なぜ0.4秒で色が変わるのか

Excelコンボの画面で、適当なデータが入った表を開き、「エグゼクティブデザインで」または「ワインにして」と指示します。

すると、一瞬画面が瞬いた次の瞬間には、見出しが重厚な濃紺(または気品あるワインレッド)の白抜き太字になり、データ行には淡いアイスブルーのゼブラ縞が入り、縦横に整ったスレートグレーの細線格子が通り、最下部の合計行には二重下線が引かれています。

実行秒数は 0.34秒〜0.41秒。

「ちょっと濃すぎるから、背景の色を消して」
「やっぱりシックなチャコールグレーにして」

そうやって続けて追加の指示を投げても、待たされることなく、パッ、パッと即座に画面が変わります。

「手品のように一瞬で変わるな」

触っていて、思わず感心しました。それと同時に、ひとつの疑問が浮かびます。

「Microsoft 365 Copilotのような普通のAIだったら、もっと考え込んでしまうはずではないか?」

なぜCopilotは長考し、秀コンボは即座に動くのか

一般的なExcel AIアシスタント(Copilotなど)に「表をネイビーにして」「背景色を消して」と頼むと、通常は数秒から十数秒の「考え込み(Thinking)」が発生します。

なぜなら、普通のAIは指示を受けるたびに、以下の重いプロセスを毎回ゼロから踏むからです。

  1. シート全体の状態を毎回ゼロから解釈する
  2. 要求を満たすVBAコードやスクリプトを、AIがその場で長文で推論・生成する
  3. 生成したコードをExcelへ送り、外部からセルを1つずつ操作させる

つまり、「色を変える」という単純な指示であっても、AIが毎回**「ゼロからのプログラミング」**を行っているため、どうしても長考と遅延が避けられません。

それに対して、秀コンボが0.3秒で即座に反応できる理由は、設計思想が根本から異なるからです。秘密は3つあります。

① AIにコードを書かせない「完成品(棚)への直結」

追加したマクロのソースコードの先頭には、このようなコメントが埋め込まれています。

Sub 表をノーブルボルドーに美化する()
    ' 依頼の語: ノーブルボルドー|ボルドー|ワインレッド|バーガンディ|ワイン|ワインにして|赤系デザイン
    ' 依頼の組: ボルドー,ワイン,バーガンディ,赤,デザイン,美化
    ' 扱う: デザイン 書式 美化 ボルドー ワイン 赤 罫線 配色
    ' ...

このコメントは、単なるメモではありません。秀コンボが直接読み取る「言葉のアンテナ」です。

私が「ワインにして」と言った瞬間、AIが「どんなVBAを書こうか」と長考するのではなく、**言葉のアンテナが0.01秒で反応し、あらかじめ完璧にテストされた『完成品マクロ(棚)』を迷わず一撃でキック(shelf-run)**します。

AIにゼロからコードを書かせず、「引き出しの中にある最速の道具を選んで押すだけ」にしているから、思考時間がゼロなのです。

② セルを1個ずつ触らない「メモリ配列一括代入」

VBAで表を装飾するとき、初心者が書きがちなのが「セルを1行ずつループして色を変え、罫線を引く」というコードです。1万行ある表でこれをやると、画面がチカチカして数十秒固まります。

秀コンボの美化エンジンは、セルの個別ループを一切行いません。

表全体の構造をメモリ配列(Variant)に一度吸い上げ、見出しの位置、データの型、合計行の番地をメモリ上でミリ秒単位で計算します。そして、決定した書式を Range に対して一括代入(あるいは一括罫線設定)で流し込みます。

これが、万単位のセルがあっても0.4秒で処理が終わる理由です。

③ アドイン常駐とピンポイント専用道具(MCP)

このマクロ群は、Excelのアドイン(.xlam)としてメモリ上に常駐しており、VBAプロジェクト全体でネイティブに事前コンパイルされています。

また、「背景の色を消して」といったピンポイントの微調整に対しても、AIは長文コードを書きません。背後にある専用のMCP道具(format の "bg": "none" や tidy)が、対象セル番地に対して直接1ミリ秒で命令を叩き込みます。

「余計な推論をせず、仕込んである最短の配線を通る」

このアーキテクチャが徹底されているからこそ、Copilotのように待たされることなく、手品のような即応性が生まれるのです。

一瞬だな


2. 実機で見えた罠 ── AutoFitの暴走と不要な罫線

仕組みとしては綺麗にできたはずでした。しかし、実際に手元の実機データ(「テスト用1」や「テスト用4」など、現場でよくある汚れた帳票)に当ててみたとき、ボロが出ました。

画面を見た私が、思わず声を上げました。

「おい、テスト用1がおかしいぞ。最初の列と最後の列、なんでこんなに空白の列ができてるんだ?」

見ると、日付が入っているA列の幅が 28pt に巨大化し、文字の横に不自然な大余白が広がっていました。さらに、本来データが何もないはずの右端のH列にまで 20.08pt の列幅が設定され、まるで「空っぽのH列」という不要な列が表の一部として居座っていたのです。

さらに「テスト用4」を開くと、もっと露骨でした。

「不要なところにまで罫線が引かれちゃってるだろう。そういうところは引かないようにしてくれよ」

テスト用4は、左側に「会員名簿(A〜E列)」があり、真ん中に3列の空列(F〜H列)を挟んで、右側に「申込コース(I〜K列)」という2つの独立した表が並んでいるシートでした。その中間の空列(F〜H列)や、欄外の単独集計セル(M5)にまで、律儀に格子罫線が引かれていたのです。

暴走の犯人は「Range.Columns.AutoFit」の仕様だった

なぜ、こんなことが起きたのか。

調査を進めると、Excel VBAの衝撃的な仕様に行き当たりました。

コードの中では、表の範囲(例えば A5:G25)だけを対象にして列幅を合わせるつもりで、こう書いていました。

' 表の範囲だけを AutoFit するつもりだったコード
ws.Range(ws.Cells(5, 1), ws.Cells(25, 7)).Columns.AutoFit

ところが、Excelの仕様では、Columns.AutoFit は指定した行範囲を無視して、その列の「最上段から最下段まで(シート全体)」を見て幅を決めてしまうのです。

テスト用1のシートの上部(A1)には「テスト用データ(Excelコンボの練習台)」という長いタイトルがあり、A3:H3には注意書きの結合セルがあり、表の下(A30)には「↓ わざと壊してある式です」という長文の注記が入っていました。

Columns.AutoFit を呼んだ瞬間、Excelは表の中の短い日付(2026/08/01)ではなく、表外の長大な注記やタイトル文字を拾ってしまい、A列を限界値の28ptまで広げてしまっていたのです。H列も同様に、上部の結合セルに引っ張られて幅が20ptに広がっていました。

自律ループでAutoFitを捨て去る

「こういうところをちゃんと確認して、自律ループで徹底的に直せよ」

私の指示を受け、Geminiが自律改善ループに入りました。テストを実行し、コードを書き換え、コンパイルを通し、実機のシートで書式を再確認するサイクルを自力で回します。

Geminiが出した結論は、**「ExcelのAutoFitを金輪際使わない」**ことでした。

' AutoFitを完全廃止し、表内セルのみの表示桁数をメモリ走査して列幅を直接決定
Dim maxColDisplayLen As Long: maxColDisplayLen = 0

For r = 1 To numRows
    Dim cellV As Variant: cellV = bValArr(r, c)
    If Not isEmpty(cellV) Then
        Dim sVal As String: sVal = CStr(cellV)
        Dim sLen As Long: sLen = 0
        For chIdx = 1 To Len(sVal)
            chCode = AscW(Mid$(sVal, chIdx, 1))
            ' 半角英数・半角カナは1、全角文字は2としてカウント
            If (chCode >= 0 And chCode <= 255) Or (chCode >= &HFF61 And chCode <= &HFF9F) Then
                sLen = sLen + 1
            Else
                sLen = sLen + 2
            End If
        Next chIdx
        If sLen > maxColDisplayLen Then maxColDisplayLen = sLen
    End If
Next r

' 黄金比による列幅の直接セット(余計なセルを1ミリも拾わない)
Dim calcW As Double
calcW = maxColDisplayLen * 1.15 + 3#
If calcW < 9.5 Then calcW = 9.5
If calcW > 24# Then calcW = 24#
ws.Columns(colIdx).ColumnWidth = calcW

表の外にあるセルは、そもそもメモリ走査の対象に入りません。表の中にあるセルだけの文字幅を全角・半角単位で厳密にカウントし、そこに文字の詰まりを防ぐパディング(+3.0pt)を足して、直接 ColumnWidth に数値を放り込む。

さらに、途中に空列がある場合は「独立した別々のテーブル(アイランド)」として自動分割し、空列や表外の数式セルには罫線も背景色も一切触らない判定を組み込みました。

修正後の結果は、劇的でした。

  • A列(日付): 28.0pt → 14.5pt(ジャストフィット)
  • B列(商品): 14.5pt
  • C列〜F列: 9.5pt〜9.9pt
  • H列(空列): 8.08pt(原本のまま完全無傷)
  • テスト用4の空列(F〜H列): 罫線ゼロ、背景色ゼロ

勤怠表で見えた「時刻」と「社員番号」の落とし穴

自律ループはさらに続きました。全15シートのテスト帳票を順に巡回していくと、今度は勤怠表(テスト用7)で新たな課題が見つかりました。

  • 出勤時刻・退勤時刻が数値シリアル値のまま(0.375 や 0.75)表示されている
  • 社員番号が数値列とみなされ、カンマ区切り(1,001など)に巻き込まれるリスクがある
  • 元データに混ざっていたセルごとの不揃いな太字やフォント色がリセットされていない

「これじゃ実務の帳票としてまだ甘いな」

Geminiはすかさずコードを再改修。見出しに「時刻」「出勤」「退勤」が含まれる小数は自動で hh:mm(09:00, 18:00)の時刻形式に整形し、社員番号やコード列は @(文字列書式)でカンマ区切りを絶対に入れないようにガード。本文全体の文字色をプロ標準のチャコールブラック(#333333)に統一し、不揃いな太字を一掃しました。

さらに、用途や好みに合わせて選べるよう、既存の4色(ネイビー・エメラルド・チャコール・ボルドー/ワイン)に加え、温かみのある「ウォームアンバー(琥珀)」と伝統の「クラシックインディゴ(深藍)」を追加。全6系統のカラーシステムへと進化させたのです。

テストスイートの全67本を実行し、67/67全件PASS。アドインに焼き直した瞬間、先ほどまでブカブカだった表や生数値の並んでいた勤怠表が、プロのデザイナーが手作業で整えたかのような端正なグリッドへと収まりました。

枠通りだ


3. 実は今日、AIで解説動画を3本作っていた

Excelの美化エンジンを鍛え上げる作業と並行して、実は今日、もう一つの大きな実験を進めていました。

それが、**「AIを活用した解説動画の自動制作」**です。

普段からYouTubeやX(旧Twitter)などで技術解説を発信しているのですが、動画を作る作業というのは本来、非常に手間がかかります。台本を書き、スライドを用意し、音声を録音し、テロップのタイミングを合わせ、動画編集ソフトで書き出す。普通にやれば1本の動画に丸一日かかります。

ところが、私たちが構築してきた動画制作パイプライン(RemotionとVOICEVOX、そしてテキスト解析を組み合わせた環境)を使うと、この工程が劇的に圧縮されます。

「AIを使えば解説動画が簡単に作れる。じゃあ、実際に作ってみたらどうなるか」

そう思い立って実際に回してみたところ、なんと今日だけで解説動画を3本、完全に仕上げてしまいました。

今日完成した3本の解説動画

  1. AIの歴史と変遷(約12分)

    • 第一次AIブーム(推論と探索)から、第二次(エキスパートシステム)、第三次(ディープラーニング)、そして現在の生成AI・エージェント時代に至るまでの歴史を総括した動画。
    • スライドの要点を白いカードUIにまとめ、下に配置したキャラクター(ずんだもん・四国めたん)が自然な口パクと字幕でテンポよく掛け合いを行う構成です。
  2. 2026年のCOBOL完全解説(約15分)

    • 「なぜ銀行や基幹系システムで未だにCOBOLが動き続けているのか?」「なぜJavaへの全面移行が進まないのか?」という技術的・経済的リアリズムを徹底解説した動画。
    • レガシー資産の重みと、現在のAIによるリバースエンジニアリングの可能性を掘り下げました。
  3. 「AI消滅・淘汰論」の真相(約14分)

    • 「AIバブル崩壊論」や「プログラマー消滅論の揺り戻し」について、誇張された言説を排し、現場のソフトウェア開発で何が起きているのかを冷徹に分析した動画。

これらの動画は、人間が動画編集ソフトのタイムラインに手作業でテロップを並べたものではありません。

原稿となるテキストとスライドの構成を渡すと、AIがセリフの長さに合わせてスライドの切り替え時間を自動計算し、VOICEVOXで音声を合成し、ミリ秒単位で同期したテロップと立ち絵の口パクを合成して、1本のmp4動画として一発でビルドしてくれます。

Excelの表が一瞬で美化されるのと同じように、動画制作の世界でも**「人間が判断し、下請けの自動化パイプラインが一瞬で組み上げる」**という形が完成しつつあります。

三本だな


4. AIの歴史を振り返って気づいたこと ── 40年前の夢が、個人のExcelで動いている

今日作った3本の動画のうちの1本、『AIの歴史と変遷』の台本を見返していたとき、ふと強烈なデジャブ(既視感)に襲われました。

「……待てよ。いま私たちがExcelコンボでやっている『棚打ち』や『マクロ撃ち』って、AIの歴史の初期(1980年代)に世界中がやろうとして挫折したことと、まったく同じじゃないか?」

40年前に挫折した「エキスパートシステム」の理想

1980年代の第二次AIブームの主役は、**「エキスパートシステム(専門家システム)」**でした。
人間の専門知識を「ルール(IF-THEN)」としてコンピュータの中に大量に蓄積し、推論エンジンがそのルールを引いて問題を解決するという構想です。日本でも巨額の国家予算を投じた「第五世代コンピュータプロジェクト」が立ち上がるなど、世界中が熱狂しました。

しかし、当時のエキスパートシステムは無惨に挫折し、AIは長い「冬の時代」へと突入します。
なぜ挫折したのか。理由はシンプルでした。
**「人間の言葉の曖昧さや言い換え(ゆらぎ)を、当時のコンピュータが吸収できなかったから」**です。

辞書に登録された一字一句と完全一致しなければルールが発動しない。「ワインにして」「ちょっと濃いから背景消して」といった人間の自然なニュアンスを汲み取ることができず、「知識獲得のボトルネック」という巨大な壁にぶつかってブームは終焉を迎えました。

現代のLLMという「鍵」を手に入れた完全体

そして今、2026年の私のデスクトップPCの前で、何が起きているでしょうか。

  • 人間の曖昧な言葉を解釈するフロントエンド: 最新のLLM(GeminiやClaude)が、人間の言葉のゆらぎや意図を柔軟に理解する。
  • 指示を受けて爆速で動くバックエンド: 40年前に目指した「専門知識のルール(棚マクロ)」が、Excelのメモリ上で0.3秒で確実に発射される。

当時できなかった「言葉の壁」を現代の生成AIが突破したことで、40年前に夢見られたエキスパートシステムが、「柔軟な自然言語の知能 × 確実なルールの爆速実行」という完全体となって甦ったのです。

「これ、世の中でも実際に使われてるんじゃないか?」とAIに聞いてみた

この確信が湧いた瞬間、私は思わず隣のGeminiに尋ねてみました。

「なあ、昔失敗したエキスパートシステムのようなやり方を、今の進化したAI技術で実現するアプローチって、実は世の中の最前線でも同じように実用化されているんじゃないか? あるなら教えてくれよ」

返ってきた答えを聞いて、私は思わず膝を打ちました。まさに世界の最先端企業が、血を流した末に同じ結論にたどり着いていたのです。

  1. 米軍や重要インフラを支えるPalantir(パランティア)の「AIP」
    防衛や巨大エンタープライズで使われる世界最高峰のAI基盤では、絶対にハルシネーション(誤作動)を起こさないために、部隊移動や物資発注といった実務を「厳格にテストされたプログラム」として固定し、LLMには**「承認されたボタンを押す権限」だけ**を与えている。

  2. 銀行・金融機関の勘定系AIアシスタント
    0.1%の計算ミスも許されない金融の世界では、利息計算や送金処理をLLMに直接計算させることは絶対にしない。計算は40年前から動いている絶対に壊れないCOBOLなどの確定プログラムに任せ、AIは「窓口で人間の曖昧な言葉を聞き取って、正しい勘定プログラムの引き出しを開ける」役目に徹している。

  3. OpenAIやGoogleが提唱する「Function Calling(ツール呼び出し)」の思想
    「AIに処理そのものをやらせるな。裏にある完成した道具(関数)をAIに選ばせてキックさせろ」── これこそが、ChatGPTやClaude、Geminiが急速に現場で実用化された最大のブレイクスルーだった。

「やっぱりそうか!」

世界のトップテック企業や防衛・金融の現場が、膨大な試行錯誤の末にたどり着いた**「最も安全で爆速のAIアーキテクチャ」**と、私が手元のExcelでマクロを棚に並べてAIに引かせていたやり方は、寸分違わず同じ思想だったのです。

国家プロジェクトが諦めた夢を、個人がExcelの上で動かす痛快さ

かつて国家や巨大研究機関が何千億円も投じても実現できなかった構想が、いま、個人の机の上で、誰もが仕事で毎日使っている「Excel」の中で当たり前のように動いている。

Copilotのように「AIに毎回コードをゼロから書かせて長考させる」のではなく、「徹底的にテストされた鉄壁のマクロを棚に仕込み、AIが言葉で棚を引く」。
このアプローチがいかに速く、いかに壊れず、いかに実用的か。

動画制作を通じてAIの歴史を総括した夜だからこそ、手元のExcelで「ワインにして」とつぶやいて0.4秒で表が染まる現象の正体が、完全に腑に落ちました。
個人開発として、これほど痛快で面白い瞬間はありません。


事実と見立ての仕分け

ここで、今夜起きた出来事の「事実」と、そこから得られた「見立て」を仕分けておきます。

項目 事実(実測・コード・ログ) 私の見立て
マクロの応答速度 「ワインにして」等の指示から装飾完了まで実測0.34秒〜0.41秒で完了 事前にアンテナ(依頼の語)をマクロに埋め込み、メモリ配列一括代入で組んでおけば、AI連携でも速度のボトルネックは生じない
列幅暴走の原因 Range.Columns.AutoFit が指定行を越えてシート全体のセル長を拾っていた Excelの標準機能(AutoFit等)を過信せず、自前のメモリ走査エンジンで黄金比を直接計算させた方が、実務の汚れた表では圧倒的に安定する
不要な罫線の発生 途中に空列があるシートで、UsedRange全体に罫線が引かれていた 実務のシートには複数の表が同居することが多いため、「連続する列ブロック(アイランド)」を自動識別して個別に美化する判定が不可欠
AI動画制作の実績 本日一日で10〜15分クラスの解説動画を3本完全にビルド完了 台本とスライド構造が定まっていれば、編集・音声合成・字幕付けは完全に自動化パイプラインに委ねられる時代になった
AIの役割分担 Claudeのクォータ切れに伴い、Gemini単独でVBA改修・テスト67本PASSを達成 得意・不得意はあるが、厳格なテスト環境(関所テスト)さえ用意すれば、Gemini単独でも高度な自律デバッグを完走できる

正直な線引き

道具の実力を公平に伝えるため、現在の制約と動く条件についても正直に書いておきます。

  • Windowsのデスクトップ版Excelが前提です
    • Mac版やExcel Onlineでは、VBAアドイン(.xlam)やCOM経由の高速操作は動作しません。
  • 美化できるのは「ある程度見出しが揃っている表」です
    • 完全に入り組んだ複雑な結合セル帳票(稟議書の申請欄のようなもの)は、自動アイランド判定が外れる場合があります。その場合は、事前に結合を外す棚マクロを当てる必要があります。
  • 動画制作パイプラインはローカル環境の構築が必要です
    • Node.js(Remotion)、Python、VOICEVOXエンジン、FFmpegが連携して動作する環境が必要です。誰でもブラウザ上でワンクリックで動くようなクラウドサービスではありません。
  • Claudeの復帰待ち
    • 今回はGeminiが素晴らしい働きをしてくれましたが、複雑な仕様の全体設計やリファクタリングでは、やはりClaudeの洞察力が欲しくなる場面があります。利用枠が回復次第、再び三人体制に戻す予定です。

おわりに

「エグゼクティブデザインで」

そうつぶやいて、手元のExcelの表が深みのあるネイビーブルーに染まり、ジャストフィットの列幅でピシッと揃った瞬間、なんとも言えない心地よさがありました。

手品のように一瞬で変わる。

その心地よさの裏には、AutoFitの暴走に気づいて突っ込んだことや、表内の文字数を1文字ずつメモリ上で数え直す地味なロジックをGeminiが自律ループで書き直したことなど、たくさんの泥臭い試行錯誤が詰まっています。

そして同じ夜に、スライドと音声から3本の解説動画があっという間に立ち上がってくる様子を見ながら、私はこう思いました。

「道具を作る」ことと、「道具を使って何かを表現する」ことの距離が、かつてないほど縮まっている。

Claudeはお休みに入りましたが、Geminiという頼もしい職人が隣にいます。
クォータが戻るのを待ちながら、私たちは明日も、この道具たちをさらに遠くまで走らせていくつもりです。

それでは、また。

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