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Excel VBA × Claude Code (番外編)マクラーレン・ホンダが15勝した1988年、Lotus 1-2-3 で集計が12倍になった話

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Last updated at Posted at 2026-05-17

今回は番外編です。

本当は「秀.xlsm はなぜ"すぐ切り離せる"設計なのか」という本編を書くつもりでした。ところがその背景を語ろうと昔のことを思い出していたら、妙に熱が入ってしまって、本編に入る前に1本分の文量になってしまいました。

なので本編は次回に回して、今回はこの思い出話を番外編としてお届けします。なぜ自分が「メニューから呼ぶ」「すぐ切り離せる」というやり方にここまでこだわっているのか、その起源の話です。

結論から言うと、原点は40年近く前、まだ自分が新入社員だった頃の、広島支店の小さなパソコンに行き着きます。


1988年というタイミング

少し時代の話をさせてください。

1988年というのは、今の若い人にはピンと来ないかもしれませんが、バブル絶頂期です。日経平均は3万円台を駆け上がり、翌89年末に38,915円のピークを打つまで右肩上がり。リクルート事件、ソウル五輪、リゲインの「24時間戦えますか」。社会全体が一番熱を持っていた年です。

F1も同じ年に絶頂を迎えていました。マクラーレン・ホンダが全16戦中15勝、セナとプロストの黄金コンビでセナが8勝・プロストが7勝。ホンダのターボエンジン最終年で、まさに頂点でした。30年以上経って、2026年から再びホンダがアストンマーティンと組んでF1にフルワークス復帰したばかり。なかなか感慨深いものがあります。

そんな1988年に、自分は 昭和シェル石油 に入りました。

ここで一つ補足しておきます。自分が入った 昭和シェル石油日本の石油元売り会社 です。一方、F1のスポンサーをしていたのは ロイヤル・ダッチ・シェル ── イギリスとオランダにルーツを持つ世界的な石油メジャー(当時は世界2位、今は世界1位)の方です。両者は同じ「シェル」ブランドを共有していて、当時はロイヤル・ダッチ・シェルが昭和シェル石油に資本も入れていました。乱暴に言うと、昭和シェル石油=シェルブランドの日本系列、という関係です。

その昭和シェルもバブル絶頂の勢いに乗っていた会社でした。当時、石油元売り各社はハイオクガソリンで激しい競争をしていて、昭和シェルは フォーミュラシェル というハイオクで業界の先頭を走っていました。F1スポンサーのシェル印を背負ったハイオクなので、F1の熱量がそのままガソリンスタンドにまで降りてきていた時代です。

配属されたのは 広島支店。今でも心に深く刻まれている場所です。ここは毎週の販促キャンペーン「フォーミュラシェルデー」で支店間コンペで常勝していた、勢いのある支店でした。

つまり バブル × F1 × フォーミュラシェル × 広島支店常勝、その真ん中に新人として放り込まれたわけです。今思い返しても、飛ぶ鳥を落とすような勢いの中にいました。


営業からの突き上げと、誰も使わないパソコン

新人として最初に与えられた仕事は、そのフォーミュラシェルデーの集計業務でした。

支店管内には約400店のガソリンスタンドが参加していて、毎週そのハイオク販売比率を集計し、結果を各店にフィードバックする。鮮度が販促効果に直結するので、営業からは常に「早く集計しろ」と突き上げを食らっている、新人にはなかなか重い仕事です。

ところが、その集計作業の救世主になってくれる存在が、自分のすぐ隣に埃をかぶって置いてありました。パソコンです。

支店の総務課長がこう言いました。

「このパソコン買ったんだけど、まだ誰も使ってないんだよ。君みたいな新人に、積極的に使ってほしいなあ」

実は自分は前々からパソコンに興味があったのですが、当時のパソコンは個人で買うには高価すぎて手が出せませんでした。職場のパソコン+総務課長の後押しで、迷わず飛びつきました。業務的にも大正解でした。


Lotus 1-2-3 との出会い

そのパソコンに入っていたのが、当時の表計算ソフトの覇権を握っていた Lotus 1-2-3 です。

今となっては「Excelの前にあった表計算」程度の認識かもしれませんが、当時はこれが業務用ソフトのデファクト。画面は今のExcelとはまるで別物で、黒地に青と黄色、それと白。記憶では4色ぐらいしか同時に出せない時代でした(CGAという当時の規格の制約です)。

地味な画面ですが、これで業務がどう変わったかというと:

Before(手作業) After(Lotus 1-2-3)
集計作業 3人 × 2日 1人 × 半日

12倍です。

400店のハイオク比率を、手作業の3人がかりで2日間かけていたところを、1人で半日で終えられるようになった。営業からの突き上げにも余裕で応えられる。誰も使わなかったパソコンが、急に「集計の救世主」になった瞬間でした。

この体験が、自分の中で「業務改善・生産性向上」を生涯のテーマにした原点になっています。


40年近く経って、また同じ匂いがする

ここまでがほぼ40年前の話です。

その後、自分はずっと「メニューから操作を呼ぶ」「繰り返しはパソコンに任せる」という考え方にこだわり続けてきました。Lotus 1-2-3 の頃から、PERSONAL.XLSB 時代を経て、今の 秀.xlsm に至るまで、根っこは同じです。

その40年は、日本経済にとっては「失われた30年」と大きく重なる時期でもありました。バブルが弾けて、平成・令和を通じて長い停滞があって、ようやく日経平均が38,915円を超えたのが2024年2月。今(2026年5月)は6万円台に乗っています。バブル超えです。

F1もホンダが復帰しました。あの頃の熱量が、形を変えてまた戻ってきている感覚があります。

そして時代の方は、当時の パソコン普及期 に匹敵する AI大変換期 を迎えています。自分はもう一線からは退いた人間ですが、40年近く前の情熱が、時代の追い風と一緒にまた湧き上がってきている気がします。

その情熱が、今回 Claude Code と出会って、秀.xlsm という形になりました。


おわりに — バブルは必ず弾けるから

…と、ここで気持ちよく終われればいいのですが、ひとつだけ書き添えておきたいことがあります。

1988年のバブル絶頂のあと、何が起きたかは皆さんご存知の通りです。バブルは必ず弾けます。今のAIブームも例外ではなくて、いまの熱気を見ていると、もしかしたらもう片足くらいは入っているのかもしれません

別に水を差すつもりはありません。熱気のある時に乗っかること自体は悪くないと思っています。ただ40年前の自分を振り返って思うのは、ブームが過ぎたあとに手元に何が残るかを意識して道具を選んでおくのは、たぶんいつの時代も悪くない、ということです。

40年前の自分の手元には、Lotus 1-2-3 で覚えた「メニューから呼ぶ」というシンプルな考え方が残りました。バブルが弾けても、Lotus 1-2-3 から Excel に乗り換えても、その一番素朴な部分はずっと使い回せました。

そしてその使い回しを支え続けてくれた Excel そのものも、もう 40年近く現場で使われ続けています。バブル崩壊も、リーマンショックも、コロナも乗り越えて、今も世界中のオフィスで黙々と回り続けている。派手な SaaS や新興ツールが浮かんでは消えていくなかで、長年現場で叩かれて磨かれてきた Excel とそのマクロこそが、不況にも一番強く生き残る道具なんじゃないか ── 40年見てきた人間としては、そう思っています。

そして面白いのは、そのExcelが、AIが進化した今こそ、もう一段大きく進化しそうだということです。理由はいくつかあります。

ひとつめは、VBAという言語の性質です。VBAは長らく「書ける人にしか書けない」マイナーな言語扱いで、「今さらVBAなんて誰も書けない」というのが新興ツールにExcelが押されてきた理由のひとつでした。ところがAIにとってはこれがに作用します。VBAは何十年も広く使われてきた言語なので、AIが学習したコードの量も膨大。AIが一番得意な部類の言語です。「書ける人が少ない」という壁が、AIによって個人ひとりひとりに開放された ── これが今まさに起きていることだと思っています。

ふたつめに、Excelはファイル単位でローカルに完結する道具です。AIに頼みやすく、データもクラウドに上げずに済む。組織全体の同意を取り付けなくても、個人が今日から始められる。これは SaaS にはなかなか持てない強みです。

みっつめに、個人や組織が長年積み重ねてきた 既存のExcelファイル・マクロ資産が、捨てずにそのまま使い続けられます。むしろAIに読ませて改善・拡張できる。SaaSへの乗り換えで一度ゼロにする必要がない、というのも見落とされがちな強みです。

長年現場で磨かれてきた Excel × マクロ に、AIによる「書ける人の壁」の解放が重なる。Excelはこれからもう一周、大きく進化する道具になる ── 自分はそう思っています。秀.xlsm × Claude Code というやり方は、その小さな実例のひとつにすぎません。

📺 動画でも実演しています

文字だけだとどうしても抽象的になるので、実際に Python + win32com + Claude Code でExcelマクロを動かしているところは、自分のYouTubeに動画として上げています。

動画で扱っているのは 画像をシート上で動かすマクロ です。Excelの図形オブジェクトを座標で動かす処理は、VBAリファレンスを引きながら自力で書くと意外と骨が折れる部類で、「マクロが書ける人」でも普段はあまり踏み込まない領域です。それが Claude Code と会話しながらだと、意外とすんなり形になります。「AIがあると、こういうことまでできるのか」 と感じてもらえると思います。

▶︎ Python + win32com + Claude Code × Excel ── AIでExcelマクロは簡単に作れます!


そういう意味で、自分の 秀.xlsm がなぜわざわざ「すぐ切り離せる」設計になっているのか ── その答えは、ここに繋がっています。

続きは本編(次回)でお話しします。

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