今は驚くほど多種多様のデジタル人材育成プログラムが提供されています.
でも「研修を受けてもどこでスキルが使えるか分からない」「どの人にどんなスキルを身に着けてもらえばいいか計画が難しい」そんな声を何度も聞きました.そこで,
- まずDXが最初から最後までどんな流れで行われる活動なのかを振り返り,
- その中で必要なスキルと人材を整理する
という形で資料をまとめてみました.詳細は元のPDFをご参照頂くとして,ここではエッセンスを紹介します.
◇元ファイル:DXスキルツリー
想定読者
- DX人材になりたいけど何を勉強したらいいか分からない方
- DXに関わっているけどキャリアパスが見えず不安な方
- DX人材育成を企画するのにDXの全体像が分からない方
特徴
- (コンサルやベンダーではなく) DXで変わる側の視点で考えられている
- まずDXの流れを示している
- 職業の果たす役割とスキルの関係が明示されている
- 必要な人材をチーム単位で考えている
- キャリアパスへのヒントがある
- DXをプロダクト開発とプロジェクトの側面で捉えている
- 機械学習プロジェクトキャンバスの考案メンバーが主体となっている
DXの流れ
私たちが整理したDXの流れをまず示します.
黒い四角で示されているのが必要な人材です.後で示しますが,かなり多くの専門家が必要なため,状況に応じたチームを組むことが重要です.
DXの流れ:大枠
DX活動が始まる前後を表すとこんな感じになります.ざっくり言うと,経営戦略と現場課題の整合したポイントにニーズが発生し,それを基にDX活動が行われ,新製品やサービス,ビジネモデルやプロセスなどが生成されることになります.
DXの流れ:DX活動
DXはニーズから始まる以外にも,技術を触ってみたり事例を真似してみたりと,様々な入り方があります.しかし王道は必要な問題を正確に捉え,適切な技術で解決することです.
- 構想ステージ:ニーズを定義し,それを解決できそうな技術を探して,実際上のアプローチが可能か検討します.
- 価値PoCステージ:取り組む価値があるのか,各種フレームワークやペーパープロトタイプなどを使い検討してみます.
- 技術PoCステージ:ここでようやくエンジニア陣を投入し,動くプロトタイピングを行って技術的に可能かどうかを検討します.
- 開発ステージ:コンセプトが検証されたら,本格的な開発を行います.ここでもアジャイルが望ましいものの,予算など意思決定の問題からウォーターフォールになる場合もありますので,それに耐えるだけの情報が出揃っている必要があります.
- 運用ステージ:基本的な保守運用をしつつ,継続的な改善や次の開発へのフィードバックを行います.
なお,DX活動には広義のプロダクト開発とプロジェクトの側面があると考えています.そのためプロダクトマネジャーとプロジェクトマネジャーが同時に登場しますが誤記ではありません.
DXスキルツリー
前述のDXの流れを受けて,それぞれの登場人物の関係をスキルベースで捉え直してみました.流れには一部登場しない職業がありますが,どういうパターンで複数の職を修めることが多いのか,参考までに記載しています.
DXスキルツリー(全体)
大きく分けて,
- ドメイン知識を持つビジネスサイドの人々
- 業務を分析したり戦略を提案したりする人々
- 全体活動やプロジェクトをうまく回せる人々
- デジタル技術に詳しい人々
- 動くものが作れる人々
- データ周りが詳しい人々
という区分けになっています.ただし相互に連関するため,スキルツリーはきれいに切れている訳ではありません.
元ファイルのPDFでは,それぞれの職をクリックするとその解説ページに飛べます.
(↓個別解説ページの例)
職業はもっと線で繋ぐことも,もっと分解することもできます.RPGでいえば魔法剣士は典型的な複合職ですが,魔法格闘家だってあり得ると思います.逆に戦士でも個人戦と集団戦で専門職を分けることは可能です.DXスキルツリーの職業は,あくまで分かりやすくまとめた目安だとお考えください.
# 例えば私はシニアデータサイエンティスト+DXストラテジストといった趣ですが,この複合パターンは名前を付けるほど重要な組み合わせではないと判断しました.どんな専門職の組み合わせでも相互理解が進むので確実に意味はあるのですが
終わりに
世間のDX熱はすさまじいものがあります.コンサルティングファームが急拡大する一方,全てを外注できるはずもなく,またそうあるべきでもない.しかしデジタル人材獲得は熾烈.なので自社の人材を育てるしかない.
DX人材育成が叫ばれているのはこのような背景からだと理解しています.
そういったなか,DXの全体像からスキルに落とすガイドがないことに気付き,納得感を醸成するためにDXスキルツリーという形でまとめてみました.
本稿はあくまで考え方を示すものです.研修は無料のものから高額なものまで驚くほど多く提供されていますので,具体的な施策はそちらに譲ります.
ひとつの整理軸として参考になれば幸いです.
追記
この資料は現時点でバージョン0.1,まだスキルの解説もありませんし,正確性も網羅性も欠いています.私たちは1つの会社の元同僚ですが,現在は4つの会社に分かれてキャリアを築いており,このDXスキルツリー制作は個人として活動したものになります.夜と週末での活動には限界があるため,今後はより多くの方々と議論し発展させていければ幸いです.