最初にまとめ
本記事では発生源を取り上げています。具体的には「原典」または「原典を受けて普及の基点となった人物の発信」です。
時系列的には次のとおり:
- 2022年: Prompt Engineering
- 2024年: Prompt Engineering が下火
- 2025年:
- 2月: Vibe Coding
- 5月: Context Engineering
- 2026年
- 2月: Agentic Engineering
- 2月: Harness Engineering
- 6月: Loop Engineering
2022 年当初は、プロンプトを工夫して LLM とコミュニケーションするかに力点が置かれていました。
次第にモデルの性能が上ってきて、LLM に任せた方が良いとの考え方にシフトしていきます。2024 年にはプロンプトの工夫は下火であり、2025年2月、おなじみ Vibe Coding の潮流が出てきて、一気に広がります。以降では AI エージェントに任せるのが当たり前となり、いかにして上手く任せるかに力点が移っていきます。その変遷も目まぐるしくて、Context → Harness → Loop と、たった 1 年でパラダイムが 3 つも出ています(Loop は 2026-06-17 時点では生まれたて)。
これらの概念はいずれも「すでに現場で使われているもの」を有名人が取り上げたことで広がっています。ただの言葉遊びや広報ではなく、現場の動向が反映されているのです。なのに 1 年で 3 パラダイム……。動きの早さを痛感します。
本記事を書いた理由
Ans: それぞれの概念をきちんと理解しておきたかったから。
この変遷を「パラダイム」と捉えるかは議論の余地がありますが、私は捉えています。パラダイムが移るということは、前のパラダイムが陳腐化することを意味します。実際に、単に ChatGPT と会話しているだけの人と、Codex や Claude と対話しているだけの人と、コンテキスト管理やハーネス制御を組み込んで AI エージェントに大部分を任せている人と、AI エージェントを持続的に呼び出す仕組み含めて整備して持続的に動かしている人とでは、大きな差があります。取り返しがつかないほどの、大きな差です。
一方で、最新のパラダイムで何でも解決できるかというと、そうでもありません。今しばらくは、それぞれのパラダイムを理解した上で使い分けるのが重要に思いますし、上のパラダイムを理解するためには、まず下を理解せねばなりません。積み上げて行くものだと思います。また、AI との向き合い方の合意形成もおそらく必要ですし、すでに何度も議論されているかと思いますが、そのためにもこれらの概念をきちんと理解しておくとスムーズだと思います。
そういうわけで、一度ちゃんと整理しようと思ったのが本記事の動機です。
以降では、それぞれの概念について端的に整理します。
Prompt Engineering
- 2022 年、教科書的なコンテンツ(あとは論文も)が増え始める
- 例: Prompt Engineering Guide: The Ultimate Guide to Generative AI
- LLM に与える自然言語の指示(プロンプト)には色々なテクニックや性質があり、それをエンジニアリングという名前で整備している
- 絶対的な正解はなく、教科書や論文の数だけまとめ方がある
- 自然言語というプログラミング言語と表現されたりするが、エンジニアが書くコードが「自然言語」になるくらいのインパクトがあるという点は共通
- しかし 2024 年、プロンプト・エンジニアリングは死んだ的な論争が盛り上がる
(ついでに) Vibe Coding
- Andrej Karpathy が 2025/02 に X にポストした概念
- AI に全部任せる、人間はコードの中身は理解しない、エラーメッセージとかもそのままコピペして渡せば何とかしてくれる etc
- この時点では「使い捨てプロジェクト程度ならうまくいく」
Agentic Engineering
- 同様に Karpathy が 2026/02、Vibe Coding の一年後に ポストした概念
- 99% はコードを書かずに AI と監督する、と表現
- また「エンジニアリング」の名前には、理論として整備できるポテンシャルも込めているように見える
- 原文は「 "engineering" to emphasize that there is an art & science and expertise to it.」
Context Engineering
- 普及の基点はおそらく2025/06のtobi lutke のポスト
- 「必要なコンテキストを全部提供する技術」と言っている
- その後、各社や各ソフトウェアが独自に体系化したり定義したりしている
- いわゆるメモリー機能もこのカテゴリ
Harness Engineering
- 原典は 2026/02、Mitchell Hashimotoのブログ記事
- この時点で言及されているのは右記のニ点: エージェントが間違いを犯したら AGENTS.md に書いて再発を防ぐ、スクショ撮影やテストなど決定的な仕事はツール化してその存在を AGENTS.md に書いて教える
- 2026/03、LangChain が Agent = Model + Harness を強調したブログ記事を出す。ここでは「ハーネスとは、モデル自体を除く、コード、設定、実行ロジックのすべて」と定義されている
Loop Engineering
- 普及の基点は 2026/06、Addy Osmaniのブログ記事
- 「ループエンジニアリングとは、エージェントに指示を与える役割を自分自身から切り離し、代わりにその指示を行うシステムを設計することです。ここでいうループとは、目的を定義し、AIが完了するまで反復する再帰的な目標と考えることができます」と定義している
- 位置付けとしては「ハーネスを携えたエージェントを持続的に(自律的かつ反復的に)実行する」、そのためにスケジューリングや記憶といったトピックも入ってきている。ただし、まだ黎明期と思われ、Osmani 自身も懐疑的と書いている