0. 読書は苦手。でも、学びたい。
こんにちは。@shoji_kishimotoです。
みなさんは 「必要な知識はたくさんあるのに、読書が続かない…」 と苦しんだことはありませんか?
僕はまさにそのタイプです。目の前に明らかな必要性があり、必要な情報を参照するためなら読めるのですが、自発的に客観的興味を持って本を読むことがとても苦手でした。
読書の失敗を繰り返す中で学習性無力感のようなものに苛まれ、「読書キャンセル界隈」の一人になっていたわけです。
そんな僕がこの度、弊社VPoEの@kamesenninさんが去年のアドベントカレンダーで公開された「新たに学ぶ領域の技術書・専門書の知識定着力と実践力を上げる読書手法」(この先、「元記事」と表現します)に触発されて、3週間の読書チャレンジ をしてみました。
- 目的:「読書嫌い」でもこの手法で上手くいくか?を試みる
- 方法:上記記事の 「本を参考書化する」「エビングハウスの忘却曲線を意識する」などを真似しつつ、同じような本を選んで2024/12/01〜12/21のタイムボックスで実践
- 結果:自分の読書のスタンスの誤りに気づき、成功体験を積むことができた
本記事では、振り返って読書嫌いだった原因や、3週間の実践で感じたポイントを詳しく紹介します。ごく個人的な実践結果ではありますが、似たような感覚をお持ちの方の参考になれば幸いです。
1. 読書を敬遠してきたワケ
まずは、なぜ僕が「読書嫌い」になってしまったのかを振り返ります。
(1) アウトカムが得られない無力感
過去に、「せっかく時間かけて本を読んだのに、気づいたら内容をほとんど忘れている…」という失敗体験が多くありました。
- 反省点:実際は「身につくほど読んでいない」。読み流し&忘れるを繰り返しただけだった
- 過去の自分へのツッコミ:記憶定着や自分の中での思索を深めず、「アウトカムが得られない」と感じるのは筋違い
(2) 冗長な記述への苛立ち
ビジネス書や自己啓発書などで、「前置きがやたら長い」「同じ主張を繰り返す」という部分に耐えられず、読む気が失せることが多かったです。
- 反省点:冗長に感じる箇所も確かにあるが、咀嚼力が足りなかった可能性も
- 過去の自分へのツッコミ:情報の取捨選択の練度不足を他責にするな
(3) 長文を読むとワーキングメモリがパンクする
そもそも「ずっと文章を読む」行為自体に苦手意識がありました。頭の中だけですべて理解しようとしすぎて疲弊し読書時間が辛い時間に。
- 反省点:電車で立ち読みなどの環境で、骨太な本を理解しようとして失敗
- 過去の自分へのツッコミ:ビジネス書や専門書を“ながら読み”できるわけがない。現代文の長文読解テストを解くのと同レベルの集中力が必要だ
2. 3週間で読んだ本:狙いと選び方
次に、今回の企画で読んだ本と、それを選んだ理由を簡単にご紹介します。
読んだ9冊
サラッと要点だけ読んだ本も含みます
- 戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ
- WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる
- コンピュータはなぜ動くのか
- 良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方
- Unix考古学
- 「儲かる会社」の財務諸表~48の実例で身につく経営力・会計力~
- エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
- 読書について
- Linux標準教科書 Ver.4.0.0
選定理由:社内記事で推薦されていた本を中心に
今回参考にした記事の著者が別途おすすめしている本から主に選びました。
プロダクト開発に関わる全員薦めたい本を100冊前後(8カテゴリ×3難易度)でまとめた(2022年10月更新)
- 理由1: 「著者が実際に読んだ本なら、手法を真似しやすい」と考えた
- 理由2: 選書にあまり時間を使わず、読むことに集中したかった
- 理由3: 再現性を高めたかった(選書が理由で上手くいかない、を避けたかった)
@kamesennin さんが年間200〜300冊を読まれるそうなので、それを真似して3週間で11冊(年間200冊相当)を目標にしていましたが…届きませんでした。
3. 実践を経て得た過去の自分へのツッコミ_適当に読むな
先に、本企画で得た個人的に最も重要な気づきを書き残します。
「読書は苦痛」と思っていた主な原因は、本を適当に読んでいたから
以前までの読書のスタイルは、電車の中で読む・風呂で読む・隙間時間に読む…といった、あたかも英単語帳で単語を覚えるかのようなアプローチで読書をしていました。隙間時間で負担なく読破しようとしていた自分は甘かったなと反省しています。
むしろ社会人としての読書という行為は、現代文のテストを解くようなスタンスとアプローチで臨むべきだと考えます。現代文のテストを電車の中で立ちながら、スマホ片手に解けるでしょうか? 僕には難しいです。
- 設問の意図を読み取り、選択肢の根拠を文中から拾う
- 語句や文脈から筆者の主張を追い、正確に捉える
- 読んで得た材料をもとに自身で改めて構造化し、問いに対しての答えの文章をまとめ上げる
こうしたプロセスはかなり頭を使いますし、メモなどの外部記憶装置がないと苦しいですよね。加えて、真に読書からのアウトカムを得るのであれば自分自身のこれまでの知見や外部情報とも組み合わせながら、自分の腹に落とし込んでいく必要があります。
こうしたことは「隙間時間」「ながら作業」でできるはずもなく、しっかりと机に向かって集中した状態で取り組む必要があると、今の僕は感じています。
「適当に読むな」は自分への戒めですが、もちろん隙間時間の読み方そのものを否定したいわけではありません。大事なのは、構造的に理解するという手間を惜しまないことだと捉えています。
4. 企画を経て得た読書スタイルの現在地点
さて、ここからは実際にどんな読み方に変えていったのか、元記事との比較も交えつつ具体的に紹介します。
基本的な方針は元記事に記載のものと大きく変わらないので、そちらを参照していただければと思います。
隙間時間の読書を封印し、読書を日常化する
先に述べた通り、今は「隙間時間」を使った読書ではなく、しっかりと集中できる体勢を整えた上での読書をすべきと捉えています(少なくとも、「隙間時間」が主な読書時間にならないように調整します)。
今はほぼリモートワークで働いているので、退勤後すぐの時間が主な読書時間となっています。仕事中の集中力のまま読書に移行できるので、始めるコストを小さくできる点が気に入っています。
また、個人的な感覚として読書は筋トレやランニングと似ているなと思います。週に1回・2回ではなく、毎日やる方が読み始めるハードルが下がり、継続しやすいように感じます。少しでも良いので毎日時間を確保することを意識しています。
本の種類別に「読み方」を変える
ビジネス書・専門書は答えのあるトピックを扱う本と、そうではないトピックを扱う本とに大別できる と捉えています。ROIの観点から、本の種別ごとにアプローチを変えた方が効率的だと感じます。
- 答えのあるトピックを扱う本:規約や技術リファレンス系
- 例:『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』
- すでにガイドラインや設計図が整っていて、読者が再構築する余地が少ない
- → Kindleのハイライト機能+軽いメモだけで十分。あとで参照できる形にしておけば実務で活用しやすい
- 答えのないトピックを扱う本:経営論や体験談、思考プロセス重視の本
- 例:『WHO YOU ARE』『エッセンシャル思考』
- 著者による体験や調査、それに基づく洞察がメインなので、自分がどう解釈・自分の腹に落とし込むかを考えないと読みっぱなしで終わる
- → 元記事で主張されているように、自分自身の考えを組み合わせて構造化したメモが不可欠
- 章ごとに要点を自分の言葉に再整理し、さらにChatGPTなどに質問・壁打ちすると効果的
- 例:本の主張の根拠を疑問視して議論する・自分の身近なケースに当てはめた想定問答をしてみる・自身の整理の観点の抜けもれや構造化の稚拙さを指摘してもらう
- こうしたプロセスを経て、自身の内容の理解を確かめられたり思索を深めることができ、単なる本の写経にとどまらない血肉化が期待できる
答えのある本 | 答えのない本 | |
---|---|---|
例 | 技術リファレンス、規約解説 | 経営論、体験談、思考プロセスが中心 |
読み方 | Kindleハイライト+軽いメモ | 自分で構造化メモ必須、ChatGPTで壁打ちなど |
備考 | 余地が少なく整理しやすい 大きな再構築は不要 |
自分がどう解釈・批判するかで大きく変わる 手間はかかる |
言い換えると、その本が「型」を提供しているのか、「思考のタネ」を提供しているのかで読み方を切り替えるということです。前者は拾い読みやハイライトの整理で十分ですが、後者は「自分なりの解釈に落とし込むプロセス」が不可欠と捉えます。
ただし、特定の本がどちらのタイプと言えるかは読み手によって変化すると想像しています。
例えば『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』で考えると、僕が読むと答えのある「型」を提供しているように見えます。「利用規約」や関連する制度等に疎いからです。一方で精通した人が読むと機微な精度の捉え方などに目が行き「思考のタネ」を提供しているように見えるかもしれません。
知識のインプットや思索を通して、後者を増やしていけると良いですね。
Kindleのハイライト機能を有効活用し、記憶定着を図るためのツールとしてBookNotion Zの利用を始めました。Kindleでハイライトした内容がNotionにエクスポートできてメモに転用できたり、毎日ハイライトした内容をピックアップしてメールで配信してくれたりと、今のところ読書した内容の定着に便利なサービスだと感じています。
読み終わった後の「アクション化」は強制しない
元記事では本を読み終わった後は何かアクションを起こすということが提言されています。しかし、ちょっと敷居が高く精神的に読書が重くなると感じたため、これはあえて取り入れないことにしました。
自然にアクションに起こしたり、思考の参考になるポイントを取り入れる程度に留めています。個人的にはそれだけでも、十分な変化が度々感じられました。
感想や要約は書いた方が良いが、公開はまだ恥ずかしい
元記事に記載の通り、感想や要約を書くことで「自分の理解がどう深まったか」や「どう批判的に見ているか」が明確になります。
ただし社内のSlack分報などに投下するのは1回だけやってやめました。本を読んでそこから何を受け取ったか、その要旨をどう解釈したか、というのを投下するのは自分の知見や地力を披露するもの、言い換えれば読書感想文を教室に貼り出すようなもののように感じてちょっと恥ずかしかったという素朴な理由です。もうちょっと自信が持ててきたり、他の人に見てほしいなと思うような何かがあれば投下するかもしれません。
冊数ではなくアウトカムを意識する
今回はアドベントカレンダーのための企画という側面もあり、冊数をある程度意識した読み方を意識しました。しかし、本質的には冊数ではなく読書から得られたアウトカムが大事です。
今回本を読んでいく中では、読書という行動サイクルを回すためにあえて思索を中断したこともありました。また、骨太な技術書などは、その本だけで3週間が過ぎてしまい企画倒れしそうなので敢えて選びませんでした。
この記事を書き終えた後はその辺り自由に読んでいこうと思います。
5.読書は続けられるのか?3週間の企画を終えた感想
ここまでで「まるで読書を習慣化できたよう」な書き方をしていますが、ぶっちゃけ一番の原動力はアドベントカレンダーの締切効果でした。
それでも、この3週間で「集中して読めば充実感が得られる」ことを体感できたのは大きい収穫で、割と楽しかったです。俗説では、21日間物事を行うと習慣化できると言われています(科学的根拠に欠けるという指摘も目にしますが)。これを都合よく信じて、今後も継続を試みていこうと思っています。
蛇足ですが、「何週間とかの単位で何かしらのチャレンジをしてみる」という行為自体が(YouTuberみたいで)ちょっと面白いなと思いました。そういうアプローチで何か行動を起こしてみるというのもアリかもなぁって考え始めています。
おわりに
ここまで読んでいただき、有難うございました。
読んでいただいたみなさま、きっかけとなる記事を書き上げてくださった@kamesenninさん、そして僕が自分自身を逃げられなくするため企画について言いふらしているのに付き合って下さったチームメンバーの皆さんにも感謝申し上げます。
振り返るとやや根性論的な話になってしまいましたが、大抵の物事は根性のベースラインを上げていくことで良い方向に向かっていくんじゃないかと個人的には感じているので、「本を適当に読むな」という過去の自分へのメッセージも、少し退屈ですが妥当な帰結だったかなと捉えています。
それでは、ラストを飾る明日12/25のLITALICOのアドベントカレンダーは
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@yuyaichihashi 間接マネジメントのためのマネジメントレポート(週報/月報)の仕組み
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@fujiryo_123 「Github Copilot運用をPM視点で見てみる」を書く予定
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@YellowLemon 3年周期で来る超多忙な時期に育休を取得しながらも乗り切った話
の3記事です。ぜひご覧ください!