はじめに
2026年3月27日、私が所属するエフカフェで「Claude Code ハッカソン」を開催しました。
参加者は約30名。そのほとんどが非エンジニアです。ECコンサルタント、営業、デザイナー、ディレクター、バックオフィス――普段ターミナルを触ることのない人たちが、4時間で自分の業務をClaude Codeに置き換えるという挑戦をしました。
結果から言うと、非エンジニアが自分でアプリを作り、Webサイトを更新し、業務自動化ツールを完成させました。しかもハッカソン後の週末、参加者が自主的にAPIを使い続けて残高が半分に減るという事態に。
この記事では、企画の経緯から準備のノウハウ、当日の様子、そして参加者の成果まで、同じようなイベントを社内で開催したい方に向けて共有します。
なぜやろうと思ったのか
私は20年以上エンジニアをやってきて、Claude Codeも以前から使っていました。でも決定的な転機は2026年2月、ターミナルを複数立ち上げて、いろんなタスクを同時並行に走らせたときでした。
これは今までのAIによる自動化とは全然違う。自分がもう一人増える体験だ。
そしてすぐに思ったんです。これはPC上のものを操作できるということだから、エンジニアに限った話じゃないと。
上司に話したところ、すぐに面白がってくれました。最初は週末に有志でやろうかと考えていたのですが、上司が「これは全員やった方がいい」と経営会議に掛け合ってくれて、営業時間内に全社員参加という形で開催が実現しました。
エフカフェについて
エフカフェはEC(ネットショップ)の運営代行・コンサルティングを20年以上やっている会社です。サイト制作から運営まで一気通貫で支援しており、そこから生まれた自社SaaS「LPcats」を現在の主力事業として展開しています。
今回のハッカソンには、EC運営チーム、営業、デザイナー、ディレクター、開発チーム、そしてLPcatsのメンバーも含めて全員が参加しました。
準備編:開催2週間前からやったこと
APIキー方式の選択
30名近くが参加するため、全員にProプラン以上を契約してもらうのは現実的ではありませんでした。検討の結果、組織アカウントでAPIキーを1つ発行し、全員で共有する方式を採用。
- 組織アカウントに$200のクレジットを事前購入(Tier 3に即昇格)
- 1つのAPIキーを全員に配布(レートリミットはOrg単位なので分けても意味がない)
- クレジット先払い方式なので予算のブレーキが効く
- ハッカソン後も継続利用できるため、そのまま社内で活用を継続
インストールガイドとMCP導入ガイドの事前配布
4時間という限られた時間の中で、環境構築に時間を取られたくなかったので、2週間前にインストールガイドとAPIキーを配布しました。
これが想定以上の効果を生みました。早く知りたい人が自分で学習を始め、ハッカソン当日までに既に業務で使えるアプリを自作していた人が複数いたんです。
ガイドは以下の2つを用意しました:
- インストールガイド: Node.js → Claude Code本体のインストール → APIキー設定まで
- MCP導入ガイド: Slack、Google Workspace、Figmaなどの接続手順
ガイドは事前に別のメンバーに検証してもらい、フィードバックを反映しました。
反省点:非エンジニアのマシン環境
開発チームのマシンには既に各種ツール(Node.js、Python、uvなど)が入っていましたが、非エンジニアのマシンにはそれらがないことに当日気づきました。MCPサーバーの起動に必要な依存ツールが足りず、セットアップに手間取った参加者がいました。
次回やるなら、もっと幅広い職種の人に事前検証をお願いすべきでした。
期待感の醸成
準備期間中に意識的にやったのが、日常業務の中でClaude Codeの存在を見せることです。
- SlackへのメッセージをわざとClaude Code経由のMCPボットから投稿
- ミーティングの議事録要約を大げさにClaude Codeでやって見せる
- 打ち合わせのたびに「これ、Claude Codeならみんなでもできるよ」と一言添える
この地道な「見せる化」が、当日の参加者のモチベーションと集中力に確実につながりました。
当日のプログラム
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 15:00-15:05 | オープニング |
| 15:05-15:40 | 座学:Claude Codeの全体像 |
| 15:40-16:00 | ライブデモ2本 |
| 16:00-16:05 | 休憩 |
| 16:05-17:45 | ハッキングタイム(100分) |
| 17:45-17:50 | 休憩 |
| 17:50-18:55 | 成果共有LT(1人5分) |
| 18:55-19:00 | クロージング |
座学(35分)
非エンジニアにも伝わるように、Claude Codeの5つの構成要素を解説しました:
- Claude Codeとは: ChatGPTやclaude.aiとの違い。ファイルやPC上のツールを直接操作できるAIエージェントであること
- CLAUDE.md: プロジェクトごとに置ける「指示書」。毎回同じ前提を伝えなくていい
- スキル: よく使う指示をコマンド化。複雑な指示を一発で呼び出せる
- MCP: 外部サービスとの接続。Slack、Google Workspace、Figmaなどを自然言語で操作可能に
- サブエージェント/フック: 並列処理と自動実行の仕組み
ライブデモ(20分)
座学で説明した機能を実際に動かして見せました:
- 議事録整理: Googleカレンダー → Google Docs → 構造化・ジャンル分けまでをMCP経由で一気通貫
- 経費精算の自動化: Gmail領収書検索 → スプレッドシート転記 → 乗換案内での交通費検索まで、ブラウザ自動化も含めて実演
ハッキングタイム(100分)
テーマは**「自分の業務を1つ、Claude Codeに置き換えよう」**。
参加者にはSlackにテーマを投稿してから作業を開始してもらいました。投稿テンプレートはシンプルに:
【テーマ】置き換えたい業務を一言で
【現状】その業務にかかっている時間や課題
【ゴール】完成イメージ
25名以上がテーマを投稿。出てきたテーマの幅広さが印象的でした:
- 見積もり案の自動作成
- メルマガ速報レポート生成
- 商品画像の一括リネーム
- 採用候補者の自動評価・連絡
- LP競合調査からワイヤーフレーム生成
- Amazon用セット商品画像の自動合成
- SEO資料の自動作成
- 経費精算(TeamSpirit)の自動入力
- 商談後のパーソナライズメール生成
- サービスページの完全自動作成
参加者の成果(LTハイライト)
見積もり自動生成
ヒアリングシートと議事録を渡すだけで見積もりを自動生成するツール。これまで社内ミーティングを経て約1週間かかっていたプロセスが約5分に。自動生成された金額(277万円)が、実際に提案済みだった金額(259万円)とほぼ一致し、精度の高さに会場が沸きました。
LP・サービスページの完全自動化
競合調査からコンテンツ設計、UI設計、コーディング、QAまでを一気通貫で自動化。実際にハッカソン前から取り組んでいて、本番環境にデプロイ済みのページを発表。今まではデザイナーの空き時間を待つ必要があった更新作業が、一人で完結できるようになった。
Slackミーティングスケジューラ
自然言語で参加メンバーと希望を伝えるだけで、全員の空き日を探して会議を設定するAIエージェント。AWS上で稼働し、月額約$2.50で運用可能。
LP競合調査 → ワイヤーフレーム自動生成
商品名を入力するだけで、競合の縦長LPを自動分析し、比較ノウハウを抽出してスワイプ型LPのワイヤーフレームを生成。
採用プラットフォーム運用の自動化
Wantedlyの応募者プロフィールを自動要約し、面談の可否判断と連絡までを自動化。リアルタイム対応が難しかった採用業務を効率化。
LPcatsライブラリの構築
社内で散在していたLP事例を一覧化するWebアプリを構築。営業やCSが顧客に事例を紹介する際の検索時間を大幅短縮。
非エンジニアにこそ恩恵がある
今回最も伝えたいことの一つです。
上で紹介した成果のうち、サービスページの完全自動化やLP事例ライブラリの構築は、エンジニアではない参加者の手によるものです。
私がスピーカーノートに書いた一文があります:
コード書ける人だけの話じゃない。書けない人にこそ恩恵がある。書ける人は今までも自分で自動化できた。
ハッカソンを終えて、これは完全に正しかったと実感しています。「できそう」ではなく**「できた」という事実**をベースに話ができている。その光景がすべてを物語っていました。
ハッカソン後の変化
ハッカソン翌日の土曜日、Slackにこんな投稿がありました:
皆さん週末も何か作ってますねーw ハッカソン後に170ドルチャージが残っていたのが86ドルになってますw
金曜日に終わって、日曜日の時点でAPIクレジットが半分に。参加者が自主的に使い続けていたんです。
「楽しすぎるw」「僕かもしれない(笑)」というやりとりがスレッドに。まだ月曜日を迎えていない段階ですが、ここから会社が変わるかもしれないという確かな手応えがありました。
自分自身の気づき
20年以上エンジニアをやってきて、プログラミングやコーディングの過程が好きだと思っていました。
でもClaude Codeが来てから、ほとんどコーディングはしなくなった。それなのに仕事の楽しさはまったく奪われていない。むしろ、思いついたアイデアがどんどん動くものになっていくのが楽しすぎる。
そこで気づいたんです。自分が本当に大切にしていたのは、コーディングそのものじゃなく、「アイデアを形にすること」だったと。作っている最中に「これできたらみんな驚きそうだな、喜びそうだな」と思う瞬間。それが好きだったから、Claude Codeによってそれが短期間にたくさんできるようになって、楽しくてしょうがない。
Claude Codeは仕事を奪うツールじゃない。自分が本当にやりたかったことに気づかせてくれるツールだと思っています。
おわりに:飛べると知れ
エフカフェには5つの行動哲学があります:
- 飛べると知れ
- 人生をかけて働くことに喜びを感じよう
- タフで愛あるチームであれ
- 既成概念を打ち破り、前へ前へ、果敢に前へ
- 思考なき行動に意味はない。思考の海に深くダイブせよ。
今回のハッカソンは、この5つすべてとリンクしていました。
非エンジニアがアプリを作り、Webサイトを自分で更新する。今までの「仕事のやり方」という既成概念を打ち破る体験そのものでした。そして、もう飛べることは分かった。飛べると知ったんだから、あとは飛ぶだけです。
同時に、AIによってアウトプットが簡単に出せる時代だからこそ、出てきたものが何を意味するのか、自分の言葉で説明できるかどうかがこれまで以上に重要になります。思考なき行動に意味はない。思考の海に深くダイブする姿勢が、これからの私たちに求められていることです。
一人で全部やって「すごいでしょ」と言うこともできたかもしれない。でもそうじゃなくて、みんなで共有して、みんなが新しい可能性に気づけるようにしたかった。それがタフで愛あるチームとしてやるべきことだと思ったから。
この記事を読んで共感してくれた方がいたら、ぜひ自分の会社でも同じようなアクションを起こしてみてください。非エンジニアも含めた全社的なAI活用は、想像以上の変化を生みます。