13
3

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

その量子状態、もつれあっています?

Last updated at Posted at 2021-01-27

この記事について

かなり、初歩な話です。
2量子系がもつれあう(エンタングル)状態は、後述4つのベル状態で示されます。

  • 一方で、ベル状態でない2量子系は、なぜ、もつれ合っていないのか?
  • この素朴な疑問について、考察してみたいと思います。

また、他の量子コンピュータ関係の他の記事は、下記で紹介しています。

\newcommand{\bra}[1]{\left\langle #1 \right|}
\newcommand{\ket}[1]{\left| #1 \right\rangle}
\newcommand{\bracket}[2]{\left\langle #1 \middle| #2 \right\rangle}
\newcommand{\tate}[2]{\begin{bmatrix} #1 \\ #2 \end{bmatrix}}
\newcommand{\yoko}[2]{\begin{bmatrix} #1 & #2 \end{bmatrix}}
\newcommand{\mtrx}[4]{\begin{bmatrix} #1 & #2 \\ #3 & #4 \end{bmatrix}}

ベル状態

下記のとおり、2量子系のもつれ合いは、4つのベル状態で表現されます。

\displaylines{
\ket{B_{00}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{00}+\ket{11}) 
\ \ \ \ \ \ \ \ 
\ket{B_{10}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{00}-\ket{11}) 
\\
\ket{B_{01}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{01}+\ket{10}) 
\ \ \ \ \ \ \ \ 
\ket{B_{11}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{01}-\ket{10}) 
\\
}

素朴な疑問

似て非なる、下記はなぜもつれ合いでは無いのでしょうか?

\ket{\psi_{x}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{01}+\ket{11}) 
\ \ \ \ \ \ \ \ 
\ket{\psi_{y}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{00}-\ket{01}) 

理由としては、2量子系のテンソル積を1量子系に分解できるからです。
上記2状態は、下記のように、2つの量子状態に分解でき、
それぞれの量子をブロッホ球上で指し示すことができます。

\displaylines{
\ket{\psi_{x}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{01}+\ket{11})  
= \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{0}+\ket{1}) \otimes \ket{1} 
= \color{red}{\ket{+} \otimes \ket{1} }
\\

\ket{\psi_{y}} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{00}-\ket{01})  
= \ket{0} \otimes \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{0}-\ket{1})  
= \color{red}{\ket{0} \otimes \ket{-} } 
}

なぜ分解できるともつれ合っていないのか?

分解できるからもつれ合っていないよね。で終わらせて見ても良いのですが、、
なぜ分解できるともつれ合っていないのでしょうか?

\ket{\psi_{a}} = a_0\ket{0} + a_1\ket{1}
\ \ \ \ \ 
\ket{\psi_{b}} = b_0\ket{0} + b_1\ket{1}

という状態に対し、2量子系は、下記のように表現できます。

\ket{\psi_{ab}} = 
a_0b_0\ket{00} + 
a_0b_1\ket{01} +
a_1b_0\ket{10} +
a_1b_1\ket{11} 

上記形式で、冒頭の$\ket{B_{00}}$を表現すると下記のように示せます。

\ket{B_{00}} = 
\frac{1}{\sqrt{2}} \times \ket{00} + 
0 \times \ket{01} +
0 \times \ket{10} +
\frac{1}{\sqrt{2}} \times \ket{11} 

つまり、ベル状態について、確率振幅を整理すると下記のように表現できます。

確率振幅 ket $\ket{B_{00}}$ $\ket{B_{10}}$ $\ket{B_{01}}$ $\ket{B_{11}}$
$\color{red}{a_0} \color{green}{b_0}$ $ \color{gray}{\ket{00}}$ $1/\sqrt{2}$ $1/\sqrt{2}$ $\color{red}{0}$ $\color{red}{0}$
$\color{red}{a_0} \color{orange}{b_1}$ $\color{gray}{\ket{01}}$ $\color{red}{0}$ $\color{red}{0}$ $1/\sqrt{2}$ $1/\sqrt{2}$
$\color{blue}{a_1} \color{green}{b_0}$ $\color{gray}{\ket{10}}$ $\color{red}{0}$ $\color{red}{0}$ $1/\sqrt{2}$ $-1/\sqrt{2}$
$\color{blue}{a_1} \color{orange}{b_1}$ $\color{gray}{\ket{11}}$ $1/\sqrt{2}$ $-1/\sqrt{2}$ $\color{red}{0}$ $\color{red}{0}$

$\ket{00}$について考えてみると、

  • $\color{red}{a_0} \color{orange}{b_1} = 0$ より、$\color{red}{a_0}$と$\color{orange}{b_1}$のどちらかは、$0$
  • $\color{blue}{a_1} \color{green}{b_0} = 0$ より、$\color{blue}{a_1}$と$\color{green}{b_0}$のどちらかは、$0$

つまり、4変数中2変数は$0$なはずだが、

  • 仮に、$\color{red}{a_0}=0$だとすると、$\color{red}{a_0} \color{green}{b_0} = 1/\sqrt{2}$が成り立たない。
  • 仮に、$\color{green}{b_0}=0$だとすると、$\color{red}{a_0} \color{green}{b_0} = 1/\sqrt{2}$が成り立たない。
  • 仮に、$\color{orange}{b_1}=0$だとすると、$\color{blue}{a_1} \color{orange}{b_1} = 1/\sqrt{2}$が成り立たない。
  • 仮に、$\color{blue}{a_1}=0$だとすると、$\color{blue}{a_1} \color{orange}{b_1} = 1/\sqrt{2}$が成り立たない。

つまり、2量子がもつれ合った状態としては成り立つのだが、

\ket{\psi_{a}} = \color{red}{a_0}\ket{0} + \color{blue}{a_1}\ket{1}
\ \ \ \ \ 
\ket{\psi_{b}} = \color{green}{b_0}\ket{0} + \color{orange}{b_1}\ket{1}

という、単一量子状態で表現しようとすると、確率振幅が決めきれない状態。
つまり、ブロッホ球で表現できない状態。が、2量子系のもつれ合い。と理解できます。

おまけ

最後におまけ程度で触れておこうと思います。
下記は、もつれあっているでしょうか?

\ket{\psi_1} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{11}-\ket{00}) 
\ \ \ 
\ket{\psi_2} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{10}-\ket{01}) 

似て非なる形ですが、マイナスをくくりだすとベル状態となります。
この先頭のマイナスは、相対位相($\ket{0}と\ket{1}$の大小)には無関係で、
式全体に係るグローバル位相なので、観測上無視されます。(詳細は、こちらの記事で

\displaylines{
\ket{\psi_1} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{11}-\ket{00}) =  \color{red}{-}\frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{00}-\ket{11}) = \color{red}{-}\ket{B_{10}}
\\
\ket{\psi_2} = \frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{10}-\ket{01}) =  \color{red}{-}\frac{1}{\sqrt{2}}(\ket{01}-\ket{10}) = \color{red}{-}\ket{B_{11}}
}

よって、上記はベル状態なのでもつれあっています。

13
3
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
13
3

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?