PagerDutyはインシデント管理の要となるサービスですが、万が一PagerDuty自体がダウンしたり、通知が遅延したりした場合には、SLA(サービス品質保証)に基づき 利用料の返還(サービスクレジット) を申請できる権利があります。
ただし、申請には期限があり、自動返金ではないため、ユーザー側からアクションを起こす必要があります。
本記事では、PagerDutyのStandard Service Level Agreementに基づき、SLA違反時の申請手順をまとめます。
注意: 本記事は執筆時点の公式SLAに基づいています。最新情報は必ず公式ページをご確認ください。
1. PagerDutyが保証しているSLA(抜粋)
PagerDutyでは主に以下の可用性・パフォーマンスを保証しています。これらを下回った場合、SLA違反となります。
| 項目 | 保証内容 | 基準値 |
|---|---|---|
| 通知の配信 | インシデント発生から5分以内に通知が届くこと | 99.9% |
| Webアプリの稼働 | インシデントの確認(Ack)や解決(Resolve)ができる状態 | 99.9% |
| Runbook Automation | ジョブの実行が可能であること | 99.5% |
| Jeli Service | サービスへのアクセスが可能であること | 99.9% |
※ 特に重要なのは「通知が5分以内に届くか」という点です。これが守られない場合、クレジット申請の対象となります。
2. 補償される金額(サービスクレジット)
SLA違反が認められた場合、以下のクレジットが付与されます。
- 違反1件につき: 該当月の利用料金の 10%
- 最大上限: 該当月の利用料金の 30% まで
※ 現金での返金ではなく、将来の請求金額から差し引かれる「サービスクレジット」として付与されます。
3. 申請の条件と期限(ここが重要!)
最も注意すべきなのは申請期限です。
-
申請期限: 違反が発生した月の翌月末から15日以内
- 例:12月中に障害があった場合、1月15日までに申請が必要
- 申請方法: 指定のメールアドレスへ英語でメール送付
- 資格: 支払い遅延がないこと(未払いがあると申請できません)
4. 申請手順(メールテンプレート付)
申請はメールで行います。管理画面のボタン等からは行えません。
宛先
servicecreditrequest@pagerduty.com
必要な情報
- SLA違反の影響を受けたことを示す証拠(ログ、タイムスタンプ、Incident IDなど)
- 契約している会社名やアカウント情報
メール文面例(英語)
件名に「SLA Credit Request」と入れ、影響を受けた日時と内容を簡潔に伝えます。
件名:
SLA Credit Request - [あなたの会社名]
本文:
To PagerDuty Support Team,
I am writing to request a service credit due to an SLA violation that occurred on [日付: YYYY-MM-DD].
During the incident, we experienced the following issues:
- [Issue Description: e.g., Notification delay exceeding 5 minutes / Web interface unavailable]
- Time of incident: [開始時間] to [終了時間] (UTC)
- Impacted Service: [PagerDuty Platform / Notification Delivery]
- Evidence/Incident IDs: [影響を受けたIncident IDや、遅延のログなどを記載]
According to the Standard Service Level Agreement, we believe this constitutes a breach of the guaranteed uptime/delivery metrics.
Please investigate and process the service credit for our account:
- Account Name: [PagerDuty上のアカウント名/サブドメイン]
- Account Owner Email: [契約管理者のメールアドレス]
Thank you,
[あなたの氏名]
5. 注意点・Tips
証拠は具体的に: 「遅かった」だけでなく、「Incident #12345 の通知が Trigger時刻 XX:XX に対し、着信時刻が XX:XX だった(X分の遅延)」のように具体的なIDとタイムスタンプを提示するとスムーズです。
ステータスページを確認: PagerDuty自体に障害が起きている場合は、PagerDuty Status Page に情報が出ていることが多いです。このページの履歴も証拠として有効です。
プロフェッショナルプラン等: 契約形態(Enterprise等)によっては個別のSLA契約を結んでいる場合があります。その場合は契約書の条項が優先されます。
SLAは「守られて当たり前」のものですが、障害発生時には正当な権利としてクレジットを請求することで、ベンダー側にも品質維持のプレッシャーを与えることができます。もしもの時のために、このフローを頭の片隅に置いておきましょう。