AI コーディングエージェント徹底比較:Google Jules、OpenAI Codex、Anthropic Claude Code Action
2025年はAIコーディングエージェントの競争が激化しており、主要3社がそれぞれ異なるアプローチでソフトウェア開発の自動化を推進している。本記事では、Google Jules、OpenAI Codex、Anthropic Claude Code Actionについて、機能、料金、使いやすさの観点からそれぞれについて比較分析してみました。
各サービスの概要と特徴
Google Jules
Google Julesは、Gemini 2.5 Proを搭載した非同期型コーディングエージェントとして2025年5月にベータ版が公開されました。
最大の特徴は、GitHubリポジトリと直接連携し、プロジェクト全体のコンテキストを理解した上で自律的にタスクを実行する点です。Julesは単なるコード補完ツールではなく、「コパイロットでもなく、コード補完の相棒でもなく、あなたのコードを読み、意図を理解し、作業に取り組む自律型エージェント」として設計されています。
作業はGoogle Cloudの仮想マシン上で実行され、複数のソースファイルを横断してコード生成やデバッグを自動化できる。タスクの分解から計画立案まで自動化されており、開発者はバックグラウンドで動作するJulesに作業を任せながら、他の重要なタスクに集中できます。プライバシー面でも配慮されており、ユーザーのプライベートなコードが学習データとして使用されることはなく、データは実行環境内で隔離されます。
OpenAI Codex
OpenAI Codexは、ChatGPT内で動作するクラウドベースのソフトウェアエンジニアリングエージェントです。
中核となるのは「codex-1」モデルで、OpenAIの大規模言語モデル「o3」をソフトウェア開発向けに特化して強化学習で最適化されています。入力最大150万トークン、出力40万トークンの広いコンテキストと並列10タスク実行に対応している。
Codexの革新的な機能の一つが、複数のタスクを並行して処理できる能力です。例えば、「ユーザー認証機能を追加する」「検索機能のバグを修正する」「テストカバレッジを向上させる」といった異なる性質のタスクを同時に依頼することが可能で、各タスクは独立したサンドボックス環境で実行されます。公式ベンチマークでは、Python自動評価指標である「HumanEval+のpass@1」で87.5%を記録し、従来モデルを8.2ポイント上回る性能を示しています。
Anthropic Claude Code Action
Claude Code Actionは、Anthropicのコーディングエージェント「Claude Code」をGitHub Actions上から呼び出せる機能として2025年5月に発表されました。もともとClaude Code自体はターミナル上で動作することを前提としていたが、GitHub Actions対応により利用ユーザーの幅が大幅に拡大しました。
Claude Code ActionはGitHubのPull RequestやIssue内から直接呼び出すことができ、コーディングの指示を行えます。Claude Sonnet 4やOpus 4といった最新モデルを活用し、高精度なコード生成と解析を実現しています。特に自然な日本語でのコード解説やコメント生成に優れており、初心者でもストレスなく使える操作性を提供しています。
機能比較分析
実行環境とアーキテクチャ
実行環境において、各サービスは異なるアプローチを採用している。
Julesは Google Cloudの仮想マシン上でタスクを実行し、非同期処理により開発者が他の作業に集中できる環境を提供する。一方、Codexは各タスク専用の一時的な仮想環境を作成し、安全にテストやビルドを実行できる隔離されたサンドボックス環境を採用している。Claude Code Actionは GitHub Actionsのワークフロー内で動作し、既存のCI/CDパイプラインとの統合を重視している。
プライバシーとセキュリティ面では、いずれのサービスも高いレベルの保護を提供している。Julesではプライベートなコードでモデルをトレーニングすることはなく、データは実行環境内に分離されます。Codexもネットワーク通信や使用リソースに制限がかけられており、外部からの攻撃や誤操作によるトラブルを防ぐ仕組みが構築されています。
対応言語と開発フロー
対応プログラミング言語についてJulesは特定の言語に依存しませんが、JavaScript、TypeScript、Python、Go、Java、Rustで特に高い効果を発揮するといわれています。Codexは幅広い言語に対応しており、プロジェクトごとのコーディングスタイルや命名規則にも自動で適応します。Claude Code ActionはPython、JavaScript、TypeScriptなど多数の言語に対応し、特に自然な日本語解説に強みを持ちます。
開発フローの自動化において、Julesはテスト作成、新機能の実装、バグ修正、依存関係のバージョンアップ、さらにオーディオ形式のチェンジログ生成まで幅広いタスクを処理できます。Codexはバグ修正、機能追加、テスト作成、コードレビューの提案などを自動で実行し、AGENTS.mdファイルによるコードベースのナビゲーション機能も提供します。Claude Code ActionはGitHubのワークフロー内でバグの自動検出・修正サジェスト、コード補完、自動化ワークフローを実現しています。
料金体系比較
Google Jules
Julesは2025年6月1日現在、ベータ期間中であり無料で利用できる。ただし、同時実行タスクは最大3タスク、1日あたりのタスク数は最大5タスク、1日あたりのコードキャスト(オーディオサマリー)は最大5回という制限が設けられています。これらの制限を超えると新しいタスク作成が防止され、制限が解除されるまで待つ必要がある。
ベータ期間終了後には有料化が予定されているが、具体的な料金体系はまだ発表されていません。Googleは「製品が成熟するにつれて詳細を共有する」としており、大規模チームや日常的な開発フローでJulesを活用している場合は、制限の引き上げをリクエストすることも可能である。
OpenAI Codex
Codexは2025年5月時点で、ChatGPT Pro、Team、Enterpriseユーザーに対して研究プレビューとして提供されています。Pro、Team、Enterpriseユーザーには「数週間は追加料金なし」で提供されており、近日中にPlusおよびEduプランでも利用開始予定です。
API版については、入力100万トークンで1.50ドル、出力100万トークンで6ドルという手頃な価格設定となっていて、75%のキャッシュ割引も適用され、頻繁に実行するリファクタリングやテストの自動生成でも費用を抑えることができます。正式リリース後は段階的にレート制限やオプション課金が導入される予定です。
Anthropic Claude Code Action
Claude Code Actionの利用には、Anthropic APIの従量課金制またはClaude Maxサブスクリプションのいずれかを契約する必要があります。API従量課金制では、Claude Opus 4が入力15ドル/1Mトークン、出力75ドル/1Mトークン、Claude Sonnet 4が入力3ドル/1Mトークン、出力15ドル/1Mトークンとなっています。
Claude Maxプランは月額定額制で、Max 5×が100ドル/月(Pro比5倍の利用枠)、Max 20×が200ドル/月(Pro比20倍の利用枠)で提供されています。Claude Codeはレートリミットがあるものの実質的に使い放題となるため、集中的に利用する場合はMaxプランの方が経済的ですが、現時点では公式としてClaude Code Actionに対応してない点に注意が必要です。
各社の比較
エージェント名 | 料金 | 特記事項 |
---|---|---|
Google Jules | ベータ期間中完全無料 | ・制限事項として、同時実行タスク3件、1日5タスク上限、コードキャスト5回/日 まで ・正式リリース後は階層別課金を予告 |
OpenAI Codex | ChatGPT版: 研究プレビュー期間中無料 API版: 入力$1.50/1Mトークン・出力$6/1Mトークン |
・AGENTS.md連携 ・CLIツール |
Anthropic Claude Code Action | API従量制: Opus4入力$15/1M・出力$75/1M Maxプラン: $100/月(5倍枠)~$200/月(20倍枠) |
・GitHub Actions統合時は追加費用がないが、ツール利用に別途課金が発生 |
現時点のコストパフォーマンス比較
- OpenAI Codex: API利用時の単価効率が最も優れ、キャッシュ割引で実質$0.375/1Mトークンまで圧縮可能
- Google Jules: 無料だが機能制限が厳しく実業務継続利用に不安
- Claude Maxプラン: 月 $200 で20倍利用枠の場合、1タスク当たり $0.83 と経済的
ユースケース別推奨
- 実験/小規模利用: Julesの無料枠活用
- 中規模開発: Codexのキャッシュ割引活用
- 企業向け大規模運用: Claude Maxプランで予算管理
使いやすさとユーザーエクスペリエンス
インターフェースと操作性
使いやすさの観点では、各サービスが異なるアプローチを採用しています。JulesはGoogleアカウントとGitHubの連携のみで利用開始でき、プロンプトで明確な指示を出すだけで利用可能です。チャット形式のUIを持ち、実行前、実行中、実行後のどの段階でも計画を修正でき、常にコードへの最終的な決定権を保持できます。
CodexはChatGPTのサイドバーから自然にアクセスでき、既存のChatGPTユーザーであれば追加の学習コストなしに利用開始できます。各タスクの実行時には、テスト結果やターミナルログが提示され、Codexの動作が透明な形で示されます。AGENTS.mdファイルによるプロジェクト特化型の指示も可能で、開発ルールや重要なフォルダ構成を事前に設定できます。
Claude Code ActionはGitHubのPull RequestやIssue内から@claudeとメンションするだけで呼び出せる簡単な操作性を提供しています。ターミナルベースの操作に慣れた技術者にとっては直感的なインターフェースとなっており、VS CodeやGitHub Actionsとの連携も充実しています。
学習コストと導入障壁
学習コストについては、Julesが最も低い導入障壁を提供している。自然言語での指示のみで利用でき、プログラミング経験の少ないメンバーでも直感的に操作可能です。Codexも同様に自然言語での指示に対応しており、ChatGPTの既存ユーザーであれば即座に利用開始できます。
Claude Code Actionは、ターミナル操作やGitHub Actionsの知識が前提となるため、技術者向けの側面が強い。一方で、豊富な日本語解説機能により、コードの理解や学習において優れたサポートを提供しています。
結論と推奨事項
総合評価
機能面では、Codexが最も包括的な機能セットを提供しており、並列タスク処理能力と高いベンチマーク性能が特徴である。Julesは非同期処理とGitHub統合に優れ、開発フローの自動化において革新的なアプローチを示しています。Claude Code ActionはGitHub Actionsとの統合により、既存のCI/CDパイプラインとの親和性が高いでしょう。
料金面では、現在ベータ期間中のJulesが最も経済的だが、将来的な料金体系は不明のため注意が必要です。CodexはAPI版の価格設定が手頃で、大規模利用時のコストパフォーマンスに優れています。Claude Code ActionはMaxプランにより集中利用時の予算管理が容易だが、従量課金制では比較的高額となる可能性があります。
使いやすさでは、JulesとCodexが自然言語での直感的な操作を実現している一方、Claude Code Actionは技術者向けの高度な機能を提供している。開発チームの技術レベルと既存のワークフローに応じて、最適なサービスを選択することが重要でしょう。
現時点では、幅広い開発チームにとってバランスの取れたソリューションとしてCodexがよさそうですが、各社しのぎを削っている部分でもありますので、将来的に他社サービスが優位になる可能性も考慮を入れて情報収集に努めるのがよさそうです。
この記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。