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製造DXは何から始める? NEDO「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(第2版)」から考える変革課題の設定

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目次

はじめに

今回は製造DXの全体像を掴むため、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公開している『スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(第2版)』を読んでみました。

ものづくり全体を捉える視点から、変革課題の設定、実現レベルの整理、プロジェクト設計まで体系的に整理されている資料でした。

本記事ではこのガイドラインの内容をまとめた上で、重要だと思われる変革課題の設定方法について掘り下げたいと思います。

NEDOのスマートマニュファクチャリング構築ガイドラインとは

「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公開している、製造事業者のスマート化を進めるためのガイドラインです。

このガイドラインでは、経営課題や業務上の課題を起点として、ものづくりのプロセスをどのように変革していくのかという観点から、スマート化の進め方が整理されています。

自社では何を変革する必要があるのか、そのためにどのようなデジタル技術を活用すべきなのかを、自ら考えるためのフレームワークとして活用できるものになっています。

ガイドラインが示す「スマート化の道筋」

まず、スマート化の対象範囲を捉える

ここで重要になるのが、ガイドラインで示されている「マニュファクチャリングチェーン」という考え方です。

NEDOでは、ものづくりを製造現場だけで捉えるのではなく、開発・設計から生産、販売・サービスまでを含む一連のプロセスとして捉えています。

この全体プロセスを、

  • エンジニアリングチェーン
  • サプライチェーン
  • プロダクションチェーン
  • サービスチェーン

の4つのチェーンに分けて整理しています。

ここで重要なのは、それぞれの工程を個別に最適化することではなく、チェーン間の情報や業務のつながりを含めて、ものづくり全体を捉えることです。

以下はガイドラインに掲載されているマニュファクチャリングチェーンの全体像の図です。

IMG_8340.jpeg

出典:NEDO「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(第2版)」より引用


では、どのようにスマート化を進めるのか

ガイドラインでは、スマート化構想を大きく「企画」「基本設計」「ベンダー選定」「実装」の4つのフェーズで進める構成としています。特に企画フェーズが重要で、スマート化によって自社が実現したいことを明確にした上で、変革課題や実現レベル、必要な業務・システムなどを検討していきます。

ここでは、ガイドラインの内容を理解しやすいよう、私なりに各フェーズで行うことを大きく7つに分けて整理します。


① 経営・事業上の課題を捉え、KGIとの関係を明確にする
まず、環境変化などを踏まえて経営・事業上の課題を捉え、スマート化によって何を実現したいのかを明確にします。その上で、変革による効果をKGI(経営目標達成指標)との関係で整理します。


② 自社の生産システムを捉える
次に、自社がどのような生産システムを採用しているのかを整理します。


③ 変革課題を設定する
①で整理した経営・事業上の課題と、②で捉えた自社の生産システムの特徴を踏まえ、取り組むべき変革課題を設定します。このとき自社にとって重要な課題を選択していきます。


④ 現状と目指す姿を整理する
設定した変革課題について、現在どの程度まで実現できているのかを確認し、目指す実現レベルを設定します。


⑤ 必要な業務・システムを検討する
目指す実現レベルを設定したら、それを実現するために必要となるシステム構成や、システムを活用した業務のあり方、標準化すべきデータ、実現に向けたソリューションなどを検討します。


ここまでが主に企画フェーズにあたります。

その後、基本設計フェーズに入り、システム要求を具体化するとともに、業務・システム機能をどのような仕組みとして実現するのかを設計していきます。


⑥ ベンダーを選定する
必要な要件を整理した上でRFP(提案依頼書)を作成し、ソリューションベンダーから提案を受け、その内容を評価して実装を推進するベンダーを選定します。


⑦ 実装する
最後に、システムの構築やハードウェア・ネットワークの整備、データ整備、業務プロセスの検証、ユーザーテスト、移行・運用体制の立ち上げなどを行い、実際の業務・システムとして実装します。

変革課題を具体化するためのリファレンス

では、実際に「自社にとってどのような変革課題に取り組むべきなのか」を、どのように整理していけばよいのでしょうか。

NEDOのガイドラインでは、スマート化の企画を具体的に進めるために、自社の生産システムを捉え、変革課題を設定し、現在の状態と目指す状態を整理するための複数のリファレンスが用意されています。

ここでは、企画フェーズで特に重要となるリファレンス①〜⑤について、それぞれ何を整理するためのものなのかを簡単に見ていきます。


① 変化の起点となる外的要因(取り巻く環境変化)
製造業を取り巻く代表的な環境変化を9つの項目に整理し、それぞれの環境変化と関係の深い変革課題を示しています。

前章のステップ①〜③で、環境変化を踏まえて経営・事業上の課題を捉え、変革課題を設定する際に参照します。


② 変化の起点となる内的要因(生産システム類型)
企業の生産システムを、工程特性(人依存か設備依存か)と需給特性(受注形態)の2つの視点からそれぞれ3つに区分し、計9つの類型として整理しています。
さらに、それぞれの生産システムにおける「困りごと」と、そこから派生する変革課題を整理しています。

前章のステップ②〜③で、自社の生産システムを捉え、変革課題を設定する際に参照します。


③ マニュファクチャリング変革課題マップ
製造事業者のスマート化実践事例から重点となった課題を抽出し、共通性の高いものを「マニュファクチャリング変革課題」として整理したものです。
変革課題はマニュファクチャリングチェーンの各チェーンに沿って整理されており、自社の課題を探索し、取り組む課題を選択する際の参考となる枠組みになっています。

前章のステップ③で、変革課題を設定する際に参照します。


④ 変革課題別実現レベル5段階
各変革課題について、実現状態を5つのレベル、

情報の標準化 → 情報・データの蓄積 → データによるプロセス連携 → 多頻度解析による最適化 → 現実と双方向連携

に区分したものです。

前章のステップ④で、現在の到達レベル(As-Is)と目指す実現レベル(To-Be)を設定する際に参照します。
なお、ガイドラインでも示されているように、必ずしも最高レベルであるレベル5を目指すことが最適とは限りません。


⑤ 実現レベル別仕組み構築手法
各変革課題について、実現レベルごとに、システム構成のイメージ、システムを活用した業務のイメージ、標準化する情報、実装するソリューションなどを整理しています。

前章のステップ⑤で、目指す実現レベルを実現するためのシステムやソリューションを具体化する際に参照します。


ここまでが、主に企画フェーズで変革課題や実現レベル、必要な業務・システムを検討するためのリファレンスです。

このほかにも、実際にスマート化プロジェクトを進める際の具体的な進め方や、プロジェクト推進の事例を整理したリファレンスがあります。


⑥ 企画から実装に至るプロジェクト設計
企画から基本設計、ベンダー選定、実装まで、スマート化プロジェクトをどのように設計・推進していくのかを整理しています。


⑦ プロジェクト推進モデル事例
実際の製造事業者におけるプロジェクト推進事例をもとに、スマート化プロジェクトの進め方を具体的に示しています。

変革課題を現場の事実から検証する

ここまで見てきたように、NEDOのガイドラインでは、経営・事業上の課題や自社の生産システムを踏まえて、取り組むべき変革課題を設定していきます。

一方で、変革課題を設定しただけでは、実際の現場でどのような問題が発生しており、それが変革課題とどのようにつながっているのかまでは分かりません。

そこで重要になるのが、ガイドラインで示されているFact Findingです。

Fact Findingでは、経営課題を俯瞰して捉えながら、現場の実態を可視化し、問題・課題の整理、定量化、原因追究などを行います。

ガイドラインでは、設備の生産性が低い場合を例に、業務プロセスや作業の実態を確認し、ネックとなる設備や発生傾向を把握した上で、その原因を追究していく考え方が示されています。

つまり、現場で発生している問題を単純に改善対象とするのではなく、「なぜその問題が発生しているのか」を掘り下げ、背景にある構造的な問題を捉えることが重要だと考えられます。

こうして現場の事実をもとに問題を具体化していくことで、設定した変革課題との関係性や、課題の背景にある構造をより明確に捉えられるようになります。

トップダウンと現場のFact Findingをどうつなげるか

ここまで見てきたように、NEDOのガイドラインでは、経営・事業上の課題や自社の生産システムを踏まえて変革課題を設定するとともに、Fact Findingによって現場の実態を可視化し、問題の定量化や原因追究を行います。

ここで私は、変革課題は経営課題から設定したものをそのまま進めるのではなく、Fact Findingによって得られた現場の事実と照らし合わせながら、見直しや絞り込みをしていくことが重要なのではないかと考えました。


ここでは仮に、顧客ニーズの多様化に対応することが経営・事業上の課題になっているとします。

この課題に対して、NEDOの変革課題マップを参考にすると、

「多様な製品バリエーションを効率的に作れる仕組み」

を変革課題の候補として考えることができます。NEDOの変革課題マップでも、この課題は個別仕様への対応に関連する課題として整理されています。

しかし、ここで現場の実態を調べてみると、設計変更のたびに製造側で情報を確認・修正する必要があり、その結果として手戻りが発生していることが大きな問題として起きていたとします。

さらに原因を掘り下げていくと、
設計情報と製造に必要な情報が十分につながっていない
という構造的な問題が見えてきました。

この場合、経営課題から設定した「多様な製品バリエーションを効率的に作れる仕組み」という課題だけに取り組んでも、現場で発生している手戻りの原因が残ってしまう可能性があります。

そこで、NEDOの変革課題マップにある、
「設計データからシームレスにものづくりできる仕組み」
という別の変革課題との関連性を考えることができます。

この課題は「短納期対応」や「製造リードタイム短縮」と関連付けられています。

つまり、「製品バリエーションを効率的に増やす」という課題に取り組む上でも、まず「設計データから製造へシームレスに情報をつなぐ仕組み」を検討する必要があるのではないか、という関係性が見えてきます。


このように考えると、Fact Findingは単に、最初に設定した変革課題が正しいかどうかを確認するためだけのものではありません。

現場の事実から原因を掘り下げることで、当初は見えていなかった別の課題や、課題同士の関係性が明らかになる可能性があります。

その結果、

  • 当初設定した変革課題をそのまま進める
  • 変革課題をさらに具体化する
  • 別の変革課題を優先する
  • 複数の変革課題を関連付けて取り組む

といった判断が必要になると考えられます。

したがって、私は、変革課題の設定を次のような一方向のプロセスとして捉えるだけではなく、トップダウンとFact Findingを行き来するプロセスとして捉えることが重要なのではないかと考えます。

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このように、経営・事業上の課題から見た「何を変えるべきか」と、現場の事実から見た「なぜそれが問題になっているのか」を突き合わせることで、より実態に即した変革課題を設定できるのではないでしょうか。

おわりに

今回、NEDOの「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」を読み、スマート化を進めるプロセスについて学びました。特に企画段階において、まず経営・事業上の課題を捉え、そこから変革課題を整理していくことが重要だと理解しました。

一方で、ガイドラインでは、変革課題を設定した後に、Fact Findingによって現場の実態を可視化し、問題の定量化や原因追究を行うことも重視されています。

今回この内容を整理する中で、私は、経営・事業上の課題から考えた「何を変えるべきか」と、現場の事実から見えてくる「なぜそれが問題になっているのか」を行き来しながら、変革課題のすり合わせをして設定していくことが重要なのではないかと考えました。

これは、前回の記事で取り上げたTPSにおける「ムダを見つけ、その原因を考える」という考え方とも通じる部分があると感じました。

今回は「変革課題の設定」という観点から整理しましたが、今後は、こうした課題を実際にどのようにデータやシステムへ落とし込み、現場の改善や経営上の成果につなげていくのかについても学んでいきたいと思います。

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