はじめに
最近、「AIがエンジニアの仕事を奪う」という話をよく見かけます。
実際に現場でも当たり前にAIによるコーディングを行っていますし、Qiitaのトレンドを見ていてもAIコーディングについても記事をよく見かけます。
こういった流れを見ていると、
「もう人間のエンジニアって必要なくなるんじゃ……」
と思う人も多いんじゃないでしょうか。
私もそう思ってますし、会社でもそんな話が出始めています。
ただ、最近ちょっと面白いデータを見つけました。
帝国データバンク調べ:一番人手不足なのは「情報サービス業」
帝国データバンクが2026年5月に発表した調査によると、
2026年4月時点で、正社員の人手不足割合が最も高かったのは「情報サービス」(66.7%) だったそうです。
全体の50.6%の企業が「正社員が不足している」と回答しており、これは4月としてなんと4年連続で半数超え。
業種別の上位はこんな感じです。
| 順位 | 業種 | 正社員不足割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 情報サービス | 66.7% |
| 2位 | 運輸・倉庫 | 65.9% |
| 2位 | メンテナンス・警備・検査 | 65.9% |
| 4位 | 建設 | 65.7% |
AIが急速に浸透している今でも、IT業界の人手不足は依然として深刻。
少し意外でしたし、正直ちょっとホッとしました(笑)
ではなぜAI時代に人手不足なのか?
調査レポートの中では、IT系企業からの声としてこんなことが紹介されています。
「ソフトウェアのコード生成をAIに置き換えることで単純な作業者需要は減ったが、AIの生成したコードを正しくシステムとして安定運用していくための設計を担う人材の需要が増えている」
(ソフト受託開発)
「スキル要件に合致する要員の十分な確保は、依然として困難な状況が続くと考えられる。このため、社員のリスキリングを含め、スキルに適合した人材をどのように確保していくかが重要な課題となっている」
(ソフト受託開発)
つまり、
- AIによって「コードを書くだけ」の需要は下がっている
- でも「AIの作ったものを安全に動かす力」の需要は上がっている
- DXやAI活用案件が増えていて、スキルがある人の取り合いになっている
という状況みたいです。
「AIで仕事が消える」というよりは、「求められるスキルがシフトしている」 という感じですね。
ここで気になる話:AIコーディングで作ったサービス、情報漏洩してるらしい
人手不足の話とセットで考えたいのが、こちらのニュース。
海外のテック系メディアであるAxiosやWIREDが、「AIコーディング(vibe coding)で作られたサービスから情報漏洩が多発している」という問題を報じました。
参考:Axios「AI vibe-coding apps leak sensitive data」
参考:WIRED「Thousands of Vibe-Coded Apps Expose Corporate and Personal Data on the Open Web」
漏洩していたのはこういった情報です。
- 個人情報
- APIキー
- 医療情報
- 社内データ
AIコーディングサービスを使って作られたアプリが、セキュリティ的に問題のある状態で本番公開されてしまっているケースが多いとのこと。
「動くものが作れる」と「安全に運用できる」は全然違う
AIコーディングが普及した結果、
- 「AIに伝える」→「ほぼ自動でWebサービス完成」→「数時間で公開」
という流れが珍しくなくなりました。
Qiitaでも「AIコーディングでこんなもの作りました!」という記事をよく見かけますし、インスタなんかでは「素人の私でもAIコーディングでこう稼いでます!秘訣を知りたい方は○○とコメント」みたいな投稿も増えています。
ただ、従来なら「インフラやバックエンドをある程度理解していないと本番公開まで辿り着けない」という自然なフィルターがありました。
クラウドの普及で、知識が少なくても公開まで到達できるようになった、さらにAIコーディングでコードの中身すら知らずに公開まで可能。
これは、セキュリティレビューなしで公開されるサービスが急増している、ということです。
問題なのはAIそのものというより、
「ソフトウェア開発の難しい部分が見えなくなっている」
ことだと思っています。
認証・認可、脆弱性対策、DBの権限管理……
「地味だけど重要な部分」が、AIコーディングでは意識されにくいのではないでしょうか。
これからSEに求められることって何?
ここまでの内容を整理すると、こんな結論になりそうです。
「コードを書くだけの人」の価値は下がる
AIが高速・低コストでコードを生成できる以上、「コードが書けます」だけでは差別化にならなくなってきます。
「システムを安全に設計・運用できる人」の価値は上がる
帝国データバンクの調査でも、現場から「設計を担う人材の需要が増えている」という声が出ています。
AIの作ったコードを正しく動かすには、人間の設計力が必要です。
「AIコーディングのリスクをわかっている人」はさらに希少
セキュリティ知識なしで本番公開してしまう人が増える中、「このコード、認証ちゃんとできてる?」「APIキーが露出してない?」と確認できるエンジニアはめちゃくちゃ貴重になると思います。
まとめると、これから価値が上がりそうなのは、
- 設計できる人
- レビューできる人(AIのコードを含めて)
- 運用・監視を理解している人
- 障害対応できる人
- セキュリティを考えられる人
- 非機能要件(性能・可用性・保守性)を考えられる人
なのかもしれません。
現場エンジニアとしての正直な感想
こういう記事を読むたびに、「コードを書く速さを上げることよりも、システム全体を俯瞰して考える力を鍛えた方がいい」という気持ちが強くなっています。
だってAI失業したくないですし。
今後1〜2年で「AIで3日で作ったサービスが情報漏洩」みたいなニュースはかなり増えると個人的には思っています。
そういった事故を防げる立場になれるかどうか、が生き残りに関わってくるんじゃないかと思います。
「AIがあるからIT人材は不要になる」という世界には、まだ少し遠そうです。
(むしろそうあってほしいという気持ちも少しありますが……)