はじめに
ChatGPTに相談していると、
「なるほど、それだよそれ」
と思える回答に出会うことはないでしょうか。
私自身、現場で長らく困っていた問題についてChatGPTへ相談した際に、まさにこの感覚がありました。
しかし、振り返ってみると、ChatGPTが私の知らない「正解」を一方的に教えてくれたわけではありませんでした。
自分の状況や感情、考えている選択肢とその理由を伝えながら対話を重ねることで、問題の捉え方だけでなく、自分が本当に解決したかったことまで少しずつ明確になっていったのです。
今回は、この体験を通じて感じた「ChatGPTの真価」について整理してみます。
「なるほど、それだよそれ」と感じた瞬間
私が相談したのは、自分なりに考えられるさまざまな策を講じても、整理できず、解決できなかった問題でした。
簡単な問題であれば、まずは自分で調べたり、思いついた方法を試したりします。それでも解決できなかったからこそ、ChatGPTから提示された新しい見方がスッと頭に入り、その後も残り続けました。
長らく問題の本質を見極められなかった中で、突然、暗闇に光が見えたような感覚でした。
ただ、改めて考えてみると、ChatGPTが何もないところから答えを生み出したわけではありません。
答えの材料は、すでに自分の中にあった
自分の中には、状況、感情、経験、仮説などの材料がすでにありました。
しかし、それらは互いにつながっていない「言葉の断片」でした。
パズルにたとえると、ピースは手元にあります。ただし、正解となる完成図は一つではなく、組み合わせの候補が無数にあるような状態です。
そのため、自分一人では、どの組み合わせが問題の本質を表しているのか判断できなくなっていました。
そこでChatGPTへ、現時点で言葉にできる状況や感情を、できる限り細かく伝えてみました。
ChatGPTとの対話の仕方
1. ChatGPTが示したのは、正解ではなく「新しい組み合わせ方」
ChatGPTが提示してくれたのは、自分が伝えた言葉の断片に対する、新しい組み合わせ方でした。
「このような側面もあるのではないか」
「この状況と感情は、こうつながっているのではないか」
というように、複数の見方を、その理由とともに提示してくれました。
私はその中から、それぞれの提案に納得できるか、どこかに違和感があるかを考えました。そして「これなら腑に落ちる」と思える見方を発見したことが、「それだよ」と感じた体験の実態に近いと思います。
ここで重要だったのは、ただ肯定したり、こちらの話を要約したりするだけではなかったことです。
私にとっての「聞き上手さ」は、伝えた内容を踏まえて新しい見方を返してくれることでした。また、それぞれの提案に理由があるため、選択肢を比較しやすく、納得感を持って判断できました。
2. 対話の中で起きていたこと
今回の対話を整理すると、以下のようなやり取りを繰り返していました。
- 私が、言語化できる範囲で状況や感情、仮説を伝える
- ChatGPTが、別の側面や複数の組み合わせ方を理由とともに提示する
- 私が、それぞれに納得するか、違和感があるかを判断する
- 選択した理由や違和感の理由を、さらに細かく伝える
- ChatGPTが、その情報を踏まえて次の仮説を提示する
私が普段の業務で行っている「対話を通じたゴールのすり合わせ」に近い場面として、今回の体験を抽象化すると、以下のようになります。
私:現場でいくつかの対策を試しましたが、問題が解決しません。何が問題の中心なのか、自分でも整理できていません。
ChatGPT:施策が足りないというより、関係者の間で「どの状態を目指すのか」が揃っていないことが中心なのではないでしょうか。
私:目標のすり合わせが足りないという指摘は納得できます。ただ、それだけではなく、自分自身も本当に解決したいことを明確にできていない気がします。
このように、ChatGPTの提案をそのまま採用するのではなく、納得できた部分と違和感がある部分を返していきます。すると、次の対話では「関係者間の目標」だけでなく、「自分が本当に目指したい状態」まで掘り下げられます。
このやり取りを繰り返す中で、問題の捉え方だけでなく、自分の判断基準や目指すゴールも少しずつ明確になっていきました。
会話を始めた時点では、「この問題を解決したい」という曖昧なゴールしか持っていませんでした。しかし、対話の後半では、「自分は本当は何に困っていて、どのような状態を目指したいのか」まで言葉にできるようになっていました。
つまり、最初から正しい問いやゴールが完成していたのではなく、対話そのものによって問いとゴールが更新されていたのだと思います。
最終的な答えや行動計画が得られなかったとしても、「自分が本当に解決したかったこと」が明確になった時点で、私にとっては十分に価値がありました。
3. ChatGPTの回答を「正解」にしない
もちろん、ChatGPTから返ってきた回答を、そのまま「正解」として受け入れていたわけではありません。
提示された選択肢から何かを選ぶときは、なぜそう判断したのかを細かく伝えました。違和感があれば、その理由も返していました。
そもそも、自分の状況をすべて言語化してChatGPTへ渡すことはできません。最終的な判断では、自分でもまだ言葉にできていない感覚や事情も使っています。
今回の体験から、それぞれの役割は以下のようになると感じました。
- ChatGPT:伝えられた言葉をもとに、複数の見方を提示する
- 人間:言葉にした情報と、まだ言葉になっていない文脈の両方を使って判断する
- 対話:判断した理由を再び言葉にすることで、暗黙だった判断基準を見えるようにする
ChatGPTに判断を委ねるのではなく、自分の仮説をぶつけ、提案を検討し、その結果を再び会話へ返していく。
この使い方によって、何をすべきかだけでなく、なぜそれをするのかにも納得でき、具体的な行動へ移りやすくなりました。
3つを一つの流れとして使う
ここまでの内容をまとめると、ChatGPTとの対話では、以下の流れを意識していました。
- 自分の中にある状況や感情、仮説を、断片のままでも伝える
- ChatGPTから、別の組み合わせ方や仮説を理由付きで提示してもらう
- 納得した点と違和感がある点を、自分の言葉で返す
- やり取りを繰り返しながら、問題の捉え方と目指すゴールを更新する
ChatGPTに最初から正解を出してもらうのではなく、提案を受け取り、自分の判断を返しながら、一緒に問いを磨いていくという使い方です。
後回しにしていた自己理解に、向き合えるようになった
私は以前から、自分の状況整理や自己理解のような、時間がかかることを後回しにしていました。
振り返ると、新卒の就職活動の頃から、自分の長所や短所、特に短所を自分で認めることが怖く、向き合うことから逃げていたように思います。当時、一社からも内定を得られなかったことにも、この姿勢が少なからず影響していたのではないかと、今では考えています。
しかし、ChatGPTとの対話では、不思議と「自己理解のために時間を費やしている」という感覚があまりありませんでした。
自分を分析する重たい作業というより、アイデアをブラッシュアップしていくクリエイティブな作業に近く感じられたためです。
その結果、これまでは「時間がかかるから」と避けていた問題にも、以前より取り組みやすくなりました。これは、ChatGPTとの対話を通じて感じた大きな変化の一つです。
「1回5,000円の相談」だとしたら
例えば、ChatGPTへの相談が1回5,000円かかるとしたら、相談前に何を考えるでしょうか。
私であれば、以下の内容をこれまで以上に具体的に整理すると思います。
- これは本当に聞きたいことなのか
- 認識のずれを減らすには、どの状況を詳しく伝える必要があるか
- 自分は何を事実として把握し、何を推測しているのか
- すでにどのような手段を試したのか
ChatGPTは気軽に使えるからこそ、軽い質問や単純な作業にしか使わなくなることもあります。
しかし、高価な相談相手へ話すつもりで準備し、自分が本当に困っている複雑な問題を持ち込むと、これまでとは違った価値が見えてくるのではないでしょうか。
ここでいう「しっかり準備する」と「不完全な状態から相談する」は、反対のことではありません。
前者は、相談の価値を高めるために、聞きたいことや現状をできる限り整理しておくという意味です。後者は、完成した答えや、完璧な質問文まで用意する必要はないという意味です。
つまり、結論を持ち込む必要はありません。現時点で把握している事実、推測、試したこと、感じている違和感を持ち込めばよいのです。
完璧に整理してから話そうとすると、状況整理そのものを再び後回しにしてしまいます。現時点で持っている断片をできる限り伝え、不完全な状態から対話を始めることが大切だと感じています。
まとめ
改めて、今回の体験で一番大きかった発見は、ChatGPTの真価は、最初に投げた問いへ正解を返すことだけではないということでした。
自分の中に散らばっていた言葉をChatGPTへ渡し、新しい組み合わせ方を理由とともに提示してもらう。そこへ納得や違和感の理由を返し続けることで、暗黙だった判断基準が少しずつ表に出てきます。
このやり取りを繰り返すことで、問題の捉え方、判断基準、目指すゴールの解像度を一緒に上げていくことができます。
ChatGPTは「正解を出す機械」というより、自分一人では見つけられなかった意味の組み合わせを提示し、自分が本当に解決したいことを見つけるための対話相手でした。
普段は気軽な質問や単純な作業にChatGPTを使っている方も、一度、本当に困っている複雑な問題を持ち込んでみると、これまでとは違う「ChatGPTの真価」が見えてくるかもしれません。
