※ Retty Advent Calendar 2018 23日目の記事です。
昨日は @yongyu-li さんの記事で、 iOSアプリにReactNativeを部分導入する方法 でした。
はじめに
こんにちは。プロダクト部門アドテク&アライアンスチームの進藤です。
アドテク&アライアンスチームって何してるの?
エンジニアリングの観点から、Rettyのビジネスを支援・成長させるチームです。
具体的な業務内容としては、『広告商品開発』 や 『広告運用』 になります。
今回は『広告運用』の2018年を振り返り、ブログにまとめました。
ちなみに、『広告商品開発』の話も、アドベントカレンダーで書いているので是非読んでください。
Rettyマネタイズを支える広告商品開発
Rettyの広告について
Rettyでは大きく2つの広告を展開しています。
- 純広告・タイアップ広告 ( ※ 飲食店・飲料メーカーといった広告主向けに直接販売を行う )
- プログラマティック広告 ( ※ 広告配信事業社を経由して、自動的に広告の買い付け・配信を行う )
アドテク&アライアンスチームの『広告運用』では、
後者の「プログラマティック広告」の収益を最適化するための、ソリューション導入・開発を行っています。
前半では、2018年Rettyで取り組んだこと、
後半では、今後の広告運用でしたいことをまとめています。
2018年Rettyで取り組んだこと
広告運用について、2018年に取り組んだ内容です。
- 1月 : Prebid.js導入。ヘッダービディング取引の拡大
- 3月 : PMP配信の取り組み強化
- 5月 : 広告運用コスト削減 (ダッシュボード作成・フロアプライス自動調整)
- 8月 : 不正リダイレクト広告対策
- 9月 : 新規広告フォーマット (ネイティブ広告・ビルボード広告・アフィリエイト広告) のテスト導入
- 11月 : 純広告・タイアップ広告の余剰在庫へのプログラマティック広告配信開始
また、2018年プログラマティック広告の実績は下記になります。
縦軸が広告収益で、プラットフォーム別の割合を積み上げグラフにしています。
( ※増設・削除した広告枠は図から除外してます。1年間運用した広告枠のみグラフに載せています。)
上記、運用実績から分かる通り、
UU数増加 (実名グルメサービス「Retty」が月間ユーザー数4000万人を突破) に伴う影響もありますが、
それ以上に、ヘッダービディングで大きな成果を残せたことが分かります。
1つ1つ掘り下げていきます。
Prebid.js導入。ヘッダービディング取引の拡大
現在のRetty広告システム全体像
現在のRetty広告システム全体像は下記になります。
要は、AdServerとして『AdManager』を使い、
『AdExchange』『ヘッダービディング』『SSP (フィラー) 』のうち、広告単価の高い広告を配信します。
2017年6月頃のRetty広告システム全体像
では、ヘッダービディングを導入する以前はどうだったか。
2017年6月頃のRetty広告システム全体像は下記になります。
だいぶさっぱりしていますね。
当時は、上記システムを採用しているメディアも多かったでしょう。
AdManager (当時はDFP) 経由で AdExchange に広告リクエストを飛ばし、フロアプライスをきって、
入札がなければパスバックでフィラーネットワークに流す、という運用です。
メディアによっては、さらにフィラーネットワーク内でフロアプライスを設定し、再度DFPにパスバックして競わせる、といった運用をしていると聞いたことがあります。
なぜヘッダービディング導入を進めたのか
そのなかで、ヘッダービディングを導入し、推し進めた理由は大きく2つあります。
- 広告収益を上げる施策が頭打ちになっていたこと
- ヘッダービディングの仕組みが、シンプルに売上を伸ばすことに繋がるのが明確だった
前者については、会社方針として広告枠を増やせないけど、毎Q目標数字が上がっていく、、、
そんななかでできることは、ウォーターフォール型でパスバックをひたすら繰り返していくことか、
広告枠をSSPに売って、ひたすらプレッシャーをかけて会社の目標数字を達成してもらうこと。。
どちらにせよ、限界が見えているのは明確で、広告収益を上げる施策が頭打ちになっていました。
そのなかで、ヘッダービディングの提案を聞いたとき、
構造としてもシンプルに広告単価を上げることが明確だったので、導入を進めました。
ヘッダービディングの構造とは?
ここでは細かい仕様の話はしないですが、ポイントとしては、
- SSP(フィラー)で設定している仮想CPMが、実際のCPMより高く設定されている (AdXへプレッシャー)
- ヘッダービディング導入することで、SSP(フィラー)で設定する仮想CPMを実際のCPMまで下げれる
- SSP(フィラー)の仮想CPMを引き下げたことで、余った広告impをヘッダービディングで高く買い付けれる
- AdXとヘッダービディングで、実際のCPMで競合することで、互いにCPMを上げるロジックが働く
そして、構造的に、ヘッダービディングで連携している広告配信事業社を増やせば、
ユーザーマッチし、広告単価の高い買い付けが行われる可能性が増えます。
(この辺りについても、Rettyとして考察を後述しますね)
ヘッダービディングを運用して見えてきたこと
先程、ヘッダービディングで連携している広告配信事業社を増やせば... という話をしましたが、
Rettyとして10社以上の広告配信事業社と連携した結果、見えてきたことを話します。
- 広告配信事業社を増やすことで、広告単価は上がったけど、あるところで頭打ちが見えてきた
- 不正リダイレクト広告が増えた (ような気がする)
前者については、
連携している広告配信事業社とサービスの関係によるかもですが、
1-3社連携した辺りで、ヘッダービディングの効果が見えるようになってきたこと (収益割合の1割程度)
4-7社連携した辺りで、ぐっと収益が増えてきたこと (収益割合の3-4割程度)
8-10社連携した辺りで、なんとなく頭打ちみえてきました。。。
後者については、
不正リダイレクト広告がよく出てた8,9月頃の話だったので、一時的なものだったのかもしれませんが、
いままで不正リダイレクト広告の問い合わせがなかったところから、急に月4件問い合わせがきました。
そこで、不正リダイレクト広告検知機能を持つSSP事業社何社かと連携し、
広告配信停止や、怪しそうなDSPのブロックリスト運用をお願いしたり、
SSP (フィラー) の仮想CPM設定を上げることで、不正広告対策を行い、なんとか落ち着きました。
一時期は、広告配信事業社を増やす方向で躍起になって動いていましたが、
いまは、国内であったり、評判のいい広告配信事業社があれば導入する程度に抑えています。
今後のヘッダービディングの取り組みについて
先ほど、広告配信事業社を増やすのはある程度抑えている、という話をしましたが、
キャッチアップは引き続き行い、広告単価を伸ばせるところはしっかり取りにいきます。
いまいま、Prebid.jsの動画広告・ネイティブ広告対応に動いている広告配信事業社だったり、
Prebid Server がいよいよ、という話も聞いているので、波に乗り遅れないようにはします。
広告運用コスト削減施策
上述のヘッダービディングにかぶるところはありますが、敢えて切り出しました。
レポート一元化にフォーカスしたかったのでw
ヘッダービディング導入で増える広告運用コスト
HBを導入した結果、広告運用コストが増えるという問題も起きました。
具体的には、
- 取引する広告配信事業社が増えたことによるコミュニケーションコスト(MTG・経理処理・配信設定依頼)
- 広告収益を確認する管理画面が増えたこと。社内共有用のレポート作成コスト
- 広告品質を担保するコスト (不正広告の特定)
- ヘッダービディング特有の運用設定 (フロアプライス設定・フィラーの仮想CPM設定)
このうち、とくに気になったのは、社内共有用のレポート作成コストです。
レポート一元化ツールの導入
もともとRettyとして、ここの運用をしっかりやっていなかったので、他のメディアと事情が違うかもですが、
やっていたのは経営層とのコミュニケーションツールとしての全体収益レポートを作っていたぐらいでした。
チーム内で施策を考えるときも、管理画面を3つぐらい見てたら事足りていました。
ただ、ヘッダービディングで何社も連携してからは、
『枠x広告配信事業社』の粒度で、デイリーでレポートを見る必要性が高まりました。
実際に起きていたこととして、
コードに手を加えることが増え、デプロイ後に広告配信ができない事故も何度かあったので、
早めの異常値検知ができるようにしたかったこと。
あと、これは時期的要因ですが、
純広告・タイアップ広告の市場縮小の流れに伴い、プログラマティック広告の需要が高まり、
経営層から細かいレポートが要求される機会が増えてきたことと、
また、プログラマティック広告施策のPDCAを回すスピードが早くなってきたこと。
(他のメディアからすれば当たり前のことかもしれないですが、、)
こんな感じでいろいろあって、
レポート一元化ツールを導入しましたが、本当に運用がラクになりました。
アドテク&アライアンスチームの @shogo-tsutsumi が対応してくれて、
アドベントカレンダーの記事になっているので是非読んでみてください。
広告KPIダッシュボード開発でPDCA回してみた
プログラマティック広告運用の今後の方針
2019年に取り組みたいのは大きく2つあります。
1つ目は、広告品質の定量化
外食メディアとして、広告の品質にこだわり続けたい。
Rettyに訪れるユーザーは、「美味しいものを食べたい」という共通の欲求を持っています。
したがって、ユーザーの外食機会を損ねるような、食欲をそぐ広告を配信することは避けたいところです。
この辺りは、2017年のRetty広告運用のインタビュー記事でも触れていますので、是非読んでみてください。
「アドテクの理想と現実」にパブリッシャーはどう向き合うべきか?-大手グルメサービス担当者が語る課題と未来 [インタビュー]
そのため、
- 広告品質を定量化して、KPIとして目標設定できるものにする
- 自社営業チームとの連携や、PMP配信の取り組みを拡大し、Rettyにマッチした広告案件を獲得
- 広告品質改善につながるソリューションを積極的に導入するよう、日々キャッチアップする
プログラマティック広告運用をしていると、広告収益でコミュニケーションすることが多くなりますが、
広告品質についてもコミュニケーションできるように、広告品質の定量化は進めたいです。
この辺りは、2019年にしっかり成果を残しいきたいです。
2つ目は、広告がサービスに与える影響の可視化と、ドメスティックな施策打ち出し
メディアとして、広告枠の増設・破棄や、枠位置の調整、新しい広告フォーマットの導入といった施策は打ち出しづらいものです。というのも、広告がサービスを利用するユーザーにどういう影響を与えるかという可視化のハードルが高いからです。
(この辺りは、前述した広告品質の定量化に似た話ですね)
2018年は、手探りながらも 『ビルボード広告』『ネイティブ広告』 といった新しい広告フォーマットの導入を進めて、『ビルボード広告』はテスト配信の結果、敗れ去りましたw
しかしながら、**データ分析チームと連携しながら、広告がユーザーに与える影響 (離脱率・CV率) を可視化するために動いたのは、一歩前進かな、と感じています。**まだRettyとしての解答は出せていない部分ではありますが、まずは『RettyサービスとしてのKPI』と『広告がKPIに与える影響』を可視化し、コミュニケーションできる土台を整えていきたいです。
2019年は、上記を言語化・ルールを確立し、サービスとしてのKPIを損なわず、広告収益を上げれるような、ドメスティックな施策を打ち出したいです。
どちらもハードルが高いですが、Rettyとしてしっかり向き合っていきたいところです。
ではでは。