Inspiredからの引用と私の私見
Inspired(^1)を見ていて一番「ないわー」と思ったのが「デザインは外注出来ない。できるのはせいぜいQAまでだ。」という部分。
2008年という古い時期の、それもアメリカの、プロダクトマネージャーが書いた本なのでしょうがないとは思う。
(QAはブラックボックステストですら外注すると効果が下がる、意図が正確に伝わらないから、というのが最近はっきりしてきた)
^1 Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方 マーティ ケイガン http://www.amazon.co.jp/dp/B00TCM8TB4/
よい本だからぜひ読んだ方がいい。
UXやユーザービリティは日本だと利用者品質(^2)という言葉でJISで規格化されている。
利用者品質は、仕様を決める企画段階で深く関わった品質の専門家による、ユーザー目線でのチェックを入れないと担保はほぼ不可能とされている。
であるので私は「QAは外注可能」には反対で、UXやユーザービリティが製品から得られるかのQAは必ず内製化しないといけないと思っている。
^2 ただし利用者品質は「価値」までは踏み込んでいないのであまり十分だとは思っていない
4つのデザイン
Inspired自体は良い本だし、その中でよいことも書いてある。
デザインは4つに分かれる。「UXデザイン」「インタラクションデザイン」「UIデザイン」「ビジュアルデザイン」
この中でデザインは2つに分けられる
「UXデザイン(^4)」「インタラクションデザイン」
と「UIデザイン」「ビジュアルデザイン」
新概念:プロダクトデザイン
プロダクトデザイン(^3)という概念が2008年の刊行のあと5年くらいで発達し、プロダクトデザインはユーザーのやりたいことをユーザービリティをもとに「UXベース」で保証するようデザインすること、みたいな感じで定義されている。
プロダクトデザインはUIデザインのような「見た目のデザイン」とは別のものである。
行動と体験を通して目的を達成できること、また体験を通してユーザーのやりたいことの変化が、設計者の意図通り変化することを目的にデザインする。
心理学、認知心理学、社会心理学、あるいは人間の集団行動的な知見から、ユーザーの行動と目的にそってプロダクトのデザインを行う。
^3 日本語資料が2013年あたりから多少見つかるけどあまり見つからないのであまり日本語化されてないのか?
^4 UX/UIデザインという意味でのUXではない。くわしくは以下で解説
http://qiita.com/shin_semiya/items/a4bd0135e2d9c5206846
私の主張
旧来のUIデザイン、ビジュアルデザインはデザインの右翼側に配置される。
これらは外見を管轄する。
ダサいと目も当てられないし、分かりづらい外見は罪だし、これの出来が悪いと、中身が良くても結果が出ない。
右翼側のデザイナーは「見た目がダサくないか?」「意図して見せたいものをちゃんと見せているか?」「見せたくないものは見えていないか?」「配置は人間工学的に合っているか?」
そういったことを保証する
(専門じゃないけどあってるはず)
一方でプロダクトデザイン、UXデザインはデザインの左翼に配置される。
これらはユーザーの目的の達成とそのための手段の実行、時間の推移によるユーザーのマインドセットの変化を管轄する。
左翼側のデザイナーは「ユーザーは"したいこと"のために行動すれば最終的に目的を達成できるか?」「UXとして機能するか?」「"したいこと"を得るためのコストは見合ったものか?(ユーザビリティの効率部分は大丈夫か?)」「ユーザーの興味は意図通りに変化するか?」ということを保証する。
右翼と左翼の違い
右翼はデザイン系、美術系の専門知識を必要とする。
一方で左翼は心理学、特に認知心理学や社会心理学の専門知識を必要とする。
左翼デザイナーは心理学的なデザイナーであり、右翼とは全く異なる
今まで出会ったUXデザイナーの8割は実際にはUIデザイナー、すなわち右翼側の人間だった。
私の結論
2010年代のデザインにおいては、左翼と右翼の両方が必要とされる。
右翼だけが強い場合「見た目のオサレな使いづらいサービス、製品」が完成する
左翼だけが強い場合「まず見た目で敬遠されるサービス、製品」が完成する
重要なのは両方を揃えることである