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DevOps・インフラ周りの名前の由来(15種)

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Last updated at Posted at 2026-08-06

はじめに

Terraform、Kubernetes、Datadog—。

毎日のようにコマンドを打ったりダッシュボードを眺めたりしているのに、「そういえばこの名前、何が由来なんだろう?」と考えたことはありますか?

自分は恥ずかしながら、Nginx を「エヌジンクス」と読んでいた時期がありました。
由来を知ったら「Engine X か……そりゃそう読むわ」と膝を打った記憶があります。

調べてみると、古典語から取ったもの、SF小説の造語、創業者の名前のアナグラムなど、命名の背景は実に多彩でした。
しかも多くの場合、名前にプロダクトの設計思想が埋め込まれています

この記事では、公式ドキュメントや開発者本人の発言を優先しつつ、確認できないものはその旨を明記して、DevOps・インフラ周辺でおなじみの名前を主要15件(+おまけ1件)調べました。飲み会のネタにどうぞ。

この記事は各ツール・サービス・プロジェクトの「名前の由来」にフォーカスしています。機能比較・料金・セットアップ手順は扱いません。

出典の読み方
【一次資料】 :命名者・開発者本人の発言、公式ドキュメント、公式の投票記録など、当事者が直接公開した情報です。
【二次資料】 : 報道、辞書、関係者による伝聞・解説など、当事者の情報を紹介・整理した資料です。

出典のURLおよび記載内容は2026年8月時点のものです。公式ドキュメントの記述は後から書き換わることがあります。

監視・オブザーバビリティ

1.New Relic

創業者 Lew Cirne の名前のアナグラム(文字の並び替え)です。

Lew CirneNew Relic のように、スペースを除くと同じ8文字を並べ替えています。

"New Relic CEO and founder Lew Cirne (the company name 'New Relic' is an anagram of his name)"
【二次資料】 CNET (2011)

確認できた由来は、このアナグラムだけです。
これは筆者の解釈ですが、"New Relic" は「新しい遺物」とも読めます。
古いものを意味する relic に new を組み合わせた、少し矛盾した響きも印象に残ります。

2.Datadog

前職の Wireless Generation にあった、皆から恐れられていた Oracle Database の名前 「Datadog17」 が由来です。
Olivier Pomel の発言によれば、新しい事業を検討するときの社内コードネームとして使ったところ覚えてもらいやすかったため、末尾の「17」を外して正式名称にしました。

"That database was called Datadog17. So when we started working on this idea, we used that as our internal codename."
— Olivier Pomel, 【一次資料】 RTP Global: Building Datadog Against the Odds

恐れられていたデータベースの固有名を引き継いだという、予想の斜め上を行く由来でした。

ちなみに公式表記は Datadog(1語・先頭のみ大文字)。"DataDog" や "Data Dog" は不正解です(【一次資料】 Datadogプレスキット)。

3.Kibana

作者 Rashid Khan は、ログデータを可視化する製品に外国語を使った名前を付けようと考えました。

ここで効いているのが、英語の log が「ログ」と「丸太」の両方を意味することです。
ログ可視化の logs から丸太を連想し、丸太で建てる 「木の小屋(wood hut)」 を外国語に訳す、という発想でした。

Tim Sullivan の説明によると、Rashid Khan は Peace Corps でアフリカに滞在した経験からスワヒリ語を選び、当時の Google 翻訳が返した Kibana を採用しました。

He chose to translate "wood hut" into Swahili [...] Google Translate showed "Kibana" as the translation.
— Tim Sullivan, 【二次資料】 Elastic Discuss: The meaning of Kibana

同じ投稿には、そもそもケニアでは丸太で小屋を建てないという指摘も添えられています。駄洒落そのものを説明した文章ではありませんが、この括弧書きは log の二重の意味を前提にしていると読めます。

さらに同じ投稿では、現在の翻訳では Kibanda となり、Kibana は「赤ちゃん」に近い意味だとも説明されています。加えてデフォルトポートの 5601 が、"logs" を逆から並べた "sgol" を Leetspeak に置き換えたものだという話も出てきます。翻訳結果の方が後から変わったというオチまで含めて、印象に残る由来です。

4.Grafana

GraphKibana を組み合わせた名前です。
スウェーデン語では "Graph" を "Graf" と綴るため、"Grafana" になりました。

"I named it Grafana as mix between Graph and Kibana (Graph is spelled Graf in swedish)"
— Torkel Ödegaard, 【一次資料】 GitHub Issue #2186 (2015)

Grafana は Kibana プロジェクトのフォークとして始まりました。
作者 Torkel Ödegaard は、Kibana のヒストグラムパネルを Graphite の問い合わせ・表示に使おうとした実験が出発点であり、Kibana 3 を基盤としてダッシュボードUIを再利用したと振り返っています(【一次資料】 Grafana Blog: 4 Years Of Grafana)。

つまり名前に Kibana が混ざっているのは、実際にコードのルーツがそこにあるからです。

発音は 「グラファーナ(Grah-fah-nah)」 です(【一次資料】 Grafana公式コミュニティ)。

5. Splunk

Spelunking(洞窟探検) の短縮形です。

"Splunk takes its name from the term 'spelunking,' which means exploring caves."
【一次資料】 Splunk 公式ブログ

これは筆者の解釈ですが、ログやマシンデータという「暗い洞窟」を探検して、隠れたインサイトを掘り出す——プロダクトのやっていることが、そのまま名前になっていると言えそうです。

Linux・オープンソース基盤

6. Red Hat

共同創業者 Marc Ewing が、大学のコンピュータ室で祖父の 赤い Cornell University のラクロス帽 をかぶっていたことが由来です。技術的な助けが必要な人は、「赤い帽子の人を探せ」と案内されていました。

"If you need help, look for the guy in the red hat."
【一次資料】 Red Hat Brand Standards: History

単に帽子の色を社名にしたのではなく、「技術で困ったときに頼れる人」という評判ごと名前になっているわけです。

これは筆者の解釈ですが、オープンソースを企業として支える Red Hat の立ち位置を考えると、後付けではないブランドストーリーとしてきれいにつながっているように思います。

インシデント管理

7. PagerDuty

共同創業者 Baskar Puvanathasan が Amazon 時代に物理ページャー(ポケベル)を腰につけてオンコール当番をしていた文化 "pager duty" が、そのまま社名です。

"Baskar thought of being on call at Amazon—it was called being on 'pager duty' because back then, you carried a literal pager on your belt."
— Alex Solomon, 【一次資料】 PagerDuty Blog: A Decade of Duty (2019)

これは筆者の解釈ですが、Amazon の You build it, you run it の文化そのものが社名になっているのは、DevOps 的にこれ以上ない命名だと思います。

IaC・構成管理

8. Terraform

Terraform は、ラテン語の terra(土地・大地)を英語の動詞 form に前置してできた既存の英単語です。

SF でおなじみの「テラフォーミング(惑星改造)」と同じ言葉で、初出はアメリカの SF 作家 Jack WilliamsonWill Stewart の筆名で発表した1942年の作品 "Collision Orbit" だとされています(【二次資料】 Merriam-Webster)。

Oxford の学習者辞典も、1940年代にラテン語の terra と動詞 form から作られた語だと説明しています(【二次資料】 Oxford Learner's Dictionaries)。

語の成立年代は辞書によって扱いが異なります。Merriam-Webster は1942年、OED は「最古の用例は1949年、'W. Stewart' による」とし、Dictionary.com と Collins は語源欄に1975–80年と記載しています。造語者を Williamson(=Will Stewart)とする点は、前者2つで一致しています。

ただし、HashiCorp や Mitchell Hashimoto が、この語を製品名に選んだ理由を説明した一次資料は確認できませんでした。Terraform 1.0 GA 時に Hashimoto 本人が語った誕生の経緯(【一次資料】 The Story of HashiCorp Terraform)でも、名前の話は出てきません。

筆者の解釈ですが、宣言的なコードでインフラという「大地」を形作る Terraform には、非常によく似合う名前です。

9. Ansible

SF 作家 Ursula K. Le Guin が小説『Rocannon's World』で創作した、遠く離れた場所と瞬時に通信する装置の名前です。Le Guin 自身は "answerable"(返事が返ってくる)を元にした造語だと説明していたとされます(【二次資料】 SFE: Ansible)。

【二次資料】 OpenSource.com の記事では、Ansible を作った Michael DeHaan は、Le Guin の用語を受け継いだ Orson Scott Card の『エンダーのゲーム』に登場する ansible から名前を採ったと紹介されています。

作中の ansible は、遠方の多数の宇宙船を1つの司令点から統括する装置です。これは筆者の解釈ですが、分散したノードを一括管理する Ansible の役割ときれいに重なります。

コンテナ・オーケストレーション

10. Docker

英語の docker は、港で船への荷物の積み下ろしを担う人を意味します(【二次資料】 Cambridge Dictionary)。

命名者が由来を説明した一次資料は確認できませんでした。これは筆者の解釈ですが、Docker という語とコンテナを背負うクジラのロゴからは、海運コンテナの比喩を連想します。

なおクジラの名前 Moby Dock は、後からコミュニティ投票で決まりました。

Docker community members chose "Moby Dock" as the Docker whale's name.
【一次資料】 Docker Blog: Call me Moby Dock

11. Kubernetes

古代ギリシャ語 κυβερνήτης(kubernḗtēs) = 操舵手・舵取り。

"The name Kubernetes originates from Greek, meaning helmsman or pilot. K8s as an abbreviation results from counting the eight letters between the 'K' and the 's'."
【一次資料】 公式ドキュメント

コンテナ船の舵取り。ロゴの七角形は、Google 社内でのコードネーム "Project Seven of Nine" に由来します。Seven of Nine は『スタートレック:ヴォイジャー』に登場する元 Borg のキャラクターで、Kubernetes の前身である Google 内部のクラスタ管理システム「Borg」とのダブルミーニングです。

"In keeping with the Borg theme, we named it Project Seven of Nine. (Side note: in an homage to the original name, this is also why the Kubernetes logo has seven sides.)"
— Craig McLuckie, 【一次資料】 Google Cloud Blog: From Google to the world (2016)

同じ語根からは、制御を扱う学問である cybernetics も派生しています(【二次資料】 Online Etymology Dictionary)。
これは筆者の解釈ですが、「制御する」という本質が名前に凝縮されていると言えます。

開発・データ・Web基盤

12. Jenkins

元は Hudson(Sun Microsystems 時代)。Oracle との名称をめぐる対立を受け、コミュニティ投票で Jenkins へ改名されました。投票では総票の半数超が無効票だったものの結果は変わらず、有効票で改名214票・現状維持14票でした(【一次資料】 Jenkins公式告知)。

開発者 Kohsuke Kawaguchi へのインタビューでは、Hudson は忠実な英国執事、Jenkins も典型的な英国執事の名前として説明されています(【一次資料】 Redgate: Kohsuke Kawaguchi interview)。
改名後も「ビルドをお任せする執事」というコンセプトが引き継がれたわけです。

13. Git

名付け親は、Linux の作者としておなじみの Linus Torvalds。公式リポジトリの README では、最初のバージョンを作ったときに "git" と名付け、ツールを 「愚かなコンテンツトラッカー(the stupid content tracker)」 と説明したことが明記されています。

"The name 'git' was given by Linus Torvalds [...] He described the tool as 'the stupid content tracker'."
【一次資料】 git/git: README

README には、既存の UNIX コマンドと重ならない発音可能な3文字を選んだという説明に加え、英語の俗語で「愚かで嫌なやつ」、調子がよいときは Global Information Tracker、壊れたときは別の罵倒語、と気分次第の展開まで並んでいます。

14. Nginx

公式には "Engine X" と発音します。

"nginx ('engine x') is an HTTP web server, reverse proxy, content cache, load balancer, TCP/UDP proxy server, and mail proxy server."
【一次資料】 nginx.org

Igor Sysoev は、Apache が多数の同時接続を処理しきれない課題を背景に nginx の開発を始めました。ただし、"X" に「次世代」という意味を込めたかなど、詳しい命名意図は確認できた公式資料では説明されていません。

開発の経緯は、【一次資料】 NGINX Community Blog: Celebrating 20 Years of NGINX を参照してください。

発音は 「エンジンエックス」。「エヌジンクス」ではありません笑

データストア

15. Redis

REmote DIctionary Server の頭文字です。

"Redis stands for 'Remote Dictionary Server'."
【一次資料】 Redis 公式 FAQ

開発者 Salvatore Sanfilippo(antirez)が公開した初期バージョンの記録によると、Redis 0.1 は2009年2月に共有されました。同氏は、リアルタイム Web ログ解析サービス LLOOGG のスケール限界と MySQL を使った対処の行き詰まりが、Redis の実装を本格化させた背景だったと振り返っています(【一次資料】 antirez/historical-redis-versions)。

名前がそのまま役割を表す、シンプルな命名です。

課題管理

(おまけ)Jira

Atlassian は創業初期、社内のバグ管理に Bugzilla を使っていました。開発者たちはゴジラ映画が好きだったことから、Bugzilla をゴジラの日本語名 Gojira(ゴジラ) と呼ぶようになります。その後、自社の課題管理ツールを開発した際に先頭の "Go" を落とし、Jira になりました。

"the name stuck, but the Go got dropped - hence JIRA!"
【一次資料】 Atlassian Documentation: JIRA FAQ

本記事では現行の製品表記に合わせて Jira と記しますが、引用した当時のFAQでは JIRA と表記されています。

まとめ:命名パターンの分類

15件(+おまけ1件)の由来を大まかに分類すると、次のような命名パターンが見えてきます。複数の説明がある場合は、本文で扱った主たる命名経路により、便宜上1つに分類しました。

確度は、 = 一次資料・公式資料で命名経緯を確認、 = 二次資料による説明、 = 語義は確認できるが製品名の選定理由は未確認、を表します。

パターン 対象 命名理由の確度
SF語の借用 Ansible / Terraform ○ / △
職業・役割のメタファー Docker / Jenkins / PagerDuty △ / ◎ / ◎
古典語・既存語 Kubernetes / Splunk ◎ / ◎
頭字語 Redis
翻訳・造語・表記 Grafana / Kibana / Nginx ◎ / ○ / △
人名・創業者のエピソード New Relic / Red Hat ○ / ◎
既存名・社内呼称の転用 Datadog / Jira ◎ / ◎
自虐・後付けの展開 Git

面白いのは、1942年の SF 語(Terraform)と1966年の SF 語(Ansible)が、どちらもインフラ自動化ツールの名前になっていることです。何十年も前に小説の中で作られた言葉が、いまコマンドラインで毎日叩かれています。

名前から連想できる役割(筆者の解釈)

  • Ansible → 遠隔地を結ぶ通信装置 = リモートノードの一括管理
  • Red Hat → 技術相談で頼られた赤い帽子の人 = オープンソースを支える存在
  • Kubernetes → 舵取り = オーケストレーション
  • Docker → 港湾労働者 = コンテナの積み下ろし(命名意図は未確認)

一方で、New Relic のような言葉遊びや、Git のように作者の自虐が詰まった名前、Jira のように前身ツールへのオマージュから生まれた名前もあります。すべての名前が機能を表しているわけではないからこそ、命名の背景にはプロダクトごとの個性が出ます。

次に新しいツールに出会ったとき、まず名前の意味を調べてみると、公式ドキュメントを読む前にコンセプトを掴むヒントになるかもしれません。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
「AWS のサービス名の由来」や「AI・LLM周辺の名前の由来」も気になったので、反響があれば続編を書くかもしれません。

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