はじめに
自作のハニーポット(AIBOT RADAR)で、直近 30 日間(2026‑05‑31 〜 2026‑06‑29)に計測された CVE 26件 のうち Critical 13件 が確認されました。観測は IP アドレス・ポートスキャン・特定 API への不正リクエストをロギングし、ET Sig 数で検出されたシグネチャと突合させて実施しています。本稿では、Critical CVSS 9.0 以上の脆弱性を製品別に詳述し、実務で即対応できる対策を提示します。
🔴 Critical(CVSS 9.0 以上)の観測 CVE
📦 SAP NetWeaver Visual Composer(CVE‑2025‑31324)
観測結果
- 初回観測:2026‑05‑29
- 最終観測:2026‑06‑29
- 観測回数:92 回
- 観測国:Netherlands、United States
脆弱性概要
Visual Composer のメタデータアップローダーが認証チェックを行わないため、認証されていないリモートエージェントが任意の実行可能バイナリをアップロードでき、システムの機密性・完全性・可用性が著しく損なわれる可能性があります(CWE‑434)。
攻撃例(想定)
攻撃者は /vc/metadataUploader エンドポイントに対してマルウェア化したバイナリを POST し、サーバ上で自動実行させることで、内部ネットワークへの踏み台化や情報窃取を試みることが想定されます。
推奨対策
- SAP Note 3594142 に記載されたパッチを速やかに適用
- メタデータアップローダーへのアクセスをファイアウォールで制限
- 不要な Visual Composer コンポーネントは無効化
📱 Ivanti Endpoint Manager Mobile(CVE‑2023‑35078)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
認証バイパスにより、未認証の攻撃者が管理 API へ直接アクセスでき、制限された機能やデータを取得できる可能性があります(CWE‑287)。
攻撃例(想定)
攻撃者は管理用 REST エンドポイントに対し認証ヘッダーなしでリクエストを送信し、デバイス情報や構成データを取得、さらに不正な設定変更を試みることが考えられます。
推奨対策
- Ivanti が提供する 2023‑06‑01 以降のセキュリティパッチを適用
- 管理 API への外部からのアクセスを IP 制限
- 不要なモバイルデバイス管理機能は無効化
🖥️ ConnectWise ScreenConnect(CVE‑2024‑1709)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
認証バイパスの代替経路が存在し、認証済みユーザーと同等の権限で画面にアクセスできるため、機密情報やシステム設定が漏洩する恐れがあります(CWE‑288)。
攻撃例(想定)
攻撃者は /session/alternatePath といった非公式エンドポイントにリクエストし、認証済みユーザーとして管理画面に到達、リモートデスクトップ機能を悪用して内部ネットワークに侵入するシナリオが想定されます。
推奨対策
- 23.9.7 以前のバージョンに対し、ベンダー提供のパッチを適用(最新版 23.9.8 以上)
- 代替パスの使用を無効化し、公式 API のみ許可
- 管理画面へのアクセスを VPN 内部に限定
📧 Roundcube Webmail(CVE‑2025‑49113)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑17
- 観測回数:1 回
- 観測国:United Kingdom
脆弱性概要
_from パラメータが検証不足で、PHP オブジェクトデシリアライズが可能となり、認証済みユーザーがリモートコード実行(RCE)できる(CWE‑502)。
攻撃例(想定)
攻撃者はメール送信画面の URL に細工した _from パラメータを組み込み、被害者がそのリンクをクリックするとサーバ側で悪意あるオブジェクトが展開され、任意コードが実行されます。
推奨対策
- Roundcube 1.5.10 以降、もしくは 1.6.11 以上にアップデート
- Webサーバの PHP 設定で
allow_url_include=Off、unserializeの使用を制限 - 不要な外部メール転送機能は無効化
📦 Cisco HyperFlex HX Data Platform(CVE‑2021‑1497)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
管理 UI に複数の脆弱箇所があり、認証なしでコマンドインジェクションが可能。攻撃者は任意コマンドを実行し、システムの制御権を取得できる(CWE‑78)。
攻撃例(想定)
攻撃者は管理 UI の検索フィールドにシェルコマンド文字列を送信し、内部の exec 呼び出しに渡すことで、HyperFlex ノード上でシェルが起動し、データ領域への不正アクセスが発生するシナリオが想定されます。
推奨対策
- Cisco が公開した 2021‑06‑03 以降のセキュリティフィックスを適用
- 管理 UI への外部アクセスを遮断し、IP アドレスベースで許可
- 不要な管理機能は無効化し、最小権限のロールベースアクセス制御(RBAC)を導入
🏢 JetBrains TeamCity(CVE‑2023‑42793)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
認証バイパスにより、未認証のリモート攻撃者が TeamCity サーバ上でコード実行が可能(CWE‑288)。
攻撃例(想定)
攻撃者は /teamcity/httpAuth/app/rest/... へ特製リクエストを送信し、認証なしでビルド実行権限を取得、任意のビルドスクリプトを走らせてサーバ内でコードを実行する可能性があります。
推奨対策
- TeamCity 2023.05.4 以降にアップデート(公式パッチ適用)
- HTTP 認証の強制と API エンドポイントへの IP 制限
- ビルドステップでの外部コマンド実行を最小化し、サンドボックス化
🏢 JetBrains TeamCity(CVE‑2024‑27198)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:5 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
認証バイパスがさらに拡張され、管理者権限での操作が可能になる(CWE‑288)。
攻撃例(想定)
攻撃者は特定の管理 API に対し認証無しで POST を行い、管理者ロールのユーザー作成やシステム設定変更が行えるシナリオが想定されます。
推奨対策
- TeamCity 2023.11.4 以上へ更新
- 管理 API へのアクセスは VPN 内部に限定し、2 要素認証(2FA)を導入
- 監査ログを有効化し、不審な管理操作を検知
🖥️ LiteSpeed Cache(CVE‑2024‑44000)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
認証情報が不適切に保護され、認証バイパスが可能(CWE‑522)。攻撃者はプラグイン管理画面へ不正にログインし、任意のコードを配置できる。
攻撃例(想定)
攻撃者は /wp-admin/admin-ajax.php?action=lscache_admin へ直接リクエストし、認証なしで管理モードへ遷移、さらにプラグインファイルを書き換えて Web シェルを設置するシナリオが考えられます。
推奨対策
- LiteSpeed Cache 6.5.0.1 以上へ更新
- 管理画面へのアクセスは IP 制限と 2FA を必須化
- 不要なプラグインは削除し、ファイルパーミッションを最小化
🧩 WP Automatic(CVE‑2024‑27954)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
パス・トラバーサルとサーバーサイドリクエストフォージェリ(SSRF)の組み合わせにより、任意ファイルの取得や内部リクエストが可能(CWE‑22)。
攻撃例(想定)
攻撃者は wp-admin/admin-ajax.php?action=automatic_import&file=../../../../etc/passwd のようにパラメータを細工し、サーバ上の機密ファイルを取得、または内部サービスへリクエストを送ることが想定されます。
推奨対策
- WP Automatic 3.92.0 以上へアップデート
- アップローダー機能のディレクトリトラバーサルチェックを強化
-
allow_url_fopenを無効化し、外部リクエスト制限を実装
🔐 FortiOS / FortiProxy(CVE‑2023‑27997)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:2 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
ヒープベースのバッファオーバーフローにより、特定の SSL‑VPN リクエストで任意コード実行が可能(CWE‑122)。
攻撃例(想定)
攻撃者は Craft した TLS ハンドシェイクパケットを送信し、メモリ破壊を誘発。成功すれば VPN ゲートウェイ上でコードが実行され、内部ネットワークへの踏み台化が狙われます。
推奨対策
- FortiOS 7.2.5、7.0.12、6.4.13 以上、FortiProxy 7.2.4 以上へアップデート
- 不要な SSL‑VPN を無効化し、アクセスは IP ホワイトリストで制限
- IDS/IPS の SSL‑VPN 用シグネチャを最新に保守
📁 MOVEit Transfer(CVE‑2024‑5806)
観測結果
- 初回・最終観測:2026‑06‑01
- 観測回数:1 回
- 観測国:Netherlands
脆弱性概要
SFTP モジュールにおける認証バイパスにより、未認証の攻撃者が SFTP 接続を確立できる(CWE‑287)。
攻撃例(想定)
攻撃者は SFTP 接続時に認証情報を送らずにハンドシェイクを完了し、ファイルアップロード/ダウンロードが可能になることで、内部データの抽出や不正ファイル設置が想定されます。
推奨対策
- MOVEit Transfer 2023.0.11、2023.1.6、2024.0.2 以上へアップデート
- SFTP アクセスは VPN 経由の内部 IP のみ許可
- 強力な鍵認証を必須化し、パスワード認証は無効化
📱 FortiClientEMS(CVE‑2026‑21643)
観測結果
- 初回観測:2026‑06‑01
- 最終観測:2026‑06‑28
- 観測回数:516 回
- 観測国:Australia, Belgium, Brazil, Chile, France, India, Indonesia, Japan, Netherlands, Singapore, South Korea, Sweden, Taiwan, United Kingdom, United States
脆弱性概要
SQL インジェクションにより、特別に細工した HTTP リクエストで任意の SQL 文が実行され、認証バイパスやデータ抽出が可能(CWE‑89)。
攻撃例(想定)
攻撃者は /api/v1/ems/users?filter=1' OR '1'='1 のようにクエリ文字列を操作し、管理者情報を取得したうえで、更なる権限昇格や設定変更を試みるシナリオが想定されます。
推奨対策
- FortiClientEMS 7.4.5 以上へアップデート(ベンダーが提供するパッチを適用)
- Web アプリケーションファイアウォール(WAF)で SQLi パターンをブロック
- データベース接続に最小権限ユーザーを使用し、入力値のバインド変数化を実装
📧 Microsoft Exchange Server(CVE‑2021‑34473)
観測結果
- 初回観測:2026‑06‑02
- 最終観測:2026‑06‑28
- 観測回数:13 回
- 観測国:United States
脆弱性概要
Exchange の ProxyShell に該当するリモートコード実行脆弱性で、認証なしで任意コードが実行可能(CWE‑787 などの複合要因)。
攻撃例(想定)
攻撃者は特定の Outlook Web Access(OWA)エンドポイントへ crafted HTTP リクエストを投げ、バックエンドの PowerShell スクリプトを実行させ、内部メールサーバを乗っ取るシナリオが考えられます。
推奨対策
- Exchange 2013 CU23、2016 CU20、2019 CU9 以上へ更新
-
Set-TransportConfig -ExternalPostmasterAddressなどの設定確認と、未使用の OWA/ActiveSync を無効化 - Exchange のフロントエンドを IDS/IPS で監視し、異常リクエストを遮断
🟠 High(CVSS 7.0 〜 8.9)の観測 CVE
| CVE ID | 製品 | 初回観測 | 最終観測 | 観測回数 | 観測国 | CVSS | 主な影響 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| CVE-2025-4123 | Grafana | 2026‑05‑31 | 2026‑06‑29 | 268 回 | Andorra・Australia・...・United States | 7.6 | XSS+オープンリダイレクト、プラグイン経由で SSRF 可能 |
| CVE-2026-4020 | Gravity SMTP (WordPress) | 2026‑06‑26 | 2026‑06‑26 | 1 回 | United States | 7.5 | 認証なしで内部 API にアクセスし、機密情報が取得可能 |
| CVE-2024-20767 | Adobe ColdFusion | 2026‑06‑15 | 2026‑06‑17 | 3 回 | France | 7.4 | 任意ファイル読み取り、管理画面がインターネットに露出していると危険 |
⚪ CVSS 未確認の観測 CVE
| CVE ID | 製品 | 初回観測 | 最終観測 | 観測回数 | 観測国 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| CVE-2020-13921 | Apache SkyWalking | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑28 | 25 回 | Australia・France・...・United States | SQLi(DB種別依存)で評価待ち |
| CVE-2020-5902 | BIG‑IP | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 1 回 | Netherlands | TMUI RCE、評価保留 |
| CVE-2021-22893 | Pulse Connect Secure | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 1 回 | Netherlands | 認証バイパス+RCE、評価待ち |
| CVE-2022-36804 | Atlassian Bitbucket Server | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 1 回 | Netherlands | API 経由でコード実行、評価保留 |
| CVE-2023-34362 | MOVEit Transfer | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 2 回 | Netherlands | SQLi、評価待ち |
| CVE-2024-23897 | Jenkins | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 2 回 | Netherlands | CLI パーサーのファイル読み取り、評価保留 |
| CVE-2024-36104 | Apache OFBiz | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 1 回 | Netherlands | パストラバーサル、評価保留 |
| CVE-2024-38856 | Apache OFBiz | 2026‑06‑01 | 2026‑06‑01 | 1 回 | Netherlands | 認可不足による画面コード実行、評価保留 |
| CVE-2022-22274 | SonicWall SonicOS | 2026‑06‑03 | 2026‑06‑28 | 16 回 | Australia・...・United States | バッファオーバーフローで DoS/コード実行、評価保留 |
| CVE-2020-5410 | Spring Cloud Config | 2026‑06‑13 | 2026‑06‑17 | 2 回 | Switzerland・United States | ディレクトリトラバーサル、評価保留 |
まとめと対策の優先順位
| 優先度 | 対策対象 | 主な理由 |
|---|---|---|
| ★★★★★ | FortiClientEMS(CVE‑2026‑21643) | 516 回の観測と多国からのスキャンが示す攻撃集中度が最高。SQLi による認証バイパスは内部ネットワーク全体へ波及する可能性がある。 |
| ★★★★ | SAP NetWeaver(CVE‑2025‑31324) | 92 回観測で欧米から継続的に試行。バイナリアップロードはシステム全体の乗っ取りにつながる可能性がある。 |
| ★★★★ | FortiOS/FortiProxy(CVE‑2023‑27997) | SSL‑VPN は組織の外部アクセス入口。バッファオーバーフローは遠隔コード実行に直結。 |
| ★★★ | Grafana(CVE‑2025‑4123) | 268 回の XSS/SSRF 攻撃が観測され、プラグイン環境での被害拡大が懸念される。 |
| ★★ | MOVEit Transfer(CVE‑2024‑5806)・Cisco HyperFlex(CVE‑2021‑1497) | 認証バイパス・コマンドインジェクションは内部データ流出リスクが高い。 |
| ★ | その他 High/未確認 CVE | 観測回数が少ないが、既知の攻撃手法が報告されているため、可能な限り最新バージョンへ更新し、不要サービスは遮断することが推奨される。 |
実務的なアクション
- 即時パッチ適用:上位 3 優先度の製品はベンダー提供パッチを 48 時間以内に適用。
- アクセス制限の見直し:外部からの管理 UI・API へのアクセスは IP ホワイトリスト化、VPN 経由に限定。
- WAF/IPS ルール更新:SQLi、XSS、認証バイパスに対するシグネチャを最新版へ。
- 監査ログの有効化:認証失敗・不正 API 呼び出しを集中ログで収集し、SIEM で即時アラート化。
- 定期的な脆弱性スキャン:AIBOT RADAR の観測情報を月次でレビューし、未検出の脆弱性が出た場合は速やかに対策を構築。
今回の観測で気づいたこと
- FortiClientEMS(CVE‑2026‑21643)が516回と突出しており、現在進行形で攻撃が試みられている
- SAP NetWeaver は CVSS 10.0 にもかかわらず 5 月末から継続観測され、パッチ適用が遅れている環境が多いと推測される
- 6 月初旬に多数の CVE が「Netherlands」単一国で 1 回だけ観測されているが、これは自動スキャナが横断的に探索している兆候
- High スコアの Grafana XSS が 268 回と多数観測され、プラグインエコシステムへの注意喚起が必要
- 未確認 CVE の中に過去に大規模被害を出した BIG‑IP(CVE‑2020‑5902)や Pulse Connect Secure(CVE‑2021‑22893)が含まれ、評価保留で放置するとリスクが蓄積する恐れがある
おわりに
AIBOT RADAR では今後も日本向けハニーポットで観測した攻撃動向を継続的に公開していきます。