はじめに
2026年3月、VS Code 1.110(February 2026リリース)とGitHub Copilotに立て続けに大型アップデートが入りました。
今回のアップデートを一言で表すなら「エージェントの実用化」です。
これまでもCopilot Agentは使えましたが、「長時間・複雑なタスクを安心して任せる」ための仕組みが不十分でした。今回のアップデートで、その土台となる機能が一気に揃っています。
この記事でわかること
- ✅ VS Code 1.110 で追加された Agent 実用化機能(Lifecycle hooks / SKILL.md / Session memory など)
- ✅ GPT-5.4 GA や Copilot コードレビューのアーキテクチャ刷新など Copilot 側の変更点
- ✅ Figma MCP 双方向連携・Jira 連携など、周辺エコシステムの拡張
- ✅ 実際の使い方イメージとエンジニアへの影響
対象読者
VS Code と GitHub Copilot を日常業務で使っている中級者エンジニアを想定しています。
VS Code 1.110 の主要変更点
公式ブログ「Making agents practical for real-world development」というタイトルが示すとおり、今回のテーマはエージェントを実際の開発で使えるものにすることです。
1. Lifecycle Hooks
エージェントの開始・終了タイミングに処理を差し込める仕組みです。
たとえば「エージェントが作業を開始する前に、最新の main ブランチを必ず pull してほしい」「作業終了後に自動でテストを走らせてほしい」といったユースケースに対応できます。
# .github/agents/my-agent.agent.md のフロントマター例
lifecycle:
onStart: |
git pull origin main
onFinish: |
npm test
これにより、エージェントに任せた処理が「前後の文脈を無視した暴走」になるリスクを減らせます。
2. Agent Skills(SKILL.md)
.github/skills/<skill-name>/SKILL.md に置いた手順書をエージェントに組み込める機能です。
「この手順書を読んでその通りにやってくれ」をファイルとして管理できるようになりました。
.github/
└── skills/
└── deploy-to-staging/
└── SKILL.md ← デプロイ手順を記述
<!-- SKILL.md の例 -->
# Deploy to Staging
## 手順
1. `npm run build` を実行する
2. `docker build -t myapp:staging .` でイメージをビルドする
3. `docker push myregistry/myapp:staging` でプッシュする
4. `kubectl rollout restart deployment/myapp -n staging` でデプロイを反映する
## 確認事項
- デプロイ後、`/health` エンドポイントが 200 を返すことを確認する
エージェントに #skill:deploy-to-staging と指定するだけで、この手順を自動実行してもらえます。反復する複雑な手順の標準化に有用です。
3. Session Memory
会話をまたいでエージェントが記憶を保持できる仕組みです。
従来はセッションを閉じると文脈がリセットされていましたが、Session Memory を使うことで「先週話した設計方針」「プロジェクト固有の制約事項」などを次回以降の会話にも引き継げます。
<!-- /memories/session/current-task.md の例 -->
## 現在のタスク
- 機能: ユーザー認証モジュールのリファクタリング
- 方針: JWT から session-based に移行(理由: マイクロサービス間の負荷分散のため)
- 注意: 既存の `/api/v1/auth` エンドポイントの後方互換性を維持すること
4. Agentic Browser Tools(実験的)
エージェントが VS Code 内蔵ブラウザを直接操作できるようになりました。
設定で workbench.browser.enableChatTools を有効にすると、以下のツールがエージェントから使えます:
| ツール | 用途 |
|---|---|
openBrowserPage / navigatePage
|
ページを開く・移動する |
readPage / screenshotPage
|
ページ内容の取得・スクリーンショット |
clickElement / typeInPage
|
クリック・テキスト入力 |
runPlaywrightCode |
カスタムブラウザ自動化 |
「フロントエンドを修正しながら、ブラウザで見た目を確認して再修正する」ループをエージェントが自律的に行えるようになります。
5. Agent Plugins(実験的)
Skill・MCP・Hook・カスタムAgentをまとめてパッケージ化したプラグインをインストールできるようになりました。
Extensions ビューの検索ボックスに @agentPlugins と入力するか、コマンドパレットで Chat: Plugins を実行するとプラグイン一覧を確認できます。
デフォルトでは copilot-plugins と awesome-copilot リポジトリからプラグインを取得します。chat.plugins.marketplaces 設定でソースを追加することも可能です。
6. チャットからカスタマイズファイルを直接生成
エージェントモードで以下のスラッシュコマンドが使えるようになりました:
| コマンド | 生成されるもの |
|---|---|
/create-skill |
Skillファイル(SKILL.md) |
/create-agent |
カスタムAgentファイル(.agent.md) |
/create-prompt |
再利用可能なプロンプトファイル |
/create-hook |
Hookの設定 |
/create-instruction |
プロジェクト規約のインストラクション |
会話の流れから抽出もできます。例えばデバッグを数ターンこなした後に /create-skill と入力すると、その手順をSkillとして保存できます。
7. Agent Debug パネル(Preview)
エージェントが何をしているかをリアルタイムで可視化するパネルが追加されました。
コマンドパレットで Developer: Open Agent Debug Panel を実行するか、Chat ビューの歯車アイコンから View Agent Logs を選ぶと開きます。
- ロードされているプロンプトファイル・Skill・Hookの一覧
- ツールコールの内容と結果
- システムプロンプトの全文
- チャートビューでイベント階層を可視化
カスタムAgentやSkillが期待通りに動かない場合のデバッグに非常に有用です。
8. セッション分岐(/fork)
/fork とチャットに入力すると、現在の会話履歴を引き継いだ独立したセッションを作成できます。
任意のターンにカーソルを合わせて「Fork Conversation」を選ぶと、そのターンまでの履歴で新しいセッションを分岐できます。「別アプローチを試したい」「サイドクエスチョンだけ別で聞きたい」という場面で便利です。
9. コンテキスト圧縮(/compact)
会話が長くなってコンテキストウィンドウが埋まってきたとき、/compact コマンドで会話履歴を手動で圧縮できます。
/compact
/compact データベーススキーマの決定を中心にまとめて ← 圧縮の指示も渡せる
Background Agent・Claude Agent でも使用可能です。コンテキスト枯渇を気にせず長時間作業を続けられます。
10. /yolo コマンド(/autoApprove の別名)
/yolo をチャットに入力すると、すべてのツール実行を確認なしで自動承認するモードになります。/disableYolo で解除できます。
⚠️ ターミナルコマンドや破壊的操作も承認なしで実行されます。
chat.tools.terminal.sandbox.enabledでターミナルサンドボックスを有効にしてから使うことを推奨します。
VS Code 1.110.1(バグ修正版)
1.110 リリース直後に発見されたバグへの修正版として、2026-03-07 に 1.110.1 がリリースされました。1.110 を使っている場合は 1.110.1 への更新が推奨されます。
詳細は 公式リリースノート を参照してください。
GitHub Copilot 側の主要アップデート
GPT-5.4 が Copilot で GA
OpenAI の最新エージェント特化モデル GPT-5.4 が一般提供(GA) になりました。
コーディングエージェント系タスク(複数ファイルにわたるリファクタリング、テスト生成、PR レビューなど)で精度が大幅に向上しているとされています。Copilot Pro・Business・Enterprise の全プランで利用可能です。
QA
Copilot コードレビューがエージェントアーキテクチャに刷新
Copilot のコードレビュー機能が tool-calling 型のエージェントアーキテクチャに全面移行しました。
従来はプロンプト→回答の1ショット型でしたが、エージェント型になることで「コードを読む→関連ファイルを調べる→コンテキストを理解した上でレビューする」という人間に近い手順でレビューできるようになっています。
Pro・Pro+・Business・Enterprise の全プランで GA です。
Next Edit Suggestions がファイル全体に拡張
以前は近くの行への編集提案しかできなかった Next Edit Suggestions が、ファイル全体を対象にした提案に拡張されました。
たとえば関数の引数の型を変更したとき、そのファイル内の全ての呼び出し箇所にまとめて修正提案が表示されるようになります。
// 例: 引数の型を number → string に変更したとき
function formatId(id: string): string {
return `ID-${id}`;
}
// ファイル内の他の呼び出し箇所にも提案が出るようになった
const result1 = formatId(42); // ← string に直すよう提案
const result2 = formatId(100); // ← string に直すよう提案(離れた行でも)
PRコメントでモデルを選択可能に
@copilot メンションを使った PR コメントで、使用モデルを直接指定できるようになりました。
@copilot [model: gpt-5.4] このPRのパフォーマンス面でのリスクをレビューしてください
タスクの性質に合わせてモデルを使い分けることで、速度とコストのバランスを取れます。
周辺エコシステムのアップデート
Figma MCP サーバーが VS Code と双方向連携
Figma MCP サーバーのアップデートで、コード → Figma 方向のデザイン生成が可能になりました。
| 方向 | できること |
|---|---|
| Figma → コード(従来) | Figmaのデザインを参照してコードを生成 |
| コード → Figma(新機能) | VS Code で作ったUIをFigmaに「編集可能なフレーム」として書き出し |
デザイナーとエンジニアが「Figmaに戻って修正」「コードに反映」を繰り返すループが VS Code + Figma MCP で自動化できるようになります。
参考: Figma MCP server can now generate design layers from VS Code
エージェントセッションへの画像追加
GitHub.com のエージェントセッションで、スクリーンショットをペースト・ドラッグ&ドロップでエージェントに渡せるようになりました。
「このUIのバグを直してほしい(スクリーンショット添付)」「このエラー画面を見てもらえますか(画面キャプチャ添付)」という使い方が直感的にできます。
Copilot Coding Agent が Jira 連携(Public Preview)
Jira の issue を Copilot に割り当てると、自動で PR を作成してくれる機能が Public Preview になりました。
Jira Issue: PROJ-1234 「ログイン画面にパスワード強度インジケーターを追加」
↓ Copilotに割り当て
GitHub PR: 「feat: add password strength indicator to login form」を自動作成
バックログのタスクを Jira で管理している場合、コーディングエージェントとの連携が大幅に楽になります。
参考: GitHub Copilot coding agent for Jira is now in public preview
Grok Code Fast 1 が Copilot Free に追加
xAI の高速モデル Grok Code Fast 1 が、Copilot Free プランの auto model selection に追加されました。無料プランでも高速レスポンスのモデルが使えるようになっています。
参考: Grok Code Fast 1 is now available in Copilot Free auto model selection
Copilot Memory がデフォルトONに(Pro/Pro+)
Pro・Pro+ ユーザーに対して Copilot Memory がデフォルト有効化されました。Copilot があなたのコーディングスタイルや好みを記憶し、会話をまたいで活用できるようになります。
AI コミット共著者の自動付与
git.addAICoAuthor 設定を有効にすると、Copilot が生成したコードを含むコミットに Co-authored-by: GitHub Copilot が自動付与されます。
// settings.json
"git.addAICoAuthor": "chatAndAgent" // "all" でインライン補完も対象
GithubのコミットログにAI貢献が明示されるため、AI生成コードの透明性を高めたいチームに有用です。
Edit Mode が廃止予定
Edit Mode(鉛筆アイコンのモード)が v1.125 で完全削除される予告が出ました。Agent Mode が Edit Mode の機能をすべてカバーするため、Agent Mode に一本化されます。
現在は chat.editMode.hidden 設定で一時的に表示を戻せますが、v1.125 以降はこの設定も無効になります。Edit Mode を使っているワークフローがあれば、Agent Mode への移行を検討してください。
エンジニアへの影響まとめ
今回のアップデートで何が変わるのか、実務目線で整理します。
| 変化 | 実現する機能 |
|---|---|
| エージェントに長時間タスクを任せやすくなった | Lifecycle Hooks でエージェントの前後処理を制御 + Session Memory で文脈を維持 |
| 手順書をエージェントに丸ごと覚えさせられる | SKILL.md でデプロイ・テスト・レビュー手順を外部化 |
| Skill/Agentをチャットから即作成できる |
/create-skill, /create-agent などのスラッシュコマンド |
| エージェントが勝手に動く範囲の可視化・制御 | Agent Debug パネル + /yolo//disableYolo で承認フローを制御 |
| セッションを分岐して並列探索できる |
/fork でアプローチを分岐、/compact で長時間作業を継続 |
| コードレビューの質が上がった | エージェント型アーキテクチャ + GPT-5.4 の精度向上 |
| デザイン⇔コードのループが自動化できる | Figma MCP の双方向連携 |
| Jiraタスクの消化を自動化できる | Copilot Coding Agent の Jira 連携 |
| ファイル全体への一括修正提案 | Next Edit Suggestions の全ファイル対応 |
| AI貢献の透明性向上 |
git.addAICoAuthor でコミットに自動付与 |
まとめ
VS Code 1.110 と 2026年3月の GitHub Copilot アップデートは、「エージェントを実際の開発で使い物にする」という明確な方向性でまとまっています。
特に Lifecycle Hooks + SKILL.md + Session Memory の組み合わせは、これまで「なんとなく怖くてエージェントに任せられなかった」タスクの自動化を現実的にする変化です。
一方で、Figma MCP の双方向連携や Jira 連携など周辺エコシステムとの統合も進んでおり、「VS Code を中心にした開発ループ」がさらに完結していく流れを感じます。
今後のアップデートにも注目していきましょう。
参考
- VS Code 1.110 リリースノート
- Making agents practical for real-world development(VS Code Blog)
- GitHub Copilot Changelog
- GPT-5.4 is generally available in GitHub Copilot
- Copilot code review now runs on an agentic architecture
- Figma MCP server can now generate design layers from VS Code
- Long-distance Next Edit Suggestions
- GitHub Copilot coding agent for Jira is now in public preview