〜住民票から“届出日”が消えた話〜
※この記事は、しゃちらぼブログ Vol.031 をベースに、Qiita向けに再構成・補足したものです。
📝 きっかけは、1枚の住民票
ある日、コンビニで「住民票の写し」(以下、住民票と略)を取得したら、昨年と内容が違っていました。
具体的には、「届出日」 という項目に日付が明確に書かれていたのに、今回は 「年月日不詳」 と記載されていたのです。
同じ家族の住民票には日付が残っているのに、なぜ自分だけ?
これがまず最初の強い違和感でした。
ちなみに、私は生まれてから一度も住民票の移動はしていません。
気になって、出張所の窓口に直接確認しに行きました。
🔄 実は、今年からシステムが変わっていた
窓口での説明によると、昨年から今年にかけて住民票のシステムが全国統一のものに移行したとのこと。
つまり:
- 昨年:自治体独自の住民基本台帳システム
- 今年:全国標準のシステムへ移行
このタイミングで、「届出日」が見えなくなったのは
- 仕様の変化か、
- 移行処理の不備か、
- そもそも項目選定時の判断ミスか……?
「移行前のデータは残っている」とも言われましたが、
それが意味するのは「アーカイブ(過去記録としての保管)」のことなのか?
だったら、現行システムには取り込まれていない=移行されていないということ?
この説明も非常にあいまいでした。
さらに深堀りして確認したところ、どうやらこういうことらしい:
- 「届出日」データ自体は移行されてはいる
- しかし、通常の出力項目に反映されていない (なぜか自分だけ)
- 請求時に特別に希望すれば、備考欄に記載してもらえる
- ただし、コンビニ交付では出力されず、紙での窓口請求のみ対象
つまり、「載せないと決めた」わけではなく、「デフォルトでは載らない運用」に変わったということのようです。
でも、そもそもなぜ自分だけが表示されないのか?
家族の住民票には日付が載っているのに、自分のだけ備考欄送り?
移行ではなく“アーカイブから取り寄せ”扱いなのでは?
これが、今回もっとも強く感じた違和感でした。
🗣️ 「国のシステムです」vs「区の運用でしょ?」の応酬
やり取りは、こんな感じでした:
私 :「でも、これは区のシステムからの移行ですよね?」
窓口:「はい、でも今は国のシステムです」私 :「移行するデータ項目は区が決めたんじゃないですか?」
窓口:「国の指針に従ってます」私 :「でも、“どう従うか”は区が判断したんですよね?」
窓口:「……(沈黙)」
責任の所在が曖昧なまま、「国の仕様」「区の運用」がぐるぐる回る。
「誰が最終的にこの項目を“載せない”と判断したのか?」 がはっきりしないまま話は進んでいきました。
データは移行されて残ってるとは言われたけど、こんなやりとりも。
私 :「結局、移行時にデーターが欠落したってことですよね?」
窓口:「いえ、残ってます!」
私 :「でも、表示項目からは無くなってるんでしょ?」
窓口:「はい、でも、ご希望いただければ備考欄に記載できます」
私 :「そんなの、知らなきゃ書けないじゃないですか」
窓口:「でも今、知ったでしょ?」
私 :「じゃあ他にもそういう“隠れ項目”があるかもしれないってこと?」
窓口:「その場合は、"全部"って書いてください」
私 :「えっ、“全部”って何……?」
これはシステム開発の現場で言えば、「隠しAPIはあるけどドキュメントは非公開」のようなもので、非常に困惑しました。
また、以前のデータをアーカイブから参照しているだけなのではないか、という疑念が募りました。
こうしたやり取りの中でこんなこともありました:
私 :「移行前のデータもあるっていわれましたが、それってテキストデータなんですか?」
窓口:「文字情報です」
私 :「じゃあ、文字コードで管理されたデジタルデータなんですよね?」
窓口:「文字情報です」
私 :「画像データなの?」(昔は紙の台帳だったので)
窓口:「いえ、文字情報です」
やり取りがかみ合わず、それ以上の会話は断念せざるを得ませんでした。
窓口担当者に聞いても仕方がないのは理解していましたが、せめて関係部署に問い合わせてくれるといった対応は期待していました。
後ろに待っている人もいたため、これ以上話しても仕方がないと判断し、「わかりました」と言ってその場を後にしました。
👀 気づかれにくいバグほど厄介
今回のような変化に気づく人は、実はかなり少ないはずです。
- 昨年の住民票を手元に残してる人なんて、ほとんどいない
- 内容を細かく比較する人はもっと少ない
- 「不詳」に疑問を持って窓口に出向く人なんて、さらにレア
- 一度も住民票の移動をしていない(これも条件?)といった特定の状況も関係しているかもしれません。
でも、だからこそ危ない。
「誰も気づかないまま、問題が存在し続けること」 が一番のリスクです。
🚧 情報が届かない構造そのものが問題
もしこれが本当に、
- 「データ移行時のマッピングミス」
- 「一部項目だけ除外されてしまった設定ミス」
- 「他の区民や別項目データにもミスがある可能性」
だったとしたら、これはシステム側としては重大なバグです。
でも、現場ではこう言われます:
- 「問題ありません」
- 「仕様です」
- 「裏にはデータがあります(でも出しません)」
こうして、現場でフィルターされて上層に届かない構造が、もっとも危険なのです。
情報リテラシーのギャップも、現場のフィルター効果を強めてしまう原因です。
💬 「仕様です」はバグの否定にはならない
「仕様通りです」=「正しい」ではない。
「仕様です」と言われても、
- その仕様自体が間違っているかもしれない
- 仕様の理解が間違っているかもしれない
- 実装が仕様通りではないかもしれない
それを、確認もせずに“仕様です”で済ませるのは危険です。
たぶん、窓口の担当者は、仕様書すら見たことないはずです。
技術者的にはこんな風に思います:
「本当に仕様なのか?それとも“バグを仕様で押し切ってる”だけなのか?」
🧠 担当者が一番知りたい情報が、なぜ届かないのか
システム担当者にとって一番ありがたいのは、
「現場からの具体的なフィードバック」 です。
でも、
- 現場では「トラブルにしたくない」
- 「仕様」で済ませるほうが楽
- 窓口で止まって、システム担当に報告が上がらない
この状態では、バグも、仕様ミスも、誰にも気づかれないまま放置されてしまいます。
真摯なシステム開発者であれば、きっとこう考えるはずです:
「バグが見つかった?ありがとう!まだ大ごとになる前で良かった」
バグは“ない”に越したことはない。けれど、
“あるのに誰も気づかない”状態が最悪です。
✍️ 最後に
今回は、たまたま昨年の住民票が手元にあり、内容を見比べたから気づきました。
でも、たぶん他にも同じような違和感に気づいていない人がいるはずです。
近いうちに、本庁に問い合わせに行こうと思っています。
可能であれば、この件がシステム担当者の目に届き、正しく確認・共有されることを願っています。
「バグってないほうがいい。
でも、見つけてもらえるなら、それはチャンスだと思ってほしい。」
これは、個人というより、自治体の住民基本台帳の信頼性に関わる話かなと思ってます。
窓口では、「“届け出日”は必要ですか?」と尋ねられました。
現時点での自分には直接的に必要ではないかもしれません。
しかし、今は亡き父が、私が生まれたときに届け出をしてくれたという記録が失われるのは、個人的に非常に寂しいことです。
データの背後にある意味や歴史の重さも、改めて感じさせられました
※補足:「届け出日」は、例えば選挙の立候補時の居住要件確認や、行政サービスの受給条件の判定などに使われることがあります。
単に「データとしては裏にある」では不十分で、誰にとっても“見える場所”にあるべき重要な情報です。
(自治体名・部署名などはあえて伏せていますが、構造的な課題として共有したく投稿しました。)