0. はじめに
本ログは、タスク種別ごとのモデル選定基準(以下「LLMルーター」)における月次見直しを記録するものである。変化の激しいLLM環境において、選定基準をどのような条件に基づき継続的にメンテナンスすべきか、実務上の判断プロセスを提示することを目的とする。
1. 本記事の結論
2026年9月期の運用結果の要点は以下の3点である。
- 「見直し」と「変更」の区別: LLMルーターは毎月必ず書き換えるものではなく、定義した「再評価条件」に照らして判断を記録するものである。今月の差分は結果として0行となった。
- 外部トリガー(価格改定)への対応: 当初予定されていたClaude Sonnet 5の価格移行が撤回された。コスト構造に変更がないため、現状の割り当てを維持する。
- 乖離チェックを「方法」として持つ: 構成変更がない月こそ、成功率・5時間ウィンドウ消費・フォールバック頻度という観点で役割と実態のズレを見る。今月は数値計測の仕組みがなく定性観測に留めたが、割り当てを動かす兆候はなかった。計測の自動化は今後の課題。
2. LLMルーターの見直し運用と「差分ゼロ」の価値
LLMルーターの運用では、以下の「モデル運用の再評価条件」のいずれかに該当した場合に見直しを実施する。
- モデルのアップデート・廃止: 廉価モデル(Claude Haiku)の後継発表・値下げ・廃止告知、またはgpt-5.5系スナップショットの退役告知。
- 価格構造の変化: 主要モデルの価格改定。
-
ツール・UIの進化: Codex CLIの
/modelピッカーへの新モデル(Luna/Terra/Sol)正式対応。現状、これらを利用するには以下の通りフラグによる明示指定が必要である。
-m gpt-5.6-luna
- リソース消費: 5時間ウィンドウの消費実績が特定フェーズを圧迫している場合。
- 精度の劣化: 自社評価において、Luna等の成功率や指摘見逃し率が他モデルより明確に劣る場合。
今月はLLMルーター本体の変更(差分)は発生しなかった。しかし、「差分ゼロ」であってもログを残すことで、次回以降の重複検討を防ぎ、判断の連続性を担保している。
3. モデル価格の動向と再評価結果(2026年9月時点)
今月の主要な検討トリガーは、Anthropic社による価格改定の動向であった。
主要モデルの単価(2026-09-04 時点)
※100万トークンあたりの単価(USD)
| モデル名 | 入力単価 ($) | 出力単価 ($) | 備考 |
|---|---|---|---|
| Claude Sonnet 5 | $2 | $10 | 導入価格が標準価格化。値上げ撤回 |
| Claude Opus 5 | $5 | $25 | - |
| Claude Haiku 4.5 | $1 | $5 | - |
| Claude Sonnet 4.6 | $3 | $15 | - |
事実の記録
Claude Sonnet 5は、2026年9月1日より導入価格($2/$10)から標準価格($3/$15)への移行が予定されていた。しかし、提供元は2026年9月4日までにこの値上げを撤回し、現行価格をそのまま正式な標準価格とすることを決定した。
判断理由
唯一の懸念であった価格移行が撤回されたため、Claude Sonnet 5を主軸とする役割(Architect / Spec Checker等)のコスト前提に変更は生じなかった。よって、現行の割り当てを維持する。
4. 構成維持のための乖離チェックと次月への展望
構成変更を行わない月は、以下の観点で現状の割り当てが実運用とズレていないかを確認する。今月時点ではこれらを数値で計測する仕組みは用意できておらず、運用者としての定性的な観測に留まる(計測の自動化は今後の課題)。
- 成功率: 実装のやり直しが多発していないか、レビューの指摘見逃しが増えていないか。
- 5時間ウィンドウの消費バランス: Executor等による大量処理が、Implementerの枠を圧迫していないか。
- 障害時フォールバックの発動頻度: OpenAI側の障害やウィンドウ枯渇による切り替えが増えていないか。
現行のモデル役割割り当て(リファレンス)
| 役割 | 第一候補 | フォールバック |
|---|---|---|
| メインセッション(司令塔) | Sonnet | - |
| Architect(複雑な推論・設計) | Sonnet | - |
| Implementer(軽量・仕様明確) | Codex gpt-5.6-luna (mid) | Codex gpt-5.5 |
| Implementer(中〜大規模) | Codex gpt-5.5 | Codex gpt-5.6-terra → Sonnet |
| Reviewer(通常) | Codex gpt-5.6-luna (mid) | Codex gpt-5.5 → Sonnet |
| Reviewer(高リスク) | Sonnet 固定 | (Opus / Fable5 は使わない) |
| Spec Checker(仕様照合) | Sonnet | - |
| Executor(定型処理) | Codex gpt-5.6-luna (low/none) | Claude Haiku 4.5 |
異常系の補足:
OpenAI系(Luna/Terra/gpt-5.5)で障害やウィンドウ枯渇が発生した場合は、自動的にAnthropic系(Sonnet / Haiku 4.5)へフォールバックされる。
結び:
2026年9月期は、再評価条件のうち唯一動いた「価格改定」が撤回で不発となり、定性的な乖離チェックでも割り当てを動かす兆候は見られなかったため「変更なし」と結論づけた。今後も「再評価条件」に基づき、条件合致や数値での乖離が確認された場合には速やかに構成変更を検討する。
