アンケート、いきなり設問から作ってませんか? ― AIと挑んだ非デザイナーのアンケート作成奮闘記
背景
「アンケート? サービスデザイナーさんに頼めばいい」
間違いなく設問設計は専門職の方が質の高いものを作れます。
でも最近は生成AIで生産性が上がり、3人くらいの少数チームで案件を回すことが増えました。
そして、そのチームにデザイナーがいない。
そんな状況で「アンケート取らなきゃ」という場面が来たら、どうしますか?
これは、設問設計の専門家ではない私が、AIと協業することで再現性のある形でアンケートを約1時間で作れるようになった話です。
この記事で分かること
- なぜ「設問から書く」と失敗するのか
- 下したい判断から逆算してアンケートを作る5ステップ
- そのステップを「人がやること」と「AIがやること」にどう分けるか
- そのまま使えるプロンプト(コピペ可)
対象読者
- アンケート・サーベイを作る必要があるが専門ではない人(PO・スクラムマスター・企画・エンジニアなど)
- AIを使った実務の進め方に興味がある人
この記事で使う例:「社内LT・勉強会の改善アンケート」
具体例として、「社内LT・勉強会の改善アンケート」を題材とします。
コンテキスト
- 有志で社内LT会(技術共有の勉強会)を運営している
- 次回に向けて満足度と改善点を集めたい
- 回答者は、「登壇した人・参加した人・今回は参加しなかった人」が混ざっている
つまずき:設問から書いたら「あれ、このアンケート何の価値があるんだろ?」
自分にノウハウはないが、アンケートを作らなきゃいけない。
私はとりあえずAIに、口頭でざっくり「LT会について、満足度とか改善点をこういう感じで聞きたいんだよね」と思いつくままに投げました。
するとAIは、それをアンケートで使えそうな設問の形にきれいに整えてくれます。
設問が並び、体裁としては“それっぽいアンケート”が数分で出来上がりました。
……ただ、眺めているうちに引っかかりが出てきます。
「あれ、このアンケート、そもそも何の価値があるんだっけ?」
その違和感を抱えたまま内部レビューに出したら、案の定こう聞かれました。
「このアンケートで、結局なにを把握したいんだっけ? その結果を、次のどんな行動につなげるの?」
……答えに詰まりました。(そりゃそう)
設問から書き始めたので、そこが設計されていなかったのです。
「なんとなくLT会についてどう思っているか知りたい」くらいの解像度、目的がふわっとしている。
そして困ったことに 聞きたいことが絞れません。
満足度も、テーマの希望も、開催時間も、懇親会も……あれもこれも聞けそうに見えて、どの設問も「これで何を判断するのか」に答えられない。
目的に合わせて設問を設計していない、というのはこういう状態です。
設問から書くと「把握したいこと → 次の行動」がふわっとし、結局、聞きたいことが絞れない。
気づき:AIに渡すのは"設問"ではなく"逆算するための情報"
失敗の原因はシンプルでした。
私はAIに「聞きたい設問」を渡していた。
そうではなく、渡すべきだったのは 「逆算するための情報」
つまり、最後に下したい判断、制約、現場のコンテキストです。
それさえ渡せば、設問への整理はAIが得意とするところでした。
やり方を「逆算」に変えます。
下したい判断(アクション) → 把握したい情報 → 検証したい問い・仮説 → 設問
この順で考えると、「どの判断にも効かない設問」を自然に落とせます。
設問から作るな。逆算で作れ。AIに渡すべきは"逆算するための情報"。
逆算設計の5ステップ(人が渡す / AIが整理 / 人が突っ込む)
全体像はこうです。
| ステップ | 内容 | 主にやるのは |
|---|---|---|
| 1. 制約 | 器(時間・問数・ツール・回答者)を決める | 人 → AIに渡す |
| 2. 目的 | 下したい判断(複数軸)を渡す | 人 → AIに渡す |
| 3. 知りたいこと+仮説 | 知りたいこと・現場の勘・過去データを渡す | 人 → AIに渡す |
| 4. 設問化 | 設問に整理する | AIが叩き台/人が突っ込む |
| 5. 回答者目線レビュー | 答える人になって点検する | 人が突っ込む |
LT会アンケートを題材に、順に見ていきます。
Step1:制約 ― まず"器"を決める
設問を考える前に「器のサイズ」を決めます。
ここを渡さないと、AIは平気で設問を膨張させます。
聞きたいことは無限にあるので、設問数が膨れて回答者の負荷が跳ね上がったり、配布ツールで作れない形式の設問が混じったりするからです。
LT会アンケートなら、渡すのはこのあたりです。
-
回答者の負荷
- 「5分で答えられて十分」を目安に、設問数もそこに収める(例:10問以内)
- 忙しい人に長いアンケートは回答してもらえない
-
回答者はどんな人か
- 登壇者・参加者・不参加者が混ざる
- 立場によって答えられること・答えやすい形が変わるので、そこを意識して設問を作ってもらう
-
どの配布ツールで配るか
- Microsoft Forms / Google Forms などツールごとに対応している設問形式が違う
- そのツールで表現できる形に限定する
制約を先に渡して、AIが"使えない形式・膨大な設問数"を出してくるのを防ぐ。
Step2:目的 ― 下したい"判断"は1軸とは限らない
「この結果で、誰が何を決めるのか」を渡します。
ここで大事なのは、判断は1軸とは限らないということ。
LT会アンケートでも、絡む軸は複数ありました。
-
判断の軸
- 次回も開催するか(継続)
- 内容・運営をどう改善するか
- 参加者をどう増やすか
-
開催形式の軸
- オンラインでやるか
- 対面でやるか
軸が複数あるなら、全部そろえてAIに渡します。
そのうえで 優先順位=設問数の配分(どこを厚く聞くか)を人が決めて渡すのが肝心でした。
限られた10問を、勝手にAIに均等配分させないためです。
「今回は"参加者を増やす"ための判断材料を厚めに」と決めれば、そこに設問を寄せられます。
判断軸を漏れなく全部AIに渡しきる。そのうえで"設問数の配分"を人が決める。
Step3:知りたいこと+仮説 ― 現場の勘を渡すと"検証"になる
目的を「答えるべき問い」に分解し、各問いに 事前の仮説 を1つ添えます。
仮説を置くと、設問が「当たり外れを確かめる=検証」になって鋭くなります。
LT会アンケートの例です。
-
知りたい問い
- なぜ参加しない人がいるのか?
- 参加の障壁はどこにあるのか?
-
立てた仮説
- 「テーマに興味がない」より、"日程・時間が合わない" と "そもそも開催を知らなかった(告知不足)" が主なのでは?
この仮説があるからこそ、「参加しなかった理由」を聞く設問の選択肢に、その2つを必ず入れます。
すると回答で 仮説が当たったか外れたか が分かる。
これが「検証になる」ということです。
さらに、過去のアンケートデータ(前回のLT会アンケートなど)があれば、それで仮説をブラッシュアップして「確実に聞くべき仮説」に磨けます。
人が"現場の勘(仮説)"を渡し、設問を「検証」にする。
Step4:設問化 ― AIが叩き台、人は"現場の突っ込み"
ここまで情報を渡せていれば、AIがかなりいい感じに設問へ整理してくれます。
人の役割は、叩き台に対して 現場ならではの突っ込み を入れることです。
LT会アンケートなら、たとえばこんな突っ込みが必要でした。
-
「オンラインが良い」は本当に形式のせい?
- 前回がたまたまオンラインで、告知もチャットだけ
- 形式の良し悪しと、別の要因(告知不足)が混ざっているかもしれない
- → 切り分ける
-
満足度を5段階で聞くだけでは改善につながらない
- → 「どこを改善したいか」を具体的な選択肢で聞く
-
登壇者と参加者では聞きたいことが違う
- → 役割で分岐して、無関係な設問を見せない
-
「参加しなかった理由」を自由記述にすると、たいてい書いてもらえない
- → 選択肢にする
特に効いたのが「比較を中立に聞く」でした。
開催形式(オンライン/対面)を例に、before / after で示します。
Before(決めつけていた設問)
Q. オンライン開催が対面より良い点は?(複数選択)
- 移動がいらない
- 気軽に参加できる
- 録画を後で見られる
これだと「実は対面の方が良い」という声が拾えません。
しかも、オンラインが選ばれるのは単に前回オンラインだったからで、形式そのものの評価と混ざってしまいます。
After(中立+観点ごとに聞く)
Q. オンラインと対面、各観点でどちらが良いと感じますか?(行ごとに1つ)
オンラインが良い / 同等 / 対面が良い / どちらでもよい
参加のしやすさ
発表の聞き取りやすさ
質問・議論のしやすさ
参加者どうしのつながり
こうすると両方向に答えられ、かつ「参加のしやすさはオンライン、つながりは対面」のように 観点ごとに強み・弱みを分けて 読めます。
全体を一括で「どっちが良い」と決めつけずに済みます。
もう一つ、原因の切り分けも1問でやれます。
Q. 前回、参加しなかった主な理由は?(1つ選択)
- 参加した
- 日程・時間が合わなかった
- テーマに興味がなかった
- 開催を知らなかった
「日程」なら日程調整、「興味」ならテーマ改善、「知らなかった」なら告知強化。
理由によって打ち手が変わるので、設問を増やさずに次の一手が決まります。
設問の叩き台はAIに任せ、人は"業務知識でズレを直す"に集中する。
Step5:回答者目線レビュー ― 出す前に、答える人になって読む
最後に、配る前に回答者の立場で読み直します。
チェック観点はこれくらいです。
- その人が実際に知っている範囲で答えられるか(不参加者に「発表の質は?」は聞けない)
- 特定の職種にしか分からない専門用語を使っていないか
- 誘導していないか/選択肢に抜け・重複はないか
- 回答に手間がかかりすぎていないか
- 自由記述は最小限か(文章を書くのは負荷が高いので最後に1問だけ)
最後は人が「答える人」になって読む。AI任せにしない。
そのままAIに貼れる:逆算アンケート設計プロンプト
この作業プロセスは、ChatGPT でも Claude でも、AIツールを問わず使えます。
以下をそのままコピペして使ってみてください。
あなたはアンケート設計のプロです。私が作りたいアンケートについて、
いきなり設問を書かず、次の5ステップで一緒に設計してください。
各ステップで足りない情報は、先に私に質問してください。
1. 制約の確認
回答時間・設問数の上限、回答者の属性(役割・部署)、配布ツール
(例:Microsoft Forms / Google Forms)、匿名/記名を確認する。
配布ツールで実際に作れる設問形式に限定する。
2. 目的(下したい判断)の整理
この結果で誰が何を判断したいかを確認する。判断の軸が複数あるなら
全部洗い出し、設問数の配分(どこを厚く聞くか)の優先順位を一緒に決める。
3. 知りたいこと+仮説
目的を「答えるべき問い」に分解し、各問いに事前仮説を立てる。
過去の類似アンケートがあれば、それで仮説をブラッシュアップする。
4. 設問化
仮説を検証できる設問に変換する。似た問いは1問にまとめ、
原因を切り分けたい所は選択肢で分ける。比較は中立に(両方向に
答えられる形で)。センシティブな内容は選択肢中心にする。
作った叩き台を私がレビューするので、現場感覚のズレは指摘してほしい。
5. 回答者目線レビュー
本人が答えられるか、専門用語を使っていないか、負荷が高すぎないか、
誘導していないかを点検する。
最終成果物は「制約・目的・質問本文」の3部構成にしてください。
質問本文は、そのまま配布ツールに貼れるクリーンな形(設問と選択肢の
箇条書き、評価スケールは全段階を明記)でお願いします。
やってみた結果
設問設計の専門家ではない私でも、アンケートが約1時間で形になりました。
ただ、本当に価値だと感じたのはスピードではなく、冒頭で言った「何を把握して、どう次の行動につなげるか」まで一気通貫でつながったことでした。
-
手戻りなく承認された
- ステークホルダーを交えたレビューでも、「で、何がしたいの?」と差し戻されることなく、大きな手戻りなしにアンケートの内容が承認された
- 目的と設問がひもづいていたから
-
意図したことが、ちゃんと把握できた
- 実際に配って集計したら、最初に「把握したい」と決めていたことが、狙いどおりに分かった
- 集めて終わりの数字ではなく、判断に使えるデータになっていた
-
次の行動を、チームで議論できた
- その結果をもとに「じゃあ次どうする?」をチームで話せた
- まさに、目的 → 把握 → 次の一手までつながった
うまくいった要因は、5ステップを「人が判断し、AIが整理する」役割分担(ヒューマン・イン・ザ・ループ)として回したことです。
各ステップで人がコンテキストを渡し、AIが設問に整え、人が現場感覚で突っ込む。
この往復が効きました。
まとめ
- アンケートは設問から作らず、下したい判断から逆算する
- AIに渡すのは「聞きたい設問」ではなく 「逆算するための情報」(制約・判断・現場のコンテキスト)
- 進め方は5ステップ:制約 → 目的(複数軸なら配分も渡す)→ 知りたいこと+仮説 → 設問化 → 回答者目線レビュー
- 設問化はAIが上手く叩き台を作ってくれる、人は 現場知識でのズレの修正 に集中する
- 合言葉は「まず"何を決めたいか"から書く」
専門職に頼れなくても、AIと役割分担すれば、チームが次どう行動するかの判断につながるアンケートは作れます。
同じ境遇のそこのあなた、是非このやり方を試してみてください!