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デジタル・アジール・モデル Ver1.0

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昨今の急激な情報化によって,決定論的な社会構造がつくりあげられつつある.このような社会構造の在り方を,ここでは制御社会と呼ぶ.
 制御社会においては開発された技術が,いつの間にか社会構造を操作する大きな力をもつ主体により制限または制御される.我々はそれを否定する.我々の既存の社会で標準化されている制度や産業の多くは望ましくないという前提のもとに新しい技術化された共同体,アジールを考察し,これを技術的に実装する.
 社会は確かに歴史的な大きな抗争を経て徐々に均衡点に収束しているようにみえる.その潮流の中で,先人の研究も含めて我々はよりよい社会の在り方を考察してきた.そこで我々は社会は人が作り上げる限り収束しないと考えるに至った.ここにハクティビズムにおける真の原理がある.
さて,ネットワーク上のアジールに相当するものは,日本において例えば旧くは2チャンネル,現在では複数アカウントを利用したTwitterがあるが,これらはすべて制御社会の中に存在する.現在,世界中で展開されている制御社会に対応するために匿名性の必要性が高まっている.しかしながら,匿名性の概念は違法行為に結びつく可能性を含むので,反社会性を伴う場合もあり懸念もされている.我々はその匿名性を用いてこそネットワークの中にアジールを構築する.我々は,自分のアイデンティティを隠すことを望んでいる.ここでは,外部から事実上不可視になるような共同体の匿名性を強い匿名性と呼ぶ.それによって権力機構から自立した共同体を甦らせ,この息の詰まる社会から脱出する場所,アジールを仮想的に実装する.ダークウェブは市場的価値に意味を見出しているという点で,我々のアジールとは本質的に異なる.
 我々は制御社会を逃れて,人が自由に生きられるような新たなシステムを創出する必要がある.それをここでは,デジタル・アジール・モデル Ver1.0 と呼ぶ.デジタル・アジール・モデルでは,ブロックチェーン技術を用いる.キリスト教はその中にすでにキリスト教倫理として合意形成手法を内包しており,これを,PoW(賢者),PoS(富豪)と比較してProof of Sacrifice(PoS:聖者)と呼び,デジタル・アジール・モデルの基盤とした.デジタル・アジール・モデル では,ブロックチェーンの強い匿名性とメカニズム(デザイン),トランスヒューマニズムから社会の中に不可侵な領域,アジールを再構成することを提案する.
 現在の社会は社会からのフィードバックを我々が調節しようと試みてもフィードバックするプロセスが我々の予測を越えて制御することができないという技術的特異性の反映である社会的特異性に達している.トランスヒューマニズムにおける新興技術の既存社会への破壊的な性質は,より多くの情報を処理するには利用可能な選択肢や手段が多くあった方が好ましいという思想であり,それはキリスト教倫理と相容れないものではない.自由を拡大するには技術を拡大する必要もある.我々が,現在の状況について危惧するのは,技術が抑制されるつつあることであり,既存の社会構造を変えるような技術には鋭いバイアスがかかることである.社会における規範倫理の重要性は言うまでもないが対応が追いついていない.ゲーム理論ではルールが与えられた上で結果を分析するが,メカニズムではある望ましい結果を得ることができるようなルールを設計する.メカニズムは,人が集団としての意思決定をする場である社会におけるルールやプロトコルである.ここにキリスト教倫理を適用し,その維持や運営をGNUの思想と機械によって達成することを提唱する.
 本稿では,デジタル・アジール・モデル Ver1.0を提案した.それは,高デジタル化されたアーミッシュと呼ぶべきものである.
 最後に我々は,今の社会構造に不満を抱いている人たちは,人が新たな自由の獲得手法を手に入れたことを確信する.

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