5月の Laravel は認証まわりが大きく動いた。公式(ファーストパーティ)のパスキー認証パッケージが登場し、AI SDK はサブエージェントに対応してオーケストレーション層になった。コアは 13.8 から 13.12 まで5リリース(13.11 は Laravel News 未掲載)。キュー検査やストレージキャッシュなど運用系の改善が中心だった。
出典はすべて Laravel News の各記事。バージョン番号やメソッド名は原文に合わせている。
TL;DR
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公式パスキー認証(WebAuthn)が登場。サーバー(
laravel/passkeys)+クライアント(@laravel/passkeys)+Fortify の3点セット。 - AI SDK にサブエージェント。エージェントを別エージェントのツールとして委譲でき、サブごとにプロバイダを変えられる。
- コアは 13.8〜13.12。全キュー横断のジョブ検査、
storageキャッシュドライバ、スケジューラ属性、ShouldBeDiscoveredなどが目立つ。 - DBドライバが豊作(ClickHouse、Google Sheets、フラットファイルの Laravel Paper)。
- セキュリティは PHP Foundation のセキュリティチーム発足、Composer 2.10 のマルウェアブロック、改ざん検知の Chronicle。
今月の目玉:公式パスキー認証(WebAuthn)
Laravel が公式パッケージとしてパスキー認証を導入した。Face ID / Touch ID / Windows Hello / セキュリティキーに対応する、フィッシング耐性の高いパスワードレス認証だ。構成はサーバー、クライアント、Fortify の3点セット。
サーバー側は laravel/passkeys。User モデルにトレイトとコントラクトを付ける。
use Laravel\Passkeys\Contracts\PasskeyUser;
use Laravel\Passkeys\PasskeyAuthenticatable;
class User extends Authenticatable implements PasskeyUser
{
use PasskeyAuthenticatable;
}
クライアント側は @laravel/passkeys。ブラウザのセレモニー(登録と検証)を扱い、React / Vue / Svelte 向けのSSRセーフなフックを備える。
import { Passkeys } from '@laravel/passkeys'
// 登録(認証済みユーザー)
await Passkeys.register({ name: 'My MacBook' })
// 検証(ログイン)
await Passkeys.verify()
Fortify は Features::passkeys() と config/fortify.php の passkeys セクションでこのスタックを統合する。サーバーパッケージ、npmクライアント、Fortify がルートとコントラクトで揃っているので、グルーコードを書かずにパスワードレス認証を組み込める。
Laravel コアの進化(13.8 → 13.12)
13.8:全キュー横断のジョブ検査
特定のキュー名が要る Queue::reservedJobs('queue1') を連鎖させる代わりに、全キューを1回で取得する allReservedJobs() / allDelayedJobs() / allPendingJobs() が入った。デプロイ前に「稼働中のジョブが残っていないか」を横断確認できる。
// Before: キューごとに1クエリ
Queue::reservedJobs('queue1')
->merge(Queue::reservedJobs('queue2'));
// After: 全キューを1回で
Queue::allReservedJobs();
Queue::allDelayedJobs();
Queue::allPendingJobs();
返るのは uuid / name / attempts / createdAt を持つ InspectedJob のコレクション。ほかにワーカーの WorkerPausing / WorkerResuming イベント、orderBy() での SortDirection enum 対応も。
出典: https://laravel-news.com/laravel-13-8-0
13.9:passwordrules 属性とキュー強化
Password::toPasswordRulesString() が、バリデーションルールから HTML の passwordrules 属性を生成する。Apple 発の仕様で、Safari / 1Password / Bitwarden がルールに沿ったパスワードを自動提案できる。パスキーと並んで、登録フォームのUX改善に効く。
// app/Providers/AppServiceProvider.php
Password::defaults(fn () => Password::min(12)->max(64)->mixedCase()->numbers()->symbols());
<input
type="password"
autocomplete="new-password"
passwordrules="{{ Password::defaults()->toPasswordRulesString() }}"
/>
ほかに大きな SQS ペイロードのディスク退避(overflow 設定)、Concurrency::run() のタイムアウト指定、PendingDispatch の when() / unless() などキュー周りの追加が多い。
出典: https://laravel-news.com/laravel-13-9-0
13.10:storage キャッシュドライバ
ファイルシステム抽象化を裏に持つ storage キャッシュドライバが追加された。Redis や Memcached なしで、S3 など任意のディスクをキー/バリューのキャッシュストアに使える。
// config/cache.php
'storage' => [
'driver' => 'storage',
'disk' => env('CACHE_STORAGE_DISK'),
'path' => env('CACHE_STORAGE_PATH', 'framework/cache/data'),
],
queue:work --stop-when-empty-for=60(指定秒数ジョブ無しで停止)、WorkerIdle イベント、Schema::hasForeignKey()、queue:failed --json など、オートスケール運用に効く小粒な追加もそろう。
出典: https://laravel-news.com/laravel-13-10-0
13.12:スケジューラ属性とリスナー検出の制御
スケジュール済みイベントに withAttributes() でメタデータを付け、ライフサイクルコールバックから参照できる。コマンド文字列をパースせずに監視やメトリクスのタグ付けができる。
$schedule->command('audio:import-podcasts --only-premium')
->withoutOverlapping()
->withAttributes(['tag' => 'import-premium-podcasts']);
自動検出リスナーが自身の登録可否を決める ShouldBeDiscovered も実用的だ。ShouldQueue なリスナーで、環境によってそもそもディスパッチさせない、といった制御ができる。
class NotifyExternalCrm implements ShouldBeDiscovered, ShouldQueue
{
public static function shouldBeDiscovered(): bool
{
return app()->environment('production');
}
// ...
}
レプリカ運用での起動ループを避ける Worker::$stopOnLostConnection = false、SQLite の file: URI 接続なども入った。
出典: https://laravel-news.com/laravel-13-12-0
コア早見表
| バージョン | 目玉 | 種別 |
|---|---|---|
| 13.8 | 全キュー横断の allReservedJobs() ほか / SortDirection enum |
機能追加 |
| 13.9 |
Password::toPasswordRulesString() / SQSオーバーフロー退避 |
機能追加 |
| 13.10 |
storage キャッシュドライバ / --stop-when-empty-for
|
機能追加 |
| 13.12 | スケジューラ withAttributes() / ShouldBeDiscovered
|
機能追加 |
このほか、AIエージェント内で実行されると対話プロンプトの代わりに JSON を返す Laravel Installer v5.27.0、Tailwind CSS v4.3.0(スクロールバースタイリングとコンテナサイズユーティリティ)もリリースされた。
AI まわり
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AI SDK にサブエージェント:別エージェントの
tools()からエージェントを返すだけで委譲できる。サブごとに指示やツール、プロバイダを変えられ、#[Provider(Lab::Anthropic)]で親を OpenAI、サブを Anthropic のように分けられる。各呼び出しは独立実行で親の会話履歴を引き継がない点に注意。
public function tools(): iterable
{
return [
new RefundsAgent,
];
}
- Larapanda:型安全な Lightpanda ブラウザSDK。AIエージェントのブラウザ操作やスクレイピングに使える。
実装寄りのチュートリアルも2本出ている。Laravel × MongoDB の AIレコメンドエンジン構築(ベクトル検索+Hugging Face 埋め込み)と、MongoDB 全文検索の関連度チューニング。
注目パッケージ(テーマ別に厳選)
認証・セキュリティ
- Laravel Chronicle:SHA-256 のハッシュチェーンで改ざんを検知できる、追記専用の監査ログ。
- Moat:GitHubアカウントのセキュリティをレビューするツール。
- Composer 2.10:マルウェアブロックと依存ポリシー。サプライチェーン対策が一段進んだ。
データベース・Eloquent
- Laravel ClickHouse:Eloquent や Query Builder で列指向DB ClickHouse を扱えるフル機能ドライバ。
- Google Sheets ドライバ:Google スプレッドシートをデータベースとして使う。
- Laravel Paper:フラットファイル対応の Eloquent ドライバ。
- Laravel Addressable:任意のモデルにポリモーフィックな住所と地理空間クエリを付与。
- Reorderable:Eloquent モデルにドラッグ&ドロップ並べ替えを追加。
- Expressive:Eloquent を型付きオブジェクトとして扱う。
- Cadence:cron/RRULE のスケジュールを Eloquent モデルに直接紐づける。
- Laravel Schema Sentinel:マイグレーションと実DBを比較してスキーマのズレ(ドリフト)を検出し、修正マイグレーションを生成する。
開発支援・その他ツール
- Chevere Workflow:ジョブと依存関係を宣言して並列実行を自動化する宣言的PHPワークフローエンジン。
- Laravel Brain:リクエストライフサイクルをインタラクティブグラフで可視化。
- Wirebones:描画結果から Livewire 遅延ロード用スケルトンを自動生成。
- Piper:PHP のパイプ演算子向けに、配列や文字列を扱う Laravel スタイルのヘルパ。
- Laravel Fluent Validation:オブジェクト指向のルールビルダ。
- Laravel Toggle:シンプルなフィーチャーフラグ。
- Aegis:値オブジェクトのスキャフォールディングとバリデーションヘルパ。
- Laravel Entitlements:サブスクリプションのプランと利用権限を管理。
- Laravel Shopper:TALLスタック製のヘッドレスeコマース管理パネル。
- Playa:Cookieベースの一時プレイヤー。
- PhpStorm から Laravel Cloud のデプロイ管理:IDE内でデプロイを操作。
今月のトレンド3つ
1. 認証のパスワードレス化。 公式パスキー認証と 13.9 の passwordrules 属性が同じ月に来た。フィッシング耐性とUXの両面で、パスワードレスへの移行が現実的な選択肢になっている。
2. AIをLaravel標準で組む流れ。 AI SDK のサブエージェントで、外部フレームワークなしにマルチエージェント構成が組める。MongoDB×AIのレコメンド実装やインストーラのAIエージェント対応も同じ方向だ。
3. サプライチェーン警戒の高まり。 PHP Foundation のセキュリティチーム発足、Composer 2.10 のマルウェアブロック、改ざん検知の Chronicle。依存とビルドの安全性に関心が集まっている。
その他の新着
- DHH が Laravel Live Denmark 2026 に登壇:Taylor Otwell との対談(fireside chat)。
- PHP Foundation がエコシステムセキュリティチームを発足:エコシステム全体のセキュリティ強化に向けた体制づくり。
- Laracon AU 2026 の登壇者、スケジュール、ワークショップを公開:オーストラリア開催の全容が発表。
まとめ
5月は認証(パスキー)とAI(サブエージェント)という、これからのアプリ設計に効く2つの基盤が公式に整った月だった。コアの 13.8〜13.12 はキューとスケジューラの運用改善が中心。パスキーは自社サービスの認証強化、AI SDK は社内ツールのLLM連携と、どちらも実務に落としやすい。
このまとめは毎月続ける。詳細は各出典リンクから。