はじめに
LF Japan Evangelistで分散トラスト(ブロックチェーン等)領域を担当する藤本です。今年を締めくくるアドベントカレンダーの記事として「LF Japan Community Days in Osaka」での体験について書かせていただきます。
近年、大阪へ足を運ぶ機会がめっきり減っていた私にとって、今回のイベントは二日間の日程で親睦会や昼食など参加メンバーの方々とじっくりお話をする貴重な機会でした。
会期中にお話をした参加者の方々の感想でも、ワークショップ型のセッションが好評で、初めて知る他OSSプロジェクトの活動内容や役割を気軽に知る機会となっていたようです。
DAY1:基調講演とパネルディスカッション
Community Daysの初日は、各プロジェクトのエバンジェリストが、それぞれの関連プロジェクトにおける最新の取り組みや進捗について紹介するセッションで、講演者のひとりとして参加した私にとっても、かなり広い技術分野がカバーされており、興味をそそられる講演が目白押しでとてもタメになりました。
私の担当した講演では「LF Decentralized Trustによる分散トラスト社会実現に向けた取り組み(説明資料)」のタイトルでLF Decentralized Trustの活動目的と代表的なユースケースを紹介させていただきました。
Evangelistによる活動紹介の講演のあと、「OSSプロジェクトへのAIインパクト」パネルディスカッションは参加者も議論に加わって会場全体が熱気に包まれました。AIによるコーディングサポートに可能性を感じつつも、OSSの開発者コミュニティとしては、プロジェクトの持続性やコードの出自の検証などのリスクについての懸念に共感を覚えました。
また、生成AIの普及によって若手技術者の育成機会が失われたり、OSS活動が軽視されてしまうのではないかや、性能向上がめざましいAIとどう付き合っていくべきかについて、他のEvangelistや参加者の方々がそれぞれの経験を語り、今後のAIとの付き合い方について深く考えるよい機会となりました。
DAY2:各分野のブレイクアウト セッション
2日目の午前中は、LFDT(LF Decentralized Trust)Japan Chapterが担当の『ブロックチェーン/分散トラスト トラック』に参加しました。
| 講演タイトル | Speaker | 講演概要 |
|---|---|---|
| Linux Foundation Decentralized Trust(LFDT)を知ろう!(当日資料) | 中村さん(日本オラクル) | LFDTを初めて知る方向けに、その成り立ちやビジョン、活動内容をご説明します。また、LFDT傘下の主なプロジェクトの概覧をご紹介します。 |
| LFDT Japan Chapterの活動紹介(当日資料) | 中島さん(三菱電機) | LFDTのローカルコミュニティであるLFDT Japan Chapterの活動を紹介します。具体的には、イベント開催とドキュメント翻訳に取り組んでおり、それぞれ紹介します。 |
| 分散技術とデータスペース(当日資料) | 高木さん(デロイトトーマツ) | ウラノス・エコシステムやIDSA/Gaia-X/Catena-X等各国で整備が進むデータスペース。その動向とデータスペースで活用されている分散技術について紹介 |
| NFTを活用したビジネスアイデア売買プラットフォーム | 中尾さん(大阪公立大学) | 埋もれがちなビジネスアイデアにNFTで明確な所有権を与え、ブロックチェーン技術で盗用リスクから保護することで、誰もが安全に価値を取引できるプラットフォーム構想についてお話しします。 |
| B2B領域におけるWeb3技術(ブロックチェーン/NFT/VC)の活用事例(当日資料) | 梅田さん、佐藤さん(日立製作所) | LFDTでは、Web3関連技術の開発を推進しています。本セッションでは、その中でもブロックチェーン、NFT、SSI/VCにフォーカスし、前半では技術概要と関連するLFDT内OSSの取り組みを、後半ではB2B領域において、これらの技術をサプライチェーンに活用し、コンプライアンスの高度化を実現した事例を紹介します。 |
| CBDCホワイトペーパーの紹介とCBDCの解説 | 平山さん(日本IBM)、鳩貝さん(財務省) | 2025年、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の日本語翻訳を、JSCC、IBM、ソラミツの3社で公開しました。CBDC概要、ブロックチェーンコミュニティとの関係、国内外のCBDC事例を国家視点で紹介します |
| 海外6カ国のCBDC等導入事例のご紹介(当日資料) | 宮沢さん(ソラミツ) | カンボジア、パキスタンなど6カ国のCBDC、貯蓄国債システムの導入事例を紹介、最新のHyperledger Iroha V2の概要、クロスボーダ取引のためのパブリック・プライベート・ハイブリッドブロックチェーンの紹介など |
DAY2の午後フリーとなった私はこの機会を活かし、他プロジェクトのセッションをいくつか「つまみ食い」をさせてもらいました。ワークショップ型のセッションに参加することにより、各プロジェクトが抱える課題や、ユニークなアプローチ、そしてコミュニティの多様性を肌で感じることができました。
今後について
今回のCommunity Daysに参加し、グローバルな活動はもちろん重要である一方で、ローカルなコミュニティで直接顔を合わせ、交流することの大きな強みを再認識しました。オンラインでのコミュニケーションが主流となる現代において、実際に膝を突き合わせて議論を交わし、熱量を共有する場は、計り知れない価値があると感じています。
また、LF傘下の様々なプロジェクトの活動に触れることができたのも大きな収穫でした。今後は、今回得られた知見を活かし、他のコミュニティやプロジェクトとの横断的な活動に積極的に参加し、さらなるイノベーションを推進していきたいと考えています。

