本投稿の要約
SharePointエージェントは、2025年1月に提供開始された新機能で、SharePoint内の特定のファイルを参照するカスタムチャットボットを作成できる。従来のCopilotと異なり、検索範囲を限定し特化型の応答が可能。Teamsでの共有も容易で、業務の効率化に寄与する。ただし、最大20ファイルまでの制限等より、想定される利用場面は短期間かつ少人数のイメージが強い。今後の進化次第では、RAG開発不要な場面も出てくるかもしれない。
SharePoint エージェントとは
2025年1月に一般提供開始となった機能です。
SharePoint内にある選択したファイルを基にチャットボットを作成することができます。
公式の引用です。
SharePoint エージェントは、特定のタスクや主題に合わせて調整された自然言語 AI アシスタントであり、情報に基づいた意思決定をサポートするために、信頼性が高く正確な回答と洞察を提供します。各 SharePoint サイトには、サイトのコンテンツに基づいたエージェントが含まれています。また、ユーザーは 1 回のクリックで、選択した情報のみにアクセスするカスタム エージェントを作成して共有できます。従業員がこれらの事前構築済みエージェントを使用する場合でも、独自のエージェントを作成する場合でも、効果的な意思決定を促進する正確で適切な応答を受け取ることができます。
Copilotと何が違うのか
チャットボットができてしまうことから、なんとなく「それCopilotやん」と思われがちなので、私の主観含め違いをお伝えします。
SharePoint上にある従来のCopilotの検索機能では、検索時に組織内のすべてのファイルやページ全体にある情報を対象とするため、具体的な質問をしても広義的な内容が返ってきたり、参照ファイルの格納場所のみが返ってきたりと、小回りの利かない場合が多くありました。(それでも十分便利なことは間違いないのですが)
そんな中、SharePointエージェントでは、チャットボットを作成する際に 参照するファイルを選択できるため、検索範囲を明確化し、使用目的に特化したチャットボット を用意することができます。
従来のCopilotとは反対に、小回りを利かせるためのチャットボットと言えそうです。
またチャットボット自体を、Teams等で 簡単にメンバーへ共有できること も大きな特徴のようです。以下で実際の画面も出していますのでよかったらご覧ください。
”エージェント”ってアレのこと?
SharePointエージェントという名前ではありますが、今巷で話題の"AI Agent"とは大きく異なる印象です。
AI Agentは「状況や課題に合わせて自ら柔軟に行動できる存在」のような意味合いがあると思いますが、SharePointエージェントにそこまでの動的なはたらきはあるようには思えません。(AI Agentの定義どれやねん論争はさておき)
「選択したファイルに特化した専門家」という意味で、エージェントという言葉が使用されているのかと思います。
そのためMicrosoftは様々な箇所でSharePointエージェントのことを「エージェント」と表現していますが、ちょっとややこしいので個人的にはチャットボットでいいんじゃないかなと思ってしまいますね。
普通にAI AgentはAzure AI Agent Serviceで進んでいますし。
↓Microsoft社員が公開しているAzure AI Agent ServiceのGithub
https://github.com/07JP27/DurableMultiAgentTemplate/blob/main/README.md
SharePointエージェントの作成方法
ここから具体的にSharePointエージェントの使い方を説明します。
(1) ファイルを格納する
IPAさんの一般配布資料をお借りしています。
(2) ファイルを選択して「エージェントを作成」
名前などの個人情報だけ隠しています。
(3) エージェントを編集
ここでエージェントの細かなところを設定できます。
名前だったり、画像だったりですね。
今回は某会社の某合言葉を画像にしてみました。
初期設定や挨拶文章を変更できます。
「スタータープロンプト」で、メンバーがよく使いそうなセリフを設定しておくと楽になりそうですね。
例:「直近1週間で更新されたドキュメントを洩れなく教えて」
(4) SharePointエージェントのチャット画面
先ほど設定したスタータープロンプトがデフォルトで表示されています。
要約のプロンプトを出しましたが、上手くできていますね。
食わせたPDFも合計100ページ以上あって大変かと思いますが、よくできています。
(5) Teamsでのメンバー共有
SharePointエージェントの画面から「Teamsのリンクコピー」などでメンバーとのチャットやグループチャットに追加することができます。
このときの挨拶文章を変えたりする楽しみ方もありそう。
チャットでも、メンション+プロンプトで回答をもらえます。
以下は、上記回答のPDFの参照箇所です。
内容を上手く抽出できていることがわかるかと思います。このPDFは段落分けも読み取りが難しかったと思うのですが、問題ないですね。
価格・対象ライセンス
この辺りは公式を確認いただきたいですが、基本的にはCopilotライセンスユーザーのようです。ただし、組織のライセンスによっては使用できる場合もあります。
まだ不明瞭な点もあるのかなという印象です。
↓SharePointエージェントに関するFAQ
「RAGじゃなくてコレでいいじゃん!」…とはならないはず。
使用してみるとわかるのですが、結構回答精度が高いため、「社内チャットボット全部これでよくね?」という思考になりそうな気もしてきます。
これも私の主観ですが、場合によってはできる気がしますが、基本的には難しいと思っています。
理由としては、 「SharePoint上のチャットボットとして特化しすぎているから」 です。
まず、SharePointエージェントのナレッジソースに含めることができるファイル数は 合計20個 です。この時点で大規模なチャットボットの構築は難しいことが挙げられます。
次に、他MSサービス(Power Automateなど)との連携も現時点では考えられていないため です。もしさらに高性能なチャットボットやチャットボット以外の機能を取り入れる場合、それはCopilot StudioでCopilotをカスタムしていくことが必要となります。本投稿で詳しくは言及しませんが、Copilot Studioを活用すると複雑なタスクやプロンプトもこなせるCopilotが使用できるため、一定基準の低いラインを引いて使用の住み分けを考えるべきかと思います。
あくまでSharePointエージェントは、SharePointに特化したサポート機能として認識すべきかと思います。想定される利用場面としても、長期間よりは短期間、大人数よりは少人数 のイメージだと思います。
今後の可能性は未知数
ただ、SharePointエージェントの編集画面には以下のポップアップもありました。
Copilot Agentという概念もありますし、ほかの性能などを利用してSharePointエージェントが今後さらに進化すれば、いよいよ「わざわざRAGを開発しなくてもいいよね」と言えるようになるかもしれませんね。ここはまだまだ未知数で、期待できるところかと思います。
補足
このブログで参照されている、Microsoft、Azure、Azure OpenAI、PowerAppsその他のマイクロソフト製品およびサービスは、米国およびその他の国におけるマイクロソフトの商標または登録商標です。
私は、Microsoftとは直接関係のない個人として本ブログを記載しています。
この記事の情報は公開時点のものであり、サービスは随時アップデートされています。Microsoftのサービスは進化が早いため、最新情報は公式HPをご覧ください。