3人会社でAI経営OSを自作した話:Claude Codeで月商250万を回す2026年の実務構成
SES出身エンジニアが、客先常駐を抜け出して3年。今は代表として3人の会社を動かしながら、AIエージェントを使って会社の管理業務の大半を自動化した。
「AIがCFOをやってる」と言うと笑われることもある。でも現実として、月商250万円規模の事業を、週に何十時間もの管理業務コストをかけずに回せている。本記事ではその実態を、コード・コマンド・設定ファイルレベルで具体的に書く。
なぜAI経営OSを作ろうと思ったか
前職はSES(システムエンジニアリングサービス)のエンジニアだった。当時の話を少しだけ。
2026年現在、SESエンジニアのスキル別単価相場は業界内でも大きく分散している。データ分析・機械学習系のスキルを持つエンジニアは高単価案件にアクセスしやすい一方、インフラ・ネットワーク系の単価はここ数年で相対的に低下傾向にある。「SES 単価 相場」を調べると、スキルセット次第でキャリアの可能性が大きく変わることが実感できるはずだ。
SESを脱出したきっかけは単純だった。「誰かの会社を常駐して動かすより、自分で事業を作る方が面白い」という気持ちが勝ったからだ。ただ、独立直後の現実は甘くなかった。人が3人しかいないのに、数字管理・採用・マーケ・開発が全部並列で動く。
そこで「AIに会社機能の一部を担わせる」という発想が生まれた。
全体アーキテクチャ:4つのAIエージェント構成
まず、どんなエージェントを作ったかを整理する。
┌─────────────────────────────────────────┐
│ AI経営OS (OpenClaw) │
├──────────┬──────────┬──────────┬────────┤
│ CEO │ CFO │ COO │ CMO │
│ 方針策定 │ 財務分析 │ 業務管理 │ 集客 │
└──────────┴──────────┴──────────┴────────┘
↕ (Claude Code / Skill呼び出し)
┌─────────────────────────────────────────┐
│ コンテンツ自動化 / 数値監視パイプライン │
└─────────────────────────────────────────┘
ベースはClaude Code。社内では「OpenClaw」という名前で呼んでいる自前フレームワークに、各エージェントのスキルファイルを積み上げた構成だ。
各エージェントは独立したMarkdownの「スキルファイル」として定義してある。
# スキルファイルの例
ls ~/.claude/skills/openclaw-keiei-os/
# ceo.md cfo.md coo.md cmo.md cf.md pl.md shiwake.md ...
エージェントを呼ぶときは、Claude Codeのターミナルから /cfo とタイプするだけ。
CFOエージェント:月次PL自動生成の実際
一番使用頻度が高いのがCFOエージェントだ。毎月の損益計算書(PL)の下書きを自動で出してくれる。
実装の流れ
Step 1: freeeからデータをCSVエクスポート
# freeeのCSVを所定フォルダに置く
cp ~/Downloads/freee_export_2026-06.csv ~/company/data/pl/
Step 2: CFOスキルを呼び出す
/cfo
> 今月のPLをデータから読んで分析してください
Step 3: エージェントが自動で以下を実行
- CSVを読み込んでカテゴリ別集計
- 前月比・前年同月比の計算
- 利益率の異常値フラグ立て
- 改善提案のMarkdownレポート生成
CFOスキルファイルの核心部分はこんな感じだ:
## CFO Agent - Financial Analysis
あなたは会社のCFO代行AIです。以下の責務を持ちます:
### 財務分析タスク
1. PLデータを読み込み、カテゴリ別収支を集計する
2. 前月比・前年同月比の差異を計算し、5%以上の変動に注目する
3. 固定費・変動費を分離して限界利益率を計算する
4. キャッシュフロー上の懸念点を指摘する
5. 最終的なサマリレポートを~/company/reports/に保存する
### 禁止事項
- 数値を推測や仮定で埋めない
- 実データのない項目は「要確認」と明示する
これを作る前は、毎月PL整理に4〜6時間かかっていた。今は人間がやる作業は30分以下だ。
COOエージェント:業務管理とタスク分配
COOエージェントは「今週何をどの順番でやるか」を一緒に考えるパートナーだ。
Todoと優先度の自動ソート
毎朝のルーティンとして、以下のコマンドを実行している:
# 朝のダッシュボード更新
/coo
> タスクリストを確認して今日の優先順位を提案してください
COOエージェントはgit logやissue一覧を読み、期限が近いもの・売上に直結するものを上位に並べ直してくれる。人間が考えると感情やバイアスが入るが、エージェントは純粋に「締め切り × 売上インパクト」で並べる。
つまずきポイント①:コンテキスト汚染
初期は1つのClaudeセッションで全エージェントを呼んでいた。そうすると、CFOの文脈でCOOに話しかけたとき「財務視点で業務改善を語る」という奇妙なハイブリッドが生まれた。
解決策はエージェントごとに独立したセッションを持つこと。Claude Codeのプロジェクト機能を使って、エージェントごとに別のworking directoryを設定した。
# エージェントごとに専用ディレクトリ
~/company/agents/cfo/ # CFO専用コンテキスト
~/company/agents/coo/ # COO専用コンテキスト
~/company/agents/cmo/ # CMO専用コンテキスト
CMOエージェント:コンテンツ自動化パイプライン
CMOエージェントは最も複雑な実装になった。「集客のためのコンテンツを自動で量産する」という役割だが、自動化と品質のトレードオフが常に問題になる。
実際のパイプライン構成
現在稼働しているコンテンツ自動化パイプラインはNode.js(TypeScript)で書いてある:
// src/pipeline.ts の実際のフロー(簡略版)
async function runPipeline() {
// 1. トレンド収集(Grok API経由)
const trends = await discoverTrends();
// 2. キーワード選択(学習データ70%/探索30%)
const keywords = loadKeywords();
// 3. 記事生成(Claude経由)
const article = await generateArticle(keywords, trends);
// 4. 人間承認ゲート(Telegram通知)
await sendApprovalRequest(article);
const approved = await waitForApproval();
// 5. 承認後にのみ公開
if (approved) {
await publishToAllPlatforms(article);
}
}
ポイントはステップ4の人間承認ゲートだ。AIが生成したコンテンツを自動で公開すると、誤情報・品質問題が起きる。Telegramボットで「公開OK / NG」を判断する仕組みを挟んでいる。これは省略できない。
つまずきポイント②:コスト爆発
CMOエージェントでは、一度のパイプライン実行でClaudeに複数回リクエストを投げる。最初は1記事あたりのAPI費用を把握していなかった。
対策として実装したのが**RTK(Rust Token Killer)**というプロキシ。Claude Codeのコマンドをフィルタリングして、不要なトークンを60〜90%削減する。
# RTKの効果確認
rtk gain
# → Token savings: 73% (last 7 days)
また、有料LLM APIの直叩きは原則禁止にした。Claude Code CLI経由のみに統一することで、コスト管理を一元化している。
データ分析エージェントとの統合
3人の会社でも「データ分析」は欠かせない。毎週以下の数値を追う:
- 各プラットフォームの記事PV・CVR
- X(旧Twitter)のエンゲージメント率
- noteのメンバーシップ継続率
これらの集計と分析もエージェントに委ねた。
// analytics/feedback.ts の一部
export function loadLearningState(): LearningState | null {
// 過去30日間の記事パフォーマンスを読み込む
const articles = loadPublishedHistory();
// 高パフォーマンス記事のキーワードを抽出
const bestKeywords = articles
.filter(a => a.views > THRESHOLD)
.flatMap(a => a.keywords)
.reduce((acc, kw) => {
acc[kw] = (acc[kw] || 0) + 1;
return acc;
}, {} as Record<string, number>);
return { bestKeywords: Object.keys(bestKeywords) };
}
このデータが毎週の「どのネタを書くか」の判断に使われる。感覚ではなく数値で意思決定できるのが、エンジニア出身の自分には馴染みやすかった。
実際に変わったこと(定性的に)
数値を作る気はない。ただ、定性的に変わったと実感していることは正直に書く。
良くなったこと
意思決定の速度が上がった
毎週月曜に「今週何をやるか」の整理をCOOエージェントとやる。30分で週次計画が完成する。以前は半日かかっていた。
数字を見る頻度が上がった
CFOエージェントが毎月PL分析を出してくれるので、月次の数値確認が「億劫な作業」から「エージェントとの対話」に変わった。財務をちゃんと見るようになった。
一人で複数ロールを担う精神的負荷が減った
CEO・CFO・COO・CMOを1人でやるのは認知的に重い。エージェントに「CFO視点で見てくれ」と頼めることで、自分のメンタルモデルを切り替える作業が楽になった。
まだうまくいっていないこと
採用・人事系エージェントはまだ未完成
HRエージェントを作ろうとしたが、面接評価や採用判断をAIに任せることへの倫理的懸念と実務上の精度問題で保留中。
外部連携のAPIが不安定
Telegramボット・freee連携・各種パブリッシャーAPIの組み合わせで、ときどき無音で失敗する。ログ監視が必要で、PM2での常駐プロセス管理が今も最大の運用課題だ。
SES出身エンジニアへのメッセージ
2026年最新の状況として、データ分析・AI活用スキルを持つエンジニアの価値は引き続き高い。SES単価相場の文脈でいえば、「どのスキルを持つか」が「どこに常駐するか」よりも重要になってきた。
SES脱出を考えているなら、まずやることは一つだ。自分でプロダクトかサービスを1つ動かしてみること。 AI経営OSのような大げさなものでなくていい。小さな自動化ツールを作って、自分の時間を売るのではなく、仕組みを売る感覚を掴む。
エンジニアの技術力は、自分でプロダクトを作る文脈でも確実に活きる。むしろSES時代に培った「要件を読んで実装する力」は、自分のビジネス要件を実装する場面で最大に発揮された。
技術スタックまとめ
| 役割 | 使用技術 |
|---|---|
| AIエージェント基盤 | Claude Code + カスタムスキルファイル |
| コンテンツパイプライン | Node.js (TypeScript) |
| トークン最適化 | RTK (Rust Token Killer) |
| 財務データ連携 | freee API → CSV手動エクスポート |
| 承認ゲート | Telegram Bot API |
| プロセス管理 | PM2 |
| データ分析 | 自作フィードバックループ (analytics/feedback.ts) |
| デプロイ先 | Cloudflare Pages / Vercel |
まとめ:3人会社でAI経営OSを作ってわかったこと
AI経営OSは「全自動でCEOになる」ツールではない。人間の判断をより速く・より良くするための補助システムだ。
完全自動化を目指すと品質と信頼性が崩れる。人間の承認ゲートを残した設計が、今のところ最も持続可能だとわかった。
エンジニアが自社でAIエージェントを作ることの最大のメリットは、ブラックボックスがないことだ。何をやっているか全部見える。失敗した理由も全部ログに出る。これはSaaS系のAIツールに任せては得られない透明性だ。
3人でも、AIと組めば10人分の仕事量はこなせると体感している。ただし、AIに任せっきりにした瞬間に品質が落ちる。AIを使いこなすのも、結局はエンジニアリングスキルだ。
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