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社内の AI エージェントを「新しい利用者・委託先」として点検する6問

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AI エージェントや、外部の生成 AI とのつなぎ込みを社内に入れるとき、私は「新しい利用者が1人増え、同時に新しい委託先が1社増えた」と考えるようにしています。そう考えると、特別な枠組みを持ち出さなくても、人に対してやってきた点検(ID・権限・記録・承認・停止・委託先の管理)をそのまま当てられます。

この記事は、私が公開している「国の注意喚起 対応点検表(2026年10月版)」v1.3 に足した6問(F-1〜F-6)を、観点ごとに「問い → どう確かめるか → どこで線を引くか」の形で書いたものです。

なぜ足したのか

v1.2 は、2026年10月に8機関が出した注意喚起を17項目に整理して作った47問でした。これを AI エージェントの視点で見直したところ、6つの観点に専用の問いが1つもありませんでした。受け皿に近い問いはあっても、対象に AI が入っていない。たとえば「承認」という語は、47問に0回です。

そこで v1.3 で「F 社内で使う AI」の6問を足しました。断っておくと、この6問は国の注意喚起から作ったものではなく、当社の追加です。注意喚起が求めているとは書きません。

F-1 専用のアカウント・鍵

問い:業務で使う AI(AI エージェントや、外部の生成 AI とのつなぎ込み)に、人とは別の専用のアカウントや鍵を割り当てている

確かめ方:ID 基盤やクラウドの管理画面で、鍵(API キー・トークン・サービス用アカウント)の一覧を出し、各鍵を「誰が」ではなく「何が」使っているかを書き出します。AI が使っている鍵の持ち主欄に人の名前が入っていたら、それが使い回しです。

線:人のアカウントや鍵を AI に使い回していれば「できていない・不明」。

使い回しが問題なのは、権限の話より先に、記録の話です。人の鍵で動いた AI の操作は、記録上その人の操作になります。F-3 で詰まる原因が、ここで作られます。

F-2 権限

問い:AI に渡した権限を、その用途に必要な範囲だけに絞っている

確かめ方:F-1 で出した鍵ごとに、付いているロールや権限の一覧を出します。用途を1行で書いて、その用途に要らない権限を消していく作業です。特に見るのは、管理者権限と、「送信・削除・支払い」のような取り消せない操作です。

線:管理者権限を渡しているか、外から来た文章を読む AI が送信・削除・支払いまでできれば「できていない・不明」。すべてのデータの読み書きを渡していれば「一部」。

「外から来た文章を読む AI」を名指ししているのは、外部の文章に紛れた指示で AI が操作される型(プロンプトインジェクション)を念頭に置いているからです。メールや Web を読む AI に、送信や削除の権限を同時に持たせると、読んだ文章がそのまま命令になり得ます。読む権限と、取り消せない操作の権限は、分けて持たせます。

F-3 記録

問い:AI がした操作(読んだデータ・実行した処理・外への送信)が記録に残り、あとから人が追える

確かめ方:AI に何か1つ操作をさせて、その操作が記録のどこに、どの主体名で残るかを実際に見ます。F-1 ができていれば、主体名が AI 専用のアカウントになっているはずです。読んだデータ・実行した処理・外への送信の3つが追えるかを、それぞれ確かめます。

線:記録が無い、または人の操作と見分けられなければ「できていない・不明」。

F-4 承認

問い:外への送信・データの削除・設定の変更など、取り消せない操作は、AI が実行する前に人が承認する

確かめ方:AI にできる操作のうち、取り消せないものを列挙します(送信・削除・設定変更・支払いなど)。それぞれについて、「実行の前に人が止められる場所があるか」を見ます。実行後の通知は、承認ではありません。

線:承認の手順が無ければ「できていない・不明」。承認なしで実行できるものが1つでもあれば「一部」。

F-5 停止

問い:AI の動きを止める担当者と手順(鍵を無効にする・つなぎ込みを外す)が決まっていて、すぐにできる

確かめ方:「今、この AI を止めてください」と言われたとき、誰が、どの画面で、何を無効にするかを答えられるかです。鍵の無効化と、つなぎ込み(連携設定)の解除の両方を手順に書き、担当者が不在のときの代わりまで決まっているかを見ます。

線:誰が止めるかが決まっていなければ「できていない・不明」。

F-6 委託先

問い:使っている外部の AI サービス(生成 AI・AI のコーディング支援など)を、委託先の一覧に入れている

確かめ方:委託先の一覧(個人情報を預けている先、自社のシステムにつながる先)を開き、使っている外部 AI サービスの名前があるかを見ます。利用規約や約款で、入力したデータがどう扱われるかを確かめた記録を、一覧と一緒に残しておきます。

線:1つも入っていなければ「できていない・不明」。一覧に無いものが1つでもあれば「一部」。

6問とも、委託先にそのまま聞ける

この6問には、点検表の「委託先にも聞ける」の列に○を付けています。AI を組み込んだサービスを出している委託先に、同じ6問をそのまま送れます。自社で答えてみて詰まった問いほど、委託先に聞く価値があります。

この6問で足りるか

6問は、AI エージェントを人と同じ物差しで見るための入口の6観点ですので、足りるとは言い切れません。「この6問で AI のリスクを完全に管理できる」とは書きませんし、国の指針がこの6問を求めているとも書きません。

ただ、ID・権限・記録・承認・停止・委託先という6つは、人の利用者に対して情シスがすでにやっている点検です。AI だけ別の物差しにしないこと。それが、私がこの6問を足した理由です。


点検表「国の注意喚起 対応点検表(2026年10月版)」v1.3(Excel/PDF・無料・登録不要)は、プロフィールのリンクから。F-1〜F-6 は Excel の「点検」シートと、PDF の53問の一覧にあります。

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